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さてどうしたものか-弁護士にできることできないこと





法律ノート 第1057回 弁護士 鈴木淳司
May 09, 2017

週末に法律ノートを書こうと思っていたのですが、ある憧れのゴルフコースでプレーすることができて、先送りにしていました。いやー、スポーツはいいですね。奥深いし、怪我さえしなければ、身体にも精神にもとても良いと思いました。以前私はダイビングをよくしていたのですが、ゴルフも同じで、場所によって全然違う体験ができるところが楽しいと感じています。皆さんは天気を楽しまれていますか。
さて、今回は皆さんからの質問をいったん休ませていただき、ある状況について考えさせてください。一応、フィクションということで、具体的な特定の人物について書いているわけではないということで、考えていただければと思います。
ある70代後半の夫婦の話です。旦那さんは数度離婚歴があります。2人は50代になってから、結婚を決意します。お互い仕事もしていて、財産もあり、それぞれ何十年も別の道を歩いてきました。旦那さんにも、奥さんにもそれぞれ子供がいます。このようにすでにお互い自分の人生を背負っての結婚となったわけです。

いくつになっても恋愛は良いことですね。アメリカでは、婚前契約(プリナプチュアル・アグリーメント)を夫婦間で締結することが少なくありません。それぞれ持っている財産は、それぞれに帰属して共有財産とはならないとする契約です。再婚の場合などは、特に珍しいことではありません。この二人も婚前契約を締結していました。婚姻前にそれぞれが持っている財産は、それぞれの財産としてはっきり分けておこうというわけです。

私は、奥さん側の財産について相談を受け、自分の血族に財産が行くような形の相続関連書類を整えました。これは20年ほど前の話です。それから、何度も内容を変更しましたが、相続割合の変更のみで、基本的に自分の血族に財産を相続させる意思は変わりませんでした。婚前契約があるから旦那さん側に相続をさせることはないわけで、妥当な内容でした。

旦那さんから、最近連絡があり、奥さんが遺言等を書き換えたいということでした。旦那さんは、奥さんが考えを変えて、奥さんの財産の半分を旦那さんに相続させたい、ということを連絡してきました。

私が面会すると、奥さんは、階段で転び、ずいぶん衰弱していました。旦那さんに席を外してもらい、遺言等を本当に書き換えたいのか、旦那さんとよく話をしているのか、と聞くと、そのような会話をしていないということでした。奥さんはしきりに旦那さん側の遺言等はどうなっているのかを気にされていたので、旦那さんにそれを見せてもらうと、結局旦那さん側の財産は最終的に旦那さんの血族に相続されるように設定されていました。奥さんにそのことを説明し、どのようにしたいのか聞くと、旦那さんと同様の形が良いということに収まりました。結局、自分の血族に財産が相続されるという内容です。

お互いに同様の内容ですので、フェアでもありますし、今まで何十年も私が聞いていた内容とブレていません。細かい微調整をして、書類を整え、無事に相続書類をアップデートしました。相続書類の原本は私の所属する事務所で保管することになりました。
アップデートが終わった数日後、もう80歳になろう旦那さんから、妻の相続書類を渡してほしいと依頼がありました。旦那さんであろうと、私の直接のクライアントではありませんので、奥さんからの承諾書がなければ、渡せないことを言うと、奥さんのサインの入った承諾書を送ってきました。

そこで、相続書類を送ると、ものすごい剣幕で、訴えるぞ、などと言ってきました。訴えられるものなら、どこにでも訴え出て見ろよ、と思いましたし、そもそも、旦那さんの財産ではないわけですから、訴える理由もないわけです。弱っている奥さんの財産の半分を自分のものにしようと思って私に連絡してきたのですが、それが成就しないので、怒り出しているのです。

私は暗澹たる気持ちになりました。弱っている奥さんの介護をしているのは、旦那さんであることは間違いないので、奥さんとしても、彼の言うことを「はいはい」と聞いてしまうわけです。私は弁護士というだけで、毎日その奥さんと会うわけではありません。そうすると、自分が弱っていれば、旦那さんに頼るしかない、ということになってしまい、ある意味コントロールされてしまってもおかしくない状況です。

旦那さんは、私に対してもう仕事をしなくても良い、とお節介を焼いて言ってきますが、私は心配でしょうがないわけです。せっかく、自分の意思で奥さんは相続書類をアップデートしましたが、旦那さんは、事情を知らない別の弁護士のところに連れて行って、自分に財産が入るような形の相続書類を用意させ弱っている彼女にサインをさせるかもしれません。物理的に近くにいる人間の方が彼女をコントロールし易いに決まっていますね。

弁護士として、奥さんの意思を守るために何ができるのか、このところずっと悩んでいます。さてどうしたものか。


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遺言やトラストがないと財産没収?!-法定相続に自由度をプラス





法律ノート 第1056回 弁護士 鈴木淳司
May 14, 2017

 

日本はゴールデンウィークということもあり、仕事や勉強に区切りをつけて、ゆっくりされている方も多いのではないでしょうか。日本は祝日がかなり多い国ですね。カリフォルニアでも天気が良くなって来ました。
先週読んだ記事のなかに、シリコンバレーで酔っ払いが100キロ以上ある警備ロボットと戦いになって横転させたというニュースがありました。暖かくなってきて、屋外で酔っ払って問題となったようですが、もう人がロボットと戦うようなシナリオが出てきているということですね。考えさせられます。

 

トラストや遺言を作っておかないと、財産は政府に没収されるのですか?

さて、今回からまた新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
前回まで考えてきた遺言執行者のトピックに似ているところもあります。

いただいた質問をまとめると「遺言やトラストを作っておかないと、最悪の場合財産を政府に没収されてしまうということを、トラストのセミナーで聞きました。これを聞いて、夫婦で話をして、何かしなければと思っています。万が一政府に財産を没収された場合、それを取り戻す手続などはあるのでしょうか?」という質問です。
今まで弁護士をしていると、何度もこのような質問に出会ってきたのですが、最近になってその原因がわかってきました。このような情報を得ている方たちはどうも、トラストのセミナーなどに参加してそこで情報をもらって来るようなのです。もちろん法律事務所などトラストを作って欲しいと思う側が主催するセミナーであれば、色々トラストや遺言を作るように誘導するでしょうね。そうであれば、政府に取られちゃうよ、的なことを言うのかもしれません。
ただ、そのようなセミナーは一種の情報として聞き流しておけば良く、具体的に相談をしながら何が良いのか確認することが重要だと思います。

 

財産没収はされませんー法定相続制度

まず、最初にクリアーにしておきますが、セミナーで弁護士が話してようが、誰が話してようが、遺言やトラストがなくても、財産を没収されると言うことはまずありません。

まず、遺言やトラストがあれば、皆さんがなくなったときに、その遺言やトラストに沿った内容で、相続財産が分配されていきます。そのためのツールですから当たり前です。
そして、遺言やトラストがない状態で亡くなる方たちもたくさんいますが、いきなり政府に財産が取られてしまう訳ではありません。法定相続(intestate)といって、法律で自分の血族を含む家族にどのように分配されるのか決まっているのです。

天涯孤独、いとこもはとこも、まったくいない、という方で、法律に照らして、まったく法定相続人が存在しないごく例外的な場合には州の財産に組み込まれる可能性はごくわずかにありますが、このような極端な例を除いて、いきなり政府に財産が取られるということはないのですね。

法定相続制度は日本でもアメリカでも存在する制度ですから、そこまでナーバスに政府に取られてしまうと考えなくても良いと思います。

 

法定相続制度ー死後は近親者に財産分与

法定相続制度は法律ノートでも何度か考えましたので、また皆さんの質問を待って考えていきますが、概略だけ考えておくと、まず遺言やトラストがなければ、配偶者および子が法定相続人となるのが一般的で、これらぼ近親者がいない場合には、血族を親等の近い方から法定相続人とするのがかなり共通した考え方です。

 

遺言やトラストは法定相続にプラスするもの

そうすると、一人っ子で親も親の兄弟も祖父母も子供もいないなどという限られた場合には、誰を相続人にするのかを、遺言やトラストなどで考えておかないとややっこしいことになるかもしれません。法定相続を利用することも別に少なくありませんから、遺言やトラストを作らなければならないという義務感はあまり切実に持つ必要はないと思います。

どちらかというと、法定相続で使われるような内容をそのまま遺言やトラストにするケースも少なくありません。

 

法定相続の問題点と遺言・トラストのメリット

じゃあ、なぜこのようなセミナーは遺言やトラストを勧めるかと言えば、それは自分たちの利益になるように誘導しているからなのですが、じゃあ、法定相続に任せておけばそれはそれで、いいではないか、と思われる方もいらっしゃると思います。

弁護士に関わるのも面倒だし、書類の作成も厄介だ、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。まあ、それもごもっともなのですが、法定相続になったときの問題点を次回考えていきましょう。

 

これから、バーベキューにも良い気節ですね。
アウトドアを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]





法律ノート 第1054回 弁護士 鈴木淳司
April 17, 2017

しかし、今年の天候は異常で、ベイエリアは雨が多いです。あれだけ騒いでいた干ばつ問題が解決したのは良いことではありますが。雨だけではなく、例年に比べて花粉もすごいように思います。今までカラカラになっていた植物が、水を得て活発に活動しているのでしょうか。皆さんは、花粉対策に何をされていますか。

 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]

さて、前々回から考えてきた質問を今回も考えていきましょう。
いただいている質問は「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

 

遺言執行者は遺言で指定

前々回考えたとおり、遺言執行者というのは、「ぼくの遺言の執行は君がなってくれ」と肩を叩かれるわけではなく、遺言に、執行者の名前を記載する方法を取ります。したがって、遺言の内容を見なければ、誰が執行者として指定されているのか、わからないわけです。

もちろん、遺言者も身内などには、遺言の内容を見せることもアメリカでは可能です。
したがって、執行者が誰になるのかは、事前に開示をすることはできます。
しかし、一般的に自分の遺言を見せて回る人はいないわけで、口頭で、「執行者に指名したよ」と伝えたりする程度になるのではないでしょうか。

また、遺言は、遺言者が一人で行う法律行為ですから、気が変わったらいつでも変更することができますので、いったん「執行者に指名したよ」と言われていても、蓋を開けてみたら、すなわち遺言を確認してみたら、別の執行者が設定されていたということもあるかもしれません。周りに、知り合いがいない場合もあります。その場合には、遺言の作成を頼む弁護士を執行者に指定する場合もあります。

 

遺言執行者、選任の流れ

さて、遺言執行者に選任されると、遺言者が生きている間には、何もすることはありません。遺言が発効するのは、遺言者が死亡したときですから、当たり前ではあります。

遺言者が死亡すると、信託が別途存在しない場合、相続財産の分配などの処理は、裁判所の手続きに乗せなければなりません。裁判所が財産管理をモニターしながら分配をしていくのです。この裁判所の手続きは、はやくても、6-9ヶ月かかります。この手続を避けるのも信託作成の一つのメリットと言われています。

あまり法律の手続きを難しく書いても、読者の方にとっては馴染みがないと思いますので、簡単に遺言者の死亡から、どのように遺言の内容が現実化していくのか、簡単に考えてみます。

 

遺言執行手続きの開始

まず、遺言を見つけた家族や、保管者が、その遺言を裁判所に提出します。その提出を受けて、裁判所が遺言執行の手続きをはじめます。裁判所が手続きを「はじめる」と言っても、関係者の請求に応じて判断をしていくことになりますので、自動的に裁判所が何かをやってくれると期待してはいけません。

次に、裁判所が遺言を確認すると、遺言執行者を遺言に沿って指定します。指定された人が拒否する場合などは、裁判所が遺言執行者を決めます。遺言執行者となった人は、裁判所から相続財産がどの程度あるのかを把握して、遺言に沿って、分配をするという役割を負います。

そして、その役割を負うことによって、法律で定められた報酬を得ることができます。

 

 

実際は弁護士との共同作業

ここで、遺言執行者となったとすると、法律にあまり詳しくない人が、いきなり裁判所に提出する書類を作成したり、審理に参加したりすることは難しいわけです。仕事を持っている人などは特にそうでしょう。

しかし、実際裁判所は遺言執行者にここまでの多岐にわたる業務を行うことを期待していません。ほとんどの場合には、遺言執行者となった人に弁護士がつくわけです。そして、その弁護士が実際の法律業務等必要なことをして、遺言執行者の代わりに業務を行うことになります。

次回、遺言執行者とその弁護士がどのような業務を行っていくのか具体的に考えていきましょう。

 

私の鼻と目がグズグズしていますが、みなさんも花粉に注意しながらまた一週間春を楽しんでいきましょうね。




 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[1]




 
法律ノート 第1052回 弁護士 鈴木淳司
April 4, 2017

先週、一緒に仕事をしている日本の弁護士とお客様と夜の食事会になりました。この弁護士は、熊さんみたいに髭を生やしている60代なのですが、風貌が宮﨑駿そっくりなのです。日本食レストランに行ったのですが、店員が全員、宮﨑駿本人と間違って、もう少しで撮影会になるところでした。そこまで顔は似ていないのですが、髭が決めてだったようです。周りが本当に宮﨑駿じゃないんだ、と言っても店員の方が信じてくれないのです。私は大笑いして見ていました。よく「この世に3人は自分そっくりの人がいる」といいますが、有名人に自分に似ている人がいると大変でしょうね。

「『遺言執行者になって欲しい。』どうする?」[1]

さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

 

遺言執行者とは?

遺言執行者と聞くとなんだか、重々しい感じがしますし、責任もかなりあるような印象を受けるかもしれませんね。カリフォルニア州では、遺言執行者をExecutorと呼びます。執行する人という意味ですね。ここでは、遺言執行者という日本語を使っていきたいと思います。

さて、遺言執行者というのは、簡単に言ってしまえば、遺言を残した故人になりかわって、残された財産を指示通りに分けるという役割を負う人をいいます。人は他界してしまえば、持っている財産について、幽霊にでもならない限り、どのように分配するのか指示は出せませんね。

したがって、生きている間に自分の財産について、死後どのように処分するのかを決めておくのが残された人たちのためにもなるので、遺言というものをつくります。また、アメリカでは生前信託(トラスト)という制度が一般的なので、遺言と平行して信託をつくります。

なぜ、残された人たちのためにも、遺言や信託をつくるかというと、よくお聞きになると思いますが、「遺産の骨肉の争い」などを避けるためです。10年かかって裁判で争うような場合もあるので、できるだけ、はっきり財産の処分について、生前に決めておくことが周りに迷惑をかけない重要事項でもあるわけです。

 

遺言執行者、誰がなれるのか?

遺言執行者というのは、遺言に沿って、残された財産を分けていく責任を負いますが、通常家族の誰かを指定するのが一般的です。夫婦であれば、相互に指定したり、子供が大きければ子供も指定できます。兄弟でも良いです。

ただ、遺言を書く人が生活をしている場所に近いところに住んでいる人の方がベターである側面もあります。不動産の売却が必要になるとか、貸金庫を整理するとか、かりに第三者に任せるとしても、コントロールが効くのは近くに住んでいる人の方なのだと思います。

もちろん、今回質問されている方のように、信用できる友人の方でも、執行者に指定できますし、弁護士銀行なども指定される場合があります。

 

遺言執行者の指定方法

この遺言執行者の指定というのは、遺言のなかに書くだけなので、通常は指定された人は、遺言が公になるまでに知らないことになります。

もちろん、口頭で、今回のように遺言執行者になってほしい、と頼まれることもありますが、法律で事前に執行人になる人の同意をとっておかなければならない、ということではないので、遺言の記載を見なければ執行人に誰が選任されるのかは、わかりません。

また、場合によっては、執行者に指定された人が、色々な理由で執行者になることを断る場合もあります。断られた場合には、裁判所を通して、適任な人が選任されることになります。

 

 

遺言については、信託との兼ね合いも含めて、何度も法律ノートで取り上げてきました。もちろん、最近法律ノートの読者になった方もいるわけですが、もし質問があれば、再度取り上げても良いと思いますので、質問をお待ちしております。

次回は、引き続き遺言執行者にフォーカスを当てて考えていきたいと思います。

春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。