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『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]





法律ノート 第1054回 弁護士 鈴木淳司
April 17, 2017

しかし、今年の天候は異常で、ベイエリアは雨が多いです。あれだけ騒いでいた干ばつ問題が解決したのは良いことではありますが。雨だけではなく、例年に比べて花粉もすごいように思います。今までカラカラになっていた植物が、水を得て活発に活動しているのでしょうか。皆さんは、花粉対策に何をされていますか。

 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]

さて、前々回から考えてきた質問を今回も考えていきましょう。
いただいている質問は「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

 

遺言執行者は遺言で指定

前々回考えたとおり、遺言執行者というのは、「ぼくの遺言の執行は君がなってくれ」と肩を叩かれるわけではなく、遺言に、執行者の名前を記載する方法を取ります。したがって、遺言の内容を見なければ、誰が執行者として指定されているのか、わからないわけです。

もちろん、遺言者も身内などには、遺言の内容を見せることもアメリカでは可能です。
したがって、執行者が誰になるのかは、事前に開示をすることはできます。
しかし、一般的に自分の遺言を見せて回る人はいないわけで、口頭で、「執行者に指名したよ」と伝えたりする程度になるのではないでしょうか。

また、遺言は、遺言者が一人で行う法律行為ですから、気が変わったらいつでも変更することができますので、いったん「執行者に指名したよ」と言われていても、蓋を開けてみたら、すなわち遺言を確認してみたら、別の執行者が設定されていたということもあるかもしれません。周りに、知り合いがいない場合もあります。その場合には、遺言の作成を頼む弁護士を執行者に指定する場合もあります。

 

遺言執行者、選任の流れ

さて、遺言執行者に選任されると、遺言者が生きている間には、何もすることはありません。遺言が発効するのは、遺言者が死亡したときですから、当たり前ではあります。

遺言者が死亡すると、信託が別途存在しない場合、相続財産の分配などの処理は、裁判所の手続きに乗せなければなりません。裁判所が財産管理をモニターしながら分配をしていくのです。この裁判所の手続きは、はやくても、6-9ヶ月かかります。この手続を避けるのも信託作成の一つのメリットと言われています。

あまり法律の手続きを難しく書いても、読者の方にとっては馴染みがないと思いますので、簡単に遺言者の死亡から、どのように遺言の内容が現実化していくのか、簡単に考えてみます。

 

遺言執行手続きの開始

まず、遺言を見つけた家族や、保管者が、その遺言を裁判所に提出します。その提出を受けて、裁判所が遺言執行の手続きをはじめます。裁判所が手続きを「はじめる」と言っても、関係者の請求に応じて判断をしていくことになりますので、自動的に裁判所が何かをやってくれると期待してはいけません。

次に、裁判所が遺言を確認すると、遺言執行者を遺言に沿って指定します。指定された人が拒否する場合などは、裁判所が遺言執行者を決めます。遺言執行者となった人は、裁判所から相続財産がどの程度あるのかを把握して、遺言に沿って、分配をするという役割を負います。

そして、その役割を負うことによって、法律で定められた報酬を得ることができます。

 

 

実際は弁護士との共同作業

ここで、遺言執行者となったとすると、法律にあまり詳しくない人が、いきなり裁判所に提出する書類を作成したり、審理に参加したりすることは難しいわけです。仕事を持っている人などは特にそうでしょう。

しかし、実際裁判所は遺言執行者にここまでの多岐にわたる業務を行うことを期待していません。ほとんどの場合には、遺言執行者となった人に弁護士がつくわけです。そして、その弁護士が実際の法律業務等必要なことをして、遺言執行者の代わりに業務を行うことになります。

次回、遺言執行者とその弁護士がどのような業務を行っていくのか具体的に考えていきましょう。

 

私の鼻と目がグズグズしていますが、みなさんも花粉に注意しながらまた一週間春を楽しんでいきましょうね。




 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[1]




 
法律ノート 第1052回 弁護士 鈴木淳司
April 4, 2017

先週、一緒に仕事をしている日本の弁護士とお客様と夜の食事会になりました。この弁護士は、熊さんみたいに髭を生やしている60代なのですが、風貌が宮﨑駿そっくりなのです。日本食レストランに行ったのですが、店員が全員、宮﨑駿本人と間違って、もう少しで撮影会になるところでした。そこまで顔は似ていないのですが、髭が決めてだったようです。周りが本当に宮﨑駿じゃないんだ、と言っても店員の方が信じてくれないのです。私は大笑いして見ていました。よく「この世に3人は自分そっくりの人がいる」といいますが、有名人に自分に似ている人がいると大変でしょうね。

「『遺言執行者になって欲しい。』どうする?」[1]

さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

 

遺言執行者とは?

遺言執行者と聞くとなんだか、重々しい感じがしますし、責任もかなりあるような印象を受けるかもしれませんね。カリフォルニア州では、遺言執行者をExecutorと呼びます。執行する人という意味ですね。ここでは、遺言執行者という日本語を使っていきたいと思います。

さて、遺言執行者というのは、簡単に言ってしまえば、遺言を残した故人になりかわって、残された財産を指示通りに分けるという役割を負う人をいいます。人は他界してしまえば、持っている財産について、幽霊にでもならない限り、どのように分配するのか指示は出せませんね。

したがって、生きている間に自分の財産について、死後どのように処分するのかを決めておくのが残された人たちのためにもなるので、遺言というものをつくります。また、アメリカでは生前信託(トラスト)という制度が一般的なので、遺言と平行して信託をつくります。

なぜ、残された人たちのためにも、遺言や信託をつくるかというと、よくお聞きになると思いますが、「遺産の骨肉の争い」などを避けるためです。10年かかって裁判で争うような場合もあるので、できるだけ、はっきり財産の処分について、生前に決めておくことが周りに迷惑をかけない重要事項でもあるわけです。

 

遺言執行者、誰がなれるのか?

遺言執行者というのは、遺言に沿って、残された財産を分けていく責任を負いますが、通常家族の誰かを指定するのが一般的です。夫婦であれば、相互に指定したり、子供が大きければ子供も指定できます。兄弟でも良いです。

ただ、遺言を書く人が生活をしている場所に近いところに住んでいる人の方がベターである側面もあります。不動産の売却が必要になるとか、貸金庫を整理するとか、かりに第三者に任せるとしても、コントロールが効くのは近くに住んでいる人の方なのだと思います。

もちろん、今回質問されている方のように、信用できる友人の方でも、執行者に指定できますし、弁護士銀行なども指定される場合があります。

 

遺言執行者の指定方法

この遺言執行者の指定というのは、遺言のなかに書くだけなので、通常は指定された人は、遺言が公になるまでに知らないことになります。

もちろん、口頭で、今回のように遺言執行者になってほしい、と頼まれることもありますが、法律で事前に執行人になる人の同意をとっておかなければならない、ということではないので、遺言の記載を見なければ執行人に誰が選任されるのかは、わかりません。

また、場合によっては、執行者に指定された人が、色々な理由で執行者になることを断る場合もあります。断られた場合には、裁判所を通して、適任な人が選任されることになります。

 

 

遺言については、信託との兼ね合いも含めて、何度も法律ノートで取り上げてきました。もちろん、最近法律ノートの読者になった方もいるわけですが、もし質問があれば、再度取り上げても良いと思いますので、質問をお待ちしております。

次回は、引き続き遺言執行者にフォーカスを当てて考えていきたいと思います。

春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。