警察」タグアーカイブ

アメリカでの警察への通報





法律ノート 第1047回 弁護士 鈴木淳司
February 28, 2017

「米国内で警察に通報する意味」

今回は、一回読者の皆さんからいただいている質問にお答えすることを一回休ませていただき、最近私が感じた警察行政に関するトピックを取り上げてみたいと思います。一般的に、警察行政が行う捜査のきっかけを「捜査の端緒」といいますが、端緒は色々な形があります。もちろん、飲酒運転などを警察官が現認することもあるでしょうし、様々な人が通報をすることもあります。匿名の投書などによる場合もあるでしょうし、報道機関の活躍に依る場合もあると思います。

ドメスティック・バイオレンスーDVーの場合

今回皆さんと考えたいのは、家庭内暴力(いわゆる、DV、ドメスティック・バイオレンス)についての端緒です。以下DVとしましょう。DVというのは、家庭内のいわば第三者の目の届かないところで行われることがほとんどですので、派手に大声を立てたり物が壊れていたりしない限り、なかなか第三者からの通報ということはないわけです。多くのDV事件においては、家のなかにいる人からの通報が端緒になります。

以前、かなりベイエリアから離れた土地で、同棲をはじめ、子供も生まれたカップルに関わったことがあります。男性のことはよく知っていましたが、女性について私は面識がありませんでした。二人が付き合いだしたあと、女性はかなり感情的で暴力的な人だということを、第三者から聞いていましたが、イザコザが絶えないという話もよく出ていました。

最近になって、何度か相談を受けていたのですが、喧嘩になると、女性はすぐに警察に通報し、男性が逮捕されてしまいます。子供もまだ小さいので、養育の問題なども争いの原因になっていたようですが、女性が通報し、男性側が否定している事実についても、裁判上証拠としてでてきたため、男性は有罪になりました。私は、その事件を担当していたわけではありませんが、納得がいかない部分を感じました。

その後、また争いが発生し、女性が警察に通報、そして再度男性は逮捕起訴され近々実刑になるかもしれません。

この事例のように、主に性格の不一致から、言い争いをするような事例でも、警察を呼ぶとかなり深刻な問題になります。大人であれば、話し合ってまずは子供の利益を最優先させてあげられないかと、思ってしまいます。

日本の警察でも対応に変化

日本では、警察を呼んでも、刑事事件化しないで、DV事件については、民事不介入ということが今までよく言われていました。ただ、家庭内暴力でも、ストーカー行為にしても、日本でも警察は敏感になっていて、様々な対応方法を試みているのが現実です。とにかく、何かが起こってからでは遅いということが前提にありますし、早めにトラブルには対応することが重要であるというのは、真理だと思います。

日本とアメリカ、DV通報の深刻度の違い

今回私が皆さんにも考えていただきたいのは、日本とアメリカにおける、DV通報の深刻度の違いです。文化の違いもあるとは思います。

日本のように、警察をよんで、まずは男女関係を仲介してもらおうと想定していると、アメリカでは、そのような想定は通用しないケースがほとんどであることを認識していただきたいのです。単に、「夫の興奮を鎮めてもらいたい」とか、女性側が感情的になって「警察を呼んでやる」という場合でも、警察が呼ばれると、DVの罪で逮捕・起訴につながります。

まずは、夫婦で話をして、話ができない場合には、すぐにでも、2人が別々の場所にいるように、どちらかが出ていくことが重要です。喧嘩をしている二人が一緒にいれば、エスカレートするのは目にみえています。

以前私が扱った事件で、夫が浮気をしていると疑っている妻が、感情的になって家の中の物を投げまくったあげく警察を呼んで夫が逮捕されてしまうというものもありました。はっきりいって、夫婦とも子供のようなものですが、後悔先に立たず、です。

パートナーは逮捕起訴、失職。ビザにも影響

日本人の夫婦のDV事件が発展すれば、職を失うなどだけではなく、ビザなどにも影響する大問題となります。感情は抜いて、まず夫婦の一方の行為に対して警察を呼ぶということを考える場合、アメリカでは「逮捕・起訴される」ということを覚悟のうえで、受話器を手にしてください。最近、この手の相談が多いので、周知のために、今回法律ノートにしてみました。

 

春らしい気候になってきました。やはり、カリフォルニアは晴れていないと何か足りない気分になってしまいますが、ようやく「止まない雨はない」ということで、天気を楽しめそうです。色々屋外のアクティビティの予定を考えながらまた一週間がんばっていきましょうね。




機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[2]

法律ノート 第1016回 弁護士 鈴木淳司
July 18, 2017




 

日本は「海の日」だそうで、三連休羨ましいものです。「ゆとり」を意識しているのかはしりませんが、この20年で、三連休がたくさんできているようですね。とはいっても東京都知事選もあるし、あわただしかったりもするのでしょうか。日本の皆さんが、のんびり過ごされると良いと思います。

 

機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[2]

 

さて、「先日、日本から出張でアメリカに行きました。帰り(日本行き)の飛行機のなかで、ワインをもらって飲んでいたのですが、疲れもあって酔ったようです。さらにワインを頼んでも、客室乗務員に出してもらえず、やむなく免税店で買ったウイスキーを開けて飲んでいました。そうすると客室乗務員と口論になり、ウイスキーを取り上げられただけではなく、最後には手錠のようなものをはめられ空港で警察に調書を取られました。現在日本では更なるトラブルになっていないのですが、今後問題になるのでしょうか。」という質問を前回から考えてきましたが、今回続けて考えていきたいと思います。

前回、今回のケースでは、アメリカの法律が主に適用されるシナリオだということを考えました。

 

航空乗務の妨害行為

アメリカでは、連邦の法律で、航空乗務をする人達の仕事を妨害する行為について、かなり厳しく明確な条文が用意されています。

航空機の乗務員の仕事を妨害する罪(49 U.S.C. 46504)として規定がありますが、乗務員に対して、暴行、脅迫などを既遂、未遂を問わず行った場合には、最高で20年間の禁錮となる刑となっています。かなり深刻な罪ということになっています。

この罪は、酔っ払っていた場合など、あとになって「あの時酔っていたのでよく覚えていません」と言っても許されないように規定されています。大体酔っぱらいが騒ぐことを前提にしていると考えられます(判例でいうと、United States v. Meeker, 527 F.2d 12 (9th Cir. 1975).などが挙げられます)。
六本木や新宿のキャバクラやクラブで騒いで問題を起こすレベルとはまったく次元の違う罪に問われることになるわけです。

 

乗務員の真の役割はフライトの安全確保

 

乗務員は、ただ単に飲食物を提供したりする役割ではなく、フライトを安全にするための一般的な重い役割を負っているとアメリカでは考えられています。これは一般論です。

日本でもアメリカでもかわりなく乗務員の教育は行われていますが、一般の人達が期待する役割としては、アメリカの方が、より「安全確保」ということに主眼が置かれている考え方をしている傾向にあると思います。

 

日本法の適用は微妙。しかし米法適用の可能性

 

今回の質問をされている方のケースでは、日本で警察に行ったとしても調書を取られておしまい、ということになるかもしれません。日本の法律の適用が微妙だからです。そうすると、今後日本の警察や検察が動くということはないかもしれません。

一方で、アメリカの航空会社のクルーの人達は、アメリカに帰属する航空機内で起こったことですので、上記の連邦法が適用される可能性が大きいので、現地の警察に「一応は」届出をすることにはなります。

私も以前似たような事案を担当したことがありますが、日本では何も罪に問われませんが、日本で取られた調書をもとに、アメリカの検察局に被害届を出す場合がほとんどです。航空会社のプロトコルでそのように決まっているようです。

そうすると、アメリカでは充分に罪になり得ますので、この事件はアメリカの検察局によって起訴相当かどうかが決まります。かりに起訴が決まった場合には、すぐに逮捕されるということはないとは思いますが、現在では連邦検察局と移民局が情報共有をかなりの範囲で行っていますので、次回アメリカに入国するときに、入国管理局に逮捕されて、裁判に移行していくということになりそうです。

今現在、日本国内にいらっしゃって問題になっていないかもしれませんが、次回、渡米されるまでに、一応アメリカで、起訴がされていないか、何か逮捕状が存在しないか、など、弁護士に相談するなりして確認する必要があると思います。

 

カリフォルニアは、まだまだ水不足が解消していませんが、火事に気をつけて、アウトドアを楽しんでいきましょう。夏の暑い日が続きますが、また一週間夏バテを気にしつつまた一週間がんばっていきましょうね。




 

 

機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[1]

法律ノート 第1015回 弁護士 鈴木淳司
July 12, 2016




 

 

一方で、警察官による暴行が問題になり、他方でスナイパーによる警察官の射殺など、銃による問題が露呈したアメリカの一週間でした。銃は怖いです。猟などで必要になる場合もあるでしょうが、マシンガンなどの自動小銃はどうみても生活にも職業上も不要だと思います。私が学生の頃、ある教授が刑法にいう正当防衛というのは、銃が一般人の生活に登場してから、発展した概念だ、ということをおっしゃっていました。今では警察官が一般人を撃つときにグレーなケースでも第一の理由付けになってしまったように思います。アメリカの影の部分でしょうか。

 

機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[1]

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

頂いている質問をまとめると、「先日、日本から出張でアメリカに行きました。帰り(日本行き)の飛行機のなかで、ワインをもらって飲んでいたのですが、疲れもあって酔ったようです。さらにワインを頼んでも、客室乗務員に出してもらえず、やむなく免税店で買ったウイスキーを開けて飲んでいました。そうすると客室乗務員と口論になり、ウイスキーを取り上げられただけではなく、最後には手錠のようなものをはめられ空港で警察に調書を取られました。現在日本では更なるトラブルになっていないのですが、今後問題になるのでしょうか。」というものです。

 

飛行機で飲酒することの意味合い

 

私も飛行機に乗ると必ずと言って良いほどお酒を呑みますが、たしなむ程度にしています。もちろんお酒を飲むことは悪いことではありませんが、人に迷惑をかける飲み方はかっこよくありません。

今回質問されている方も、あまり悪いとは思っていないようですが、客室乗務員の指示に従わないと場合によっては、刑事上の罪に問われる場合もあります。

質問をまとめたので、かなり割愛した部分はありますが、今回質問された方は最後に身柄を拘束されるまで結構派手にやられたようです。酒癖があまりよろしく無いのかもしれません。本人はあまり覚えていないようですが。

 

機内で適用されるのは日本法か米国法か

まず、今回の質問を考えるにおいて大事なのは、日本法と米国法の適用についてです。まず、飛行機がどこの国に登録されているのか、ということが問題になります。

日本法では、航空機が登録されている国が裁判管轄を持つ(刑法1条2項)と定められています。アメリカ国籍の飛行機であれば、米国連邦法が適用されることになります(49 U.S. Code § 46501)。これが基礎になります。

今回質問されている方は、アメリカの航空会社の飛行機に搭乗していて、問題が発生したようです。そうすると当然にアメリカ飛行機内で発生した問題なので、米国法が適用されます。日本の法律が適用されるかは微妙なケースとなるかもしれません。

もっともなんらかの被害を受けた人が日本人である場合には、日本の刑法でも何か問われる可能性はあります。このように、航空機がどこの国に登録されているのかで適用される法律も変わってきます。

 

飛行機がどこの領空を飛んでいるか

次に、飛行機がどこの土地を通っていたかも問題になります。

日本上空であれば、日本の法律や条例が適用されるかもしれませんし、実際に適用された事例もあります。アメリカでも、法律でアメリカの管轄内にある飛行機についてはアメリカ法の適用があります(49 U.S. Code § 46501 (2)(c))。

更に、アメリカの法律では、アメリカが到着地である場合は適用されるとなっています。

そうすると、日本の航空会社の飛行機でもアメリカが目的地の場合であれば、どこの土地を通っていたかということにかかわらず、アメリカ法の適用対象になってしまいます。

米国法は、かなり広い設定をしていることがわかります。

 

可能性としては米国法が適用される事例

今回質問されている方は、アメリカに登録されている航空機に乗っていたと思われますので、米国連邦法が適用となりそうです。日本に到着する前に、すでに身体を拘束されていたわけですので、日本法がすぐに適用されるかというと疑問です。

 

では、アメリカの法律が適用された場合を次回考えていきたいと思います。色々深刻な事件がアメリカではあった一週間ですが、また気分を入れ替えて一週間がんばっていきましょうね。