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管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[4]




 

法律ノート 第1078回 弁護士 鈴木淳司
Oct 11, 2017

月曜日はコロンバスデーというということで、私の所属する事務所は裁判所の休みに合わせているので、休みでした。私も三連休をいただき、かなり気分転換をしました。コロンバスデーというのは微妙な日で、金融機関や司法関係はおやすみですが、ビジネスは一般的に営業しています。そういえば、コロンバスは先住民を多数殺めたという歴史認識を持つ人達が、名称を先住民の日にするべきだとデモをしていました。どこかの国も歴史認識で争っていますが、情報網が発達した現代では、戦争だけではなく、歴史認識を基礎とする意見の対立が激化していきそうですね。ベイエリアは、ナパの大火事で煙ったいですが、みなさんは秋を楽しまれていますか。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[4]

 

さて、前回も引き続き、次のような質問です。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。

 この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。

私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

今回はその最終回となります。

 

仲裁の進み方ーイメージ柔軟なミニ裁判

今回は、仲裁はどのように進行していくのか考えましょう。

仲裁というのは、裁判と違って、どちらの当事者が強制的に参加させられるものではありませんお互いに同意があってはじめて成り立つ手続きであります。

今回の質問されている方は、契約書に仲裁を同意する一文が入っていることから、同意はしていると考えられるでしょう。

さて、仲裁というのは、手続き的には、ミニ裁判といった感じでしょうか。
いわゆる事実的な判断をする仲裁人というのがいます。この仲裁人も何人かいるなかから、両当事者の合意で選ばれます

元裁判官という場合もあれば、経験豊富な訴訟弁護士なども選ばれるでしょう。
ただ司法関係者である必要はまったくなく、医師や建築家もなることができます。また、一人の場合もありますし、3人の場合もあります。
基本的に、両当事者の合意があればどのようなアレンジメントも可能なのです。

仲裁人というのは、両当事者の話を聞いて、そのうえで、事実的な判断をする役割を負います。本来の裁判でいえば、陪審員や、裁判官みたいな立場です。

 

場所も選ばない

仲裁というのは、私的に合意をして行われる事実判断の場ですので、裁判所で行われるわけではなく、通常のオフィスなどで充分に対応が可能です。

 

証拠法の適用がない

また、この部分は決定的に裁判と違うのですが、証拠法の適用がありません

裁判で使われる「証拠」と呼ばれるものは、かなり複雑なプロセスを経てから、裁判に登場にします。何か情報があれば、即裁判上の「証拠」になるわけではありません。

仲裁はこの点フリースタイルですから、仲裁人の判断で、裁判で証拠にならないものも証拠にすることが可能になります

良い面と悪い面があると思いますが、フレキシブルに色々なことができるということは争いがありません。

たとえば、今回質問されている方も、わざわざ仲裁をするのにアメリカまで来るのは嫌だと思われていれば、代理人を立てて仲裁を行い、証言をビデオなど通して行う、という方法も異議がなければ可能です。ただ、直接証言するインパクトはないので実際、説得力は減殺される可能性はありますね。

 

以上で大まかですが、今回の質問を考えてみました。もし、何か疑問が読者の方にあれば、また追加で質問していただければと思います。

今年の夏は暑かったですが、今はずいぶん気持ち良い季節になりました。このまま秋が続けばいいのにな、と思います。私は風邪からすっかり回復して元気満タン状態です。みなさんも秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 




 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[3]




 

法律ノート 第1077回 弁護士 鈴木淳司
September 30, 2017

今、移民局を統括する国土安全保障省のトップが、政府などの飛行機を私用で使ったのではないかということがニュースになっています。本人は不正利用を否定しているようですが、一部返金するということを言っています。それで飛行機のチャーター代を返金するのかと思ったら、全額を一人分の運賃で割った金額ということで、少々せこいなぁ、と思っています。最近はよく日本でもアメリカも政治家のスキャンダルがメディアに露出していますね。政治家も大変です。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[3]

さて、前回まで考えてきた「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょうか。

 

紛争を解決するための手続き

前回まで、今回質問のあった紛争の実体的な内容について吟味してきました。今回は手続き的にどうなるのか考えていきたいと思います。

 

契約書の仲裁条項

まず、今回質問されている方は不動産の管理契約をカリフォルニアの会社と締結されているようです。

この契約書がカギとなるのですが、通常はこのような契約書を不動産業者側が出してきたとすれば、そのなかに強制仲裁条項が入っていることが少なくありません。もちろん、あまりにも不当な仲裁の内容であれば、争うことも考えられますが、最近の契約書では調停や仲裁事項について、かなり綿密に練られた条項が入っています。また、不動産関係では、業者を束ねたり、指導する政府や団体が多くありますが、モデル契約書というのを用意していることも多く、なかなか文面はしっかりしているものも多くあります。

数回前に考えましたが、仲裁をするというのは悪いことではありません。訴訟の様にお金も時間もかからないケースが多いです。

かりに、何も仲裁条項に関して違法な内容であったり、一方当事者にかなり不当でない限り、有効となりますので、この場合仲裁の対象となる内容については、仲裁をすることで解決をはかることになろうかと思います。

そして、仲裁条項には、通常、仲裁の方法や場所についても明記があります。

かりに場所がカリフォルニア州のどこどこ、と記載されていれば、その記載に沿って仲裁が行われることになります。もちろん、今回質問されている方のように、日本からわざわざカリフォルニアに来るのは大変かもしれませんが、契約書にそのように記載して、その契約書に同意していれば、基本的には、契約書に記載された形での仲裁を行わなければなりません。

 

仲裁条項は尊重した方が無難

仲裁条項というのは、もともと訴訟を回避するために、記載される条項ですから、契約の規定を無視して、今回質問されている方のように、いきなり訴訟提起をするということはお勧めできません。たぶん、訴訟を提起した場合、相手方は仲裁を促し、その立場に裁判所も同意することになると思います。そうすると、訴訟を提起しても労力の無駄であって元の木阿弥になる可能性が大きいです。

アメリカでは、契約書にサインをしてしまったら、その内容についてあとになってから文句を言うことはなかなかできません。日本では、「契約に書いてあるけどさぁ、でも…」という場面もあるかもしれませんが、アメリカでは契約書に沿って粛々と権利を行使し、義務を負うというイメージでしょうか。

ですので、今回質問されている方も、カリフォルニアで仲裁するのは気に入らないかもしれませんが、契約に記載されている以上、やはりその内容に沿って権利を実現していくのが妥当といえると思います。

 

仲裁はどのように進んでいくか

では、仲裁とはどのような形で進行していくのでしょうか。次回ここから考えていきたいと思います。

 

私は風邪をもらったのか、少々体調が優れなかったのですが、だいぶリカバリーしてきました。これから寒くなると、風邪が流行するので、みなさんも体調には気をつけてくださいね。
また、一週間、楽しいことを秋の中に見つけながらがんばっていきましょうね。



 


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訴訟をしない勇気 _1005

法律ノート 第1005回 弁護士 鈴木淳司
May 01, 2016




 

日本ではGW真っ盛りでしょうか。私も日本とのメールのやり取りが少なくて助かる季節ではあります。梅雨や夏に向けて日本の方々はリフレッシュされてください。

今回は、一回皆さんからいただいている質問にお答えするのは休ませていただき、ある嬉しい電話があったことについて書かせてください。

 

訴訟をしない勇気

法廷弁護士の仕事というのは、もちろん訴訟をすることです。私も20年間色々な訴訟に関わって経験値を上げてきたと思っています。

訴訟というのは、企業の事件であっても感情論になることがありますが、個人の事件であれば、それは感情が先行する場合も少なくありません。もちろん、不利益を被っているのであれば訴訟という制度が救済を受けるための最後の拠り所になることは疑義を挟む余地はないわけです。

しかし、訴訟をするということは、当事者にも弁護士にもかなりのエネルギーの消費をもたらします。労力だけではなく、時間もお金もかかる制度であります。

弁護士になるまでは、訴訟というのは、ここまで大変だとは思ったことがありませんでした。
教科書で法律を勉強したからといって理解できるものではありません。訴訟というのは、人と人とがぶつかり、そして人が判断する制度ですから、単純に判例を読んでいったからといって、同じような事件が同じように解決するわけでもありません。一つ一つの事件は違うし、登場人物も違うからです。

経験の浅い弁護士はすぐに訴訟を提起して解決しようとします。
当事者に乗せられているのかもしれませんし、自分のエゴもあるのかもしれません。事務所によっては、事務所の収入に目をつけて訴訟を提起するところもあります。

 

しかし、経験を積むに連れて、訴訟で物事を解決するということは人間の問題解決の一部でしかない、ということが良くわかってきました。訴訟というのは、人生における非常手段でしかありません。そして、その非常手段を選んでも、なお解決しない問題や、心の傷が癒えないという場合もあります。したがって、優れた法廷弁護というのは、訴訟を提起する前に事案に対して吟味に吟味を重ねるだけではなく、当事者である人や企業の利益を、短期的な訴訟の結果を予測するだけではなく、長い目で見てプラスになるかどうかを見極めることです。

これができるようになるには、様々な事例を見るだけではなく、様々な人生から、考え方を学び取っていかなければならないはずです。よく若い弁護士が、どうやったらクライアントに信頼される弁護士になれるか、と私に質問するのですが、質問の前提として弁護士というのは、法律論で優れているだけではなく、人を知ることでも優れている必要があることを説きます。

10年後にどうなっているのかをある程度予想しながら事件と付き合っていかなければならないのです。

 

さて、私が所属する事務所にいたアシスタントは、ある自営業を立ち上げるために、南カリフォルニアに夫婦で引っ越しました。事務所を辞めたあとでも仲良くしているため、時折連絡をくれたり、会ったりします。数年前に第一子を授かり、スクスクと育っているようでした。そして待望の第二子をみごもったということで、連絡をくれました。賑やかになるけど、大変だね、などと話をしていました。

ところが、この第二子の健康に何も問題はなかったのですが、胎児の状態で子宮内死産となりました。このタイミングが羊水検査の直後ということで、羊水検査に医療過誤があったのではないか、という話になったわけです。羊水検査に使用する針は太いですし、検査もセンシティブです。可能性として、医療過誤は疑われるわけです。その連絡を受けたときに、私も色々考えましたが、「もう一回元気な子供を授かるように夫婦でがんばりな」と言い、死産に関しての訴訟については「忘れろ」と言い添えました。

医療過誤を争い裁判は、かなり時間も費用もかかり、そして感情的にもすり減ります。また勝訴しても、子供は戻ってきません。訴訟というのは過去を反芻するものがほとんどなので、悲しい思い出を蒸し返すと家族の絆にも影響します。若い夫婦二人でがんばって自営業をやっているのですから、後ろ向きな訴訟に足を突っ込むよりは、前を向いて走っていく方が良いと私は考えていました。この夫婦も訴訟について話し合ったようですが、最終的に気持ちに折り合いをつけて訴訟提起は見送られました。

 

時が経ちました。
先週、思いがけなくこの元アシスタントから電話があり、元気な男の赤ちゃんが生まれたという報告がありました。子供が二人になり忙しく、親族も応援に来ていて賑やかにしているようでした。仕事も順調なようでした。私にとってもとにかく嬉しいニュースでした。子供の名前は「幸せを志してほしい」という願いから命名したそうです。
訴訟で勝つより、このようなニュースを聞いた方が私は嬉しいと思っているのです。