裁判」タグアーカイブ

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[2]_1111




May 31, 2018

今週、アメリカの大ヒットドラマの主演女優が、ソーシャルメディアへの人種差別的な書き込みで大問題になっていますね。その女優は自己の行動を薬のせいにしていましたが、製薬会社も対抗して、「人種差別的な行動はその薬の副作用とするデータはない」と反論していて苦笑いしてしまいました。良い年をして、見苦しい言い訳をしたり、他人のせいにすることを平気だと思う人が理解できないのですが。口は災いの元といいますが、現代ではSNSは災の元でしょうか。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[2]_1111

さて、前回考え始めた質問です。
「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」という質問を続けて考えていきましょう。

実は今回の質問を見て、私の友人弁護士も現在同じような事件を扱っていると、教えてくれました。 このような冷静にみると他人に迷惑をかける窃盗事件ですが、周りが見えなくなってストレス発散のために万引きに走ってしまうような事例は実際多いのかもしれません。

 

法上の3類型ー重罪・軽罪・微罪ーカリフォルニア州の場合

さて、窃盗犯はアメリカの一般的な犯罪の分類に従って、重罪(Felony)、軽罪(Misdemeanor)、そして微罪(Infraction)と3つのカテゴリーにまたがって成立し得るというところまで前回考えました。

この分類についてカリフォルニア州の刑法を考えてみましょう。

まず、損害の総額が950ドル以上か以下かが分岐点になります。
950ドルを超えない窃盗は、軽微窃盗(Petty Theft)と呼ばれ、950ドルを超える窃盗は加重窃盗(Grand Theft)と呼ばれます。

軽微窃盗については、初犯であれば、微罪になる可能性はありますが、犯罪被害が少額な場合に限られます(カリフォルニア州刑法第491条参照)。軽微窃盗といっても、再犯(2度以上、窃盗で起訴されるようなケース)であったり、行為の重大さによっては、軽罪にもなり得ます(カリフォルニア州刑法第487,488条参照)。

犯罪被害額が950ドルを超えると加重窃盗という罪(同487条参照)で起訴される可能性があります。加重窃盗は、初犯の場合最高で3年の禁固刑となり、重罪または軽罪として処断されます。微罪はありません。

今回質問されているケースでは、たぶん軽微窃盗犯として処断され、再犯でなければ、罰金と場合によっては保護観察処分で終了するようにも思えます。
ただ、移民関係への影響は次回以降考えます。

 

微罪と軽罪の違い、そして移民法上の取り扱い

ここで、微罪と軽罪の違いを考えておきましょう。

微罪というのは、基本的に罰金のみで終了する罪をいいます。
保護観察処分が付される場合もありますが、罰金のみです。そして、決定的に軽罪や重罪と違うのは、微罪であれば犯罪記録として残らないということです。

ただ、気をつけておきたいのは、州の犯罪歴に残らないということと、移民法などの行政関係で報告義務があるかどうか、というのは別問題であって、この点は次回詳しく考えたいと思います。

どの罪で起訴するかは検察官の裁量

上記で、犯罪被害額によって起訴される罪が変わってくるということを考えましたが、どの罪で起訴をするかどうかを決める権限は、検察官が持っています。

したがって、事例によって加重窃盗に該当しても、検察官の裁量で軽微窃盗として起訴されたりもします。かなり軽微な事例や被害に関する対応によっては、起訴が猶予されることも考えられます。

ですので、逮捕されたときから、早めに行動のはやい弁護士に相談されたほうがベターかもしれませんね。

本ケースの場合

今回質問されている方(その奥様)は、たぶん微罪になるようなケースだと思います。
ですので、罰金だけ支払えば、州政府の記録として罪としては残りません。
ただ、再犯の場合には、「前科」として考慮されることになります。

司法上と行政法上の取り扱いの違いにも注意

それから、行政の観点から見ると、たとえ、司法において微罪とされても、影響がでる場合があります。

典型的な例がスピード違反でしょうか。悪質なスピード違反でなければ、通常は微罪として処断され、罰金のみで事件は終了します。

一方で、行政の観点からは違っています。違反行為は記録としてしばらく残り、点数が増えると免許停止処分などが行われるので、行政の記録は残るのです。

移民法に関しても独自の考え方がありますので、次回考えていきましょう。

陽気が良くなってきましたが、まだ朝晩は冷え込みます。風邪に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付中
https://jinken.com/entry/

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい!
Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。

応募期間は例年10月のおよそ1か月。

もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。

 





 

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[1]_1110




May 20, 2018

私も数ヶ月なぜだか咳が止まらない状況が続き、医師と相談しながらやっと回復しましたが、日本でもアメリカでも、なんだかわからないけど、「咳が止まらない」という話を良く聞きます。陽気がよくなってきましたが、まだ、身体の不調の話は色々聞きます。世の中に住んでいる菌やウイルスがどんどん強くなっているようにも思います。読者の皆さんも気をつけてくださいね。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[1]_1110

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいた質問をまとめると次のような内容になります。

「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」というものです。

 

アメリカで万引き、移民法の影響も考える必要

万引き、いわゆる窃盗については以前も法律ノートで考えました。1000回以上皆さんからいただいている質問について考えていれば、いわば身近な犯罪についてはかなり考えてきていると思います。
ただ、現在は、移民法の影響も考えなければいけない状況にありますので、今一度考えても良い質問だと思っています。

 

万引き〜薬物使用と並んで多い犯罪の一つ

最近では、物品購入に関しても、インターネットによって行われることが多くなってきましたが、まだまだ量販店でのショッピングは根強いですね。特に日々使う食料や高価な物については、手にとって見なくては人間の心理として不安なこともあると思います。この心理についても、これからどんどん変わっていくのでしょうが。

よく、薬物はかなり一般の人たちも手を出しやすい犯罪であると言われています。
たしかに、薬物使用は自己に損害を与えるだけ、といった考えがあり、手軽に手を出してしまう人も多いと考えられています。

しかし、今回質問があるような万引きもかなり多い犯罪類型であることは間違いありません。

 

移民法上も深刻な影響がありうる

どのような小さな物でも、窃盗することは可能ですし、子どもから老人まで犯罪加害者になり得ます。
かなり身近といえば身近な万引き事例ですが、以下考えるように、ちょっとした犯罪だと思われがちである割に、移民法上の影響も含めて、深刻な結果を惹起する可能性があります

 

万引きの刑事法上の位置付け

まず、万引きについて刑事的な観点から考えていきたいと思います。

万引きというのは、一般的な言い方であって、窃盗(Theft)というのが法律的な言い方であります。日本では窃盗というのは包括的に刑法235条で規定されています。懲役から罰金まで量刑は用意されています。幅があるのです。

アメリカでは、各州によって窃盗が定められています
色々な定められ方があるのですが、被害の額、行為の方法(住居侵入かどうかなど)、など色々な要素を元に類型化されています。
実は日本でも、古い刑法では色々な窃盗の類型はあったのですが、現在は包括的な規定になっています。

 

刑法の3類型ー重罪・軽罪・微罪

さて、アメリカで類型化されているといいますが、まず、アメリカの刑法の基本である、重罪(Felony)、軽罪(Misdemeanor)および微罪(Infraction)という3類型に窃盗も分類されます。

重罪というのは、一般的に1年以上の禁錮が量刑で用意されている罪をいいます。
軽罪は1年以下の禁錮または罰金、微罪は罰金刑のみが用意されている罪をいいます。

一般的には、人の身体生命に関わるような罪については、重罪とされています。皆さんの身近にある軽罪としては、飲酒運転や薬物使用などがあります。

微罪の典型例はスピード違反などが考えられるでしょうか。この3段階の罪の設定が窃盗罪にも当てはまります。

 

次回続けて考えていきたいと思います。
夏に向かってスポーツも本格的に盛り上がってきましたね。身体を動かしながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 


▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付中
https://jinken.com/entry/

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい!
Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。

応募期間は例年10月のおよそ1か月。

もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。

 





 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[3]_1070

法律ノート 第1070回 弁護士 鈴木淳司
August 14, 2017




 

お盆休みを利用して日本からいらっしゃった御一行を観光にお連れしているのですが、サンフランシスコ市内の観光名所はどこにいっても、人が多くてびっくりしています。サンフランシスコは、最高気温が20度前後ですから、暑いところから来られている方たちには良い避暑地なのかもしれませんね。みなさんもたまには、サンフランシスコのクラムチャウダーはいかがでしょうか。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[3]_1070

 

さて、全二回考えてきた質問を続けて考えていきましょう。

「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」という質問です。

 

自主退職が受け入れられない場合

今回は、自主退職を促しても、従業員側が聞き入れない場合、どのように対応していく必要があるか考えましょう。

前回までは、法律や就業規則に触れる場合があるか慎重に検討する必要があるということを考えました。そこから今回考えます。

 

雇用契約の終了

まず、就業規則の他に、その従業員と会社の間で契約があるか確認する必要があります。契約が存在する場合には、期間が設定されていますので、たとえば、一年間の契約であれば、その一年間が終了するときには、理由なく契約を解除できます。その場合、非行があるかどうかにかかわらず、終了できますので、契約に従って通知をしたうえで、契約を一年間満了の時期に解除することは可能です。

このような解除であれば、理由がない契約解除なので、後に非行行為の有無に関して、法廷で争われることはありません。

 

即時解雇

次に、非行があったことを理由として即時解雇をする場合を考えます。

アメリカの企業では、内部で証拠を確認し、解雇の判断をすることが多くあります。外部の弁護士の意見を聞くことも多くあります。私もかなり多くの経験を積んでいるところではあります。

非行行為に対して、緩い対応をしていると、会社に在籍をしている人たちにも良い影響がありませんし、毅然とした態度を見せる必要もあります。そうすると、のちにいくらかの訴訟のリスクを考えても、即時解雇をすることも少なくありません。

もちろん、第一に雇用契約を確認し、契約に書かれた内容に沿って、解雇する必要があります。

 

即時解雇の注意点

即時解雇をする場合には、労働事件の訴訟の経験が豊富な法律の専門家に相談することがベストです。労働コンサルタント等では、最近の判例や訴訟の動向を押さえているか不安です。

解雇がなされた場合には、解雇された従業員も、色々な理由をつけて、不当解雇を訴えてくる可能性があります。場合によっては、訴訟を提起しないことを前提とする契約書を用意して、いくばくかお金を渡したうえで、訴訟を回避するためのアレンジメントをすることも可能な場合があります。

このような訴訟の可能性を緩和する契約書が締結できない場合には、専門家を含めて、訴訟のリスクを検討します。訴訟のリスクを考えるときに、具体的に、本論である、「使い込み」を証明できる程度の書類や証人の確保ができるかどうかは重要ですが、傍論で、ハラスメントや差別などの主張がなされる可能性があるか、考えた方が良いことになります。このように即時解雇の際にも、契約書を作成するなど、ある程度リスクの緩和をすることが可能かもしれません。

 

外部の意見を聞くことの重要性

しかし、無防備な状態で即時解雇をすることになると、職場の環境や、就労状況など、かなり多方面で準備をしなければなりませんので、専門家にしっかり相談されると良いと思います。ただ、今回のように、従業員に非行があったと思われ、かりに従業員がなんらかの理由で企業を訴えてきたとしても、企業側としても反訴を提起して、非行行為を公開の場で咎めることもできます。そうすると、企業側としても、堂々と対応する態度を持って対応しても良いと思いますが、とにかく、客観的に状況を専門家に判断してもらうことが良いと思います。

社内のみで話をしていると、場合によっては感情的なヒートアップもあるので、冷静な意見を具体的事例についてもらうことが大事だと思います。

 

 

また、次回新しくいただいている質問について考えていきたいと思います。夏休みも後半になってきましたが、仕事や勉強ばかりではなく悔いがないように夏を満喫されてくださいね。

また一週間暑さに負けずがんばっていきましょう。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[2]_1069

法律ノート 第1069回 弁護士 鈴木淳司
August 8. 2017




 

サンフランシスコ国際空港で、関西から来ている少年野球の御一行を見かけました。ベイエリアの姉妹都市交流の一つのようです。まだ、小学生のような感じでしたが、はじめてアメリカに来た子供達もいるでしょう。子供の頃から、このような国際交流をして、自国を離れスポーツで触れ合うというのは素晴らしいことですね。きっと一生の思い出になるのでしょう。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[2]

さて、前回から考えてきた「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」という質問を続けて考えていきたいと思います。

 

就業規則や法律違反がないか

前回をまとめると、まず事実関係を整理し、就業規則および法律に抵触する行為がないのかを確認するということが必要ということを考えました。

今回続けて、実際に質問されている具体的事例にどのように対応した方が良いのか、考えていきましょう。

 

具体的な対応_事情を聞き、記録を取る

まず、問題となっている本人からも事実の聴取をされているようですので、本人の言い分も必ず聞き、聞き取った内容は残しておくことが良いと思います。一刀両断に切り捨てるのは、よくありません。

本人が「使い込み」を否定しているのであれば、事実関係との齟齬についてちゃんと説明を受けるべきです。そのときに、聞き取りをするのは複数人いるほうが良いと思います。後日、聞き取り中に何か問題視される可能性がある場合、その主張を封じることができます。

このような社内での聞き取り段階で、従業員側が弁護士に相談し、弁護士をつけることもありえます。弁護士がついたということがわかった場合には、強引に聞き取りを続けるのではなく、会社側も速やかに弁護士に相談して、弁護士同士での話合いにする必要がでてきます。

 

具体的な対応_退職を促す

かりに、従業員が「使い込み」を否定していても、事実関係を精査して、使途不明金があるとすれば、実際に自己都合退職を促すこともできます。まずは、口頭で本人の意向を聞いてみることが良いかもしれません。

自己都合退職とするかわりに、法的責任は問わない、という交換条件も提示しても良いかもしれません。退職届(Resignation Letter)のみを受理して終わる場合もありますし、和解契約書的な書面を作成する場合もあります。

事例によって異なると思いますが、できればまず話合いを持つということが段取りとしては適切です。いきなり、解雇とすると、あとで訴訟になった場合、なぜ解雇をする前に、自己都合の退職を吟味しなかったのか問題にされる場合があります。会社側としても、具体的事例に即して吟味に吟味を重ねた、ということを明示できたほうが良いのです。

 

退社か解雇か

退職を促し、従業員本人も自分の意思で退職すると、会社側にとって訴訟のリスクを減らすことができます。すなわち、不当「解雇」ではなく、自己都合の退職なのですから、「解雇」にまつわる訴訟を回避することができるのです。もちろん、100%リスクを回避することは不可能かもしれません。たとえば、「無理やり退職に追い込まれた」などという主張は法律上可能だからです。

しかし、一般的に言って、自己都合で退職する場合には、「解雇」には該当しないので、訴訟リスクがグッと減るのです。

退職した場合に、会社側が気をつけなければならないのは、退職日までに未払賃金が残っている場合には、その賃金を退職日までに支払う義務など、残給与の精算です。これを怠ると、あとで課徴金を乗せられて請求される可能性はあります。

上記のように話合いが可能であれば、まず退職の可能性を探るのが両者によって良い選択肢であります。ただ、従業員側が頑なに、退職を固辞した場合には、会社としては解雇を考えなければなりません。

次回ここから考えていきたいと思います。

 

 

日本の政治もまた色々再編が進みそうな状況にあるようですが、周りの意見を聞くと、あまり期待は感じられませんでした。どの世界でも人材不足なのかもしれませんね。
まだまだ暑い夏ですが、体調管理に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[1]_1068

法律ノート 第1068回 弁護士 鈴木淳司
August 3, 2017



 

 

北朝鮮がミサイルを発射していますが、今まで日本海側だけではなく太平洋側にも落ちていますね。そうすると、現状確実に日本のどこにでも撃ち込めるミサイルを持っていることになります。今は、一発だけ撃っているような状況ですが、たとえば10発を一斉発射した場合、本当にすべて防衛はできるのでしょうか。本当に心配になります。皆さんは夏をどのようにお過ごしになっていますか。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめると「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」というものです。いただいている質問はかなり長かったのですが、一般的なお答えにするために内容をまとめました。

個別具体的な質問については、ちゃんと弁護士に相談されたほうが良いと思います。

 

事実の特定は慎重に、正確に

まず、事実はどのようなものかを把握することが必要です。

会計監査が行われたということですが、具体的にどのような資料がでてきたのか、専門家にも聞きながら整える必要があると思います。

できればクレジットカードの明細や、お金に関する資料の齟齬などは、書類で確認できるはずですので、事実関係の把握には必ず必要なものですので、用意しておきましょう。

それから事実関係で必要なものが、関係者の聞き取りです。対象となっている人だけではなく、その事実に関係している人たちから情報を聞き取っておくことが重要です。聴取されている人の了承を取ったうえで、ビデオや録音で内容を保存しておくことも良いと思います。

 

将来的な訴訟にそなえる

これらの事実の把握や情報の保管が重要なのは、将来的にかりに何らかの裁判になった場合、証拠になる可能性があるからです。また、調査の対象者などと、メールでやり取りをしている場合には、電子情報も必ず残しておく必要があります。

ただ、証拠とできる内容は法律で限られていますので、事実を把握する段階で、専門家に相談をすることは重要だと思います。

 

就業規則の内容を確認

次に重要なのは、会社の就業規則(Employee Manual)の内容をチェックすることです。

就業規則に書かれている手続に沿って処分を決めていかなければなりません。就業規則には通常、疑義ある行為の種類などが規定されています。

就業規則というのは、各会社のルールですから、法律と違った設定をしている場合もあります。また、就業規則は、就業開始時または規則導入時に各被用者に配布され、受領のサインをもらうという手続きを取るのが一般的です。ですので、内容は会社全体に周知されているということになっているのです。

 

今回、会社の調査の対象になっている人も、就業規則に関して受領のサインをしているのか、会社側で確認する必要があります。かりに、就業規則が整備されていない小規模の会社であれば、一般的に法律上犯罪行為を構成する内容かどうか、検討する必要があると思います。

 

就業規則違反と法律違反

就業規則に反する行為が、同時に法律に反する場合もあります。民事法に触れる場合もあれば、刑事法に触れる場合もあります。

民事法に触れる場合には、民事訴訟、たとえばお金を不正に使われているような場合には、不当利得返還請求訴訟を提起することができます。横領として刑事法に触れる場合には、警察に届けて刑事的な処罰を求めることも可能かもしれません。

ただ、現実的な問題として、民事訴訟をするには、弁護士や裁判の費用がかかりますし、使った費用を一個人から回復できるのか疑問の場合もあります。また、刑事的な届け出をしたからといって自動的に捜査をしてくれるかどうかわかりませんし、刑事事件沙汰にすることは躊躇する会社も多くあります。

実際に事実関係を考えたうえで判断していくしかなかろうと思います。

 

 

ここから次回考えていきたいと思います。私は体調がバテ気味なのですが、皆さんは気をつけてくださいね。充分に水分を補給しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

車載レコーダーの動画と対立する主張[2]

法律ノート 第1018回 弁護士 鈴木淳司
August 2, 2016



 
 

ファインディング・ニモの続編で、ファインディング・ドリーが劇場公開されています。冷静に新編をみると、ドリーが親を探すという構成なので、タイトルがおかしいのですが、人間はパターンにハマるとどうでもよいのでしょうね。

次は、ファインディング・ハンクになるのではないでしょうか。リアルなアニメーションは描写が事細かく素晴らしいのですが、一昔前のアニメとは違った楽しみなように思えます。矢吹丈の髪型が左分けなのか右分けなのか、といった問題は現代アニメでは起こりえないのでしょうか。

 

車載レコーダーの動画と対立する主張[2]

さて、前回から考えてきた質問を続けて考えていきましょう。

「半年ほど前、自宅近くの交差点で車同士の衝突事故に巻き込まれました。幸い、事故によって大きな怪我はなく、救急車を呼ぶには至りませんでした。事故のあと、保険会社とやり取りを続けているのですが、相手方は、私に過失があったと主張しています。私は反論を続けていますが、相手方の車には、車載レコーダーがついていて、その動画があるということで、反論しても争うのが難しいと言われています。私の車には家族が乗っていたので、事実をありのままに言って争っているのですが、車載レコーダーで記録された動画は実際に争うことが難しいのでしょうか。また、そのような車載レコーダーで撮影することはプライバシーの侵害になるのではないでしょうか」というものです。

 

車載レコーダーとの動画と証拠能力

前回、法律用語ですが、「証拠能力」が裁判で認められれば、録画された内容は事実を判断する際に使えるということを考えました。「証拠能力」というのは、裁判というバトルにおいて、主張をサポートする証拠として使えるかどうか、という問題です。

ちゃんと撮影された経緯が説明されているのか、裁判を歪める偏見がないのか、などの観点から判断されて、「証拠能力」があるのかどうかが決定されます。近時では、録画や録音は、それを撮った人達が撮影や録音過程について疑いを差し挟まない程度に法廷で証言すれば、証拠能力があるとされることが一般的になってきています。ここまで、前回考えました。

 

「証拠力」とは

今回は「証拠能力」ではなく、もう一つ「証拠力」という法律用語を考えていきます。

「証拠能力」というのは、証拠として使えるかどうかを判断することを言います。言ってしまえば、録画や録音が使えるか使えないか、白黒を判断するレベルを言います。

証拠として使えるとなると、次は「証拠力」が問題になります。この過程は日本でもアメリカでも同じです。

証拠力というのは、証拠としてどのくらい魅力があるのか、というコンテストを裁判において競うことを言います。民事事件では、日本では、基本的に裁判所が、アメリカでは陪審員が、対立する証拠の証拠力を吟味して、どの証拠が信用できるのかを判断します。この「証拠力」、つまり証拠として信用できるかどうかの魅力というのは、法律的な判断というよりも、常識や事実に基づく判断なのです。

ですので、法律を勉強していない人でも、どの証拠がより信用できるのかということを、実際に判断すれば良いということになります。裁判というのは、法律に基づき行われますが、とどのつまり事実があったかなかったかを判断するのは、一般常識なのです。

 

証拠として魅力的なものは何か

今回質問されている方は、録画されている事故の瞬間を映した録画映像と、事故に遭ったご家族の証言を対比されています。どちらが証拠として魅力的でしょうか。

もちろん事件によって違いはあるのかもしれませんが、主観を挟まない映像の方が、一般的には信用できると思われるのではないでしょうか。

そうすると、今回質問されている方のように、相手方のレコーダーに映像がくっきり映っているとすれば、かなり争うのが難しいということになろうかと思います。こちらのレコーダーを搭載しておいて、争えればそれはそれで、証拠力の闘いになるのかもしれませんが。

私も長い間弁護士をして、証人尋問を何度も、何度もしていますが、人の記憶など、かなり曖昧なものです。一昨日の朝飯について、何時にどこで、何を食べたか、なんてよくわからないこともかなりあるわけです。

ですので、近時、録画というのが逆に客観的な証拠として尊重されているという現状があります。

 

 

これで、今回の質問にお答えしたと思います。また、次回新しい質問を考えていきましょう。
まだ夏真っ盛りですが、暑さを楽しんでまた一週間がんばっていきましょう。




 

車載レコーダーの動画と対立する主張[1]




法律ノート 第1017回 弁護士 鈴木淳司
July 28, 2016

 

私の誕生日が週末に重なったのですが、1日タダ飯タダ酒をいただける幸運に恵まれました。朝から、コーヒーショップに行き、「これから誕生日のゴルフなんだよ」と言ったら、おねだりしたわけではありませんが、コーヒーをタダにしてもらえて、一日のスタートが良かったのでしょうか。昼ご飯も晩御飯もご馳走になってしまい、たらふく食べてたらふく飲みました。年に一度の一日中ハッピーアワーということでしょうか。良い気分転換になりましたが、皆さんはお元気ですか。

 

車載レコーダーの動画と対立する主張[1]

さて今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

質問の内容をまとめると「半年ほど前、自宅近くの交差点で車同士の衝突事故に巻き込まれました。幸い、事故によって大きな怪我はなく、救急車を呼ぶには至りませんでした。事故のあと、保険会社とやり取りを続けているのですが、相手方は、私に過失があったと主張しています。私は反論を続けていますが、相手方の車には、車載レコーダーがついていて、その動画があるということで、反論しても争うのが難しいと言われています。私の車には家族が乗っていたので、事実をありのままに言って争っているのですが、車載レコーダーで記録された動画は実際に争うことが難しいのでしょうか。また、そのような車載レコーダーで撮影することはプライバシーの侵害になるのではないでしょうか」という質問です。

 

一般化する車載レコーダーとプライバシー

最近ではかなりコンパクトな車載レコーダーが発売されていて、商用の例えばタクシーなどでなくても、かなりの車が搭載するようになっています。タクシーは、知らない人が乗り込んでくるので、事故対策だけではなく、車内の様子も撮影しているということになります。

車内については、運転手の安全と乗客のプライバシーという守るべき利益が対立しますが、一般的に、車内を撮影していることをステッカーなどで告知していれば、プライバシーの侵害とは言えないとされています。

 

一方で、車外を撮影している場合も、たとえば人の家の中を覗見するようなものではなく、あくまでも公の道路上を撮影しているのであれば、プライバシーの問題はありません。

今回質問されている方も、プライバシーの侵害だ、ということをおっしゃっていましたが、盗撮しているわけでもありませんし、公の場所を撮影しているだけだと考えられますので、プライバシー侵害を主張するのは難しいと思われます。

 

公の場とプライバシー侵害

ちなみに、ニューヨーク州では最近いわゆる、夏に女性が薄着であることを利用して、女性の下着を撮影する行為について、公の場所で行われていれば、犯罪にはならない、という裁判例が出されました。日本では、たとえば「条例」などによって規制されていますが、アメリカでは日本よりも、公の場(Public Forum)で行われた行為については、プライバシーが認められにくいという法律解釈の現状があります。

したがって、今回のように、交通事故や盗難を想定して設置されたレコーダーで撮影されたものがプライバシーの侵害に該当するとは言い難いです。

 

記録されたデータと証拠能力

さて、次に車載レコーダーで録画された動画や画像が、交通事故の責任問題を決するうえで、証拠となり得るかについて考えていきたいと思います。結論からいうと、証拠となり得るということになりますが、以下考えていきましょう。

録画や録音というのは、もともと証拠として使えるかという議論がなされてきました。証拠として使えるかどうか、ということを法律用語的に言うと「証拠能力があるか」と言います。

法律的に言うと、かなり難しいプロセスを通って証拠となりますが、現代では録画や録音を実際にした人が、どのように録画や録音をしたのかを証言し、その装置が信頼できるものであることを裁判所で認められれば、基本的に証拠能力はあるということになります。

もちろん、録画であれば、不自然なものであれば、偏見があるということで証拠能力を争うということも弁護士はよくやります。しかし、一般的に現在の録画はかなり信頼されているという傾向はあります。

したがって、今回質問されている方の事故においても、紛争が法廷に持ち込まれた場合には、証拠として採用される確率が高いということになります。

 

証言とデータの食い違いー評価はいかに?

では、質問されている方およびご家族が同乗されていた場合、これらの人の証言と、車載レコーダーの録画と相対するとき、どのように評価されていくのでしょうか。ここから次回考えていきましょう。

 

天気が良い日が続きます。暑くても外での時間を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。