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米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[2]

法律ノート 第1067回 弁護士 鈴木淳司
July 24, 2017




 

友人や縁ある方から勧められた「決意なき開戦」(堀田江理著)、大沼保昭や和田春樹著の慰安婦問題に関する本を読み、国際社会における日本のこの80年間程度の歩みを学んでいます。こういった近代史を読み解いていくと、色々な想いが湧いてきます。日本という国は、多様な政治思想がぶつかりあい、普通の人々がそれに巻き込まれてきたという切なさを感じています。一方で、いつの時代でも慈愛の心を持ち平和を願うバランスのとれた優れた思想を持った日本人が存在していることに感心しています。本は頭の肥やしですね。

 

米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[2]

さて、前回から考えてきた「私(男性)は米国永住権を持っている日本人ですが、日本から留学してきている彼女ができました。そこで、結婚をすることによって、彼女にも永住権を取ってあげられたらよいな、と思っています。永住権の申請はどの程度時間がかかり、どのような手続きをすれば良いのか教えてください」という質問について、続けて考えたいと思います。

 

配偶者永住権と「待ち時間」

前回は、配偶者の永住権申請をする際に、待ち時間が現在数年発生しているというところまで考えました。この「待ち時間」について今回考えます。

配偶者が今回質問されている方のように、外国籍(日本国籍)を持ち、ビザでアメリカに入国している場合、基本的に婚姻をしたからといってすぐに合法的にアメリカに滞在できるわけではありません。

 

別に米国の滞在資格が必要

永住権の許可がおりるまで、何らかの合法的な滞在資格(一般的には非移民型のビザ)を維持する必要があります。もちろん、日本に一旦戻り、永住権の申請を待つことはできます。米国に滞在し、永住権の申請を待つ場合には、米国に滞在する合法的な資格が必要となるのです。

今回の事例ですと、この「待ち時間」の間に、これから永住権を申請する配偶者が学生ビザを継続して維持していれば問題がありません。他にも就労ビザなどの維持をしていれば問題がないことになります。

 

具体的な事例

ここで、最近目にした事例をご紹介しておきたいと思います。

Aさんは、配偶者である永住権保持者のBさんのスポンサーで永住権を申請することになりました。永住権申請書を無事に提出し、「待ち時間」となりました。Aさんは、この「待ち時間」の間に、米国内で就労し、金銭を得ていました。ほそぼそとした自営業者です。税務申告を近年までしていませんでしたが、永住権申請が近づいてきたこともあり、税務申告を遡って行いました。

ところが、永住権の申請が終わって、やっと面接にこぎつけたときに、面接官から、税務申告について指摘を受けました。すなわち、永住権の申請の審査に、移民局は税務申告についても調査をしていることになります。

申請は却下とはなりませんでしたが、許可を得るためには、遡って申告をしたことにより発生した過去の税金を支払わなければ、永住権は認められない、という条件を付けられました。もちろん一括で税金を払え、ということではなく、国税局と分割の合意ができているということでも構わないという話にはなっていました。

 

税務申告と移民法上の審査

家族ベースの永住権申請については、税金の支払いうんぬんを聞くことは、完全な裁量になっていましたが、この事例では税務申告を許可の条件にされてしまったということになります。近時、移民関係の審査が厳しくなってきたので、このような事例がでてきているのでしょうが、これから永住権の申請をされる外国人の方は気をつけなければならないポイントです。

永住権申請の「待ち時間」において、学生ビザを維持しているだけであれば、税務申告のうんぬん、という問題は発生しないと思われます。しかし、一方で、何らかの収入を米国内で得ている申請者は、税務申告をする場合、ちゃんと税金も納めていることが許可の前提になります。

 

データベースが関連付けは密に

かなり政府内のデータベースが連動している時代になっていますから、移民関係の申請について、移民関係の書類の整備だけではなく、税金など他の政府関係の申請者の義務についても、しっかり書類を整備することが求められているということに注意してください。

 

 

次回からまた新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。暑い日が続きますが、健康に留意して水分を多く取りながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺[2]





法律ノート 第1030回 弁護士 鈴木淳司
October 25, 2016

ベイエリアも朝晩かなり涼しくなってきました。皆さんのお住いの地域はいかがでしょうか。秋野菜もずいぶんマーケットに出てきましたね。私はナスを焼いたりしていますが、先週の雨のおかげでかなりレタスが元気になってきました。サンマも食べる幸運に恵まれています。寒くなってきた季節に美味しい和食食材と温かい日本酒は本当に合うものです。みなさんも食べ過ぎ飲みすぎに注意されてください。

「米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺」[2]

さて、前回から考えてきた「北カリフォルニアに10年以上住む、永住権をもった家族です。先日、IRS(いわゆる米国国税法)から電話が入り、妻が税務申告について質問をされました。かなり相手方も情報を持っていることなどから、再度自宅に電話があったときに私(夫)が電話に出て、ソーシャルセキュリティーや、勤務先の情報を確認しました。そのときに、お金が還付されるということを言われたのですが、一向に還付されません。このようなケースは、詐欺のようなものなのでしょうか。それであれば、自己の情報に関して保護の心配があるのですが、大丈夫でしょうか。」という質問を再度考えていきたいと思います。

行政機関が電話で個人情報を聞き出すことはない

前回考えましたが、アメリカの行政機関がいきなり電話で個人情報を聞いてくることはあり得ません。もしかしたら、このような電話をしてくる輩は事前に何らかの情報を持った上で、さらに個人情報を聞き出そうとしているかもしれません。

電話に出たときに、相手方がある程度の個人情報をすでに持っているという事実について、怪しむべきで、信用するべきではないのです。かりに電話で、色々聞き出そうとしても、電話で一切情報を渡さず、必ず書面で質問を送るように言うべきです。
そのときに住所を聞かれたら、住所はそちらが知っているはずなので、電話では渡さないことをはっきり伝えることが重要です。

流出情報の回収は不可能、そこで

今回の質問のように、すでに情報を渡してしまった場合、その渡した情報を回収するのは簡単ではありません。これは現実として諦めるしかないと思います。そこで、渡した情報を不正に使われないようにモニターするしかないと思います。

まず、重要なのは可能であれば警察の調書を作ることです。警察に赴かなくても、現在ではインターネットで被害届をだせる警察もあります。連邦政府にも州の政府にも、消費者保護を司る行政機関があります。そのような団体に相談をすることも考えられます。
ただ、これらの行政機関に相談をしたとしても、何か積極的に保護をしてくれる、ということではないでしょう。

クレジットレポートを定期に監視

今までソーシャルセキュリティー番号などを不正に使用して行われる犯罪というのは、基本的にクレジットカードを不正につくられる、とか、ローンを不正に借りられてしまう、といったお金に関する話がほとんどです。

したがって、米国でいうクレジットレポートを定期的にモニターしていくのが、不正を発見するための効果的な方法です。

それでは、どのように不正や不正に関することをモニターしていくのかというと、クレジットレポートを発行する会社が大きなところで4社ほどあるのですが、そこのレポートを監視していくということになります。有料で、このようなクレジットモニタリングを提供する会社もあります。

身近な金融機関や保険会社も活用

一方で、金融機関や保険会社などでは無料でクレジットモニタリングのサービスを付帯サービスとして提供しているところもあります。結局、クレジットの情報を最終的に使用するのは、金融機関や保険会社ですので、これらの会社は情報収集を常時しているわけですし、顧客のクレジットを守ることもひいては自己防衛になります。

なので、取引のある金融機関や保険の代理店に、クレジットモニタリングをどこか無料で提供していないか、聞いてみると良いと思います。たとえ、一年間だけ無料だとしても、その一年間は情報をもらえるのですから、注意を払えるとは思います。私も利用していますが、週に一度、報告のメールをもらっています。

自分の情報には注意を払う

残念ながら、電話で知らない第三者に情報を渡してしまうと、その情報を手元に何もなかったように戻すということは難しいのが現状なので、悪用されないように気をつけていくということが現状では最善なのかもしれません。とにかく、自己の情報を第三者に渡すのは最小限度にしていきたいですね。

次回からまた新しい質問を考えていきたいと思います。ベイエリアでは、ハロウィンの飾りが増えてきました。もう10月も終わりですね。風が強い日もあるので、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。




米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺[1]





法律ノート 第1029回 弁護士 鈴木淳司
October 17, 2016

週末は金曜日から続く久しぶりの雨でした。ベイエリアにとっては恵みの雨でしたが、飛行機を使ってわざわざ私に会いに来てくださる予定だった方は、ベイエリアの濃霧が発生し、かなり大変だったようです。日本も随分涼しくなったようで、知り合いの弁護士は最高のゴルフ日和で忙しいと時機に後れたメールが届いていました。皆さんは秋を楽しまれていますか。

「米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺」[1]

さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると、「北カリフォルニアに10年以上住む、永住権をもった家族です。
先日、IRS(いわゆる米国国税法)から電話が入り、妻が税務申告について質問をされました。かなり相手方も情報を持っていることなどから、再度自宅に電話があったときに私(夫)が電話に出て、ソーシャルセキュリティーや、勤務先の情報を確認しました。そのときに、お金が還付されるということを言われたのですが、一向に還付されません。このようなケースは、詐欺のようなものなのでしょうか。それであれば、自己の情報に関して保護の心配があるのですが、大丈夫でしょうか。」というものです。

「政府機関からの要請」、心理状態は?

日本人にかぎらず多くの人は政府=お上、という考えがある程度あって、政府からの要請には応えてしまう、という傾向にあると思います。
私でも、もちろん政府から何か言われたら身構えてしまうかもしれませんが、一般的に生活をしている皆さんにとってみたら、連邦政府から連絡あったら、かなり不安になるでしょうし、対応しなければならないという義務感にも駆られてしまうかもしれません。

連邦政府が電話をかけてくるかどうか

まず、今回のような電話は、連邦政府から行われるということはありません。
連邦政府でも各省庁で電話による個人情報のやりとりは通達などで制限されているのが一般的ですし、基本的に書面主義を採っていますので、何か連絡や要請があれば、書面で行うということになります。

よく考えてみてください。
電話でのやり取りがたとえ録音されていたとしても、数年経ってから、どのようなやり取りがなされたのか、担当者が変わってしまってはなかなか正確に把握できませんね。電話でやり取りをしても、その内容をそもそも正確に残すということは難しいということもあると思います。やはり、書面でやり取りをすることで、後日内容に齟齬がないようにするというのが、基本です。弁護士も同様です。やはり、行政機関、司法とのやり取りについては、書類で残すというのが基本です。このことは、かなり重要なので、頭に入れておいてください。

代理書面は文書で提示

たとえば、私が弁護士として、会社や個人を代理するわけですが、司法関係や行政関係の団体に対して電話をかけて、「私は◯◯さん、◯◯株式会社を代理する弁護士です。」と言っても、ほぼ100%取り合ってもらえません。必ずといってよいほど、「あなたが、◯◯さん、◯◯株式会社を代理しているのかどうかを確認するために、代理書面を見せてください。」と言われます。それは、そうでしょうね。本当に弁護士だとしても、代理をしている事実があるのかどうかがわからないわけですから。

同じように、国税などの行政機関にしても、いきなり、電話をしてきて、「私が担当です、情報を共有してください。」と言ってきても、
(1)本当に国税なのか、そして国税だとしても
(2)本当に権限に基いて連絡してきているのか、
わからないわけです。

まず確認すべきこと

そうすると、皆さんが、いきなり行政機関から電話で情報をよこせ、と言われた場合には、必ず(1)本当に国税なのか、そして国税だとしても(2)本当に権限に基いて連絡してきているのか、を確認したうえでないと、情報は共有できないという態度をはっきりさせなければなりません。そのためには、やはり書類で、通知をもらってから応えます、という形にする必要がありますし、その通知を受け取って内容を確認しなければならないと思います。

 

次回、詳細に考えますが、アメリカ連邦政府が、細かい個人情報を電話で求めるということは、まずありません。今回質問されている方の例を挙げても、ほぼ間違いなく、質問者の個人情報を不法に取得しようとしていると思われます。日本でも、振り込め詐欺といった犯罪が横行していますが、類似している犯罪だと思います。

秋の雨で、ベイエリアも季節が変わっていくようです。皆さんのお住いの地域
はいかがでしょうか。夜お腹を出して寝ていると風邪をひく季節になりました。
服装にも注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。