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アメリカでの相続と管理人(3)_1128




法律ノート 第1128回 弁護士 鈴木淳司

アメリカでの相続と管理人(3)_1128
Sep 22, 2018

連邦最高裁判所の判事候補の議会による承認手続が揉めています。判事候補は、「司法官の選任に政治が絡んではいけない」ということを議会で証言していましたが、判事の選任というのは、政治行為そのものだと思うのですが。実際に、判事候補の高校生活を巡って女性が被害を公に訴えて揉めていますが、現最高裁判事のトーマス判事の承認手続でも女性が被害を訴えましたが、ほぼ一蹴された形になりました。そのときに比べて、今では女性の上院議員も増えてきていますので、時代は変わったと思いますが、結果はいかに、というところでしょうか。しかし、アメリカ大統領が名指しで訴えでた女性を非難するなんて、陳腐としか言いようがありません。

さて、前二回から続けて、以下の質問を考えていきましょう。
「私達家族は、カリフォルニア州に家を持ち、子供を育ててきました。子供たちも巣立ち、現在夫婦で暮らしています。数年前、隣人夫妻の夫が亡くなり、高齢の奥さん一人になりました。家族ぐるみで仲良くしていた夫妻です。最近になって、この奥さんから、遺言やトラストを書き換えているが、亡くなったときの管理人になってもらえないかと言われ、奥さんの弁護士とも話をしました。よく、内容が理解できなかったのですが、経済的な負担はない、ということで承諾しましたが、現状でも、どのような責任が発生するのか、不安ではあります。この管理人というのはどういうものなのか、教えてください」

 

財産管理人の役割

前回まででどのように、管理人が指定されていくのか概ね考えてきたと思います。
ここから実際にはどのような役割を負うことになるのか、考えたいと思います。

ここでは、まず、裁判所を通さなければならない遺言において、管理人が指定された場合、または裁判所から指定された場合を考えます。トラストはあまり、管理することはないのですが、遺言の場合には、やることが多いのでこちらを先に片付けておきましょう。

 

遺言に基づく管理人(Administrator)

まず、遺言に基づく管理人(Administrator)は、裁判所の管理下においてやることをやった場合には、その仕事に対する報酬をもらえることになります。その報酬については法律で決められていて、裁判所の許可が必要になりますが、基本的にすべての仕事が終わった時点で、報酬をもらえます。報酬は、全体で相続財産がどの程度の規模か、で判断されます。

また、通常は、相続財産管理人に指定された人が、自分自身で行うのが困難な場合には、弁護士に依頼をして、すべての業務を代理してもらうことも可能です。

 

管理人の業務内容

さて、管理人はどのような財産の管理をしなければならないのでしょうか。まず大きくわけて3つの分野があります。驚くようなことはありません。

簡単にいうと、
(1)財産にどのようなものがあるのか、整理すること
(2)貸し借りが存在する場合には、支払いを受けたり、したりして整理すること
(3)税金関係を整理すること
の3つです。

つまり、生きていればだれでもやっていることを人のためにするという程度であり、特殊なことをやる必要は基本的にありません。少々、詳しく考えていきましょう。

 

財産の整理

まず、財産の整理ですが、一番の手がかりは遺言そのものです。

遺言に、財産の具体的な記載があれば、その財産が本当に本人のものか確認します。不動産や銀行口座、証券の口座などはある程度簡単にわかりますね。

その他にも貸し金庫の中身を確認するというのもある程度実働はいりますが、わかりやすいところです。

さらに、動産がどのようなものがあるのか確認しなければなりません。ここが少々厄介なところです。もちろんお皿一枚まで数えろ、ということではありませんが、ある程度価値があるものについては、リストを作成しなければなりません。

 

財産リストの作成とTax ID

なお、相続財産の管理人が自分でリストを作成しなくても、専門の業者なども存在します。

リストを作るだけではなく、裁判所に提出するときに「評価書(Appraisal)」が必要になります。この評価書は、特定のフォームを利用することになります。

この財産の整理の過程で、(1)「相続財産」を名義として(主体として)、連邦税番号(Tax ID)を取ることが必要になります。最後に相続税を申告しなければならないからです。

次に(2)管理をしている人は、善良に財産を管理する人であることを政府に告げるフォーム(Notice of Fiduciary Relationship)というのを国税に対して提出しなければなりません。

第三に不動産がある場合には、不動産を管理する郡に対して通知をする必要がでてきますし、書類もいくつか提出しなければなりません。

次回続けていきましょう。秋分の日ですか。もうこれでオフィシャルに秋ですね。これから陽が短くなっていくわけですが、体調に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。

 


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『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[3]




 

法律ノート 第1055回 弁護士 鈴木淳司
April 25, 2017

やっと雨が降り止んで、晴れの日が一週間は続く、というラジオのニュースを聞いて、チャンスだと思って、洗車をしましたが、翌日雨が降りました。昔から、私が洗車をすると雨が降るという運命を持っているようなのですが、今回もまたやられました。干ばつで困っている地域の方は今度私を呼んでください。洗車しにいきますので。皆さんは週末いかがお過ごしでしたか。

 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[3]

さて、前二回、「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」という質問を考えてきました。

今回も続けて考えていきましょう。

 

選任後の手続き

今回は、遺言執行者に選任された場合に、どのように実際の手続きがながれていくのか、みなさんと一緒に考えていきましょう。

前回、遺言執行者に選任されたとしても、いきなり大きな仕事を引き受けるということには実際にならず、通常は、弁護士に委任をして、裁判関係の手続きを代理してもらうという流れになります。弁護士が出廷すれば遺言執行者はほぼ裁判所に行く必要はありません。報告だけはちゃんと受けている必要はありますけれども。

 

遺言執行者の具体的な役割ー財産の確定と分配ー

さて、では遺言執行者として、具体的に何をするかというと、内容は遺言に書いてあります相続財産がどのくらいあるのか確定して、遺言に書かれた相続人に対して分配をしていくということになるのです。つまり、どの程度の財産があるのか全体像を調べて、そのうえで、割合などに応じて分配をすることが仕事になるということです。

まず、財産がどの程度あるかを調べなければいけませんが、通常は遺言にかかれています。
しかし、人間は生きているうちに、銀行口座を変えたり、家を買ったり売ったりするなど、変化が生じます。ですので、遺言を作成した人がどのような財産を持っているのか、手持ちの資料や、情報の調査をして全体像を明らかにします。

具体的に、どのような書類があるのか探したり、郵便の内容を確認したり、遺言執行者がしなければならない仕事になるかもしれません。家族や友人にどのような財産があるのかを聞いたりしなければならないでしょう。また、家が残されていれば、その家の管理をしなければならないですし、動産があればその動産の管理もしなければなりません。車や宝石などが主な動産でしょうか。

 

遺言者に代わって財産処分する権限

これらの動産や不動産を売却して換価することも一つの遺言執行者の仕事になります。もちろん代理している弁護士がどの程度深く関わってくれるのかにもよりますが、不動産の価値を把握したり、色々な業者に連絡するといった業務もあるわけです。

このような業務を行うについて、遺言執行者は、他界した遺言者の代わりになって行うのですが、裁判所から、遺言執行者にその権限を与える書類をもらえるので、問題なく遂行できるのです。金融機関にある口座などにしても、権限があるので、内容を確認することができます。

 

かかる費用は相続財産から拠出

以上のような業務を行うにあたって、コストが発生します。家や動産の維持、財産の評価など、様々な費用がかかることになります。これらのコストは遺言執行者が捻出するわけではなく、通常相続財産から支払われることになります。

 

相続財産の分配、裁判所の見守り

全体的な相続財産が把握できると、今度は相続人の人たちにどのように分配するかを考えていきます。

この財産の分配が多くの相続関係の紛争になり得るのですが、とにかく遺言に沿って分配がなされます。遺言執行者は、相続される財産が、相続人に渡ることを確認しなければなりませんし、いったん財産が遺言通り分配されれば、そこで役割は終了することになります。

裁判所は、財産が遺言通り分配されたことを見届けて、遺言執行者に法律で決められた金銭的な費用を支払うことで、相続手続きが終了することになります。

 

遺言執行者を選ぶときは慎重に

以上が遺言執行者の役割ですが、それなりに仕事をしなければなりません。それに、そもそもある程度どのような財産があるのかなどプライベートのことを知っている人の方が適任ということも言えると思います。

遺言執行者を指定するときも、以上の流れを考えて、誰にするかを決めてくださいね。

 

次回、新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
北朝鮮の情勢に不安を感じますが、平和な世の中を願ってまた一週間がんばっていきましょうね。




 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]





法律ノート 第1054回 弁護士 鈴木淳司
April 17, 2017

しかし、今年の天候は異常で、ベイエリアは雨が多いです。あれだけ騒いでいた干ばつ問題が解決したのは良いことではありますが。雨だけではなく、例年に比べて花粉もすごいように思います。今までカラカラになっていた植物が、水を得て活発に活動しているのでしょうか。皆さんは、花粉対策に何をされていますか。

 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]

さて、前々回から考えてきた質問を今回も考えていきましょう。
いただいている質問は「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

 

遺言執行者は遺言で指定

前々回考えたとおり、遺言執行者というのは、「ぼくの遺言の執行は君がなってくれ」と肩を叩かれるわけではなく、遺言に、執行者の名前を記載する方法を取ります。したがって、遺言の内容を見なければ、誰が執行者として指定されているのか、わからないわけです。

もちろん、遺言者も身内などには、遺言の内容を見せることもアメリカでは可能です。
したがって、執行者が誰になるのかは、事前に開示をすることはできます。
しかし、一般的に自分の遺言を見せて回る人はいないわけで、口頭で、「執行者に指名したよ」と伝えたりする程度になるのではないでしょうか。

また、遺言は、遺言者が一人で行う法律行為ですから、気が変わったらいつでも変更することができますので、いったん「執行者に指名したよ」と言われていても、蓋を開けてみたら、すなわち遺言を確認してみたら、別の執行者が設定されていたということもあるかもしれません。周りに、知り合いがいない場合もあります。その場合には、遺言の作成を頼む弁護士を執行者に指定する場合もあります。

 

遺言執行者、選任の流れ

さて、遺言執行者に選任されると、遺言者が生きている間には、何もすることはありません。遺言が発効するのは、遺言者が死亡したときですから、当たり前ではあります。

遺言者が死亡すると、信託が別途存在しない場合、相続財産の分配などの処理は、裁判所の手続きに乗せなければなりません。裁判所が財産管理をモニターしながら分配をしていくのです。この裁判所の手続きは、はやくても、6-9ヶ月かかります。この手続を避けるのも信託作成の一つのメリットと言われています。

あまり法律の手続きを難しく書いても、読者の方にとっては馴染みがないと思いますので、簡単に遺言者の死亡から、どのように遺言の内容が現実化していくのか、簡単に考えてみます。

 

遺言執行手続きの開始

まず、遺言を見つけた家族や、保管者が、その遺言を裁判所に提出します。その提出を受けて、裁判所が遺言執行の手続きをはじめます。裁判所が手続きを「はじめる」と言っても、関係者の請求に応じて判断をしていくことになりますので、自動的に裁判所が何かをやってくれると期待してはいけません。

次に、裁判所が遺言を確認すると、遺言執行者を遺言に沿って指定します。指定された人が拒否する場合などは、裁判所が遺言執行者を決めます。遺言執行者となった人は、裁判所から相続財産がどの程度あるのかを把握して、遺言に沿って、分配をするという役割を負います。

そして、その役割を負うことによって、法律で定められた報酬を得ることができます。

 

 

実際は弁護士との共同作業

ここで、遺言執行者となったとすると、法律にあまり詳しくない人が、いきなり裁判所に提出する書類を作成したり、審理に参加したりすることは難しいわけです。仕事を持っている人などは特にそうでしょう。

しかし、実際裁判所は遺言執行者にここまでの多岐にわたる業務を行うことを期待していません。ほとんどの場合には、遺言執行者となった人に弁護士がつくわけです。そして、その弁護士が実際の法律業務等必要なことをして、遺言執行者の代わりに業務を行うことになります。

次回、遺言執行者とその弁護士がどのような業務を行っていくのか具体的に考えていきましょう。

 

私の鼻と目がグズグズしていますが、みなさんも花粉に注意しながらまた一週間春を楽しんでいきましょうね。