専門職」タグアーカイブ

H-1B専門職ビザ申請、大統領令の影響




H-1B専門職ビザ申請、大統領令の影響
Nov 28, 2017

2017年4月18日発効の大統領令

2017年4月18日、トランプ大統領は大統領令に署名し発効しました。
Buy American and Hire American」と呼ばれる題目がついていますが、選挙中声高に連呼していた「America First」を実行したものであると位置づけられています。

このなかに、米国人の雇用を何よりも優先するように各行政機関に義務付けている一般的な項目もあるのですが、第5条に、米国市民の雇用を促進するために、移民のシステムを見直すと書かれています。
そのなかで、特にH-1Bビザについては明記されていて、H-1Bビザは、(英語の解釈が曖昧なのですが)最上級のスキルを持つか、一番高額な給与を受ける外国人に優先的に与えるように指示されています。そして、この優先目的を達するために、過去の行政規則等を変更するように指示しています。

 

H-1Bビザーアメリカでの就労のかなめ

この大統領令の影響がH-1Bビザ申請に出始めています。移民実務にかなり深刻な影響がでています。まず、この大統領令によって、どのような影響がでているのか、そのバックグラウンドを考えてみます。

H-1Bビザというのはいわゆる専門的な職種に与えられるビザであり、大学または大学院などで勉強した内容を踏まえる職種を念頭に置いています。
したがって、外国人留学生が卒業して、就職するというときに使われるパターンも多くあります。近時、ソフトウェアエンジニアの確保のため、外国人をH-1Bビザで呼び寄せるというパターンも多く、アメリカ国内の雇用に影響するとして、毎年発給数の制限がなされています。

上述した大統領令のなかに、「最上級のスキルまたは高額な給与」ということが書かれていますが、これは、ある程度簡単にスキルがつけられる分野であればアメリカ人を優先し、安い賃金で外国人を連れてくるならアメリカ人を優先しろ、という思いを裏から言ったものです。

 

労働局の許可と賃金レベル

たしかに、外国人を専門的な職につけることを広く許してしまうと、アメリカ人の雇用を奪う可能性はあります。

そこで、移民法はすでにH-1Bビザの申請をする前置として、一般のアメリカ人の平均給与以上がその外国人に支払われるという労働局からの許可を求めていたのです。不当に安い賃金で外国人を雇用しないことで、外国人の利益も守り、アメリカ人の平均賃金も守るという意味合いがあります。

ここでは詳しく述べませんが、この労働局の許可を得るために、申請者の賃金レベルというのが5段階に設定されています。
レベルは経験によって違いがあり、レベル1はエントリーレベル、でレベル5は熟練した経験を持つレベルなどに区分けされています。

 

Request For Evidence – RFE

今回、大統領令で煽りを受けたのが、この労働許可でレベル1の許可を受けた申請者の方たちです。
H-1Bビザは抽選にさらされていたのですが、今年度の申請分についてやっとH-1Bビザを申請できても、今度は移民局が、さらにビザ許可に適格かどうかの証拠提出要請(Request for Evidence、略称RFE)を出すようになりました。RFEというのは、申請書類ではわからない部分があるので、もっと証拠を出せ、という要請です。

この手続がやっかいで、時間も労力もかかります。
もちろん、正当な内容のRFEもあるのですが、この大統領令以来、今までになかったタイプのRFEが続出しています。そして、H-1Bビザにおけるレベル1の労働許可については、かなりの数のRFEが出されていると移民法協会も記事にしています。

移民法協会の統計(弁護士が協会と情報をシェアする範囲だと思われます)によると、(1)申請書に記載されているレベル1とされている職種はレベル1よりも高度なものであり、給与が低すぎる点、説明せよ、というものと、(2)申請書に記載されているレベル1の職種は専門職とはみなされず大学の学位が不要である点説明せよ、という2つの要請が多く出ているということです。

 

H-1Bにいう「専門職」にも変化の兆し

今まで、移民法業務では、ある程度「専門職」とはなにかを示す指針があったにもかかわらず、それらの指針とは乖離して、許可を渋る傾向にあります。

たとえば、2000年に出された指針では、IT関係は専門職とされていましたが、これも今年から崩れつつあります。

現在では、移民法協会も実務を行っている弁護士も対策を練っている段階ですし、固まった指針も示されていません。しかし、移民局は大統領令を受けて、今までなかった保護的な指針でビザ申請を審査していることは間違いありません。

 

移民で構成されてきたこのアメリカも、現在では移民の締め出しをする方向で移民法実務も動いているように感じます。今後さらに締め付けが厳しくなる分野であろうと思われます。




H-1Bビザ申請(2018年度申請分)




 

2018年度の申請状況

また、今年も、H-1Bビザ申請が話題になる時期になりました。

2018年10月から、就労許可となる、H-1Bビザの申請が、2017年4月3日から始まります。この原稿を書いている日から、申請がはじまるので、まだ、どの程度の申請書が集まるのかわかりませんが、合計8万5千件の新規申請(2万件は、米国で修士以上を持つ外国人に発給)分を超えた場合には、4月7日で受付が終了し、抽選により、申請が進むかどうかが決められます。

毎年この時期のブログはH-1Bビザの話題を考えますが、今年も例年と同じように、ビザの抽選が行われていくことになりそうです。H-1Bビザとは、大学卒業程度の能力・経験を備えた外国人が専門職に就くためのビザで、近年ではIT関係者が多くを占め、約70%のビザ許可を受けた外国人はインド国籍です。日本人でも許可を受けることができます。

 

新政権発足と変更点

H-1Bビザの申請骨子については、例年と変わらないのですが、新政権になって、いくつか変化が見られていますので、この点を今回のブログでは確認していきたいと思います。

 

プレミアムプロセッシングの適用停止

まず、今年度の申請から、プレミアムプロセッシングがH-1Bビザ申請と同時に行うことができなくなりました。

プレミアムプロセッシングというのは、審査の期間的な優遇措置を受けるかわりに、料金を支払うという制度です。下品な言い方をすれば、金を払って、審査期間の短縮を買うという制度です。全体的に審査期間の短縮を図るのが常識だと思いますので、ある意味歪んだ制度ではあります。

このプレミアムプロセッシングの適用がH-1Bビザでは停止されました。プレミアムプロセッシングを併せて申請すると、元のH-1Bビザの申請も不受理となるので、申請をする方は注意が必要です。

このプレミアムプロセッシングの適用を停止するという行政の方針は、H-1Bビザの申請内容を、一部優先するのではなく、一つひとつ、厳しく吟味していこうという新政権の方針を表しているように感じます。

昨年は、50%以上の申請がプレミアムプロセッシングでした。金銭的な米国の歳入は減ることになります。

 

「アメリカ・ファースト」とビザ審査の厳格化

H-1Bビザは専門職の外国人に与えられます。現政権は、「アメリカ・ファースト」を政策に掲げていますので、H-1Bビザの審査を厳格にしていくことは間違いありません

私がこの原稿を書いている今日、2017年4月3日に移民局は、新たなH-1Bビザ審査に関する指針について、発表しています。その記事のタイトルも「Putting American Workers First」としていて、現政権の考えを明らかにしています。そして、H-1Bビザの濫用について、厳しく取り締まるということを明らかにしています。

 

H-1Bビザの濫用の現実ー不当労働ー

前提として、H-1Bビザが濫用されていると言われる事例がいくつか、今までにもニュースになっています。

たとえば、賃金の安い地域にある会社を利用して、安い賃金でH-1Bビザを申請し、外国人を雇い入れる。そして、その外国人を主に、シリコンバレーなどのIT関係の会社で働かせ、賃金の操作をしているという事例がありました。

要は、不当に安い賃金で外国人を働かせて、米国人の仕事を奪うことにH-1Bビザが利用されているという内容だったのです。

 

スポンサー企業の実態調査

そこで、今年度から、スポンサーとなる会社に実態があるのか、そして、外国人はその会社でちゃんと働いているのか、などを実際に移民局の捜査官を派遣して確認を取るということを厳しく行っていくという発表をしています。
特に、H-1Bビザを多くスポンサーしている会社にはフォーカスを当てていくということを明言しています。

この方針は、特にH-1Bの発給を受けている外国人をターゲットにしているわけではなく、H-1Bビザを濫用している会社をターゲットにしています。
すなわち、安い賃金でH-1Bビザを持つ外国人を雇うことで、アメリカ人の雇用を奪っている、という立て付けで、会社に対して制裁を加え、米国人の雇用を増やそうということが目的なのです。

また、このようなH-1Bビザの濫用をしていると思われる会社の密告を受けつけて、大いに利用しようと考えていると思われます。

とにかく、H-1Bビザをスポンサーすることを考えている企業においても、立ち入り調査が入ったときの対策をきちんと専門家と話し合って行った方が良いと思います。

また次回新しいトピックを考えていきたいと思います。