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委任状の法的意味合い[2]




 

法律ノート 第1049回 弁護士 鈴木淳司
March 12, 2017
 

トランプ大統領は「マスコミは嘘ばかりだ」ということを言っていますが、私も最近憂慮する経験をしました。私が担当している事件なのですが、被疑者は黙秘をしているのに、ニュースでは、「◯◯を認めている」と平気で書いてあるのです。マスコミにいる友人に聞いたら、警察の発表をそのまま記事にしているらしいのです。ニュースなどを簡単に鵜呑みにするのは良くないな、とつくづく思いました。
 

委任状の法的意味合い[2] 

さて、前回から「私ども夫婦は、日本国籍を持ち、永住権許可のもとアメリカに長年滞在していましたが、年齢も考慮して、夫婦で日本に戻ることになりました。子どもたち(2人いる)ももう大きくなって、すでに独立しています。そこで、今私達が住んでいる家を賃貸に出し、子どもたちに管理をさせようと思っているのですが、なんでも委任状を用意すると、賃貸の手続きなどが楽になる、ということを聞いています。いったい委任状というのはどのようなもので、どのように作成すれば良いのでしょうか。」という質問を考えてきました。
 

アメリカの委任状ーPower of Attorneyー 

前回は、委任状とは何か、請負と委任の違いなどを考えました。今回は具体的に米国におけるPower of Attorney(以下便宜上「米委任状」といいます。)について、考えていきます。

まず、米委任状を作成する人が委任する意思と能力をもっていなければなりません。意識がない状態や、すでに後見人がついているような場合には、作成することができません。

次に、誰に委任をするのか、明確に書かれていなければいけません。「誰でも良い」という書き方はできず、必ず具体的に誰かを指定しなければなりません。この指定ですが、人でも良いですし、内容によっては、法人でも問題ありません。

 

委任の内容は分かりやすく 

第三点目ですが、「何を委任するのか」を明確にしなければなりません。
たとえば、銀行口座の扱いのみに限定することもできますし、身の回りのこと一切ということも可能です。ただ、一定の書き方はありますので、適当に書くのではなく、必ず一般的な書き方を踏襲するべきだと思います。

なぜ、一般的な書き方がベターかというと、米委任状は、第三者に提示をして、委任されているという事実を明らかにする性質があります。
そうすると、知らない第三者にとって、できるだけわかりやすい書き方にしておくのが良いからです。

第4点目ですが、金融機関など、私企業でも、独自に米委任状のフォームを定めているところも少なくありません。もちろん、フォームにかかわらず、米委任状は要件を満たせば有効ですが、トラブルを最小限度にするために、一応自分が関わっている金融機関などに相談されるのが良いと思います。
また、金融機関などは、一般的な委任状も顧客には無料で提供する場合もありますので、聞いてみると良いと思います。

 

効力発生の時点も明確に設定

第5点目ですが、米委任状には、あることが契機となって「効力を発生する」という条件と、「いつからいつまで有効だ」という期間が設定されることがあります。

条件というのは、たとえば、植物状態になった場合に効力を発生する、といった場合が考えられます。期間の設定については、たとえば今回質問されている方が日本に滞在するいつから、いつまで、といった形での設定をする場合があります。

委任者の意思に従って自由に設定することができます。

 

公証(Notarization)が必要条件、米国外では要注意 

第6点目ですが、米委任状には、かならず公証(Notarization)が必要になります。米国内で作成する場合には、Notary Publicに依頼すれば、公証を受けられます。

米国外、たとえば日本で米委任状を作成しようとすると少々厄介です。
というのも、有効な米委任状の公証は、在外の米国大使館・領事館のみで可能です。したがって、米国大使館とアポイントメントをとって、訪問しなければならないという手間が発生するのです。

今回質問されている方も、日本に行かれる前に、公証を片付けると手間が省けると思います。

 

委任状は濫用されることがないように 

米委任状は、個人的な事柄だけではなく、ビジネスでも広汎に使われる書類です。

今回質問されている方のようなケースだけではなく、遺言などと併せて作成することありますし、ビジネス上会計を人に任せるような場合でも使います。

一方で、委任状は濫用されると財産などに損害が生じる場合もあります。したがって、幅広く使用されているものの、作成にはかなり注意が必要となります。安易に署名、公証をするのではなく、内容は慎重に確認されてくださいね。

 

次回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。 




 

委任状の法的意味合い[1]





法律ノート 第1048回 弁護士 鈴木淳司
March 4, 2017

ずいぶんベイエリアも春らしくなってきました。ワシントンDCではもう桜が開花しそうだとか。あれだけ雨が多かったのに、春に向けて季節は加速していっているようです。ガーデニングをはじめる季節でもありますが、今年は何を植えるかそろそろ考えなければと思います。昨年は干ばつの影響で、栽培を控えていましたが、今年は思いっきり植えたいと思っています。

「委任状の法的意味合い」[1]

今回は、法的に作成された委任状に関する質問をみなさんと一緒に考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「私ども夫婦は、日本国籍を持ち、永住権許可のもとアメリカに長年滞在していましたが、年齢も考慮して、夫婦で日本に戻ることになりました。子どもたち(2人いる)ももう大きくなって、すでに独立しています。そこで、今私達が住んでいる家を賃貸に出し、子どもたちに管理をさせようと思っているのですが、なんでも委任状を用意すると、賃貸の手続きなどが楽になる、ということを聞いています。いったい委任状というのはどのようなもので、どのように作成すれば良いのでしょうか。」というものです。

そもそも「委任」とは

「委任状」という言葉は日本でもよく使われています。私達弁護士も、クライアントの方々から委任状を得ることで仕事ができるように、主に法的な仕事を人に頼む場合には、「委任状」というものを作成します。
アメリカで言うと、Power of Attorneyというのが、委任または委任状を意味するのですが、アメリカの法律を考える前に、よく日本で言う「委任」状、というものが何なのかここで考えておきたいと思います。

委任というは、基本的に法律的な事柄について人に任せるときに使う用語です。なので、離婚の手続きを弁護士に「委任」する、といった感じで使います。法律以外の事務手続きを頼む場合には、正確には「準委任」と呼びますが、内容的な違いはさほどありません。現実問題として、準委任といってもなんのことかわかりにくいので、一般的には、法律問題にしても、法律が絡まない事実的な問題にしても、「委任」と言っていると思います。

委任と請負の違いー請負は結果まで約束

委任というのは、ある事柄についての対応等を「任せる」という契約ですから、ベストを尽くしてもらうということが前提になっています。ただし、結果がどのようになるかは約束をしない契約です。弁護士に事件を委任して、負けてしまった、としても、その責任を追求するのは、別途過失などがない限りかなり難しいわけです。

委任に似たコンセプトに「請負」というものがあります。請負というのは、委任と違って、「結果」を約束するものです。大工仕事や修繕工事、プログラムの開発などは「請負」契約であることが多く、なぜかといえば、完成品させること、または完成品を引き渡すことが契約内容になるからです。
通常、不動産の管理などを頼むことは、何か完成品があるわけではなく、委任契約となるのですね。したがって、委任状というものが必要になるのです。

委任契約と委任状の違い

ここで、委任契約と委任状というものも厳密に言うと使用方法に違いがあります。

委任契約というのは、委任をする人と受任する人の間の決め事を書いて書類にするものです。たとえば、報酬や何をやるのかを細かく書いておくことになります。

一方で、委任状というのは、受任者が第三者に対して、正当に委任された内容につき「受任したのです」ということを示すための書類ということになります。この委任状というのは、内部で使う書類ではなく、外部に対して委任関係があることを示す書類ということになります。そうすると、委任契約というのは、委任者と受任者の両方の署名があるのが普通ですが、委任状というのは、委任する人だけの署名で成立するのが一般的であるということになります。

今回、委任というのが実質的にどのようなものか考えましたので、次回Power of Attorneyというのは、どのようなものなのか、どのように作成するのか、について詳しく考えていきましょう。

私は久しぶりの天気なので週末はゴルフがしたいな、と思っています。みなさんも屋外にでて、春の花や天気を楽しんで、またリフレッシュして、一週間がんばっていきましょうね。