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米国での起業とビザ。友人を助けたいがリスクは?[5]





法律ノート 第1046回 弁護士 鈴木淳司
February 20, 2017

ベイエリアは相変わらず雨が多いのですが、梅や桜が咲いています。青空に映えないので可哀想ですが、少なくともたくさんの水をもらい元気そうです。日本でも河津桜が咲き出す時期ですが、やっと冬から春へ、季節の足音が聞こえてきましたね。アメリカは、プレジデントデーがあるので3連休です。皆さんはどのような週末を過ごされていますか。

「米国での起業とビザ。友人を助けたいがリスクは?」[5]

さて、前回から引き続き「日本にいる友人が米国で起業をして、ビザをとりたいという相談を受けています。まずは、アメリカに在住している私が会社を起こして、日本からの投資を受け、友人にビザを出せないかと考えています。このようなケースにおいて、質問はたくさんあるのですが、まず友人を助けるという観点から会社の社長などになったときに、何か私個人の責任が発生しないかと心配になってきています。あとで友人と揉めるのも本意ではないので、リスクのあることはしたくないというのが本音です。」という質問を考えていきたいと思います。

おっくうがらず客観的な第三者に相談を

前回、「親しき仲にも礼儀あり」ということで、事前に約束事を決めておくほうがよく、少なくとも書面で将来の関係を残しておいたほうが良いということをお勧めしました。前回何点か契約書にいれるべき重要なポイントを考えましたが、今回引き続き何点か考えておきましょう。ただ、前回も付言したのですが、できれば、客観的な意見をもらえる第三者に相談されることが良いかもしれません。

契約の終わり方はかならず決める

まず、契約がどのように終了するのかも決めておいたほうが良いと思います。通常、友人同士でビジネスをはじめると、「終わり」を考えることをしませんね。しかし、色々な事情で、関係を解消する必要がでてくる場合もあります。ですので、契約の終了事由などを契約書では書いておくことが当然です。星影のワルツではありませんが、別れることも仕方がないこともあるのです。

曖昧な経費支出の取決めはのちの紛争のタネ

それから、よく紛争の元になる、経費については、詳細の記載が必要になるとおもいます。どのような経費を会社持ちにするのか、どのような経費の支出は、事前の承認が必要だとか、クレジットカードの使用などについては、事前に決めておくことが重要です。信頼関係が失われると、会社対経営者の訴訟の多くは、この経費についての問題に起因します。したがって、詳細に決め、疑義がある場合には、メールで支出の内容を確認するなどを決めて置くほうが良いと思います。

報告義務は信頼関係の基礎

この経費の問題とパラレルに考えられるのは、報告義務の明確化です。いわゆる「ホウレンソウ(報告、連絡、相談)」は一般的に重要ですが、報告の頻度および内容などについてある程度決めておかないと、信頼関係の破壊を招きかねません。

情報を含む会社の財産管理

次に、会社の財産の管理について明確にしておいたほうが良いと思われます。どのような情報が機密情報なのか決めておくことが重要です。また、会社の支出によって発生した財産は、すべて会社に帰属するなどという条項も重要になると思います。知的財産の帰属などもこれに含まれます。
目に見えない財産でも、現代社会ではそれなりの価値を持ちますので、後日の紛争の火種にならないように最初から明確に決めておきましょう。

競業避止義務と忠実義務

それから、前々回まで詳しく考えましたが、たとえば競業避止義務や忠実義務などの、取締役や、執行役(President など)が会社との委任関係上発生する義務に関して明確に記載しておくことも、アメリカにおける契約書では一般的になっています。ですので、テンプレート的な内容になるかもしれませんが、契約の内容としておくと良いかもしれません。

一貫性がある契約を

上記に加えて、アメリカの契約書に一般的に記載されるような内容も含めると良いですが、あまりインターネットに落ちているテンプレートを切り貼りしていると、内容が曖昧になり、後日紛争になったときにドツボにはまることもありますので、一貫性のある内容にすることはとても重要だと思います。

友人関係だからこそ、詳細な取決めが大切

数回を使って、今回の質問を網羅的に考えたつもりですが、他にも質問があるという読者の方がいらっしゃれば、また法律ノートまで追加の質問をされてください。とにかく、友人同士のなし崩し的な関係は、後日の危険を含んでいるということを感じていただければ充分かな、と思っています。

サンフランシスコは雨で花見どころの天気ではありませんが、せっかく木々が芽吹いて花を咲かせる季節になってきました。季節を楽しみながら、また一週間がんばっていきましょうね。




 

コンサルタントのアドバイスミス、責任は?[2]





 

法律ノート 第1023回 弁護士 鈴木淳司
September 06, 2016
 

レーバーデーで三連休でした。一年のなかで9月が平均的に一番暑いサンフランシスコ・ベイエリアは良い天気に恵まれ、私もゴルフで気分転換ができました。また、法廷が多い仕事に就いているので、通常、私は日本人関係の「会」や「グループ」には利益相反が生じる可能性から顔を出さないのですが、近年亡くなったある方が、生前私に何度もある会に所属するように誘ってくださりました。葬式にも顔をだせず悔しい思いをしましたが、義理を重んじる私は、その方の遺言だと思い、そのベイエリアの会に所属することに決め、昼間からワインとおしゃべりを楽しんできました。皆さんはいかがお過ごしになりましたか。
 

コンサルタントのアドバイスミス、責任は?[2]
 

前回から考えて「日系企業で法務に携わる者です。当社では、いわゆる労務関係やビジネスに関してアドバイスをするコンサルタントと契約をしています。近時、社内の従業員から就労環境についてハラスメントがあるのではないか、という苦情がでてきたので、このコンサルタントのアドバイスを元に対応していたところ、いわゆる、差別的な取扱があったということで訴訟に発展しました。当社としては現地の事情に詳しいということで、このコンサルタントを頼っていたのですが、どうも、アドバイスにミスがあったということがようやくわかりました。こういった場合、コンサルタントの責任を追及することが可能でしょうか。」
 

コンサルタント契約ー雇用ではないー
 
前回は、今回考えている質問の前提として、一体コンサルタントとのコンサルティング契約とはなんぞや、ということを考えました。請負や準委任的な契約であり、雇用ではないということになります。

請負と雇用の間にはかなりの法律的な違いがあるのですが、今回の法律ノートでは、請負の方が雇用より独立した関係であり、コンサルタント側がかなり仕事をするうえで、裁量の幅が広い立場にあるという感覚を理解してください。

また、コンサルタントというのは、別途国家資格などを持っていない限り、自己の経験などを基礎とし、アドバイス提供する対価金銭を得る人を言いますので、そのアドバイスの責任はそのコンサルタントのみにあることになります。

もちろん弁護士の資格もないのに、労働法や移民法などの法律的なアドバイスを行っている場合には、非弁行為といい、今回質問されている方が、無資格者の法律的なアドバイスに基づいて行動し、法律的な責任を負うことになった場合には、場合によっては、非弁行為として不法行為責任を問えるかもしれません。これは、比較的簡単な責任追及方法になると思います。
 

契約条項を一つ一つ吟味する

次に、コンサルタントとの契約にどのような条項があるのか、特にコンサルタントの義務にはどのようなものがあるのか、契約をよく読んで吟味しなければなりません。

これは個々の契約書に記載されている内容によりますので、具体的にどのようなコンサルタント契約を締結されているのか、その内容を確認してみないと正確な回答をすることができません。

しかし、コンサルタント契約には、どのようなことを、どのようにアドバイスするのか記載がありますので、今回質問されている方は、まず契約書にコンサルタントが何をしなければならないのか、そして、どの部分に反する可能性があるのかを考えなければなりません。
 

事例に当てはめて考えてみる

たとえば、今回質問の対象となっているコンサルタントが「労働関係上のハラスメント対応」を業務内容に挙げていた場合、2つの問題が生じる可能性があります。

まずは、弁護士の資格もないのに法律のアドバイスをしていた場合です。医師免許がないのに、手術をすることに似ています。これはアウトです。
ふたつ目に、これも法律的には怪しいのですが、ハラスメント関係について事実的なアドバイスを与える、というコンサルタントがいますが、これもたとえば事実的に、「あれしろ、これやれ」という事実的な対応であれば問題はないのですが、事実的なことを超え、存在する事実を法的に評価するようになると、法律のアドバイスとなり合法的なアドバイスとは言えないと思います。

できれば、今回のようなコンサルタント業務は、労働法を良く知っている弁護士に聞いた方が良かったように思います。

以前、ある訴訟で、労働コンサルタントと称す人の訴訟に関わったことがありますが、訴訟になったとたん、その労働コンサルタントは、実は弁護士に相談していた、と弁護士に責任転嫁していて、戦禍が拡大していきました。それなら、最初から弁護士に相談すりゃ良いのにと思ったものです。
以上で、大体今回の質問を考えたと思います。わざと、少し歯切れが悪く書いてあるところもありますが、どうかご容赦ください。

次回からまた新しい質問を考えていきましょう。
今週、ベイエリアはかなり暖かくなりそうです。皆さんのお住まいの地域はいかがでしょうか。夏であろうと、秋であろうと、太陽を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
 




 

コンサルタントのアドバイスミス、責任は?[1]





法律ノート 第1022回 弁護士 鈴木淳司
August 28, 2016
今年のサンフランシスコ49ers はラスベガスの下馬評では、一勝も勝てるオッズがないということらしいです。一勝もできないなんて、考えたくもないですが、やはり地元のチームというのは強ければもちろん気になりますが、弱くても心配でしょうがありません。野球ではジャイアンツがオールスター戦以降、不調で困ったものです。皆さんのお住まいの地域のスポーツチームは好調でしょうか。
「ビジネスコンサルタントのアドバイスミス、責任は問える?」[1]
今回からまた皆さんからいただいた質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると「日系企業で法務に携わる者です。当社では、いわゆる労務関係やビジネスに関してアドバイスをするコンサルタントと契約をしています。近時、社内の従業員から就労環境についてハラスメントがあるのではないか、という苦情がでてきたので、このコンサルタントのアドバイスを元に対応していたところ、いわゆる、差別的な取扱があったということで訴訟に発展しました。当社としては現地の事情に詳しいということで、このコンサルタントを頼っていたのですが、どうも、アドバイスにミスがあったということがようやくわかりました。こういった場合、コンサルタントの責任を追及することが可能でしょうか。」というものです。
「コンサルタント」とは?ー日米の違いー

まず、「コンサルタント」とはなんぞや、ということを考えておかなければなりません。

よく聞くのは「経営コンサルタント」、「会計コンサルタント」、それに「労務コンサルタント」などでしょうか。日本では、士業が細分化していて、たとえば行政書士や、社会保険労務士などが存在するので、これらの一定の試験を経てきた人であれば、少なくとも最低限の知識を持っているということにはなります。
ところがアメリカでは、そのような資格というのは限られていますので、弁護士の資格を持った人であれば、最低限のコンサルタント業務を行う法律知識(会計知識ではない)を持っているでしょうし、公認会計士や税理士などの資格を持っていれば、最低限に会計知識を持ったコンサルタントといえるかもしれません。
しかし、試験を通ったといった客観的に判断できる材料がなければ、「コンサルタント」というのは、自己の経験を提供する業務に従事する人、ということになります。

私が担当した訴訟でも、何人ものコンサルタントが登場してきましたが、各人各様な印象があります。会社が「コンサルタント」と契約するとしても、ほぼ好みの問題であると思います。

今回の質問を考えると、コンサルタントと契約するかどうかが好みの問題ということは、一概に「コンサルタント」の言ったことを信じた、というだけではどのような訴訟でも有利に働かないと思います。法律や行政の規則などに従ったかどうか、ということが最終的には訴訟では問題になります。

 

責任追及にはコンサルタントとの契約を確認

そうすると、コンサルタントの責任を追及したいのであれば、まず、今回質問されている方の会社とコンサルタントがどのような契約を締結しているのかが、問題になります。コンサルタントの責任は、ほぼすべてどのような契約内容になっているのかで決まるということになろうと思います。

ですので、コンサルタントが「法律のことをコンサルしますよ」と言って契約書を出してきた場合にも、必ず第三者の法律家のチェックを受けるべきだと思います。お手盛りの可能性が残るからです。実際に私が担当した事件でも、ひどくコンサルタント側に有利な内容の契約書を見ましたが、やはりコンサルタントが契約書を書いていました。

 

コンサルタントとの契約は雇用ではない

コンサルタントが個人や企業と業務の契約をする場合、色々な題目が付きますが、基本的には日本でいう請負契約です。弁護士や会計士をコンサルタントとする場合、準委任契約の場合もあるかもしれません。
とにかく、基本的には雇用ではないということを頭に入れてください。アメリカでは、コンサルタントはIndependent Contractorという棲み分けをします。雇用ではないということです。

そもそも、コンサルタントというのは、独立した立場でアドバイスをしますので、親身になるとか、会社のことを本当に考えているのか、ということは契約に縛られます。
たとえば、会社の取締役であれば、忠実義務(Duty of Loyalty)や善管注意義務(Duty of Care)といった会社に対する「義務」が存在しますが、コンサルタントにはこのような義務は契約書に書かれていない限りないのです。

したがって、私が顧問先の企業が「コンサルタント契約結んだので契約書レビューしてください」と言われた場合、まず、このコンサルタントはどのような義務を負うのかをチェックします。

 

字数が多くなったので、次回ここから続けていきたいと思います。夏の最後、秋の始まりを感じながら一週間がんばっていきましょうね。