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仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[3]_1003




 

法律ノート 第1003回 弁護士 鈴木淳司
April 20, 2016

ある日系クライアント企業が米国の連邦地裁に提訴されて相談を受けました。
提訴された事実は公になるのですが、その提訴情報を常時見ていて、日系企業だとわかると、ダイレクトメールを送って客引きをしている弁護士がいるという現実を見ました。かなり積極的な内容の宣伝文句を日本の本社に送りつけてくるようなのですが、ここまでやるのですね。皮肉にも感心してしまいました。

 

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[3]

 さて、前2回、次のような質問を考えてきました。

「昨年からある商材を日本で売るために、米国の製造ベンチャー企業との間に仲介契約を締結しました。

簡単にこの契約の内容を言うと、当社が仲介業者的な役割を果たして、アメリカのある商材を日本の企業に売るという内容です。そして、成約した場合には、成功報酬をパーセンテージで受け取るということになっていました。

その米国ベンチャーの社長と懇意にしていたため、メモ書き程度の契約しか締結していません。当社は日本において、いくつも納入先となりうる企業を見つけてきているのですが、この米国企業は協力的ではなく、質問にもなかなか答えないですし、テスト結果などもおくってきません。

契約は毎年更新となっていますが、更新についても揉めそうな状況です。このように非協力的な企業に対して法的に何か言うことはできないでしょうか」

 

契約期間と契約の更新

今回は、契約の更新について考えておきたいと思います。

通常、継続して商材を売買するタイプの契約書は契約期間が明記されています。

契約期間は様々ですが、1年間とか、2年間といった年単位の期間が定められているものが多いと思います。また、契約終了前数ヶ月間に更新について交渉するという形になっているものもあります。

場合によっては異議がない場合には自動更新されるという条項がついている場合があります。

どのような契約書でも契約期間が設定されているでしょうから、必ず契約をするときには、契約期間と契約終了前の交渉期間については、自社のカレンダーに明記しておくことが重要です。

この契約更新期間についてぼんやりしていると、自動的に更新してしまい不利益が生じたり、逆に突然契約が終了してしまうということもありえます。

 

契約更新交渉を進めるにあたって

さて、契約更新の交渉ですが、今回の質問の対象になっている契約書には、契約の更新についてごく簡単な内容しか規定されていないようです。そうすると、基本的には、契約は終了するという覚悟ももちながら交渉するしかありません

問題は、契約交渉は、契約書に規定されていない限り、法律的に義務付けることはできませんので、相手方とはお願いベースの交渉になります。会社の規模や、契約の対象となる売買における力関係なども問題になりますね。

したがって、まず契約更新時期に合わせて、交渉を有利にするような下地作りは早めにしなければなりません。場合によっては、競争相手の価格を調べたり、他の業者へ打診するなども必要かもしれません。契約相手方の人間をよく知ることも重要な場合もあります。
これらは法律の問題というよりは、ビジネス上の戦略ということになりましょうか。

 

法的な問題にするのは難しい

今回質問されている方は、契約の相手方があまりやる気がないように感じられているわけです。そうすると法律的に更新を強制することもできず、どちらかというと相手方のやる気を出さなければ更新もそもそもできない可能性がでてくるわけです。

このような状況においては、やることとしてはビジネスとして、このような相手方と続けていくのか、続けるとすれば、連絡をとにかくマメにとるなりして、相手方の意向をはっきりさせることが必要になると思います。

もちろん、故意に更新をしないことで、今回質問されている方に害を与えることが電子メールのやりとりなどではっきりしていれば、別途不法行為としての責任を問うことが考えられますが、そのような例はレアだと思います。通常、今回質問されている方のように、相手方の返答が遅かったり、非協力的だからといって、法的な責任にすぐに結びつけるのは難しいというのが実情だと思います。

 

今回いただいている質問への回答はこの程度で終わらせますが、さらに疑問があればまた法律ノートに質問されてください。

 

次回はまた新しい質問を考えていきたいと思います。
季節の変わり目ですので体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。




 

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[2]




 

法律ノート 第1002回 弁護士 鈴木淳司
April 11, 2016

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[2]

 

飛行機の機内で芸能人の方に出くわすことも今まで結構あったのですが、今週遭遇した芸能人の方はかなり気さくな方で私も含め周りの人と握手をしたり、会話をしたり、ずいぶん交流されていました。少しでもその人を知ることができると、悪い気は起きません。人柄なのでしょうね。弁護士でも偉そうな人が少なくありませんが、究極的には人柄が大事なのだな、とよく思わされました。

 

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[2]

さて、前回から、次のような質問を考えてきました。

「昨年からある商材を日本で売るために、米国の製造ベンチャー企業との間に仲介契約を締結しました。

 簡単にこの契約の内容を言うと、当社が仲介業者的な役割を果たして、アメリカのある商材を日本の企業に売るという内容です。そして、成約した場合には、成功報酬をパーセンテージで受け取るということになっていました。 

 その米国ベンチャーの社長と懇意にしていたため、メモ書き程度の契約しか締結していません。 

 当社は日本において、いくつも納入先となりうる企業を見つけてきているのですが、この米国企業は協力的ではなく、質問にもなかなか答えないですし、テスト結果などもおくってきません。

 契約は毎年更新となっていますが、更新についても揉めそうな状況です。このように非協力的な企業に対して法的に何か言うことはできないでしょうか」という質問を考え始めました。

 

成功報酬型でも進まない事業

まず、今回の契約は成功報酬型の契約ですから、本来であれば両当事者に目的達成のインセンティブはあるはずです。

しかし、一方の当事者はやる気があるのに、もう一方の当事者はなんでもやることが遅く商売がなかなか進まないという今回のような状況も生じることがありますし、実際の実務でも何度も目にしています。

 

大切なのは契約書の中身ー期限と条件の明示

重要な問題は契約書にどのような記載があるかということです。

たとえば契約書に詳細な連絡の方法などが記載されている場合があります。

一方のリクエストに対しては、他方当事者は、5営業日以内に返答する、とか、情報の提供については、何日以内に電子形式で提供するとか、いった内容を契約で明示しているものも少なくありません。

このように期限を区切って両当事者に義務を課しておけば、その義務に反した場合には契約上「債務不履行」ということが明確になります

相手と契約をするのがはじめてである場合、今回のように相手方の対応に疑問がある場合には、このようにお互い契約上やらなければならないことに「期限」や「条件」をつけておくのが良いということになります。

このような期限が契約書にない場合には、たとえば何かを契約書の当事者の一方が他方にリクエストして、その反応が翌日でも、2ヶ月後でもどちらが「はやい」とか「遅い」といったことはなかなか言えないことになります。
もちろん、今まで長い間契約関係にあり、たとえば、通常であれば3営業日以内に返信や回答があったのに、あるときから、回答が一ヶ月以上遅滞するような場合には、「遅い」といえるかもしれません。

このように、契約書に明示されていない「度合い」の問題を法律的に違法かどうかと論じることは難しいということになります。

したがって、今回質問の対象になっている事例でも、すぐに法律的に論じることができる違法性が見つかるか、というとそうはなかなか言えないということになろうかと思います。

 

債務不履行の追及は難しい

今回質問されている方の会社は、すでに何社に興味を持ってもらって、契約に向けて努力をしているということです。

もしかりに連絡のやりとりについて、わざと相手方がなんらかの理由で妨害しているような証拠があれば、債務不履行責任や、場合によっては不法行為責任を問えるかもしれません。

しかし、証拠というのは、遅滞していたということだけではなく、「わざと遅らせる」という内容が明確にわかるメールを入手したとか、第三者に「わざと遅らせている」といった内容のことを言い、その第三者が証人になってくれる、というお膳立てが必要になると思います。簡単ではありませんね。

 

仲介契約を無視した契約もあり得る

ただ、場合によっては、本件のような仲介契約がある場合、今回質問されている方を中抜きして、契約の相手方である製造ベンチャーと日本企業が直接に契約を締結してしまうようなケースもあります。

この場合には、仲介料を求めて、製造ベンチャー企業に対して責任を問える場合もありますし、悪質な場合には、日本企業も訴訟の対象にできるかもしれません。

 

以上のように、契約書でかなり縛りがないと、当事者間のやりとりが遅い、といってもすぐに法律的な債務不履行を追及することは難しいということです。
次回、もう一点質問にある更新について考えていきたいと思います。

 

天気が安定しなかった一週間ですが、春の花を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[1]_1001




 

法律ノート 第1001回 弁護士 鈴木淳司
April 7, 2016

多数の読者の皆さんから、「1000回達成おめでとうございます」ということを言っていただきました。ありがとうございました。しかし、それに続けて「2000回までがんばってください」という風に言われる方が多かったです。
あと1000回というのは考えただけでも大変そうです。法律ノートを北米毎日新聞に連載を始めた当初からの知り合いは感慨深いようでしたが、1000回の道のりは遠いようで早かったようにも思います。

また、心機一転、皆さんと一緒に法律のトピックを考えていきたいと思います。
今後とも法律ノートを宜しくお願いいたします。

 

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[1]

 

さて、今回考える読者の方からいただいている質問をまとめると次のようになります。

「昨年からある商材を日本で売るために、米国の製造ベンチャー企業との間に仲介契約を締結しました。簡単にこの契約の内容を言うと、当社が仲介業者的な役割を果たして、アメリカのある商材を日本の企業に売るという内容です。そして、成約した場合には、成功報酬をパーセンテージで受け取るということになっていました。その米国ベンチャーの社長と懇意にしていたため、メモ書き程度の契約しか締結していません。当社は日本において、いくつも納入先となりうる企業を見つけてきているのですが、この米国企業は協力的ではなく、質問にもなかなか答えないですし、テスト結果などもおくってきません。契約は毎年更新となっていますが、更新についても揉めそうな状況です。このように非協力的な企業に対して法的に何か言うことはできないでしょうか」というものです。

要するにビジネスパートナーとしてビジネスを日本で展開しようとしても、必要な協力が得られないという状況のようです。

本来であればビジネスを世界展開するうえで、納入先もいくつか日本にできれば、このような仲介契約があろうとなかろうと関わる企業にとっては、プラスになるのが基本です。
何か、仲介契約そのものではなくて、ビジネスの観点から何らかの思惑が存在するのかもしれませんね。

もちろん、仲介契約そのものを今回質問されている方から見せていただいているわけではありませんので、具体的なアドバイスはできません。
具体的なアドバイスはやはり専門家に直接相談されるのが良いと思います。

 

契約の基礎となる当事者の解釈

仲介契約といっても、一種類あるわけではなく、多岐に渡ります。

よく目にするのは、不動産のブローカーが使用する仲介契約書でしょうか。そのほかにも、ビジネスにおいては色々な仲介契約が存在します。代理店的な形で納入が決まると、一部報酬が発生する方法もありますし、直接売主と買主を媒介して、その成功報酬として金銭を受け取るというパターンもあります。

アメリカでは、もともと法律で契約関係を決めるというよりは、本人たちで自由に決めた契約が契約関係の基礎となります。

ですので、今回質問されている方も、実際にどのような条項が契約書に記載されているのか、ということは最重要になりますので、契約がどのように解釈されるのか、自分なりに考えてみる必要があると思います。

 

時間軸や量的な問題

今回質問されている方の悩みというのは、せっかく契約書が存在するのに、販売の協力を得ることができないということです。

具体的には、情報のやり取りがかなり遅いことや、データの提供をなかなか受けられないということのようです。

契約自体は一年更新ということなので、12ヶ月間の間に成約または納入に向けて実質的な話合いがはじまることが報酬を受ける前提のようです。やり取りは、数週間から数ヶ月かかることもあるとのこと。一般的に、それは「遅いなぁ」とも思えますが、正当な理由があるかもしれません。

時間軸の問題や量的な問題についてはなかなか簡単に「違法」とはいえないのです。

 

ここから次回続けて考えていきたいと思います。

 

ベイエリアは夏のような日もあれば、一気に寒くなるという日もあります。天気の変化が著しい季節ですので、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。