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会社で使い込みを発見。解雇するには?[3]_1070

法律ノート 第1070回 弁護士 鈴木淳司
August 14, 2017




 

お盆休みを利用して日本からいらっしゃった御一行を観光にお連れしているのですが、サンフランシスコ市内の観光名所はどこにいっても、人が多くてびっくりしています。サンフランシスコは、最高気温が20度前後ですから、暑いところから来られている方たちには良い避暑地なのかもしれませんね。みなさんもたまには、サンフランシスコのクラムチャウダーはいかがでしょうか。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[3]_1070

 

さて、全二回考えてきた質問を続けて考えていきましょう。

「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」という質問です。

 

自主退職が受け入れられない場合

今回は、自主退職を促しても、従業員側が聞き入れない場合、どのように対応していく必要があるか考えましょう。

前回までは、法律や就業規則に触れる場合があるか慎重に検討する必要があるということを考えました。そこから今回考えます。

 

雇用契約の終了

まず、就業規則の他に、その従業員と会社の間で契約があるか確認する必要があります。契約が存在する場合には、期間が設定されていますので、たとえば、一年間の契約であれば、その一年間が終了するときには、理由なく契約を解除できます。その場合、非行があるかどうかにかかわらず、終了できますので、契約に従って通知をしたうえで、契約を一年間満了の時期に解除することは可能です。

このような解除であれば、理由がない契約解除なので、後に非行行為の有無に関して、法廷で争われることはありません。

 

即時解雇

次に、非行があったことを理由として即時解雇をする場合を考えます。

アメリカの企業では、内部で証拠を確認し、解雇の判断をすることが多くあります。外部の弁護士の意見を聞くことも多くあります。私もかなり多くの経験を積んでいるところではあります。

非行行為に対して、緩い対応をしていると、会社に在籍をしている人たちにも良い影響がありませんし、毅然とした態度を見せる必要もあります。そうすると、のちにいくらかの訴訟のリスクを考えても、即時解雇をすることも少なくありません。

もちろん、第一に雇用契約を確認し、契約に書かれた内容に沿って、解雇する必要があります。

 

即時解雇の注意点

即時解雇をする場合には、労働事件の訴訟の経験が豊富な法律の専門家に相談することがベストです。労働コンサルタント等では、最近の判例や訴訟の動向を押さえているか不安です。

解雇がなされた場合には、解雇された従業員も、色々な理由をつけて、不当解雇を訴えてくる可能性があります。場合によっては、訴訟を提起しないことを前提とする契約書を用意して、いくばくかお金を渡したうえで、訴訟を回避するためのアレンジメントをすることも可能な場合があります。

このような訴訟の可能性を緩和する契約書が締結できない場合には、専門家を含めて、訴訟のリスクを検討します。訴訟のリスクを考えるときに、具体的に、本論である、「使い込み」を証明できる程度の書類や証人の確保ができるかどうかは重要ですが、傍論で、ハラスメントや差別などの主張がなされる可能性があるか、考えた方が良いことになります。このように即時解雇の際にも、契約書を作成するなど、ある程度リスクの緩和をすることが可能かもしれません。

 

外部の意見を聞くことの重要性

しかし、無防備な状態で即時解雇をすることになると、職場の環境や、就労状況など、かなり多方面で準備をしなければなりませんので、専門家にしっかり相談されると良いと思います。ただ、今回のように、従業員に非行があったと思われ、かりに従業員がなんらかの理由で企業を訴えてきたとしても、企業側としても反訴を提起して、非行行為を公開の場で咎めることもできます。そうすると、企業側としても、堂々と対応する態度を持って対応しても良いと思いますが、とにかく、客観的に状況を専門家に判断してもらうことが良いと思います。

社内のみで話をしていると、場合によっては感情的なヒートアップもあるので、冷静な意見を具体的事例についてもらうことが大事だと思います。

 

 

また、次回新しくいただいている質問について考えていきたいと思います。夏休みも後半になってきましたが、仕事や勉強ばかりではなく悔いがないように夏を満喫されてくださいね。

また一週間暑さに負けずがんばっていきましょう。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[2]_1069

法律ノート 第1069回 弁護士 鈴木淳司
August 8. 2017




 

サンフランシスコ国際空港で、関西から来ている少年野球の御一行を見かけました。ベイエリアの姉妹都市交流の一つのようです。まだ、小学生のような感じでしたが、はじめてアメリカに来た子供達もいるでしょう。子供の頃から、このような国際交流をして、自国を離れスポーツで触れ合うというのは素晴らしいことですね。きっと一生の思い出になるのでしょう。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[2]

さて、前回から考えてきた「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」という質問を続けて考えていきたいと思います。

 

就業規則や法律違反がないか

前回をまとめると、まず事実関係を整理し、就業規則および法律に抵触する行為がないのかを確認するということが必要ということを考えました。

今回続けて、実際に質問されている具体的事例にどのように対応した方が良いのか、考えていきましょう。

 

具体的な対応_事情を聞き、記録を取る

まず、問題となっている本人からも事実の聴取をされているようですので、本人の言い分も必ず聞き、聞き取った内容は残しておくことが良いと思います。一刀両断に切り捨てるのは、よくありません。

本人が「使い込み」を否定しているのであれば、事実関係との齟齬についてちゃんと説明を受けるべきです。そのときに、聞き取りをするのは複数人いるほうが良いと思います。後日、聞き取り中に何か問題視される可能性がある場合、その主張を封じることができます。

このような社内での聞き取り段階で、従業員側が弁護士に相談し、弁護士をつけることもありえます。弁護士がついたということがわかった場合には、強引に聞き取りを続けるのではなく、会社側も速やかに弁護士に相談して、弁護士同士での話合いにする必要がでてきます。

 

具体的な対応_退職を促す

かりに、従業員が「使い込み」を否定していても、事実関係を精査して、使途不明金があるとすれば、実際に自己都合退職を促すこともできます。まずは、口頭で本人の意向を聞いてみることが良いかもしれません。

自己都合退職とするかわりに、法的責任は問わない、という交換条件も提示しても良いかもしれません。退職届(Resignation Letter)のみを受理して終わる場合もありますし、和解契約書的な書面を作成する場合もあります。

事例によって異なると思いますが、できればまず話合いを持つということが段取りとしては適切です。いきなり、解雇とすると、あとで訴訟になった場合、なぜ解雇をする前に、自己都合の退職を吟味しなかったのか問題にされる場合があります。会社側としても、具体的事例に即して吟味に吟味を重ねた、ということを明示できたほうが良いのです。

 

退社か解雇か

退職を促し、従業員本人も自分の意思で退職すると、会社側にとって訴訟のリスクを減らすことができます。すなわち、不当「解雇」ではなく、自己都合の退職なのですから、「解雇」にまつわる訴訟を回避することができるのです。もちろん、100%リスクを回避することは不可能かもしれません。たとえば、「無理やり退職に追い込まれた」などという主張は法律上可能だからです。

しかし、一般的に言って、自己都合で退職する場合には、「解雇」には該当しないので、訴訟リスクがグッと減るのです。

退職した場合に、会社側が気をつけなければならないのは、退職日までに未払賃金が残っている場合には、その賃金を退職日までに支払う義務など、残給与の精算です。これを怠ると、あとで課徴金を乗せられて請求される可能性はあります。

上記のように話合いが可能であれば、まず退職の可能性を探るのが両者によって良い選択肢であります。ただ、従業員側が頑なに、退職を固辞した場合には、会社としては解雇を考えなければなりません。

次回ここから考えていきたいと思います。

 

 

日本の政治もまた色々再編が進みそうな状況にあるようですが、周りの意見を聞くと、あまり期待は感じられませんでした。どの世界でも人材不足なのかもしれませんね。
まだまだ暑い夏ですが、体調管理に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[1]_1068

法律ノート 第1068回 弁護士 鈴木淳司
August 3, 2017



 

 

北朝鮮がミサイルを発射していますが、今まで日本海側だけではなく太平洋側にも落ちていますね。そうすると、現状確実に日本のどこにでも撃ち込めるミサイルを持っていることになります。今は、一発だけ撃っているような状況ですが、たとえば10発を一斉発射した場合、本当にすべて防衛はできるのでしょうか。本当に心配になります。皆さんは夏をどのようにお過ごしになっていますか。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめると「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」というものです。いただいている質問はかなり長かったのですが、一般的なお答えにするために内容をまとめました。

個別具体的な質問については、ちゃんと弁護士に相談されたほうが良いと思います。

 

事実の特定は慎重に、正確に

まず、事実はどのようなものかを把握することが必要です。

会計監査が行われたということですが、具体的にどのような資料がでてきたのか、専門家にも聞きながら整える必要があると思います。

できればクレジットカードの明細や、お金に関する資料の齟齬などは、書類で確認できるはずですので、事実関係の把握には必ず必要なものですので、用意しておきましょう。

それから事実関係で必要なものが、関係者の聞き取りです。対象となっている人だけではなく、その事実に関係している人たちから情報を聞き取っておくことが重要です。聴取されている人の了承を取ったうえで、ビデオや録音で内容を保存しておくことも良いと思います。

 

将来的な訴訟にそなえる

これらの事実の把握や情報の保管が重要なのは、将来的にかりに何らかの裁判になった場合、証拠になる可能性があるからです。また、調査の対象者などと、メールでやり取りをしている場合には、電子情報も必ず残しておく必要があります。

ただ、証拠とできる内容は法律で限られていますので、事実を把握する段階で、専門家に相談をすることは重要だと思います。

 

就業規則の内容を確認

次に重要なのは、会社の就業規則(Employee Manual)の内容をチェックすることです。

就業規則に書かれている手続に沿って処分を決めていかなければなりません。就業規則には通常、疑義ある行為の種類などが規定されています。

就業規則というのは、各会社のルールですから、法律と違った設定をしている場合もあります。また、就業規則は、就業開始時または規則導入時に各被用者に配布され、受領のサインをもらうという手続きを取るのが一般的です。ですので、内容は会社全体に周知されているということになっているのです。

 

今回、会社の調査の対象になっている人も、就業規則に関して受領のサインをしているのか、会社側で確認する必要があります。かりに、就業規則が整備されていない小規模の会社であれば、一般的に法律上犯罪行為を構成する内容かどうか、検討する必要があると思います。

 

就業規則違反と法律違反

就業規則に反する行為が、同時に法律に反する場合もあります。民事法に触れる場合もあれば、刑事法に触れる場合もあります。

民事法に触れる場合には、民事訴訟、たとえばお金を不正に使われているような場合には、不当利得返還請求訴訟を提起することができます。横領として刑事法に触れる場合には、警察に届けて刑事的な処罰を求めることも可能かもしれません。

ただ、現実的な問題として、民事訴訟をするには、弁護士や裁判の費用がかかりますし、使った費用を一個人から回復できるのか疑問の場合もあります。また、刑事的な届け出をしたからといって自動的に捜査をしてくれるかどうかわかりませんし、刑事事件沙汰にすることは躊躇する会社も多くあります。

実際に事実関係を考えたうえで判断していくしかなかろうと思います。

 

 

ここから次回考えていきたいと思います。私は体調がバテ気味なのですが、皆さんは気をつけてくださいね。充分に水分を補給しながらまた一週間がんばっていきましょうね。