日別アーカイブ: 2019/03/16

クリエイターの著作物、売るべきか?(1)_1152




法律ノート 第1152回 弁護士 鈴木淳司
March 16, 2019

日本でも大学の裏口入学問題が取り上げられていましたが、アメリカでも、いわゆるセレブと言われる人たちが自分の子供を裏口(捕まった被告人はサイドドアと呼んでいたので、裏ではなくて脇かもしれませんが)入学させたことが大々的に連邦刑事事件になっています。大統領の息子がここぞとばかりにハリウッドの人たちが静かにしているのはなぜだ、などと揶揄すると、現大統領の批判本を書いた作家に、「父親が多額の寄付をした大学院にいったのは誰か」と突っ込まれ、黙ってしまう、なんていう話がでています。なんだか、どこもかしこも親が子のために小細工しているなんて切ないですね。子供のためにまったくなっていないのですから。

 

クリエイターの著作物、売るべきか?(1)_1152

さて、今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「日本在住の者です。色々な文筆活動(クリエーター)を仕事にしています。最近、アメリカのゲームソフト会社から私が書いているゲーム系のストーリーを買いたい、すなわち著作権ごと買いたいという申し入れがありました。そこで、交渉をしているのですが、契約書に公証をしなければならない、と書かれています。このような場合、どのように対応するべきなのか教えてください。」というものです。

何かを生み出すのは才能で、この方も学生時代から色々な創作活動に関わっていらっしゃるようで、すごいですね。音楽や文筆を仕事とすることは本当に大変な面もあるでしょうが、面白いのでしょうね。

 

著作物を「売る」

さて、今回、この方はかなり著作権を「売る」ということに前向きになられているようですが、売ることが果たして長期的に見てよいのか、まず考えてから本題に入りましょう。

著作権というのは、れっきとして権利ですから、アメリカでは売買の対象です。アメリカ著作権局も売買を認めていますし、その売買の記録をしてくれます。

売買できることは明らかなのですが、売ってしまうと、なんらの権利も手元に残らなくなります。買った会社が好きなようにできるということになるわけですね。

逆に、売った側がその著作物を再度利用しようとすれば、著作権に反する行為になり、訴訟で咎められることになりそうです。また、もう少し現実的なことをいえば、売ってしまうと売主は、ゲームなどに著作権者として表示されなくなりますから、いわゆるクレジットが目に触れることにならないのです。

著作権を持っている人や会社はこのクレジットが重要である、という見方をする場合もあります。このように、手を離れてしまうと、対価しか残りませんので、ある程度高額な値段もつく場合も考えられるのです。

 

ライセンシングー手元に著作権を残す

もうひとつの方法は、ライセンシングという方法が考えられます。こちらの方が一般的に使われる考え方です。質問者の方はすでにご存知だとは思いますが、ライセンシングにすれば、手元に著作権が残り、さらにライセンシング料ももらえます。そして、著作権の全部または一部を範囲や期限を決めて使用をしてもよいよ、ということを決めて契約として残しておくのです。

そして使用許可を得た当事者をライセンシーと言いますが、ライセンシーは、許可された範囲で自由に使用をすることができるということになります。ライセンスの場合には、著作権者の表示をする必要が出てくるので、クレジットも入るのが通常になりますので、権利も残るし、宣伝にもなる、という考え方もあるのです。

まあ、今回質問されている方に関しても、色々な事情があるのでしょう。法律的に良くても、ビジネス的にはイマイチという考え方もあるわけです。とにかく、今回の質問は「著作権を売る」ということが前提にあるようです。

 

著作権はオンライン登録できる

アメリカでは、著作権については、その一部でも全部でも譲渡できますが、まず今回質問されている方がどのように著作権を登録されているのかが気になります。

著作権は全世界統一という制度ではないため、アメリカで登録されていないのであれば、登録したうえで売るか、買い主が登録するか、ということも考えておかなければなりません。アメリカで登録をされているのであれば(比較的簡単ですし、オンラインでも申請は可能です)登録している内容を譲渡するということになるでしょう。

ここから次回考えていきたいと思います。

ベイエリアはやっと雨が落ち着いて日中は半袖で歩いている人も多く見かけます。春ですね。花を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


 

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トランプ政権とH-1Bビザ発給の動向

March 14, 2019 皆さんお元気でしょうか。ベイエリアは春らしくなってきましたが、皆さんのお 住まいの地域はいかがでしょうか。 さて、今回は、厳しい移民政策を続ける現政権下におけるH-1Bビザの発給につい て現状を少し考察しておきたいと思います。まずは、良いニュースからです。

Premium Processing の再開

しばらく、移民行政機関が停止していた、H-1Bビザ(以下、「Hビザ」ともいう。)の優先審査(Premium Processing)が3月12日から再開されることにな りました。

優先審査がやっと再開されるということで、移民局の申請受理から 15営業日以内に審理され、許可の可否が通知されることになりますが、通常の審査に比べて高額の審査費用が要求されるのは、今まで通りです。

これで、申請している外国人も、雇用を考えている米国企業も宙ぶらりんの期間がまた短くなるわけですから、良いニュースとしたいと思います。  

 

Hビザの実情

次に、関係ある方々は、現政権下におけるHビザへの風当たりについて、全体的によく理解した上で、注意をしていただきたいと思います。 移民局が公表しているデータをみると、前政権に比べ政策の変化がかなり如実にHビザの審査に表れています。

そもそも、現大統領は、選挙公約の一貫として、外国人ではなく、優先してアメリカ人を雇うべきであるということを強調していました。選挙中はある意味漠然とした主張が多かったのですが、大統領に就任すると、すぐにHビザに関しての審査の厳格化を指示しました。

そして、現大統領下の移民局の審査は実務に影響が出ていることはわかっていましたが、公表されている数字でもその方針が確認されました。  

 

不許可件数は前政権の倍

移民局の統計を見ると、2018年度(2017年10月〜2018年9月)、 申請の即不許可の数が6万件を超え、前政権下の倍以上になっています。申請件数にさほど違いはないので、受理されても、不許可とされる率がかなり上がってきていることがわかります。

そして、2019年度の最初の四半期で、即不許可となる申請が2万5千件ほどになっていますから、2019年度は、10万件に達する不許可が出てくると考えられます。

したがって、以前は問題なく受理されていたようなケースでも、現在では予断を許さない状況になっているのです。

移民局の言によると、「アメリカ人の雇用を守り、些末な申請を排除しする」改革を続けているということですので、もしかしたら、初動で要件を満たすかどうか怪しい申請も実際多いのかもしれませんね。

ただ、多くの案件では弁護士が申請を代行しているでしょうから、一年間で10万件不許可になるとすれば、要件充足云々の話だけではないかもしれません。  

 

Request for Evidenceー追加資料の要求

もう一つ、即不許可にならない場合、すぐに許可をしてくれるケースもありますが、多くのケースでは、追加資料要求(Request for Evidence、略してRFEと言 われます。)を移民局から受けます。

2017年度は、8万6千件に対してRFE が出されましたが、18年度は、なんと倍近い15万件に上っています。

この RFEですが、最近の例をみると、本当に内容が微に入り細に入り、でびっくりし てしまいます。 その資料を集めるのも大変ですし、実際本当に「このような情報が審査に必要なのかなぁ」と思うものもでてきます。

このRFEが来ると(多くの申請で来るのが当たり前になってきましたが)、そのやり取りで何十日も費消するので、許可が遅れますし、法律事務所や雇用者の負担もかなり増加しています。  

今後の対策

日本人は、Hビザの他に、EビザおよびLビザの許可を得て働くことはできますが、他の外国人は、Hビザに基づいてのみ就労が可能というシチュエーションも多いのです。

数年前とは、異質とも言える移民局の対応に関して、移民弁護士も、裁判にまで訴えるなどで争っていますが、大きな政策が現状で変化することはなさそうです。

これから、Hビザを考えられている企業側、学生側も、上記の状況を踏まえて覚悟しながら、対応してください。

また、申請途中になにがあるかわかりませんの で、かなり余裕を持って申請を始めるようにしてください。

また次回新しいトピックを考えていきたいと思います。  

 


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