アメリカ法律ノート」カテゴリーアーカイブ

たらい回し-弁護士雑感-1095




 

法律ノート 第1095回 弁護士 鈴木淳司
Feb 02, 2018

たらい回し

最近航空会社がオーナーと一緒に飛行機に搭乗する動物を制限するトレンドになっているようです。先週は、エモーショナル・サポート(日本語では「心の支え」でしょうか)用のクジャクの搭乗をたとえ専用に一席用意したとしても、断ったというニュースがありました。もちろん医師の診断書や、検疫の書類など、必要であれば搭乗も許されてしかるべきですが、どの程度まで許すかの問題なのでしょうね。しかし、狭い席に座って横にクジャクが座っていたら、一時間くらいならカワイイで済むかもしれませんが、長いフライトだと落ち着けないでしょうね。

さて、今回は前回から考えてきた質問にお答えするのを一回お休みさせていただき、今週体験したあまりうれしくなかったことを考えていきたいと思いますので、おつきあいください。

私の所属する事務所が引っ越しをしたのですが、インターネットの引き入れ工事をする必要がありました。高額なのですが専用線を引き入れることになったのです。結局、どのプロバイダーのサービスが良いかよくわからなかったので、引越し先の人たちが善意で教えてくれた仲介業者に下駄を預けました。私はハイテク犯罪や、インターネット系の事件も多くやっていてそれなりに弁護士としては詳しい方なのですが、さすがにインフラになると、仲介業者の方が良く知っているだろうという判断で下駄を預けたのですが、これが間違いだったと気づいたときにはもう遅い、というやつでした。

今週一週間、インターネットのインフラの整備がスムーズに移行する予定でしたが、かなり前途多難な状況でした。サンフランシスコ市内のビルは、プロバイダーは、外部からビルまでしか入ることができず、ビル内部は、別の業者に頼まなければいけないというお約束があるそうです。そこで、依頼した業者から、さらに紹介されて、ビル内部の配線を担う業者、事務所内で配線を行う業者と、少なくとも3業者が入るという状況になりました。まあ、ここまでは良いでしょう。費用が嵩みますが世界一家賃の高いサンフランシスコです。しょうがないと割り切りました。

さて、実際に施工となったのですが、もともと依頼していた仲介業者が何もしないのです。全然、配線がうまくいきません。結局、事務所で一番ITに詳しい私が、この仲介業者と話をすることになりました。私が話をしているとその仲介業者いわく「うちは、プロバイダーと話をして、外部から内部まで回線を引いたし、それが契約内容なので、あとは他の業者と話してくれ」と言うのです。そして、その仲介業者から紹介された施工業者と話をすると、「俺は仲介業者から言われた施工をしただけで、知らない。仲介業者と話をしてくれ」となります。いわゆるたらい回しというやつです。手足でたらいを回す曲芸は面白いかもしれませんが、こちらは業務に影響がでていて、目が三角になってしまいます。3,4日すったもんだがあって、終局的には無事に解決しましたが、業者をまとめる交渉で、かなり大変でした。しかし、日本でもアメリカでも同じなのかもしれませんが、この仲介業者のように、金を取っても責任を取らないという人がいるものです。

今回、このように自分の専門外のことで嫌な目に遭ったのですが、ふと考えると、私も今まで、自分自身、弁護士の過度の専門性を前面に押すことがあまり好きではありませんでした。「自分の専門外だ」というセリフを免罪符のように使って、クライアントをたらい回す弁護士もいるのは事実です。もちろん、一定分野の訴訟など得意分野はありますが、「私は○○の専門で他の分野はよく知らない」ということに違和感があったのです。過度の専門性のアピールは、なんとなくその分野の仕事が増えて良いようにも見えますが、場合によっては、今回私が経験した、たらい回し状態になるのではと危惧します。

私はたくさんのクライアントに恵まれ20年もつきあいがある場合も少なくありません。どのような分野の話であろうと、大事な方々の話であれば、それを真摯に聞いて、私があまり知らない分野のことは、事務所内の別の弁護士や外部の人達に積極的に聞いたりします。そのことで、自分の知識のプラスにもなりますし、新しい人間関係も構築できることも多くあります。どうしても、わからなければ「わからない」と言えば良いですが、他の弁護士との連携は私が責任を持ちます。基本的には、自分の専門分野で切り分けるのではなく、やはりクライアントのために積極的に自分ができることはなんでもしたい、というスタンスを持っていたいと思っています。

実は、専門分野と言いますが、本当に特殊な事件を除けば、弁護士というのはそもそも日本で言えば六法と言って様々な社会に関係する法律を学ぶわけです。どのような事件においても、少なくともトレンドはつかめますし、ある程度の予測はできます。困った方々が、わざわざ鈴木に相談に来られているのです。少なくとも私は、そのクライアントに対して責任回避をせずに、ベストを尽くすという姿勢は弁護士を続けている以上持っていたいと思います。法律ノートも幅広く法律のことを取り上げていますが、それは私の弁護士としての姿勢でもあります。皆さんが、クジャクと一緒に飛行機に乗ろうとしたら断られたと相談されたのであれば、一応の解決策は提示できるのではないかと思っています。クジャクは今まで扱ったことはないですけどね。

次回、前回から考えている質問を続けていきたいと思います。今年のインフルエンザはかなり深刻なようです。くれぐれも気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

アメリカの司法制度ー連邦法?州法?_1094




 

法律ノート 第1094回 弁護士 鈴木淳司
Jan 29, 2018

アメリカの司法制度ー連邦法?州法?

移民法が争点となって、議会は紛糾し米国政府が数日間機能不全に陥りました。私も議会の動きを注意深く見ていたのですが、大統領関係のニュースは、メディアとの諍いはいつものことですが、大統領が美術館に絵画の貸出を希望したら、金のトイレなら貸せると、言われてしまったニュースと、大統領専用機の冷蔵庫2台が25億円で入れ替えられるというニュースしかない状況でした。随分、切ない状況ですね。私は税制改革がどのようにアメリカ国内に影響していくのか興味深く見ていますが、みなさんはどのような角度から米国の政治を考えられていますか。

今回から、また新しく皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。ある日本の弁護士の方からの質問をまとめます。
「米国法制度は連邦法と州法の二重構造で、裁判所も連邦裁判所と州裁判所の二重構造で、いずれも原則三審制とのことですが民事・刑事の事件について、連邦裁判所・州裁判所の管轄をどのように分けるのでしょうか。わける基準を教えてください。」というものです。
他にもいただいている質問では、「国立公園内で飲酒運転の罪で逮捕されましたが、通常の飲酒運転とは裁判が違うと言われています。どのような違いがあるのでしょうか」とまとめられるものがあります。これらの質問について以下考えていきましょう。

 

日本の弁護士の皆さんも、アメリカの実務については理解しにくい部分もあり、さりとて、質問をするのも、どうしたら良いのかわからないときが多々あると覆います。ぜひ、法律ノートを利用していただければ幸いですし、私も法律家からの質問であると、法律的な論点について気づかなかったところが、気づけたりもします。

面白いのは、今回2つの質問を扱いますが、弁護士の方も、飲酒運転で逮捕された方も同様のポイントを質問されているということです。ですので、一般の方が「はてな」と思うことは法律家も同じように思っているのかもしれません。

 

■連邦制度ーFederalismー州が独自の政府を持つ

まず、今回は質問を考える前提として、連邦制(Federalism)という大きなトピックを考えておきたいと思います。連邦とつく国は現在世界で少なくありません。しかし、日本人の考え方だとピンとこない可能性はありますし、無理はありません。

アメリカというのは、50州ありますが、もともと一つひとつの州は独立して機能できる政府を持っています。カリフォルニア州でも、立法、行政、そして司法の三審制があり、一つの自治体として機能できます。ここが日本の都道府県とは違うところであります。

簡単にいうと、明日、連邦政府がなくなります(今回の連邦政府の機能停止のような感じでしょうか。)ということになっても、各州はそれなりの機能をして、日常生活レベルでは問題がないと思います。日本はそうはいきません。
もちろん、都道府県のレベルで議会はありますし、行政も動いていますが、司法はそうはいきません。日本はやはり中央集権的な「日本国」の政府がないと動かないことが多々でてくると思います。

 

■州の自治権は強力

なぜ、このような対比をするかというと、アメリカの州は、日本の都道府県に比べて、かなり強力な自治権を持っているということがわかります。

アメリカの連邦制というのは、連邦政府が各州のやっていることに対して介入を最低限にしたうえで束ねるという形を取っています。
連邦政府が出来る過程での起草者の論文を見ると、まさに州に対する最小限度の介入しか許さない、という関係を取っているのです。

 

■連邦は「上級」ではない

一番、この連邦政治をわかりやすい形で表しているのが、ドラマの警察ものでしょうか。ある場面で事件が起きて、州の老練な警察官が捜査をしています。そこに、連邦警察(FBI)が乗り込んで来て、連邦も捜査していると告げます。連邦警察の捜査が気に食わない州の警察官が、独自に捜査を続ける、というパターンです。

こういうドラマで、州の警察官が連邦の警察に直立敬礼することはありませんね。もともと、アメリカの警察はしないのかもしれませんが。日本の警察庁と各都道府県警察の関係とは違って、連邦の警察が即、州警察の「上部機関」になることはないのです。
日本人だとなんとなく連邦の方が「上」という感じを抱きますが、このような感覚はアメリカにはない、ということを理解してください。

 

次回、続けていきたいと思います。
東京で雪が降って、来るメールはどれも、寒さに閉口しているような感じです。春は必ずやってきますので、体調や事故に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。




 

アメリカで学生起業_1093[2]




法律ノート 第1093回 弁護士 鈴木淳司
Jan 23, 2018

アメリカで学生起業_1093[2]

週末に法律系の記事を読んでいて大笑いしてしまいました。どこにでもありそうな飲酒運転の逮捕に関する記事でした。読み進めると、昼間から酔っ払った運転手が、銀行のドライブアップテラー(車に乗りながら銀行窓口業務を受けられる)に乗り付けてブリトー(メキシコ料理)を注文して逮捕された、とありました。本人も酔いから醒めたら頭を抱えてしまいそうな状況ですね。人間のやることは考えもつかないことがいくらでもありますね。

 

さて前回から考えてきた質問を今回も続けて考えていきます。

いただいている内容は「私は日本から(アメリカに)留学している大学院生です。エンジニアを専攻していて、現在自分のアイディアを基礎にして起業をしたいと思っています。できれば、将来はアメリカに留まり仕事ができれば良いな、と考えています。私の友人でも、アメリカ市民権を持っていたり、永住権を持っている人は簡単に起業をして、会社経営をはじめているのですが、私はF-1ビザ(学生ビザ)しかないため、普通の学生とは違った形で起業しなければならないのか、など考えています。ネットで色々質問をしても、答えがバラバラで、どのように考えたらよいのかわかりません。一般的な質問かもしれませんが、留学生の起業について、どうやったら良いのか法律的に教えてください。」というものです。

前回、一般論を考えてきましたが、学生ビザでの起業というのは、いろいろな法律が絡んで、なかなか統一的な答えがないところです。今回具体的に、解決策を探っていきましょう。

ただ、前回も注意を喚起しましたが、現在アメリカの政治では移民法に関する議論が活発になされていますので、以下の考え方は現状の考え方だということを理解してください

 

■外国人でも株主になれる

まず、外国人がアメリカの法律に基づいて設立された会社の株主になることは原則制限されていません
日本に在住する日本人もアメリカ企業の株を所有することは当たり前に行われています。投資は原則国境がないというのがアメリカの考え方です。

したがって、学生ビザでアメリカに留学している日本人もアメリカの会社の株主になることは問題がありません。かりに、起業ということでアメリカの会社を設立する場合、株主になることはまったく問題はありません。株主は実質的な会社のオーナーです。
そうすると、一つの考え方としては会社を設立して、その株主になることは問題ないわけです。株主となって、活動をするのはひとつの考え方です。

 

■アメリカの会社を学生が経営する

次に、会社を設立したとして、その経営者になると、少し状況が違ってきます。
経営をするということは、会社のために働くというニュアンスが入ってきます。

学生ビザではアメリカ国内では働けないということが前提になるわけで、会社の株主だけではなく社長になり、業務を行うと、学生ビザの目的に抵触する可能性があるわけです。

ここで私の弁護士のコツについてすべて公開することはできませんが、学生ビザと抵触しない形で経営に関わるような合法的な形をつくることは可能です。

もちろん制約はありますが、現在の移民法と会社法の解釈では形はつくれると思います。
したがって、会社の設立をして起業をするということは諦めることはありません

 

■給与を受けることは別

会社を設立したとしても、給与を受けることは学生ビザではできません

したがって、お金の流れには気をつけなければいけません。
ただ、いろいろな方法で会社は経費を出しますので、移民法に抵触しないような設定をすることはある程度は可能かと思います。

会社を設立すると、毎年税務申告もしなければなりませんし、州の登録なども怠らないような形をとらなければなりませんから、それなりに仕事は増えます。

しかし、会社があるということで、メリットもビジネス的にはでてきますので、諦めないで方法論を考えられたら良いと思います。

ただ、移民法が厳しくなっているアメリカの現状では必ず、起業について経験がある専門家に相談されて、慎重に進められることが重要だと思います。

次回また新しくいただいている質問を考えたいと思います。
いろいろなところで雪が降るという話題を耳にします。体調や事故に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

アメリカで学生起業_1092[1]




 

法律ノート 第1092回 弁護士 鈴木淳司
Jan 17, 2018

アメリカで学生起業_1092[1]

連邦の祝日でもあるマーチン・ルーサー・キング・ジュニアデーで3連休でした。私の所属する事務所も裁判所とカレンダーをシンクロしているので休みでした。週末の天気は暖かく外にいても、寒いと感じませんでした。ただ、この西海岸の暖冬が、夏にどう影響するのか心配です。皆さんは2018年に慣れを感じはじめていらっしゃいますか。

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。
まとめると「私は日本から(アメリカに)留学している大学院生です。エンジニアを専攻していて、現在自分のアイディアを基礎にして起業をしたいと思っています。できれば、将来はアメリカに留まり仕事ができれば良いな、と考えています。私の友人でも、アメリカ市民権を持っていたり、永住権を持っている人は簡単に起業をして、会社経営をはじめているのですが、私はF-1ビザ(学生ビザ)しかないため、普通の学生とは違った形で起業しなければならないのか、など考えています。ネットで色々質問をしても、答えがバラバラで、どのように考えたらよいのかわかりません。一般的な質問かもしれませんが、留学生の起業について、どうやったら良いのか法律的に教えてください。」というものです。

 

■揺れるアメリカ移民法

今、トランプ政権下の移民政策は色々な形で揺れています。

本気で、トランプ政権はメキシコ国境との壁をつくると息巻いていますし、DACA法(不法移民に連れて来られた子の保護を目的とした法)も巻き戻して無効にするとも言っています。民主党は応戦していますが、先週もトランプ大統領はアフリカの国々を卑下するような発言をした、しない、を発端に移民政策の対立を招いている状況です。

 

■留学生の職業訓練 OPTの制限

トランプ政権は制限的な移民政策の推進作の一つとして、留学生の職業訓練である、OPT(Optional Practical Training)というプログラムを制限しようとしています。

アメリカ人の雇用を優先するために、留学生の雇用を減らすべきだという単純な発想ですが、多くのアメリカにある私学大学は留学生の支払う学費などが貴重な財源になっているので、かりに留学生が減ってしまうと教育界全体に影響する可能性があります。

現在でも、若い人たちは、アメリカは学費が高く、留学後に働けるチャンスが少ないので、オーストラリアに行く、という考えを持っている場合が多くあります。
さらにトランプ政権の移民政策制限がきつくなってくると、さらに渡米しようとする留学生が減ってしまうことが危惧されますね。

 

■学生ビザは、学業目的

今回いただいている質問に関しても、今後回答を変更しなければならない可能性がでてきます。現状で、お答えできる範囲で考えていきたいと思います。

さて、留学生ということで、学生ビザを持ちながら大学院に通われているということが質問からわかります。学生ビザ(F-1ビザ)は勉学のための代表的なビザですが、他にもMビザやJビザなどで学校に籍を置く場合があります。

学生ビザの特徴としては、学習することを目的とする場合に発給されるビザですので、継続的に学校に通い、単位を取らなければなりません。

学生ビザで米国に滞在している間は、米国内で就労することは一部の例外を除き許されていません。この例外がプラクティカルトレーニングという実務経験のために許された方法です。
この学生ビザの要件から考えると、米国内で起業することも難しいと考えられます。
また、そのように考えている弁護士も少なくないかもしれません。

 

■勉強しながら起業するベンチャーも

しかし、一方で起業をしたいと考えている留学生もたくさんいるわけで、実際問題として現在では勉強をしながら起業をするということも驚くことではありません。

また、実際に成功しているベンチャーにしても、留学生がはじめたものが多くあります。

 

■会社法と移民法は別の世界

ここでまず皆さんに理解していただきたいのは、会社に関する法律と移民法に関する法律というのは、かなり性質が違う法律です。

そもそも、会社に関する法律はアメリカにある各州がそれぞれ決めているのですが、移民法というのは連邦の法律であり、アメリカ全土に対して均一に適用されます。
移民法というのは、外国人のアメリカとのかかわりを規定するものですが、会社法には、外国人うんぬんということは基本的にでてきません。

したがって、今回の質問に関しては、この会社法と移民法の考えてをわけて理解したうえで、両者の絡み合いを考えなければなりません。

次回具体的にここから考えていきましょう。

 

天気が悪いと気持ちもどんよりしますので、しっかり寒くても運動を怠らずまた一週間がんばっていきましょうね。




 

2017年の締めくくりに

法律ノート 第1090回 弁護士 鈴木淳司
Dec 31, 2017

 

2017年の締めくくりに

 

この原稿を今年最後の法律ノートとさせてください。今年も一年早かった様に感じますが、色々なことが起こってまったく退屈しませんでした。人が絡む弁護士の仕事は似たような事件でも、一つひとつ違うものだとまた実感しました。いろいろな人に出会い、いろいろ新しい体験をさせてもらいました。

 

 

インターネットの技術の発展は凄まじく、サンフランシスコの街ごと飲み込んでしまう勢いがあります。法律界においても、従来の業界に変化が出てきています。
人工知能が発達してきて、弁護士や法曹の仕事も脅かされるのではないか、という話があります。弁護士をやったことがない日本のIT企業の経営者が、弁護士の仕事のほぼ全部が人工知能で代替できる、と無知か、熟知か、わかりませんが、堂々と記事にしていました。その記事を送ってくれた弁護士は苦笑いしていましたが、法律のリサーチを行う人工知能がすでに出てきているのは事実です。私の仕事をロボットに変わってもらえるなら、変わってもらってかまわないのですが、そうすると他に職を見つけなければならないですかね。

 

 

弁護士の仕事をしていて、2017年に一番驚いた技術の発展は連邦刑務所に収監されている受刑者とメールでやり取りができるという点です。もちろんすべての受刑者に許容されているわけではありませんし、メールの内容も政府側に筒抜けですが、それでも、メールで受刑者とやり取りできるというのは、時代の流れだな、と思わされました。それでも長期で受刑している人たちにとっては、いちいち手紙を書かなくても、メールでやり取りができることはかなり負担が軽くなるのではないかと思いました。

 

 

私が担当した多くの案件においても、なんらかの形でITやコンピュータ関連が関わっていました。サンフランシスコ周辺では企業もIT関連が多いですし、事件になるものも刑事民事を問わず、IT絡みが多いのが現実です。それだけ、サンフランシスコ・ベイエリアは、IT業界に支えられているということなのでしょう。

IT業界のおかげなのでしょうが、サンフランシスコ・ベイエリアの景気は「良い」と一般的には考えられています。しかし、「良い」景気というのも、何を基準にするかで、色が変わってくると思います。ある記事によると、サンフランシスコの賃料はなんでも世界一高いそうです。私の所属する事務所も引っ越しをしますが、高い家賃の影響もあります。なかなか若い人たちが家を買えないことと、IT業界では、数年で仕事が変わっていくことなどが影響し、とにかく賃料の上昇を招いています。

さらに、コンベンションなどがあると、場合によってはホテルが一泊1000ドルを超えることもあります。一般的な物価もサンフランシスコ・ベイエリアは必要以上に高いです。昼ごはんを食べても、一人20ドルは当たり前です。白タクの運転手もベイエリアは儲かるようで、周辺都市から流入してきますし、どんどん建物も建っていくので、高速道路の混雑がロスアンゼルスのように常態化してきました。需要があるので、どんどん物価が上がっていくのでしょうが、普通の商売をしている人たちは、「やっていけない」というのが実際の状況であります。日本の企業もコスト面で進出しづらくなっているようです。

 

 

もう一つ今年感じた影響は、現政権の移民政策厳格化です。私の所属する事務所でも、移民法チームがあるのですが、かなり審査が厳格化されたことと、遅滞が生じ始めていることが耳に入ってきています。来年も、緩和される方向ではないので、この政府方針については、かなり日本人にも影響していくのではないかと憂慮しています。

 

 

このように、アメリカでは好景気と言われる反面、やはりいろいろな影が生じているように感じられた1年でした。ただ、経済や政策がどのように変化をしても、しばらくは弁護士の仕事はなくならないようです。仕事は減るどころか増えていっています。ですので、まだまだ自分のポリシーを崩さす、粛々と使命を全うしていく2018年にしたいと思っています。

 

 

読者の皆さん、また1年間法律ノートをご愛顧いただきまして、誠にありがとうございました。来年も、変わらず続けていくつもりですので、どうかよろしくお願いいたします。

皆さんにとって、平穏で幸せを感じられる2018年でありますように、心からお祈りしております。

アメリカのビザは取りにくくなっている?最近の米移民行政の傾向_1085




 

法律ノート 第1085回 弁護士 鈴木淳司
Nov 27, 2017

 

アメリカのビザは取りにくくなっている?最近の米移民行政の傾向

 

サンクスギビングが終わりましたね。皆さんはどのように過ごされたのでしょうか。私は長年の友人宅に招かれてターキーをいただきました。一昔前はサンクスギビング(木曜日)の翌日は、ブラック・フライデーと呼ばれて、各小売店では1年で一番安売りをするということが定番で、開店前から人だかりとなるなど、騒ぎになっていたものです。ところが、私も何か安くなっていないかと先週の金曜日にある小売店舗に行ってみたのですが、閑散として客もおらず、店員さんも暇そうでした。何が安くなっているの?と聞くと、全店15パーセントオフだよ、という返答でしたので、よく値段をみると、インターネット小売にはかなわない値段でした。そうです、ホリデーショッピングもほぼインターネット小売に移行してしまったのですね。モールにもなかなか客が集まらないようで、ホリデーシーズンに人が賑わう場所もどんどんなくなってきている現実に少々寂しい思いがしました。

 

移民局の審査は厳格化傾向に

さて、今回は一般的な内容になってしまいますが、現在のアメリカの移民行政の現実について考えたいと思います。最近、特に外国人のビザ申請について、移民局の審査が厳格化してきているように思います。

以前は問題なく通った申請内容でも、今年に入ってから、通らなくなる例が多くなりました。移民法協会などでも、活発に不可解な拒否事例が紹介されています。最近ではニューヨークで車を暴走させる事件があり、その犯人が永住権抽選制度を使って入ってきたため、トランプ大統領は、永住権の抽選を廃止せよ、と議会に迫っています。

 

確かに広汎な政府裁量が働く分野だけれども

移民やビザの申請を許可するかどうかは、米国政府の広汎な裁量に任されています。

これは、どの国でも似たようなもので、日本も外国人の日本入国、滞在を裁量で決めることができます。判例でも日本の政府は「広汎な裁量」を持っている、と明示されています。

ですので、入国の可否はかなり幅が広く、時代によっても傾向が変わってきます。オバマ政権のときと、現在のトランプ政権では移民局の上層部もかなり入れ替わり、保護主義的な色彩およびテロ対策の色彩がかなり濃くなってきています。

 

具体的なビザ申請の拒否事例

最近のビザ申請の拒否の傾向を、ここでまとめたいと思います。今まで申請が問題なく許されていたケースが拒否される事例を見ていると一定の傾向が考えられます。

 

アメリカの雇用創出に寄与するかどうか

一つ目ですが、たとえば外国企業がアメリカに進出してくる場合、かなり移民局が重視しているのは、アメリカ市民、永住権保持者を雇用しているかどうかです。

すなわち、多くのアメリカ人の雇用を創出していれば、それだけ企業が派遣する外国人のビザも取りやすい傾向が顕著になってきました。これは、トランプ政権が打ち出しているアメリカ・ファースト政策がかなり反映されているポイントです。

平たく言うと、外国人ばかりがアメリカに入ってきて商活動をするのはアメリカ人にとって不利益なので、アメリカ人の雇用を増やす外国企業をより優先するということです。

外国企業がアメリカに進出してきて、すぐにアメリカ人を雇用できるか、といえばそうではないかもしれませんが、現状では、とにかくアメリカ人の雇用を増やすことに貢献すればするほど、ビザの許可がおりやすくなるという傾向が鮮明になってきました。以前は将来、この程度アメリカ人を雇用する準備があるというビジネスプランを出せば外国企業の申請は許可されていましたが、現状、ケースによっては、実際にアメリカ人を雇用して、その給与明細を提出するように指示される例もあります。

 

投資額、そして投資形態が重視

2つ目ですが、外国企業がアメリカに進出する場合、たとえば、Eビザ(投資ビザ)では、どの程度の投資ができるのかが、許可の目安となっていました。この投資についても、額が大きければ大きいほど、許可されやすいという傾向が今までもありました。

最近では、この外国企業による投資についても、アメリカ人またはアメリカ企業がどの程度利益を得られるのかが重視されるようになってきました。
すなわち、投資金を銀行口座に貯めておくだけでは足りず、実際に投資を使った内容を移民局は注目しています。たとえば、不動産も持っているだけではビザ申請用の「投資」とはあまり考えられず、一方で、建築するのに投資を使うなど、実際にアメリカの会社や人にお金が落ちることが移民法上の「投資」として重視されるようになってきました。アメリカ国内にお金をたくさん落としてくれれば、ビザが出る、といったところでしょうか。

このように、トランプ政権下の移民行政は、前政権下と比べるとドラスティックな変化があり、外国の企業も多額の投資ができない場合にはかなり苦戦している現状があります。

 

 

今回は、ここまでとしたいですが、また実際に変化がある場合には、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

これからクリスマスのイルミネーションが綺麗になる時期ですね。夜の輝きを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 




管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[4]




 

法律ノート 第1078回 弁護士 鈴木淳司
Oct 11, 2017

月曜日はコロンバスデーというということで、私の所属する事務所は裁判所の休みに合わせているので、休みでした。私も三連休をいただき、かなり気分転換をしました。コロンバスデーというのは微妙な日で、金融機関や司法関係はおやすみですが、ビジネスは一般的に営業しています。そういえば、コロンバスは先住民を多数殺めたという歴史認識を持つ人達が、名称を先住民の日にするべきだとデモをしていました。どこかの国も歴史認識で争っていますが、情報網が発達した現代では、戦争だけではなく、歴史認識を基礎とする意見の対立が激化していきそうですね。ベイエリアは、ナパの大火事で煙ったいですが、みなさんは秋を楽しまれていますか。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[4]

 

さて、前回も引き続き、次のような質問です。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。

 この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。

私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

今回はその最終回となります。

 

仲裁の進み方ーイメージ柔軟なミニ裁判

今回は、仲裁はどのように進行していくのか考えましょう。

仲裁というのは、裁判と違って、どちらの当事者が強制的に参加させられるものではありませんお互いに同意があってはじめて成り立つ手続きであります。

今回の質問されている方は、契約書に仲裁を同意する一文が入っていることから、同意はしていると考えられるでしょう。

さて、仲裁というのは、手続き的には、ミニ裁判といった感じでしょうか。
いわゆる事実的な判断をする仲裁人というのがいます。この仲裁人も何人かいるなかから、両当事者の合意で選ばれます

元裁判官という場合もあれば、経験豊富な訴訟弁護士なども選ばれるでしょう。
ただ司法関係者である必要はまったくなく、医師や建築家もなることができます。また、一人の場合もありますし、3人の場合もあります。
基本的に、両当事者の合意があればどのようなアレンジメントも可能なのです。

仲裁人というのは、両当事者の話を聞いて、そのうえで、事実的な判断をする役割を負います。本来の裁判でいえば、陪審員や、裁判官みたいな立場です。

 

場所も選ばない

仲裁というのは、私的に合意をして行われる事実判断の場ですので、裁判所で行われるわけではなく、通常のオフィスなどで充分に対応が可能です。

 

証拠法の適用がない

また、この部分は決定的に裁判と違うのですが、証拠法の適用がありません

裁判で使われる「証拠」と呼ばれるものは、かなり複雑なプロセスを経てから、裁判に登場にします。何か情報があれば、即裁判上の「証拠」になるわけではありません。

仲裁はこの点フリースタイルですから、仲裁人の判断で、裁判で証拠にならないものも証拠にすることが可能になります

良い面と悪い面があると思いますが、フレキシブルに色々なことができるということは争いがありません。

たとえば、今回質問されている方も、わざわざ仲裁をするのにアメリカまで来るのは嫌だと思われていれば、代理人を立てて仲裁を行い、証言をビデオなど通して行う、という方法も異議がなければ可能です。ただ、直接証言するインパクトはないので実際、説得力は減殺される可能性はありますね。

 

以上で大まかですが、今回の質問を考えてみました。もし、何か疑問が読者の方にあれば、また追加で質問していただければと思います。

今年の夏は暑かったですが、今はずいぶん気持ち良い季節になりました。このまま秋が続けばいいのにな、と思います。私は風邪からすっかり回復して元気満タン状態です。みなさんも秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 




 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[3]




 

法律ノート 第1077回 弁護士 鈴木淳司
September 30, 2017

今、移民局を統括する国土安全保障省のトップが、政府などの飛行機を私用で使ったのではないかということがニュースになっています。本人は不正利用を否定しているようですが、一部返金するということを言っています。それで飛行機のチャーター代を返金するのかと思ったら、全額を一人分の運賃で割った金額ということで、少々せこいなぁ、と思っています。最近はよく日本でもアメリカも政治家のスキャンダルがメディアに露出していますね。政治家も大変です。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[3]

さて、前回まで考えてきた「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょうか。

 

紛争を解決するための手続き

前回まで、今回質問のあった紛争の実体的な内容について吟味してきました。今回は手続き的にどうなるのか考えていきたいと思います。

 

契約書の仲裁条項

まず、今回質問されている方は不動産の管理契約をカリフォルニアの会社と締結されているようです。

この契約書がカギとなるのですが、通常はこのような契約書を不動産業者側が出してきたとすれば、そのなかに強制仲裁条項が入っていることが少なくありません。もちろん、あまりにも不当な仲裁の内容であれば、争うことも考えられますが、最近の契約書では調停や仲裁事項について、かなり綿密に練られた条項が入っています。また、不動産関係では、業者を束ねたり、指導する政府や団体が多くありますが、モデル契約書というのを用意していることも多く、なかなか文面はしっかりしているものも多くあります。

数回前に考えましたが、仲裁をするというのは悪いことではありません。訴訟の様にお金も時間もかからないケースが多いです。

かりに、何も仲裁条項に関して違法な内容であったり、一方当事者にかなり不当でない限り、有効となりますので、この場合仲裁の対象となる内容については、仲裁をすることで解決をはかることになろうかと思います。

そして、仲裁条項には、通常、仲裁の方法や場所についても明記があります。

かりに場所がカリフォルニア州のどこどこ、と記載されていれば、その記載に沿って仲裁が行われることになります。もちろん、今回質問されている方のように、日本からわざわざカリフォルニアに来るのは大変かもしれませんが、契約書にそのように記載して、その契約書に同意していれば、基本的には、契約書に記載された形での仲裁を行わなければなりません。

 

仲裁条項は尊重した方が無難

仲裁条項というのは、もともと訴訟を回避するために、記載される条項ですから、契約の規定を無視して、今回質問されている方のように、いきなり訴訟提起をするということはお勧めできません。たぶん、訴訟を提起した場合、相手方は仲裁を促し、その立場に裁判所も同意することになると思います。そうすると、訴訟を提起しても労力の無駄であって元の木阿弥になる可能性が大きいです。

アメリカでは、契約書にサインをしてしまったら、その内容についてあとになってから文句を言うことはなかなかできません。日本では、「契約に書いてあるけどさぁ、でも…」という場面もあるかもしれませんが、アメリカでは契約書に沿って粛々と権利を行使し、義務を負うというイメージでしょうか。

ですので、今回質問されている方も、カリフォルニアで仲裁するのは気に入らないかもしれませんが、契約に記載されている以上、やはりその内容に沿って権利を実現していくのが妥当といえると思います。

 

仲裁はどのように進んでいくか

では、仲裁とはどのような形で進行していくのでしょうか。次回ここから考えていきたいと思います。

 

私は風邪をもらったのか、少々体調が優れなかったのですが、だいぶリカバリーしてきました。これから寒くなると、風邪が流行するので、みなさんも体調には気をつけてくださいね。
また、一週間、楽しいことを秋の中に見つけながらがんばっていきましょうね。



 


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管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[2]




 

法律ノート 第1076回 弁護士 鈴木淳司
September 23, 2017

こないだうどんを食べていてふと気になって調べてみたのですが、なぜ七味唐辛子は「七味」なのでしょうか。もともと薬であったとか、単なる商品名だとか、諸説あるのですが、7種類の材料入っていなくても、七味唐辛子として成立するそうです。そういえば、その昔、なぜゴレンジャーはなぜ5人いないと効果的に戦えないのか不思議でしようがなかったのですが、同じようなもやもや感が大人になって蘇りました。

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[2]

 

さて、前回考え始めた質問を、次のようなものです。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

 

支出の正当性はそもそも不透明

さて、前回少々お話した、業者が行った支出管理が不透明であるという主張について、どのように考えるべきなのでしょうか。

そもそも、建築関係のコストや人件費というのは、かなり幅があり、どこまでが正当でどこからが不当なのか、線引きはかなり難しい面があります。

私もかなり多くの建築関係の事案を見てきましたが、(1)架空請求や水増し請求、それに(2)契約に明らかに反した支出については、不当と言いやすいと思います。

一方で、単に「高い」と感じるだけでは不当とはいえないであろうと思います。(1)についても、事実的にそれなりに証拠を揃えないと主張できません。(2)については、修繕が契約に明記はないが、「必要であった」と主張されると、必要な修繕ということになってしまいます。

 

訴訟も泥沼化する可能性

したがって、法律の問題というよりも、かなり事実的な内容が問われるので、その筋の専門家などの意見を聞かなければならず、訴訟になるとかなり帰趨がわかりにくい割には、労力がかかるパターンの事件になりそうです。

訴訟が泥沼化するよりは、後述する調停や仲裁のような代替的紛争解決手段の方が妥当かもしれません。

 

不当と違法の違い

ところで、これまで読んでいただくとわかると思いますが、「不当」という言葉を使ってきました。「不法」と「違法」といった法律用語とは若干ニュアンスを異にするので、ご注意いただきたいところです。一般的には、不当だから=悪い=損害賠償を受けられるのだ、というように考えられたりもするのですが、実際には、このように単純ではありません。

例を使って考えましょう。
たとえば、誰かを騙してお金を自分の銀行口座に振り込ませ、それを使ってしまッタトしましょう。これは、「詐欺」という積極的な悪い行為をしているのですから、その行為は違法であって、違法なことをすれば、損害賠償をしなければならないという法律の仕組みになっているのは、理解するのが簡単です。

では、一方で、あまり自分の口座の残金を気にせずに口座のお金を使っていたら、予期せず誤振込があって、そのお金も使ってしまった、という事例はどうでしょうか。

この人は、積極的に悪いことをして、自分の口座にお金を振り込ませているわけではありませんし、残高を気にせずに遣ってしまった、ということであれば、誤振込金を故意に使ってしまおうという気持ちもなさそうです。
ただ、間違って、何も理由がなくお金を受け取っているわけですから、それは正当な持ち主に返さなければなりません。「不当」すなわち、理由なくお金は受け取っていますが、「違法」だ、「君が悪いことをしたんだ」とは言い切れないわけです。

 

管理会社は「不当」と主張するのは難しい

今回考えている事例において、ここまで考えたように、当、不当について主張しあうことは、かなりの事実的な問題を含んでいるので、簡単に答えがでるわけではありません。

加えて、業者が「悪いことをしたのだ」と主張するのは、さらに大変で、事実を積み重ねて主張をレベルアップしなければならなくなりそうです。

 

仲裁という解決方法

さて、業者の支出が不当かどうかを判断するのに、今回質問されている方は、仲裁をしなければならないのでしょうか。次回は、仲裁とはどのようなものか、また、仲裁をカリフォルニアでしなければならないのかを考えていきましょう。

 

もう、秋分の日ですか。あれだけ暑い夏を体験すると、なんだか寒くなっていくのが信じられませんが、皆さん、ぜひ体調管理に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。



 


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管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[1]




 

法律ノート 第1075回 弁護士 鈴木淳司
September 16, 2017

しかし、ニュースの速報でまた北朝鮮がミサイルを発射したと流れていますが、核実験も同時に進めているわけで、かなり深刻なレベルの緊張状態になっています。かなりの干ばつで北朝鮮の国民は飢えに苦しんでいるのに、国の指導者は一体何をやっていて、何に怒っているのか掴みどころがありません。現状を見るとはっきり言って「戦争」という言葉が現実味を帯びるような危険に日本は晒されていると思うのですが。私は北朝鮮の国民が可哀想でなりません。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[1]

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、次のような内容になります。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

質問が多岐に渡っていて、かなり具体的な内容が書かれていました。法律ノートはあくまでも一般的な法の考え方を提供する場所ですので、具体的な相談は、個別に専門の方にされてくださいね。ここでは、いただいた質問に関して、上記の内容に絞って考えていきたいとおもいます。

 

外国在住のまま不動産管理を委託

さて、今回質問をされている方のように、現在はカリフォルニア州にはお住まいではなく、外国から、不動産の管理を遠隔で行うような場合、今回のケースのように管理会社と揉めるケースは少なくありません

特に不動産は、常時メンテナンスするための経費がかかりますので、家賃収入があっても、同時に出費が多くなることもよく聞く話です。場合によっては、修理修繕のために、お金を持ち出す必要性も出てきます。

今回質問されている方も、かなりの修理修繕費がかかっていることが気になり、色々質問を始めたようですが、納得するには至っていないようです。

 

管理契約の内容は?

まず、今回のような相談事例の場合、最初に確認しなければならないのが、管理契約がどのように規律されているかということです。

通常は「契約書」が存在しますので、具体的に法律家に相談される場合には、最初に契約書を用意することが必要になります。もちろん、友人に管理を頼んでいるような場合には口約束もあるでしょうが、管理会社と契約をしているのであれば、ほぼ契約書が存在するでしょう。

この契約書が基本的な契約関係を規律していますので、どのような内容になっているのか確認していく必要があります。

 

管理契約の内容を確認

管理契約は様々な契約形態が考えられますが、(1)管理の内容、および(2)管理することに対する対価については確実に規定があるはずです。

管理の内容も多岐にわたると思いますが、そのなかで、定期的に収支報告をするということも通常盛り込まれていると思います。4半期に一度とか、毎月といった周期で、収支報告を出す、といった条項になるでしょうか。まずは、この収支報告が内容として充分かどうかは確認する必要があると思います。

特に支出については曖昧だと思った場合、さらに管理会社が説明を求められることも少なくありません。業者の選定などに疑問が発生する場合もあるでしょう。

かりに、支出に関して、疑問が発生し解決できない場合には、他の管理会社の意見をもらうなど、第三者の意見を得てみる必要があると思います。

 

管理会社を変更する、という選択

そのうえで、信用できないと判断すれば、他の管理会社に変更することも視野に入れれば良いと思います。

不動産の管理というのは、時間的に継続して信用していかなければいけない関係です。一度信頼関係が崩れてしまうと、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というような、不信感が増大してしまうパターンを多く見てきました。

早めに、できるだけ支出に関して情報を集め、第三者の意見を聞いたうえで、決断をするのが上手なやり方だと思います。ただ、支出について、不当かどうかを判断するのは、なかなか大変な問題であります。

ここから次回考えていきたいと思います。

 

先日バーベキューで、ナスやしいたけを食べました。まだ暑い日が続きますが、ところどころで、秋の味覚を探しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 


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子どもの監護と養育費[2]-1074

法律ノート 第1074回 弁護士 鈴木淳司
September 12, 2017




 

日本では最近、政治家のスキャンダルが頻繁にニュースになっていますが、政治の問題とはまったく関係がなく、いわゆるゴシップ記事だらけですね。アメリカでも、ロシアとの関係云々など、いわゆる「疑惑」的な話が多いのですが、色々な政治の分野で本論が埋まってしまって、消費者が本当に必要としている情報がメディアでもネットでも見つからないような状況になってきているように思います。情報が氾濫すると、何が本論なのか見極める利用者側の目というのが逆に試されている時代なのでしょうか。

 

子どもの監護と養育費[2]-1074

 

少々間が空いてしまいましたが、第1072回で尻切れトンボとなってしまった問題を考えていきましょう。

「日本在住のシングルマザーです。アメリカで結婚、出産しました。夫とアメリカで離婚し、子供を日本(関西圏)で育てています。夫はアメリカと日本を行き来し、夏休みの間は子供と時間を過ごすという取決めでしたが、夫の仕事の都合もあって、それもできずに、再度、子供の監護について揉めています。揉めている一つの理由として、今まで養育費を夫はまったく支払っていません。私は日本にいるのですが、このような場合に養育費の請求をまずできないものでしょうか。私は、私の父母に頼って肩身が狭い思いをしながら、子供を育てています。」という質問です。

 

日本在住で外国に養育費請求することの困難

この質問を前回考えたときに、なかなか法律家として一般的に考えると難しい問題が生じるという現実を考えました。

今回質問されている方は関西に子供さんと住んでいますが、子の父親はアメリカにいるわけです。日本の弁護士に相談すれば、日本における手続きでなんとかならないか、考えることになります。当然です。そうすると、日本における考え方としては、日本で養育費に関して判決を取って、その判決をアメリカで執行する、ということが法律論的には考えられます。悪くありません。

一方で、日本に住みながら、アメリカでの養育の取立ての問題をアメリカにいる弁護士に相談することも、お金はかかるでしょうし、簡単ではないと思います。

 

養育費の取立て制度

実はこのような問題について、基本的に弁護士に相談しなくても解決する方法があるのです。

たぶん、法律実務書などにもあまり載っていないのですが、基本的な考え方を法律ノートで考えておきますので、ぜひ法曹の方も、問題を抱えている方も活用されてください。

アメリカでは、養育費の取立てをいちいち裁判所に申し立てなくても、すでに養育費の支払いが決まっていれば、その相手方の住むところを管轄する検察局(District Attorney)が取立てを代行してくれます。少なくともカリフォルニア州はそのようなシステムになっています。

したがって、養育費がもらえなくて困っている今回相談されている方のような場合には、直接相手方の男性が住むところを管轄する検察局に連絡をして、取り立ててもらうということができます。法律で、その取立ての詳細についても規定されているのです。

もちろん、このような取立てのための連絡や手続きをするのが個人には難しいかもしれません。そういう場合には、経験のある人や、弁護士などに、この手続をするためのサポートを頼めるか聞いてみるのが良いと思います。場合によって、検事局は通訳も用意してくれると思います。

 

日本から養育費請求を認める判例

実は、以前にも法律ノートでご紹介したかもしれませんが、今回いただいている事例のように、日本在住で、未成年者の養育をしながらカリフォルニア州にいる夫に養育費を請求したところ、拒否してきた事由を私の所属する事務所で争いました。

一審は「日本に在住している子の母はカリフォルニア州に住む元夫に養育費は請求できない」と棄却されたので、もちろん控訴しました。そうしたところ、一審判決が破棄されて、私の所属する事務所の主張が認められました。裁判例として、今でも残っています。この裁判例が確定してから、日本に在住している人でも、検察局は積極的に養育費を請求してくれるようになりました。

 

根底にあるのは子どもの利益保護と養育負担の公平

子育てが大変な時期にシングルマザーで仕事もしなければならないと大変でしょう。

でも、上記のようにアメリカでは子供の利益の保護、養育の苦労の軽減を積極的に考えてくれています。諦めないで、こういった制度を活用されたら良いと思います。

 

 

また、次回新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

天気が暑かったり、いきなり涼しくなったり、と忙しいですが、暑い時はまだまだ暑いので、脱水状態にならないように気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。




 

我は売る、さらばベスパよ(2)-ネット個人売買とリスク_1073

法律ノート 第1073回 弁護士 鈴木淳司
September 6, 2017




 

我は売る、さらばベスパよ(2)

前回からの続きです。さて、思い入れのあるベスパをインターネットの広告に載せたところ、一時間も経たないうちに興味があるという連絡がバタバタ入るようになりました。

ところが、ほぼ9割方の連絡は結論として、正当な購入を目的とするものではありませんでした。これがネット社会の現実でしょうか。

 

まず、興味があるから返答してほしい、ということで律儀に返答をすると、中古車を売る前に検査をするべきで、その価格は他社よりも安いです、という売り込みのセールがいくつかありました。また、丁寧ではありましたが、売れないなら、寄付してくださいという申込みもありました。学生なので売り出し価格の半額程度払うのでなんとかしてくれというのは、来た連絡のなかではマシな方だったかもしれません。これらは詐欺ということではありませんでしたが、趣旨違いという感じでしょうか。

悪質なのは、Paypalで支払う、という申し込みです。いきなり連絡が来て、遠くに住んでいるので見に行けないが、Paypalで言い値を支払う、と言ってきます。この手の「遠隔地に住んでいるので、Paypalで対価を払うという」のは、ほぼ詐欺です。詐欺の注意喚起をしているサイトにも定番の詐欺として載っています。
Paypalというのは、いわゆる支払代行サイトで、一定の取引の内容は保証してくれるようになっていますが、個人売買はほぼ保証はしてくれないのです。メールなどのやりとりで、Paypalを使って支払ったように見せかけて、現物を詐取するというやり方です。ひどい場合には、支払いすぎたので、現物とともにPaypal代金を一部返金してくれ、といって現物だけではなく現金まで詐取されてしまうケースも多くあるそうです。ですので、個人売買においては、Paypalなどはやめておいたほうがよく、できればニコニコ現金取引だけにしておくべきでしょう。
私も、Paypalは受け付けませんとはっきり広告に書いていたのですが、かなりの数のPaypal詐欺メールに接しました。ひどいメールのやり取りになると、私がPaypalは受け付けません、というと、返信に罵詈雑言が書かれているものもありました。それも英語の文法が間違っているのです。苦笑いしてしまいましたが、一瞬不愉快になりますよね。

それから、もう少し手の込んだ手口では、実際に電話で話すまでの状況になったのですが、銀行振出小切手で支払う、と言ってくる人もいました。これも詐欺です。私は、実際に会って、現物を引渡し、現金がほしい、と広告に書いていたのですが、見に行きたいけど、自分の記録として残したいので銀行振出小切手(キャッシャーズチェック)で支払っても良いか、というリクエストです。実際に見に来て買うのであれば、現金をちょうだい、と言うと、それでも不安だから一緒に銀行にいくのはどうか、と言ってきます。私は、銀行に行くなら、その場で現金をおろして、それを確認したうえで、受領証を書くよ、と言ったら、また御託を並べます。受領証ってどういうのか、わからないなぁ、とかとぼけたことを言うので、私は弁護士なので、法的に有効な書類ならすぐに作成できるよ、と言ったら「考えて、また連絡するよ」ということで、もう二度と連絡はありません。銀行振出小切手の詐欺については、少し前に法律ノートでも取り上げましたが、個人売買のレベルでは、避けるべきです。やはりローカルの人とニコニコ現金商売をするしか安全策はないのではないかと今回考えさせられました。とはいえ、偽札を使われたらもう痺れてしまいますね。

週末は葬式に出ていたため、一部の真摯に連絡をしてくれた方々にお会いできなかったのですが、広告を出した当初から、文章もしっかりした方から連絡をもらっていたので、その方にまず会いたいと思いました。他の人に待ってもらい、その人と葬式から帰ってきてからまず会いました。自分の信用するメカニックを同行したいというのも好意が持てます。会うと感じもよく、ちゃんと現金も用意をしてくれたので、私もこの人なら大事に乗ってくれるだろうな、と思いました。結局、私も積極的にディスカウントに応じて、すぐにベスパは売られることになりました。その人はサンフランシスコ市内に住んで、市内の通勤に使うということですので、またいつかどこかでベスパに会えるかもしれません。

世の中には、詐欺をするような人がたくさんいることがよくわかりましたが、良い人も必ずいるものです。結構、個人売買は面倒くさいものだということもよくわかりましたが、色々習わせていただきました。

ベスパくん、6年間ありがとう。

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