アメリカ法律ノート」カテゴリーアーカイブ

米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[1]

法律ノート 第1066回 弁護士 鈴木淳司
July 20, 2017




今週末、飛行機のなかで、たぶん「エアーマーシャル(航空保安官)」と呼ばれる人を現認しました。同時多発テロ事件以降、アメリカに所属する飛行機には、マーシャルが隠密に乗っていると聞いていました。飛行機が着陸し、降機する前に荷物を取り出しますよね。通路を挟んで反対側に座っていた人が荷物を取り出すために背伸びしたとき、腰のシグ・ザウエルの自動拳銃が見えました。ごく普通の服装をしていた彼は、考えると機内で酒を飲んでいませんでしたね。こういう人がいるので、飛行機テロの牽制になるのでしょうね。でも、隣に座っているのは何かあったときにちょっとコワイなと思ってしまいました。

 

米国永住権者と結婚。永住権は取得できるか

 

さて今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問は「私(男性)は米国永住権を持っている日本人ですが、日本から留学してきている彼女ができました。そこで、結婚をすることによって、彼女にも永住権を取ってあげられたらよいな、と思っています。永住権の申請はどの程度時間がかかり、どのような手続きをすれば良いのか教えてください」というものです。

 

配偶者永住権の申請

移民関連の法律や行政規則については、随時、別途「現役移民弁護士ブログ(じんけんニュース)」というところで取り上げていますので、そちらに質問をしていただくほうが良いのですが、今回の質問に関して、最近移民局が目を付けて聞いてきているポイントがあるので、そのポイントを中心にしながら皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

今回、永住権保持者の配偶者永住権申請というパターンについて生じる問題について考えていきたいと思います。

 

永住権は永住の「許可」。権利ではない

今回質問されている方は永住権をお持ちです。一般的に永住権というのは、米国に永住をすることができる許可をもらっている外国人に給付されるもので、正確には権利ではなく、永住の「許可」であります。

ですので、運転免許証(ライセンス)と同じように、国や(州から)永住する、とか、運転するとか、一定の行為を「許可」されているだけなのです。

だれが永住「権」という言葉を使いだしたかわかりませんが、ニュアンス的には「権利」ではなく、永住する「許可」が与えられているだけ、ということになるのです。なぜこのようなお話をするかというと、人によっては「永住する権利を持っているのだから」なぜ、配偶者もすぐに永住できないのだ、と安易に考える方もいるからです。

 

市民権との違い

アメリカ市民権は、国民としての「権利」ということになり、永住許可とはかなり色合いが違います。市民権は、国民の「権利」ということで間違いありません。

誰にも奪われない権利ですし、政府でも「許可」ではないので、取消しや制限をすることが基本的にはできません。

市民権と永住許可というのは、たしかに、「米国に住むことができる」という面ではかなり性質は似ていますが、実際の法律的な権利についてはかなり違う面があります。永住権保持者というのは、結局、外国のパスポートを持っているのです。

 

申請処理は市民権保持者を優先

市民権と永住許可というのは、法律的には違う性質があり、市民権保持者をまず優先するというのは、国として当たり前なわけです。そうすると、移民法でも米国市民権を持っている人の申請を優先することになります。

米国の移民局は「優先順位」を行政規則で決めていて、第一順位は、米国市民の配偶者、第二順位は、米国市民の近親者、そのあとに、はじめて永住権の配偶者申請ができることになっています。

優先順位というのは、順位が高ければ優先的に処理されるということです。現在で第三順位は、申請の処理がはじまるまで、約2年待つことになっています。

この「待つ期間」について少し考えておきたいことがあります。

 

 

ここから次回続けて考えていきたいと思います。

 

夏休みを取られている方もいらっしゃると思いますが、今年はかなり熱中症にやられているという人の話を聞きます。陽に当たるのは気持ち良いですが、疲れますし、さらに病気になっては困りますので、水分を取り注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[3]




 

法律ノート 第1065回 弁護士 鈴木淳司
July 11, 2017

アメリカではラーメンが大流行していますね。かなりの数の日本食店舗がラーメンを出しています。日本では、ラーメンは短時間で食べて、店を出るというのがお約束ですが、アメリカではずいぶんゆっくり食べているのをみかけます。のびちゃうように思うのですが。極めつけは、残った麺と汁を容器に入れて持ち帰る人もいます。次の日に食べている姿は想像したくありません。外国から入ってきた新しい食文化の波という感じなのでしょうか。

 

トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[3]

引き続き、以下の質問を考えてみましょう。
「私と夫は(あるカリフォルニア州外)90代と80代で二人で暮らしています。現在、トラストを作成してあるのですが、ある税務会計事務所の方に相談をしたところ、その事務所の方がトラスティになってくれるということになりました。とても親切な方で最初は感謝したのですが、月500ドルを支払うように要求された上に、トラストを書き直して、今我々が住んでいるアパートは、我々夫婦が死んだら彼女の所有になることになってしまいました。そこで質問ですが、何故、トラスティには無料のトラスティと有料(月500ドル+実費)の2種類のトラスティがあるのでしょうか。アメリカの法律では、有料のトラスティを認めているのでしょうか。」という質問です。

 

裁判所が関与する後見制度、そうでないトラスト

前回、皆さんと考えたのは、後見というのは裁判所が精神的、肉体的に自分自身の判断をするのが難しい人を後見人という立場の人を付けてモニターする制度であるということです。

後見制度の対象となる人のことを被後見人と言います。日本の法律用語で「被」なんとか、という言い方があった場合、何らかの法律的な効果が及ぶ、という意味です。被後見人といえば、後見の効力が及ぶ人ということになります。

後見制度は裁判所が監督する制度ですので、被後見人の自由になんでも決まるわけではありません。後見をする人の費用や、被後見人に関して生じた出費については裁判所の許可が必要となります。

さらに前回、トラストについて後見と対比して考えましたが、トラストというのは裁判所がかかわるわけではなく、自分の意思で作成し、その内容が実行されていくということになります。

 

トラストは自由意思で財産管理を決定

トラストというのは、設定する人の自由意思で色々決められるわけですから、後見制度の被後見人とは色合いが違います。

あくまでも設定する人が自分の財産をどのように使うかを決めるのですから、今回の質問にあるトラスティを誰にするのかも、自由意思で決められることになるわけです。

今回質問されている方は、80代ということですが、かなり意思もしっかりしていて、質問の内容もよくわかります。ただ、トラストというものの性質について、「自分で決めるのが基本である」ということを理解していれば、自ずから答えはでるようにも思います。

 

自分の死後のトラスティ継承者を指定

トラスティの設定は自分の意思でできるのですから、たとえば自分が生きている間は自分や配偶者がトラスティになり、死亡した場合には、承継するトラスティ、通常は家族(子や兄弟など)を予め指定しておきます。これが、鉄板のパターンです。

 

契約内容の確認を

今回質問されている方のように有料でトラスティを設定するというのは、かなり変則的です。そもそも、トラスティになっていたとしても、毎日何かするということではないので、もしかしたら、通常のトラスティの業務を超えて、何らかのサービスを提供する契約になっているのかもしれません。

いずれにしても、トラストにトラスティがどのように規定されているのか、自分の意思を確かめることと、このように有料のトラスティ・サービスというのがあるのであれば、その契約にかかわる契約書が存在するはずですので、その内容を確認する必要があります。トラスティを誰にするかは、あくまでも自由意思ですので、無料であろうと有料であろうと、自分がどのような契約をしたのかにかかってきます。もし、自分で色々なことをする能力があるのであれば、御自身が生存中は御自身をトラスティに指定すればお金はかかりませんし、家族をトラスティにしておけばお金はかかりません。もちろん、お金を要求する家族もいるのかもしれませんが、それは例外的だと思います。

とにかく、有料のトラスティなどいるのか?と思われているのであれば、トラストと有料サービスの契約書を利害関係のない法律家にみてもらうのがよいかもしれませんね。

 

 

次回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

カリフォルニア州では、異常に暑いところもあり、気候が変だな、という気がします。皆さんがお住いの地域も暑いのでしょうか。熱中症などに気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。

 

 

 




トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[2]

法律ノート 第1064回 弁護士 鈴木淳司
July 4, 2017




過去20年間ほどお付き合いをしているクライアントの方とこの独立記念日にかかる週末を過ごして、ゴルフの手ほどきを受けています。地理的になかなか一緒の時間を過ごすことは難しい状況がずっと続いたのですが、楽しい時間を過ごしています。皆さんは夏を楽しまれていますか。

 

トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[2]

さて、前回から「私と夫は(あるカリフォルニア州外)90代と80代で二人で暮らしています。現在、トラストを作成してあるのですが、ある税務会計事務所の方に相談をしたところ、その事務所の方がトラスティになってくれるということになりました。とても親切な方で最初は感謝したのですが、月500ドルを支払うように要求された上に、トラストを書き直して、今我々が住んでいるアパートは、我々夫婦が死んだら彼女の所有になることになってしまいました。そこで質問ですが、何故、トラスティには無料のトラスティと有料(月500ドル+実費)の2種類のトラスティがあるのでしょうか。アメリカの法律では、有料のトラスティを認めているのでしょうか。」という質問を考えてきました。

 

財産管理は自分でー自分自身がトラスティ

前回から、この質問を考えてきましたが、身体精神に問題がなければ、自分が生存中は、自分自身がトラストのトラスティになるのが通常なので、今回の質問に関して疑問が湧いてくるというところまで考えました。ここから、噛み砕いて考えていきたいと思います。

通常、自分が生きている間は、自分の財産は自分が管理します。ところが、たとえば、認知症になってしまったり、精神的な病となってしまい、自分の財産の管理ができないという状況であるとしましょう。

 

「後見」制度ー権利行使を他人に委ねる法的手段

日本とアメリカは類似の制度を導入していますが、「後見」(Conservatorship)という方法が法律上規定されています。本人が生活上、様々な判断をできないという状態の場合、近親者が裁判所の許可を通して本人に成り代わって法律的な行為を行うという制度です。

そうすると、違う角度から見てみると、後見というのは、後見をされている人(法律的には被後見人と呼ばれます。)の法律的に何か決定をする権利を奪う制度です。一方で、被後見人のために、第三者である近親者などが、法律的な決定をすることができる制度なのです。

考えてみてください。
本人は、白いドレスがほしいと思っているが、第三者が「白い服はこの人は着ない、黒いドレスにします」と勝手に決められるような一面を持った制度です。

そうすると、被後見人の権利というのはかなり「人手に渡ってしまう」ことになります。ですから、裁判所も後見に附すかどうかは、かなり慎重に判断することになります。

数分前に自分で言ったことも忘れてしまう認知症の人もいますから、後見制度は重要なのですが、被後見人の権利行使を他人に委ねる法的手段ですので、裁判所も慎重になっている制度といえます。

 

後見制度とトラスティの違い

後見制度を利用するためには、かなり裁判所としても慎重になるわけなので、認められるにはかなりのハードルが設定されています。

一方で、今回のトピックであるトラスティというのは、トラストを設定した人が「自分の意思で」トラスティを設定するところがポイントとなります。

トラストというのは、後見と違って、意思のある人が自らの希望で、誰が財産を管理するのか指定する制度です。

そうすると、トラスティを誰か指定する場合、自分自身が生存している間は、心身およびメンタル的にしっかりしているのであれば、御自身を指定できるということになります。

 

トラスティは自分で指定できる

今回質問されている方は、「有料」か「無料」か、ということに焦点を当てていらっしゃいますが、自分自身で指定するわけですから、自分で選べば良いということになります。

ある信用できる人がいて、その人が「私はあなたの財産管理をするのに月に500ドルもらわないとやらない」と言っていたら、財産管理契約を結んでお金を払えば良いし、「トラストの財産は、自分の財産なのだから、死ぬまで私自身でコントロールしていく」というのであれば、自分自身をトラスティにしておくことも考えられるのです。

このように考えると、今回質問されている方は、トラストがあるわけですので、自分自身でどのような方法論が良いのか考えて、その通りに指定してあると思います。

 

ここから次回考えていきたいと思います。

暑い日が続きます。
今年の年初からの雪解け水で川がかなり氾濫していて、私の知り合いの弟も水遊びのつもりが溺死してしまったという事件も起こっています。水遊びも盛んな季節ですが、気を引き締めながらまた一週間頑張っていきましょうね。




トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[1]




法律ノート 第1063回 弁護士 鈴木淳司
June 25, 2017

旧知の友人がベイエリアを日本から訪れて、久しぶりに一緒の時間を過ごしています。この弁護士の友人のおかげで20年ほど前、法律の本を出版社から出せたので、本当にお世話になっている方であります。しかし前回アメリカでお会いしたのが、20年ほど前ですから、時間の流れというのは恐ろしく早いな、とつくづく感じました。皆さんは暑い夏どのように過ごされていますか。

 

トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[1]

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

頂いている内容は、かなり長いのですが、いくつかある質問のうち一つを抜き出してまとめると「私と夫は(あるカリフォルニア州外)90代と80代で二人で暮らしています。現在、トラストを作成してあるのですが、ある税務会計事務所の方に相談をしたところ、その事務所の方がトラスティになってくれるということになりました。とても親切な方で最初は感謝したのですが、月500ドルを支払うように要求された上に、トラストを書き直して、今我々が住んでいるアパートは、我々夫婦が死んだら彼女の所有になることになってしまいました。そこで質問ですが、何故、トラスティには無料のトラスティと有料(月500ドル+実費)の2種類のトラスティがあるのでしょうか。アメリカの法律では、有料のトラスティを認めているのでしょうか。」という質問です。

 

州ごとに違う制度

 

今回の質問はカリフォルニア州法にもとづいても、この質問されている方には役に立たないかもしれません。しかし、一方で一般的なことは考えられると思いますので、あくまでも以下は一般論として考えていきたいと思います。

少々前の法律ノートにも書きましたが、高齢者にまつわる問題が最近かなり目についてきています。もちろん、今までも色々経験はしてきましたが、高齢者に対してかなり悪質な行為も最近目にするようになりました。高齢者同士で問題が発生することもあれば、悪質な業者が跋扈するような事例もあります。

もちろん、今回質問されている方のようなケースは、そもそもどのような関係でどのような行為をトラスティが行っているかにもよるのでしょう。

質問だけを見ても具体的にはアドバイスをすることは難しいと思います。

 

トラストとトラスティ、まずは一般論から考える

 

ですので、この質問にいう「トラスティ」と「トラスト」とはなんぞやということに関して、少し今回は考えたいと思います。

トラスティというのは、「受託者」という意味です。何かを引き受けて遂行する人を言うわけですね。それでは、何を引き受けているかというと、それは「トラスト」すなわち信託という書類にかかれているのです。

信託というのは、何度も法律ノートで取り上げていますが、一番わかりやすいのは、たとえば私が信託を作成しますね。会社をつくるようなものだと考えてください。そうすると、信託は人とは別の法人格を有することになります。もう一人子供ができた、という感じでしょうか。そうして、私は、この信託という法人格に自分の持っている財産を託します

米国ではこのように個人が自分たち(夫婦)のために信託をつくった場合には、原則として贈与とはみなされないことになっています。
財産は託しますが、もともと自分の財産ですから、100%自分たちでコントロールするのが一般的です。

たとえば、私が一人で信託を作ってそこに、あまり実際はないのですが自分の財産を入れたとしましょう。そうすると、信託がその財産の所有者ということになります。しかし、一方で、所有者である信託を100%コントロールするのは私なので、結局私自身が所有しているときとなんら変わりはないという状況になるわけです。

 

信託財産は死なないー死後の希望を実現

 

なぜ、このようにわざわざ別の法人格をつくるかというと私はいつか死にますが、信託は人造人間ですから、死なないという特性を利用できるからです。

私が生きているうちに、自分の財産は「このような感じで分けたいな、寄付をしたいな」と思っているとしましょう。そうすると、そのような自分の死後の希望を信託に細かく書いておくのです。そうして私が死んだあと、信託に沿って財産が分配されていくのです。

 

ここで、トラスティというのは、この信託の内容を遂行するための人ですから、私が生きていれば私で充分なのです。私が死んだことを条件として、後継受託者(サクセッサートラスティー)を信託内で定めておけば、私が死んだときには、この後継受託者にバトンタッチされ、財産が分配されていくということになるわけです。

このようにトラスティというのは機能するということになっていますので、まず私が今回の質問を読んで、なぜトラスティが質問者本人ではないのか疑問が湧くのです。ここから次回考えていきたいと思います。

 

 

暑い日が続きますが、水をたくさん飲んでまた一週間がんばっていきましょうね。




 

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[3]




法律ノート 第1062回 弁護士 鈴木淳司
June 19, 2017

 

先日、将棋のプロ棋士と呑んでいたのですが、今話題の藤井聡太四段について話をすると、やはり強いと言っていました。すごい人がでてきたものです。
その友人がプロ棋士として感心していたのは、藤井四段の羽生善治三冠との非公式戦だということです。ちょっとしたリードを終始保ち続け、ジリジリリードを広げていく力があるようです。興味深いのは友人のプロ棋士が最近小学生などと指していると、かなり強い子が出てきているようなので、将来がとても楽しみですね。週末は暑いですが、皆さんはお元気にされていますか。

 

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[3]

 

さて、前二回「以前(10年ほど前)、学生のとき、飲酒運転で有罪の判決をカリフォルニア州で受けました。当時、罰金を支払い、指定された講習などすべて裁判所から言い渡されたことは終了しました。その後、警察にかかわるような問題はまったくありません。現在、トランプ政権になって移民に厳しくなってきたということを聞いています。私は現在就労ビザでアメリカに滞在しているのですが、以前、飲酒運転があったということで、強制送還などになるのではないかと不安になっています。色々検索すると、犯罪歴を抹消する手続きがあるということがみつかりました。この抹消手続きというものはどのようなものなのか、やはり私はやっておくべきなのか、教えていただけないでしょうか」という質問を考えてきました。

 

軽罪の場合、前科抹消手続きを進めやすい

前二回、前科抹消手続き(エクスパンジメント)を考えてきました。
今回は、実際にどのような条件が揃うとエクスパンジメントができるのか、考えていきたいと思います。

前回、考えましたが、エクスパンジメントが許されている罪の種類は、各州法で決められていますが、通常軽罪(Misdemeanor、いわゆる一年以下の禁固刑が法定されている罪)であれば、認められているはずです。また、刑の種類によっても、認められる場合と認められない場合が存在します。

 

飲酒運転での有罪判決の場合

今回質問されている方は飲酒運転で有罪判決を受けているようです。この例を使って考えていきます。

飲酒運転は、カリフォルニア州でも他州でも、エクスパンジメントの対象とされています。
飲酒運転で有罪判決を受けると、通常は、

(1)罰金、
(2)安全講習の参加、
(3)コミュニティーサービスまたは拘留刑、
(4)保護観察期間

がセットになって言い渡されます。

通常、(2)については週一度、15週間行われ、講習終了の通知が裁判所になされます。
(3)については、どのような様態の飲酒運転かによって言渡しにばらつきがありますが、これも、初犯であれば、数日で終わるときもあります。

(4)についてですが、通常3年間は保護観察期間となり、この3年間は基本的におとなしくしていなさい、再犯は許されませんよ、というメッセージが込められています。

エクスパンジメントを申請するには、(1)ないし(5)の要件を満たしたうえで行うことになります。
(1)ないし(4)については、数週間レベルで終わらせることができますが、(5)については、原則として数年レベル、飲酒運転であれば、3年間が必要ということになります。そうすると、今回質問されている方についても、有罪の言渡しから3年間が経過した時点でエクスパンジメントを申請することになろうかと思います。

 

手続きはそれほど難しくない

エクスパンジメントの手続きは、そこまで難しくなく、上記の例でいえば、(1)ないし(5)の記録は言渡し裁判所にあるわけですので、保護観察期間、何も問題はありませんでした、という内容を添えて申請すれば、ほぼ機械的に認められることになります。

ですので、前科がある方は、とくに外国人はこのご時世ですから、エクスパンジメントが可能かどうか一考されると良いと思います。

 

未成年の時の罪はエクスパンジメントの幅が広い

それから、エクスパンジメントでも、未成年のときに言い渡された罪は、通常の事件よりも、より簡単にエクスパンジメントをすることは一般的に可能です。

ですので、一般の刑事事件よりも積極的にエクスパンジメントを利用されることをお勧めします。

 

過去より将来が大切ーエクスパンジメントも将来への一手段として

人間というのは、過ちを犯す動物です。重要なのは、過ちを繰り返さないことですし、過去より将来の方が重要です。ですので、将来を考えるためのツールとして、エクスパンジメントを位置づけておくと良いと思います。

 

 

次回また、いただいている質問にお答えしていきたいと思います。

カリフォルニアはもう夏真っ盛りのような気候です。バテないように注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 



過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[2]




法律ノート 第1061回 弁護士 鈴木淳司
June 14, 2017

週末に、ルイジアナ州に収監されている受刑者に面会するために、その方の家族と一緒に飛びました。道中、乗換え便が数時間遅滞して、結局目的地である、かなり田舎の空港に着いたのは夜中でした。レンタカー会社も閉まっているし、携帯電話も入らない。そして人もいない空港で途方にくれました。かなり大変な思いをしましたが、皆さんは平穏な週末を過ごされましたか。

 

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[2]

 

さて前回から考えてきた「以前(10年ほど前)、学生のとき、飲酒運転で有罪の判決をカリフォルニア州で受けました。当時、罰金を支払い、指定された講習などすべて裁判所から言い渡されたことは終了しました。その後、警察にかかわるような問題はまったくありません。現在、トランプ政権になって移民に厳しくなってきたということを聞いています。私は現在就労ビザでアメリカに滞在しているのですが、以前、飲酒運転があったということで、強制送還などになるのではないかと不安になっています。色々検索すると、犯罪歴を抹消する手続きがあるということがみつかりました。この抹消手続きというものはどのようなものなのか、やはり私はやっておくべきなのか、教えていただけないでしょうか」という質問を考えていきましょう。

 

前科抹消手続きーエクスパンジメント

 

前回、前科抹消手続き(エクスパンジメント)を考え始めました。
エクスパンジメントの手続きは、州ごとにかなり実務が違いますので、今回はできるだけ一般的にあてはまる内容を考えていきたいと思います。

 

抹消内容には制限ありー開示すべき場合

 

まず、エクスパンジメントの手続きですが、刑事事件の前科を抹消するとしても、抹消される内容の限度があります。このことをよく理解しておいていただきたいと思います。

要するに、前科の抹消が裁判所に認められたとしても、一定の場合には、前科を申告しなければなりません。

この一定の場合というのは、対行政関係です。
たとえば、米国の入国管理関係や、米国の行政関係の申請などを行う場合を指します。ですので、前科がエクスパンジメントによって抹消されたとしても、ビザ、永住権、および市民権の申請時には、前科を開示しなければなりません。

もちろん申請書のなかで許されていれば、前科が抹消されたという事実は言及しておくべきだとは思います。

 

私人関係における「前科はありますか?」

 

一般的な生活を送っていると、今までに前科はありますか?ということが聞かれる場面があります。たとえば、就職活動をしている場合や、家を借りようとする場合などが考えられるでしょうか。

このような私人関係の場合には、抹消手続きが裁判所に認められれば「前科はない」と申告して問題なくなります。

 

州ごとの違いには細心の注意を

 

注意したいのは、政府関係の仕事に就業したい場合には、前科について申告しなければならない可能性が高いです。基本的に連邦政府に関しては、前科は申告しなければなりません。州政府に関しては各州の法律に規定されています。

エクスパンジメントというのは基本的に州法にもとづいて決められているで、前科となったもともとの罪が審理された裁判所の管轄となります。

そうすると、アラバマ州で言い渡された刑については、そのアラバマ州の裁判所に適用される法律を考えなければなりませんし、カリフォルニア州で言い渡された刑については、カリフォルニア州の法律によることになります。

 

エクスパンジメントに関わる法律は各州で異なりますが、どのような罪が抹消の対象になるかも違いがあります。たとえば、今回質問されている飲酒運転の罪のような場合、ほとんどの州で軽罪(Misdemeanor、最高刑が禁錮1年以下の罪)に関しては抹消の対象となります。
一方で重罪(Felony、最高刑が禁錮1年以上の罪)だと抹消を許さない州もあります。

ですので、現在どこに住んでいるか、などにかかわらず、刑を言い渡した裁判所に適用される抹消手続きの法律を解析する必要があります。

 

今回質問されている方は、カリフォルニア州の州地方裁判所で飲酒運転(軽罪)の罪で有罪となっているようです。そうするとカリフォルニア州法では飲酒運転の罪は、抹消手続きの対象になりますので、抹消の申請は可能となります。

ただし、抹消の申請をするには、言渡しを受けた刑に付された条件を全てクリアーすることが前提となります。

ここから次回考えていきたいと思います。

 

 

私はまだ、疲れが完全に回復していないですが、良い天気を楽しみながら、また一週間がんばっていきましょうね。



過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[1]




法律ノート 第1060回 弁護士 鈴木淳司
June 10, 2017

なんだか、最近刺し身などの生モノに対してあまり胃腸が機能してくれなくなってきたような気がします。もちろん、刺し身も寿司も好きなのですが、食事のときに酒ばかり飲んでいて、胃が弱っているのでしょうか。全体的に生きている過程で、体調が変わってきているのかもしれません。皆さんも生きているとそういった体調の変化はあるものでしょうか。皆さんは美味しいものを食べられていらっしゃいますか。

 

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[1]

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問は、まとめると「以前(10年ほど前)、学生のとき、飲酒運転で有罪の判決をカリフォルニア州で受けました。当時、罰金を支払い、指定された講習などすべて裁判所から言い渡されたことは終了しました。その後、警察にかかわるような問題はまったくありません。現在、トランプ政権になって移民に厳しくなってきたということを聞いています。私は現在就労ビザでアメリカに滞在しているのですが、以前、飲酒運転があったということで、強制送還などになるのではないかと不安になっています。色々検索すると、犯罪歴を抹消する手続きがあるということがみつかりました。この抹消手続きというものはどのようなものなのか、やはり私はやっておくべきなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。

 

移民政策の厳格化、実は以前から

トランプ政権になって、まず不法移民について厳しい対応を行っていくということを言明していますが、そもそもオバマ政権のもとでも、不法移民はそれなりに厳しく対応されていました。

スポットライトがあたっていた論点としては、トランプ政権は、不法移民の子供がアメリカで産まれていた(ということはアメリカ国籍を持っている)としても、不法移民を強制送還するという態度を取ったことです。オバマ政権は、子供がアメリカ国籍である場合、不法移民の強制送還には否定的でした。

このトランプ政権の不法移民の強制送還の姿勢がまずスポットライトにあたりましたが、次は、アメリカへの入国審査の厳格化にスポットライトがあたっています。

中東6カ国に対する厳しい行政の対処は最近ニュースにもなっていましたし、私が書いている「移民法ブログ」(「3/16発効の大統領令、日本人への影響」http://momsusa.jp/archives/3546)でも取り上げました。

今後は、犯罪歴がある外国人に対しても審査が厳しくなる傾向は続くとは思われます。こういった背景から、今回の質問につながってきているのだと思います。

 

犯罪歴の抹消ーExpungement

さて、今回質問をいただいている「犯罪歴の抹消」ですが、法律用語ではExpungement(エクスパンジメント) と呼ばれています。

あまり、一般的には聞き慣れない単語ですね。今回はこのエクスパンジメントという手続きについて考えていきたいと思います。法律用語では「手続」といいますが、ここでは手続きという一般的な書き方をしていきます。

 

犯罪歴の集約と保管・共有

従来、刑事事件で、有罪を認めると、犯罪歴については、その有罪を認めた裁判所に保管されます。アメリカでは、どこかの官庁が、前科について一括して保管しているわけではなかったのです。
もともと、アメリカには、裁判所といっても連邦裁判所もあり、州の裁判所もあります。州の裁判所でも多岐にわたっていますので、なかなか一つの機関で情報を整えることができませんでした。

同時多発テロ事件以降、連邦政府の主導により、前科の情報共有が様々な政府機関によって行われるようになりました。デジタル情報の共有が容易になってきた時期だったこととも重なります。

 

入国管理局も情報共有

現在では、アメリカの入国管理局も、各裁判所の前科の記録を共有しています。

したがって、移民関係においても、前科はビザの申請、再申請そして再入国時に避けることはできず、向かい会わなければなりません

したがって、10年前といっても、今回質問されている方のように前科がある場合には、慎重にならなければいけません。

 

上記を踏まえて、次回は、エクスパンジメントの内容および前科と移民法関係について考えていきたいと思います。

 

日本は梅雨の季節でしょうか。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[3]





法律ノート 第1059回 弁護士 鈴木淳司
May 28, 2017

北朝鮮がミサイルを頻繁に発射していますが、もう実際に被害がでる可能性も出てきました。なんでも、低空で飛ぶミサイルだとなかなか撃ち落とせないという現実もあるようです。もちろん、日本政府は抗議を繰り返していますが、実際に対応は可能なのでしょうか。なんでも、ある詳しい人と飲んでいて憂慮を伝えると「日本は、アメリカ任せのところがあるんだよね」という話をしていました。本当に心配になってきます。

 

術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[3]

さて、前二回考えてきた、「私の配偶者がある病院で腹部の手術を受けました。手術のあと、あまり回復もせず、再度手術をしなくてはならない状況が発生しています。医療機関に対して、不信感を抱いています。もちろん、最初の手術の前に、色々説明を受けていて、全快する可能性も高くはない、とは聞いていました。しかし、再手術が必要とは聞かされていませんでした。夫婦で悩んでいるのですが、やはり法律的に責任をはっきりさせたいと思っています。医療機関に対する訴訟というのは一般的に難しいのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。

 

過失の評価は主観だけでは足りない

前回「ミス」があった、「ポカ」があった、という評価は、自分の主観だけでは足りず、第三者がどのように思うのかが法律的には重要である、ということを考えました。難しい手術で全治しないから、不満がある。そうすると、すぐに訴えられるとは言えないわけです。

その難しい手術をしたり、経験があったり、学識がある人がどのように考えるのかが重要なのです。

そうすると、弁護士としては、医療過誤があった、と相談を受けた場合、その場で判断はできず、協力してもらえる医師と良いネットワークを持っていることが重要です。私が知っている医療過誤をよくやっている弁護士は、いつも医師のネットワークとつながって情報交換をしています。どの弁護士でも医療過誤ができるわけではなく、ちゃんと医師や医療関係の人たちとネットワークを持っているかどうかが、カギとなります。

また、医療過誤については、一人の弁護士の意見を聞くだけではなく、できることなら色々な意見を聞いて、冷静な判断をすることも重要だと思います。

 

訴え出るときのルールー出訴期間は短い

さて、「ミス」があった、「ポカ」があったであろうと、いうことになると、過失や契約の不履行を求めて出訴することになります。

出訴については、各州でまちまちに法律で決められていますが、カリフォルニア州では、損害が生じてから1年間以内、というのが原則です。例外的に場合によっては、損害が生じてから3年間以内、ということになっています。どちらにしても、あまり長期の設定がされていませんので、注意が必要です。

 

慰謝料額の上限

それから、交通事故のような一般的な過失を問う事件とは違う制限が医療過誤の事件には設けられています。すなわち実際に手術から生じた損害以外の、慰謝料(Pain and Sufferingなど)については、最高で25万ドルに上限設定されています。この上限設定は1970年代に設定されたまま、変わっていません。
また、弁護士費用も成功報酬で原告側弁護士が報酬を受ける契約がされている場合、弁護士報酬についても上限が細かく設定されています。

医療過誤事件は、通常の過失を基礎とする訴訟に比べて、かなり制限されている部分があるのです。

この医療過誤事件の制限は、医師や医療機関が安定して業務に専念できるための法制度であると言われていますが、実際に利しているのは、保険会社であるといった批判も存在しています。また、70年代に決められた慰謝料の上限は、額が現在でもまったく変わっていないため、実際に被害に遭った人たちの損害の回復が充分ではないのではないか、という疑問も出ています。

 

総じて難しい面が多い医療過誤訴訟

上記でわかるように、医療過誤訴訟というのは、簡単ではなく、様々な制限もあるのです。
また、もともと、「ミス」があったのか、「ポカ」があったのか、といった問題についても、協力医師を探すという必要性もでてくるのです。

今回質問されている方についても、ご家族の再手術が必要である、という話ですが、質問の内容だけを見ても、なかなか「ミス」があったか、判断することは難しい状況です。やはり、医療過誤については、協力医師のたくさんいる弁護士の意見を具体的に聞いて、どのように対応するのかを考えていかなければならないと思います。

 

次回また新しくいただいている質問を考えていきましょう。夏のような日もでてきましたが、まだまだ春の花も楽しめますね。できるだけ外出して、自然を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[2]




 

法律ノート 第1058回 弁護士 鈴木淳司
May 21, 2017

サンフランシスコの家賃の高さはなんでも世界一高いそうですが、一般的な物価についても例外ではないかもしれません。先日、「炭酸が飲みたいな」と思って、事務所の近くの洒落たコーヒーショップでどこにでもある缶の炭酸飲料を買ったのですが、2ドル50セントと言われて恐怖を覚えました。
ちょっと郊外に行けば、一ダースで5ドルの商品です。そうなると、一気に飲むことはできず、味わって飲んでしまう自分もどうかとは思いますが、まあ、もういい加減にしてほしいと思ってしまいます。

 
術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[2]

 

さて、前回から考えてきた「私の配偶者がある病院で腹部の手術を受けました。手術のあと、あまり回復もせず、再度手術をしなくてはならない状況が発生しています。医療機関に対して、不信感を抱いています。もちろん、最初の手術の前に、色々説明を受けていて、全快する可能性も高くはない、とは聞いていました。しかし、再手術が必要とは聞かされていませんでした。夫婦で悩んでいるのですが、やはり法律的に責任をはっきりさせたいと思っています。医療機関に対する訴訟というのは一般的に難しいのでしょうか。」という質問を考えていきましょう。

過失による責任追及か契約違反による責任追及か
 
前回、「過失」がある場合、それから契約に反した場合、医療機関は責任を負う可能性はでてきます。ただ、過失にしても、契約違反、すなわち債務不履行については、自分が「損害を被った」というだけでは足りない、というところまで考えました。

 

「主観」では足りない
 
人間というのは、何か自分に都合が悪いことが生じると、そのことを人に転嫁したくなるときがある弱い生き物です。もちろん正当な場合もあるのですが、他人から見ると「そうかなぁ」と思う場合もあるわけです。自分がどのように物事を見るのか、というのは「主観」といいます。

一方で、他人がどう判断するのかを「客観」といいますね。裁判では、基本的に客観的に判断することが基本になっています。アメリカの裁判では最終的に陪審員がどう考えるのかが気にかかるところです。自分以外の人がどう思うかが重要なのです。

 

医療行為における「過失」は?
 
医療行為に過失があったのではないか、という場合を考えましょう。

過失というのは、前回考えましたが、何かポカがあったのか、ということを考えます。何かポカがあったのか、ということを言ったとしても、人によって判断の基準が変わってきますね。そうすると、医療行為のように高度な専門的な知識が必要な内容に関しては、最終的に一般の人たちが、「ポカがあった」かどうかを判断しますが、その判断の基準については、同じような医療行為をする人の基準となります。

そうすると、私を含め一般の人たちが「このような損害があったのだから、何か問題だろう」と思っていても、医療行為をしている現場の医師達の立場から言うと「何も問題ない、逆にこのような状況ではよくやった」と思われる場面も出てくるわけです。

そうすると「ポカ」とか「ミス」と法律的には言いにくくなるかもしれません。
「過失」というのは時代によっても変わってきますし、業界の考え方でも変わってくるものです。法律上の判断というのは「判例」とか「裁判例」という形で現れてくるのですが、どこまでが「過失」なのかというのは、時代によって変わってきます。

 

実際には判断は極めて難しい
 
そうすると、弁護士が医療過誤の相談を受けても、明らかに「ポカ」だな、とか「ミス」だな、といえるような事例であれば、意見は言えるかもしれませんが、多くの事例ではかなり意見が割れる状況があります。

よく、医療器具を体内に置き忘れていたといったような状況があります。一般的にもうっかり起こすミスはありますが、このような明らかな事例は「ミスったな」といえるかもしれません。それでも、事例によっては違った判断になるかもしれませんね。

一方で、今回質問されているような事例は明らかにミスやポカがあったといえるのか、といえば、そうは言えないかもしれません。そうすると、裁判の先例を見ながら、判断することができるのかどうかということを考えなくてはいけません。

 

専門家の意見が鍵になる
 
しかし、法律的に簡単に判断できるわけではなく、意見をもらえる可能性のある分野の医師にその分野での意見を聞かなければ、過失があるのかどうかが判断できないことになります。そして、その意見がカギを握ることになります。ここから次回考えていきたいと思います。

 

 

ベイエリアも暑い、日本も暑い、なんだか夏になってしまったような気がします。ダラダラする気を引き締めてまた一週間がんばっていきましょうね。

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術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[1]

医療



法律ノート 第1057回 弁護士 鈴木淳司
May 18, 2017

雨がやんで、季節も良くなったので、私の事務所の人達とバーベキューを楽しみました。私は風邪気味で途中でダウンしてしまいましたが、楽しい時間を過ごしました。通常、私は事務所の人達を飲み会に誘いません。私が言うと皆、来なくてはいけない気持ちになると思い自重しています。年に一回は皆でクリスマスパーティーを楽しむのですが、そのほかにはほとんどない貴重な機会でした。まあ、私の事務所は皆仲が良く、いつもワイワイ仕事をしているので、あまり変わりはない状況ではありました。皆さんは気分転換をされていますか。

 

術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[1]

さて、今回から新しく皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。かなり長いメールをいただいています。
できるだけ簡略化して、いただいている質問をまとめると「私の配偶者がある病院で腹部の手術を受けました。手術のあと、あまり回復もせず、再度手術をしなくてはならない状況が発生しています。医療機関に対して、不信感を抱いています。もちろん、最初の手術の前に、色々説明を受けていて、全快する可能性も高くはない、とは聞いていました。
しかし、再手術が必要とは聞かされていませんでした。夫婦で悩んでいるのですが、やはり法律的に責任をはっきりさせたいと思っています。医療機関に対する訴訟というのは一般的に難しいのでしょうか。」という質問です。

 

医療過誤ー過失による法的責任を問う

今回考える相談は、一般的に医療過誤と言われる部類の質問です。

医療過誤というのは、一般的に、医師や医療機関に「過失」があったかを問う訴訟です。
一般的に、「過失」があって、損害が生じた場合には、過失があったと認められた人や団体が損害を賠償する責任を負います。これは、日本でもアメリカでも基本的には変わりません。

法律的に問題のある間違いを発生させて他人に損害を発生させたら、その間違いを起こした人や団体が責任を負うということは、人が生きていくうえで、色々な場面で発生します。

 

債務不履行ー契約違反として責任を問う

もうひとつの面をみると、今回のように手術を受ける場合、手術をする側と受ける側の間に契約が存在します。
手術する側にされる側が対価を払って、合意した内容の手術をしてもらうという面があります。

この契約に沿っていない手術が行われた場合には、契約をちゃんと履行していないということになり、手術した側に債務不履行責任が生じる場合があります。このコンセプトも一般的な「契約」ではよくみかける責任ですし、皆さんが生活していれば目にすることも多いと思います。

 

「過失」を考える

本論について踏み込んで考える前に、すこし「過失」と「契約」という基本的な法律的なコンセプトと今回考えてみたいと思います。
「過失」というのは、かなり広汎なコンセプトです。ポカをした、という言い方だとわかり易いかもしれませんね。ただ、人がなにか間違いを犯した、というのは、何を基準に言うのか、なかなか法律家でもわかりにくいところであるのが事実です。何が「ポカ」なのか、間違いないのか、というと、度合いの問題もあります。

交通事故を考えてみてください。

飲酒運転で人に怪我を負わせれば、通常の人が話を聞けば、「それは悪いよなぁ」ということになるでしょう。法律家にとっても、そのように判断することになろうかと思います。
一方で、スーパーマーケットの駐車場で、低速で動いている車同士がぶつかってしまったような場合、どちらの方が悪いのか、なかなか判断しづらいこともあると思います。
「自分は悪くない、他人が悪いんだ」ということは簡単ですし、大人になっても、いつでも自分は悪くない、と思う人もいるのも事実です。

 

主観だけでは「過失」を問えない

しかし、人の「過失」を問う場合、「君のやったことが悪いんだよ」ということを法律的に言うわけですから、自分の主観だけで相手が悪いということはできません

そうすると、「過失」というのは、第三者の目からみても、「悪いよなぁ」と判断できることが前提になります。法律的に難しく言うと、過失は客観的に判断されなければなりません。
少々難しい話を考えていますが、我慢してください。
できるだけわかりやすいように次回も続けて考えていきたいと思います。
カリフォルニアは春真っ盛りという感じです。天気や花を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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さてどうしたものか-弁護士にできることできないこと





法律ノート 第1057回 弁護士 鈴木淳司
May 09, 2017

週末に法律ノートを書こうと思っていたのですが、ある憧れのゴルフコースでプレーすることができて、先送りにしていました。いやー、スポーツはいいですね。奥深いし、怪我さえしなければ、身体にも精神にもとても良いと思いました。以前私はダイビングをよくしていたのですが、ゴルフも同じで、場所によって全然違う体験ができるところが楽しいと感じています。皆さんは天気を楽しまれていますか。
さて、今回は皆さんからの質問をいったん休ませていただき、ある状況について考えさせてください。一応、フィクションということで、具体的な特定の人物について書いているわけではないということで、考えていただければと思います。
ある70代後半の夫婦の話です。旦那さんは数度離婚歴があります。2人は50代になってから、結婚を決意します。お互い仕事もしていて、財産もあり、それぞれ何十年も別の道を歩いてきました。旦那さんにも、奥さんにもそれぞれ子供がいます。このようにすでにお互い自分の人生を背負っての結婚となったわけです。

いくつになっても恋愛は良いことですね。アメリカでは、婚前契約(プリナプチュアル・アグリーメント)を夫婦間で締結することが少なくありません。それぞれ持っている財産は、それぞれに帰属して共有財産とはならないとする契約です。再婚の場合などは、特に珍しいことではありません。この二人も婚前契約を締結していました。婚姻前にそれぞれが持っている財産は、それぞれの財産としてはっきり分けておこうというわけです。

私は、奥さん側の財産について相談を受け、自分の血族に財産が行くような形の相続関連書類を整えました。これは20年ほど前の話です。それから、何度も内容を変更しましたが、相続割合の変更のみで、基本的に自分の血族に財産を相続させる意思は変わりませんでした。婚前契約があるから旦那さん側に相続をさせることはないわけで、妥当な内容でした。

旦那さんから、最近連絡があり、奥さんが遺言等を書き換えたいということでした。旦那さんは、奥さんが考えを変えて、奥さんの財産の半分を旦那さんに相続させたい、ということを連絡してきました。

私が面会すると、奥さんは、階段で転び、ずいぶん衰弱していました。旦那さんに席を外してもらい、遺言等を本当に書き換えたいのか、旦那さんとよく話をしているのか、と聞くと、そのような会話をしていないということでした。奥さんはしきりに旦那さん側の遺言等はどうなっているのかを気にされていたので、旦那さんにそれを見せてもらうと、結局旦那さん側の財産は最終的に旦那さんの血族に相続されるように設定されていました。奥さんにそのことを説明し、どのようにしたいのか聞くと、旦那さんと同様の形が良いということに収まりました。結局、自分の血族に財産が相続されるという内容です。

お互いに同様の内容ですので、フェアでもありますし、今まで何十年も私が聞いていた内容とブレていません。細かい微調整をして、書類を整え、無事に相続書類をアップデートしました。相続書類の原本は私の所属する事務所で保管することになりました。
アップデートが終わった数日後、もう80歳になろう旦那さんから、妻の相続書類を渡してほしいと依頼がありました。旦那さんであろうと、私の直接のクライアントではありませんので、奥さんからの承諾書がなければ、渡せないことを言うと、奥さんのサインの入った承諾書を送ってきました。

そこで、相続書類を送ると、ものすごい剣幕で、訴えるぞ、などと言ってきました。訴えられるものなら、どこにでも訴え出て見ろよ、と思いましたし、そもそも、旦那さんの財産ではないわけですから、訴える理由もないわけです。弱っている奥さんの財産の半分を自分のものにしようと思って私に連絡してきたのですが、それが成就しないので、怒り出しているのです。

私は暗澹たる気持ちになりました。弱っている奥さんの介護をしているのは、旦那さんであることは間違いないので、奥さんとしても、彼の言うことを「はいはい」と聞いてしまうわけです。私は弁護士というだけで、毎日その奥さんと会うわけではありません。そうすると、自分が弱っていれば、旦那さんに頼るしかない、ということになってしまい、ある意味コントロールされてしまってもおかしくない状況です。

旦那さんは、私に対してもう仕事をしなくても良い、とお節介を焼いて言ってきますが、私は心配でしょうがないわけです。せっかく、自分の意思で奥さんは相続書類をアップデートしましたが、旦那さんは、事情を知らない別の弁護士のところに連れて行って、自分に財産が入るような形の相続書類を用意させ弱っている彼女にサインをさせるかもしれません。物理的に近くにいる人間の方が彼女をコントロールし易いに決まっていますね。

弁護士として、奥さんの意思を守るために何ができるのか、このところずっと悩んでいます。さてどうしたものか。


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実施がなされることを、もちろん私たちも心から待ち望んでいます!





 

遺言やトラストがないと財産没収?!-法定相続に自由度をプラス





法律ノート 第1056回 弁護士 鈴木淳司
May 14, 2017

 

日本はゴールデンウィークということもあり、仕事や勉強に区切りをつけて、ゆっくりされている方も多いのではないでしょうか。日本は祝日がかなり多い国ですね。カリフォルニアでも天気が良くなって来ました。
先週読んだ記事のなかに、シリコンバレーで酔っ払いが100キロ以上ある警備ロボットと戦いになって横転させたというニュースがありました。暖かくなってきて、屋外で酔っ払って問題となったようですが、もう人がロボットと戦うようなシナリオが出てきているということですね。考えさせられます。

 

トラストや遺言を作っておかないと、財産は政府に没収されるのですか?

さて、今回からまた新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
前回まで考えてきた遺言執行者のトピックに似ているところもあります。

いただいた質問をまとめると「遺言やトラストを作っておかないと、最悪の場合財産を政府に没収されてしまうということを、トラストのセミナーで聞きました。これを聞いて、夫婦で話をして、何かしなければと思っています。万が一政府に財産を没収された場合、それを取り戻す手続などはあるのでしょうか?」という質問です。
今まで弁護士をしていると、何度もこのような質問に出会ってきたのですが、最近になってその原因がわかってきました。このような情報を得ている方たちはどうも、トラストのセミナーなどに参加してそこで情報をもらって来るようなのです。もちろん法律事務所などトラストを作って欲しいと思う側が主催するセミナーであれば、色々トラストや遺言を作るように誘導するでしょうね。そうであれば、政府に取られちゃうよ、的なことを言うのかもしれません。
ただ、そのようなセミナーは一種の情報として聞き流しておけば良く、具体的に相談をしながら何が良いのか確認することが重要だと思います。

 

財産没収はされませんー法定相続制度

まず、最初にクリアーにしておきますが、セミナーで弁護士が話してようが、誰が話してようが、遺言やトラストがなくても、財産を没収されると言うことはまずありません。

まず、遺言やトラストがあれば、皆さんがなくなったときに、その遺言やトラストに沿った内容で、相続財産が分配されていきます。そのためのツールですから当たり前です。
そして、遺言やトラストがない状態で亡くなる方たちもたくさんいますが、いきなり政府に財産が取られてしまう訳ではありません。法定相続(intestate)といって、法律で自分の血族を含む家族にどのように分配されるのか決まっているのです。

天涯孤独、いとこもはとこも、まったくいない、という方で、法律に照らして、まったく法定相続人が存在しないごく例外的な場合には州の財産に組み込まれる可能性はごくわずかにありますが、このような極端な例を除いて、いきなり政府に財産が取られるということはないのですね。

法定相続制度は日本でもアメリカでも存在する制度ですから、そこまでナーバスに政府に取られてしまうと考えなくても良いと思います。

 

法定相続制度ー死後は近親者に財産分与

法定相続制度は法律ノートでも何度か考えましたので、また皆さんの質問を待って考えていきますが、概略だけ考えておくと、まず遺言やトラストがなければ、配偶者および子が法定相続人となるのが一般的で、これらぼ近親者がいない場合には、血族を親等の近い方から法定相続人とするのがかなり共通した考え方です。

 

遺言やトラストは法定相続にプラスするもの

そうすると、一人っ子で親も親の兄弟も祖父母も子供もいないなどという限られた場合には、誰を相続人にするのかを、遺言やトラストなどで考えておかないとややっこしいことになるかもしれません。法定相続を利用することも別に少なくありませんから、遺言やトラストを作らなければならないという義務感はあまり切実に持つ必要はないと思います。

どちらかというと、法定相続で使われるような内容をそのまま遺言やトラストにするケースも少なくありません。

 

法定相続の問題点と遺言・トラストのメリット

じゃあ、なぜこのようなセミナーは遺言やトラストを勧めるかと言えば、それは自分たちの利益になるように誘導しているからなのですが、じゃあ、法定相続に任せておけばそれはそれで、いいではないか、と思われる方もいらっしゃると思います。

弁護士に関わるのも面倒だし、書類の作成も厄介だ、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。まあ、それもごもっともなのですが、法定相続になったときの問題点を次回考えていきましょう。

 

これから、バーベキューにも良い気節ですね。
アウトドアを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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