アメリカ法律ノート」カテゴリーアーカイブ

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[4]




 

法律ノート 第1078回 弁護士 鈴木淳司
Oct 11, 2017

月曜日はコロンバスデーというということで、私の所属する事務所は裁判所の休みに合わせているので、休みでした。私も三連休をいただき、かなり気分転換をしました。コロンバスデーというのは微妙な日で、金融機関や司法関係はおやすみですが、ビジネスは一般的に営業しています。そういえば、コロンバスは先住民を多数殺めたという歴史認識を持つ人達が、名称を先住民の日にするべきだとデモをしていました。どこかの国も歴史認識で争っていますが、情報網が発達した現代では、戦争だけではなく、歴史認識を基礎とする意見の対立が激化していきそうですね。ベイエリアは、ナパの大火事で煙ったいですが、みなさんは秋を楽しまれていますか。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[4]

 

さて、前回も引き続き、次のような質問です。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。

 この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。

私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

今回はその最終回となります。

 

仲裁の進み方ーイメージ柔軟なミニ裁判

今回は、仲裁はどのように進行していくのか考えましょう。

仲裁というのは、裁判と違って、どちらの当事者が強制的に参加させられるものではありませんお互いに同意があってはじめて成り立つ手続きであります。

今回の質問されている方は、契約書に仲裁を同意する一文が入っていることから、同意はしていると考えられるでしょう。

さて、仲裁というのは、手続き的には、ミニ裁判といった感じでしょうか。
いわゆる事実的な判断をする仲裁人というのがいます。この仲裁人も何人かいるなかから、両当事者の合意で選ばれます

元裁判官という場合もあれば、経験豊富な訴訟弁護士なども選ばれるでしょう。
ただ司法関係者である必要はまったくなく、医師や建築家もなることができます。また、一人の場合もありますし、3人の場合もあります。
基本的に、両当事者の合意があればどのようなアレンジメントも可能なのです。

仲裁人というのは、両当事者の話を聞いて、そのうえで、事実的な判断をする役割を負います。本来の裁判でいえば、陪審員や、裁判官みたいな立場です。

 

場所も選ばない

仲裁というのは、私的に合意をして行われる事実判断の場ですので、裁判所で行われるわけではなく、通常のオフィスなどで充分に対応が可能です。

 

証拠法の適用がない

また、この部分は決定的に裁判と違うのですが、証拠法の適用がありません

裁判で使われる「証拠」と呼ばれるものは、かなり複雑なプロセスを経てから、裁判に登場にします。何か情報があれば、即裁判上の「証拠」になるわけではありません。

仲裁はこの点フリースタイルですから、仲裁人の判断で、裁判で証拠にならないものも証拠にすることが可能になります

良い面と悪い面があると思いますが、フレキシブルに色々なことができるということは争いがありません。

たとえば、今回質問されている方も、わざわざ仲裁をするのにアメリカまで来るのは嫌だと思われていれば、代理人を立てて仲裁を行い、証言をビデオなど通して行う、という方法も異議がなければ可能です。ただ、直接証言するインパクトはないので実際、説得力は減殺される可能性はありますね。

 

以上で大まかですが、今回の質問を考えてみました。もし、何か疑問が読者の方にあれば、また追加で質問していただければと思います。

今年の夏は暑かったですが、今はずいぶん気持ち良い季節になりました。このまま秋が続けばいいのにな、と思います。私は風邪からすっかり回復して元気満タン状態です。みなさんも秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 




 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[3]




 

法律ノート 第1077回 弁護士 鈴木淳司
September 30, 2017

今、移民局を統括する国土安全保障省のトップが、政府などの飛行機を私用で使ったのではないかということがニュースになっています。本人は不正利用を否定しているようですが、一部返金するということを言っています。それで飛行機のチャーター代を返金するのかと思ったら、全額を一人分の運賃で割った金額ということで、少々せこいなぁ、と思っています。最近はよく日本でもアメリカも政治家のスキャンダルがメディアに露出していますね。政治家も大変です。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[3]

さて、前回まで考えてきた「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょうか。

 

紛争を解決するための手続き

前回まで、今回質問のあった紛争の実体的な内容について吟味してきました。今回は手続き的にどうなるのか考えていきたいと思います。

 

契約書の仲裁条項

まず、今回質問されている方は不動産の管理契約をカリフォルニアの会社と締結されているようです。

この契約書がカギとなるのですが、通常はこのような契約書を不動産業者側が出してきたとすれば、そのなかに強制仲裁条項が入っていることが少なくありません。もちろん、あまりにも不当な仲裁の内容であれば、争うことも考えられますが、最近の契約書では調停や仲裁事項について、かなり綿密に練られた条項が入っています。また、不動産関係では、業者を束ねたり、指導する政府や団体が多くありますが、モデル契約書というのを用意していることも多く、なかなか文面はしっかりしているものも多くあります。

数回前に考えましたが、仲裁をするというのは悪いことではありません。訴訟の様にお金も時間もかからないケースが多いです。

かりに、何も仲裁条項に関して違法な内容であったり、一方当事者にかなり不当でない限り、有効となりますので、この場合仲裁の対象となる内容については、仲裁をすることで解決をはかることになろうかと思います。

そして、仲裁条項には、通常、仲裁の方法や場所についても明記があります。

かりに場所がカリフォルニア州のどこどこ、と記載されていれば、その記載に沿って仲裁が行われることになります。もちろん、今回質問されている方のように、日本からわざわざカリフォルニアに来るのは大変かもしれませんが、契約書にそのように記載して、その契約書に同意していれば、基本的には、契約書に記載された形での仲裁を行わなければなりません。

 

仲裁条項は尊重した方が無難

仲裁条項というのは、もともと訴訟を回避するために、記載される条項ですから、契約の規定を無視して、今回質問されている方のように、いきなり訴訟提起をするということはお勧めできません。たぶん、訴訟を提起した場合、相手方は仲裁を促し、その立場に裁判所も同意することになると思います。そうすると、訴訟を提起しても労力の無駄であって元の木阿弥になる可能性が大きいです。

アメリカでは、契約書にサインをしてしまったら、その内容についてあとになってから文句を言うことはなかなかできません。日本では、「契約に書いてあるけどさぁ、でも…」という場面もあるかもしれませんが、アメリカでは契約書に沿って粛々と権利を行使し、義務を負うというイメージでしょうか。

ですので、今回質問されている方も、カリフォルニアで仲裁するのは気に入らないかもしれませんが、契約に記載されている以上、やはりその内容に沿って権利を実現していくのが妥当といえると思います。

 

仲裁はどのように進んでいくか

では、仲裁とはどのような形で進行していくのでしょうか。次回ここから考えていきたいと思います。

 

私は風邪をもらったのか、少々体調が優れなかったのですが、だいぶリカバリーしてきました。これから寒くなると、風邪が流行するので、みなさんも体調には気をつけてくださいね。
また、一週間、楽しいことを秋の中に見つけながらがんばっていきましょうね。



 


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管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[2]




 

法律ノート 第1076回 弁護士 鈴木淳司
September 23, 2017

こないだうどんを食べていてふと気になって調べてみたのですが、なぜ七味唐辛子は「七味」なのでしょうか。もともと薬であったとか、単なる商品名だとか、諸説あるのですが、7種類の材料入っていなくても、七味唐辛子として成立するそうです。そういえば、その昔、なぜゴレンジャーはなぜ5人いないと効果的に戦えないのか不思議でしようがなかったのですが、同じようなもやもや感が大人になって蘇りました。

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[2]

 

さて、前回考え始めた質問を、次のようなものです。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

 

支出の正当性はそもそも不透明

さて、前回少々お話した、業者が行った支出管理が不透明であるという主張について、どのように考えるべきなのでしょうか。

そもそも、建築関係のコストや人件費というのは、かなり幅があり、どこまでが正当でどこからが不当なのか、線引きはかなり難しい面があります。

私もかなり多くの建築関係の事案を見てきましたが、(1)架空請求や水増し請求、それに(2)契約に明らかに反した支出については、不当と言いやすいと思います。

一方で、単に「高い」と感じるだけでは不当とはいえないであろうと思います。(1)についても、事実的にそれなりに証拠を揃えないと主張できません。(2)については、修繕が契約に明記はないが、「必要であった」と主張されると、必要な修繕ということになってしまいます。

 

訴訟も泥沼化する可能性

したがって、法律の問題というよりも、かなり事実的な内容が問われるので、その筋の専門家などの意見を聞かなければならず、訴訟になるとかなり帰趨がわかりにくい割には、労力がかかるパターンの事件になりそうです。

訴訟が泥沼化するよりは、後述する調停や仲裁のような代替的紛争解決手段の方が妥当かもしれません。

 

不当と違法の違い

ところで、これまで読んでいただくとわかると思いますが、「不当」という言葉を使ってきました。「不法」と「違法」といった法律用語とは若干ニュアンスを異にするので、ご注意いただきたいところです。一般的には、不当だから=悪い=損害賠償を受けられるのだ、というように考えられたりもするのですが、実際には、このように単純ではありません。

例を使って考えましょう。
たとえば、誰かを騙してお金を自分の銀行口座に振り込ませ、それを使ってしまッタトしましょう。これは、「詐欺」という積極的な悪い行為をしているのですから、その行為は違法であって、違法なことをすれば、損害賠償をしなければならないという法律の仕組みになっているのは、理解するのが簡単です。

では、一方で、あまり自分の口座の残金を気にせずに口座のお金を使っていたら、予期せず誤振込があって、そのお金も使ってしまった、という事例はどうでしょうか。

この人は、積極的に悪いことをして、自分の口座にお金を振り込ませているわけではありませんし、残高を気にせずに遣ってしまった、ということであれば、誤振込金を故意に使ってしまおうという気持ちもなさそうです。
ただ、間違って、何も理由がなくお金を受け取っているわけですから、それは正当な持ち主に返さなければなりません。「不当」すなわち、理由なくお金は受け取っていますが、「違法」だ、「君が悪いことをしたんだ」とは言い切れないわけです。

 

管理会社は「不当」と主張するのは難しい

今回考えている事例において、ここまで考えたように、当、不当について主張しあうことは、かなりの事実的な問題を含んでいるので、簡単に答えがでるわけではありません。

加えて、業者が「悪いことをしたのだ」と主張するのは、さらに大変で、事実を積み重ねて主張をレベルアップしなければならなくなりそうです。

 

仲裁という解決方法

さて、業者の支出が不当かどうかを判断するのに、今回質問されている方は、仲裁をしなければならないのでしょうか。次回は、仲裁とはどのようなものか、また、仲裁をカリフォルニアでしなければならないのかを考えていきましょう。

 

もう、秋分の日ですか。あれだけ暑い夏を体験すると、なんだか寒くなっていくのが信じられませんが、皆さん、ぜひ体調管理に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。



 


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管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[1]




 

法律ノート 第1075回 弁護士 鈴木淳司
September 16, 2017

しかし、ニュースの速報でまた北朝鮮がミサイルを発射したと流れていますが、核実験も同時に進めているわけで、かなり深刻なレベルの緊張状態になっています。かなりの干ばつで北朝鮮の国民は飢えに苦しんでいるのに、国の指導者は一体何をやっていて、何に怒っているのか掴みどころがありません。現状を見るとはっきり言って「戦争」という言葉が現実味を帯びるような危険に日本は晒されていると思うのですが。私は北朝鮮の国民が可哀想でなりません。

 

管理会社の不明瞭会計、仲裁か訴訟か[1]

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、次のような内容になります。

「私は投資用の物件をカリフォルニアに持っている日本在住の者です。この物件について、ある不動産管理会社に管理を任せているのですが、かなり管理がずさんで、収支、とくに支出に不明瞭な点があります。何度尋ねても納得する回答がありません。訴訟も辞さないことを伝えたところ、管理契約によって、訴訟ではなく仲裁(Arbitration)で紛争は解決しなければならないので、必要であれば、仲裁をカリフォルニアで行うことにしたいという返答が来ています。私としては、日本に住んでいるのでわざわざ仲裁を行うために、アメリカに出向くことも避けたいですが、一方で訴訟にしてすべてを明らかにしていきたいという気持ちもあります。このようなケースでは、そもそも仲裁をしなければならないのでしょうか。」

質問が多岐に渡っていて、かなり具体的な内容が書かれていました。法律ノートはあくまでも一般的な法の考え方を提供する場所ですので、具体的な相談は、個別に専門の方にされてくださいね。ここでは、いただいた質問に関して、上記の内容に絞って考えていきたいとおもいます。

 

外国在住のまま不動産管理を委託

さて、今回質問をされている方のように、現在はカリフォルニア州にはお住まいではなく、外国から、不動産の管理を遠隔で行うような場合、今回のケースのように管理会社と揉めるケースは少なくありません

特に不動産は、常時メンテナンスするための経費がかかりますので、家賃収入があっても、同時に出費が多くなることもよく聞く話です。場合によっては、修理修繕のために、お金を持ち出す必要性も出てきます。

今回質問されている方も、かなりの修理修繕費がかかっていることが気になり、色々質問を始めたようですが、納得するには至っていないようです。

 

管理契約の内容は?

まず、今回のような相談事例の場合、最初に確認しなければならないのが、管理契約がどのように規律されているかということです。

通常は「契約書」が存在しますので、具体的に法律家に相談される場合には、最初に契約書を用意することが必要になります。もちろん、友人に管理を頼んでいるような場合には口約束もあるでしょうが、管理会社と契約をしているのであれば、ほぼ契約書が存在するでしょう。

この契約書が基本的な契約関係を規律していますので、どのような内容になっているのか確認していく必要があります。

 

管理契約の内容を確認

管理契約は様々な契約形態が考えられますが、(1)管理の内容、および(2)管理することに対する対価については確実に規定があるはずです。

管理の内容も多岐にわたると思いますが、そのなかで、定期的に収支報告をするということも通常盛り込まれていると思います。4半期に一度とか、毎月といった周期で、収支報告を出す、といった条項になるでしょうか。まずは、この収支報告が内容として充分かどうかは確認する必要があると思います。

特に支出については曖昧だと思った場合、さらに管理会社が説明を求められることも少なくありません。業者の選定などに疑問が発生する場合もあるでしょう。

かりに、支出に関して、疑問が発生し解決できない場合には、他の管理会社の意見をもらうなど、第三者の意見を得てみる必要があると思います。

 

管理会社を変更する、という選択

そのうえで、信用できないと判断すれば、他の管理会社に変更することも視野に入れれば良いと思います。

不動産の管理というのは、時間的に継続して信用していかなければいけない関係です。一度信頼関係が崩れてしまうと、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というような、不信感が増大してしまうパターンを多く見てきました。

早めに、できるだけ支出に関して情報を集め、第三者の意見を聞いたうえで、決断をするのが上手なやり方だと思います。ただ、支出について、不当かどうかを判断するのは、なかなか大変な問題であります。

ここから次回考えていきたいと思います。

 

先日バーベキューで、ナスやしいたけを食べました。まだ暑い日が続きますが、ところどころで、秋の味覚を探しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 


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子どもの監護と養育費[2]-1074

法律ノート 第1074回 弁護士 鈴木淳司
September 12, 2017




 

日本では最近、政治家のスキャンダルが頻繁にニュースになっていますが、政治の問題とはまったく関係がなく、いわゆるゴシップ記事だらけですね。アメリカでも、ロシアとの関係云々など、いわゆる「疑惑」的な話が多いのですが、色々な政治の分野で本論が埋まってしまって、消費者が本当に必要としている情報がメディアでもネットでも見つからないような状況になってきているように思います。情報が氾濫すると、何が本論なのか見極める利用者側の目というのが逆に試されている時代なのでしょうか。

 

子どもの監護と養育費[2]-1074

 

少々間が空いてしまいましたが、第1072回で尻切れトンボとなってしまった問題を考えていきましょう。

「日本在住のシングルマザーです。アメリカで結婚、出産しました。夫とアメリカで離婚し、子供を日本(関西圏)で育てています。夫はアメリカと日本を行き来し、夏休みの間は子供と時間を過ごすという取決めでしたが、夫の仕事の都合もあって、それもできずに、再度、子供の監護について揉めています。揉めている一つの理由として、今まで養育費を夫はまったく支払っていません。私は日本にいるのですが、このような場合に養育費の請求をまずできないものでしょうか。私は、私の父母に頼って肩身が狭い思いをしながら、子供を育てています。」という質問です。

 

日本在住で外国に養育費請求することの困難

この質問を前回考えたときに、なかなか法律家として一般的に考えると難しい問題が生じるという現実を考えました。

今回質問されている方は関西に子供さんと住んでいますが、子の父親はアメリカにいるわけです。日本の弁護士に相談すれば、日本における手続きでなんとかならないか、考えることになります。当然です。そうすると、日本における考え方としては、日本で養育費に関して判決を取って、その判決をアメリカで執行する、ということが法律論的には考えられます。悪くありません。

一方で、日本に住みながら、アメリカでの養育の取立ての問題をアメリカにいる弁護士に相談することも、お金はかかるでしょうし、簡単ではないと思います。

 

養育費の取立て制度

実はこのような問題について、基本的に弁護士に相談しなくても解決する方法があるのです。

たぶん、法律実務書などにもあまり載っていないのですが、基本的な考え方を法律ノートで考えておきますので、ぜひ法曹の方も、問題を抱えている方も活用されてください。

アメリカでは、養育費の取立てをいちいち裁判所に申し立てなくても、すでに養育費の支払いが決まっていれば、その相手方の住むところを管轄する検察局(District Attorney)が取立てを代行してくれます。少なくともカリフォルニア州はそのようなシステムになっています。

したがって、養育費がもらえなくて困っている今回相談されている方のような場合には、直接相手方の男性が住むところを管轄する検察局に連絡をして、取り立ててもらうということができます。法律で、その取立ての詳細についても規定されているのです。

もちろん、このような取立てのための連絡や手続きをするのが個人には難しいかもしれません。そういう場合には、経験のある人や、弁護士などに、この手続をするためのサポートを頼めるか聞いてみるのが良いと思います。場合によって、検事局は通訳も用意してくれると思います。

 

日本から養育費請求を認める判例

実は、以前にも法律ノートでご紹介したかもしれませんが、今回いただいている事例のように、日本在住で、未成年者の養育をしながらカリフォルニア州にいる夫に養育費を請求したところ、拒否してきた事由を私の所属する事務所で争いました。

一審は「日本に在住している子の母はカリフォルニア州に住む元夫に養育費は請求できない」と棄却されたので、もちろん控訴しました。そうしたところ、一審判決が破棄されて、私の所属する事務所の主張が認められました。裁判例として、今でも残っています。この裁判例が確定してから、日本に在住している人でも、検察局は積極的に養育費を請求してくれるようになりました。

 

根底にあるのは子どもの利益保護と養育負担の公平

子育てが大変な時期にシングルマザーで仕事もしなければならないと大変でしょう。

でも、上記のようにアメリカでは子供の利益の保護、養育の苦労の軽減を積極的に考えてくれています。諦めないで、こういった制度を活用されたら良いと思います。

 

 

また、次回新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

天気が暑かったり、いきなり涼しくなったり、と忙しいですが、暑い時はまだまだ暑いので、脱水状態にならないように気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。




 

我は売る、さらばベスパよ(2)-ネット個人売買とリスク_1073

法律ノート 第1073回 弁護士 鈴木淳司
September 6, 2017




 

我は売る、さらばベスパよ(2)

前回からの続きです。さて、思い入れのあるベスパをインターネットの広告に載せたところ、一時間も経たないうちに興味があるという連絡がバタバタ入るようになりました。

ところが、ほぼ9割方の連絡は結論として、正当な購入を目的とするものではありませんでした。これがネット社会の現実でしょうか。

 

まず、興味があるから返答してほしい、ということで律儀に返答をすると、中古車を売る前に検査をするべきで、その価格は他社よりも安いです、という売り込みのセールがいくつかありました。また、丁寧ではありましたが、売れないなら、寄付してくださいという申込みもありました。学生なので売り出し価格の半額程度払うのでなんとかしてくれというのは、来た連絡のなかではマシな方だったかもしれません。これらは詐欺ということではありませんでしたが、趣旨違いという感じでしょうか。

悪質なのは、Paypalで支払う、という申し込みです。いきなり連絡が来て、遠くに住んでいるので見に行けないが、Paypalで言い値を支払う、と言ってきます。この手の「遠隔地に住んでいるので、Paypalで対価を払うという」のは、ほぼ詐欺です。詐欺の注意喚起をしているサイトにも定番の詐欺として載っています。
Paypalというのは、いわゆる支払代行サイトで、一定の取引の内容は保証してくれるようになっていますが、個人売買はほぼ保証はしてくれないのです。メールなどのやりとりで、Paypalを使って支払ったように見せかけて、現物を詐取するというやり方です。ひどい場合には、支払いすぎたので、現物とともにPaypal代金を一部返金してくれ、といって現物だけではなく現金まで詐取されてしまうケースも多くあるそうです。ですので、個人売買においては、Paypalなどはやめておいたほうがよく、できればニコニコ現金取引だけにしておくべきでしょう。
私も、Paypalは受け付けませんとはっきり広告に書いていたのですが、かなりの数のPaypal詐欺メールに接しました。ひどいメールのやり取りになると、私がPaypalは受け付けません、というと、返信に罵詈雑言が書かれているものもありました。それも英語の文法が間違っているのです。苦笑いしてしまいましたが、一瞬不愉快になりますよね。

それから、もう少し手の込んだ手口では、実際に電話で話すまでの状況になったのですが、銀行振出小切手で支払う、と言ってくる人もいました。これも詐欺です。私は、実際に会って、現物を引渡し、現金がほしい、と広告に書いていたのですが、見に行きたいけど、自分の記録として残したいので銀行振出小切手(キャッシャーズチェック)で支払っても良いか、というリクエストです。実際に見に来て買うのであれば、現金をちょうだい、と言うと、それでも不安だから一緒に銀行にいくのはどうか、と言ってきます。私は、銀行に行くなら、その場で現金をおろして、それを確認したうえで、受領証を書くよ、と言ったら、また御託を並べます。受領証ってどういうのか、わからないなぁ、とかとぼけたことを言うので、私は弁護士なので、法的に有効な書類ならすぐに作成できるよ、と言ったら「考えて、また連絡するよ」ということで、もう二度と連絡はありません。銀行振出小切手の詐欺については、少し前に法律ノートでも取り上げましたが、個人売買のレベルでは、避けるべきです。やはりローカルの人とニコニコ現金商売をするしか安全策はないのではないかと今回考えさせられました。とはいえ、偽札を使われたらもう痺れてしまいますね。

週末は葬式に出ていたため、一部の真摯に連絡をしてくれた方々にお会いできなかったのですが、広告を出した当初から、文章もしっかりした方から連絡をもらっていたので、その方にまず会いたいと思いました。他の人に待ってもらい、その人と葬式から帰ってきてからまず会いました。自分の信用するメカニックを同行したいというのも好意が持てます。会うと感じもよく、ちゃんと現金も用意をしてくれたので、私もこの人なら大事に乗ってくれるだろうな、と思いました。結局、私も積極的にディスカウントに応じて、すぐにベスパは売られることになりました。その人はサンフランシスコ市内に住んで、市内の通勤に使うということですので、またいつかどこかでベスパに会えるかもしれません。

世の中には、詐欺をするような人がたくさんいることがよくわかりましたが、良い人も必ずいるものです。結構、個人売買は面倒くさいものだということもよくわかりましたが、色々習わせていただきました。

ベスパくん、6年間ありがとう。

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我は売る、さらばベスパよ(1)-ネット個人売買とリスク_1072

法律ノート 第1072回 弁護士 鈴木淳司
August 31, 2017



 

我は売る、さらばベスパよ(1)-ネット個人売買とリスク_1072

皆さんは、8月最後の週末はどのようにお過ごしになりましたか。私は、ロスアンゼルスまで飛んで、葬儀に参列しました。まだお若かった故人のことをご家族と偲ぶ機会を得ました。この故人がいなければ、日本最初の量販ハイブリッド車が世に出ませんでした。貴重な方を亡くしました。

さて、前回から養育費について考えてきました。

今回も続けようと思ったのですが、先週から私に起こっていることで、ぜひ皆さんにも注意していただきたいことがあり、一旦、いただいている質問にお答えするのを休ませていただき、私の記憶が鮮明なうちに皆さんとシェアできたら良いなと思っています。

くだらない話のようにも思えますが、日常生活では気をつけなければなりません。

 

実は私は若いときから、かなりの台数のオートバイに乗っていて、弁護士になってから控えるようにしているのですが、今でも街中で走っているオートバイを見ると心で評論してしまいます。

アメリカで、バイクというと自転車のことになってしまいますが、尾崎豊や浜田省吾に習って、ここでは、オートバイのことをバイクと言ってしまう可能性がありますので、あしからず。

 

2011年、あるスクーターに目を奪われました。実はスクーターにはまったく興味がなかったのですが、当時新車だった、GTVというベスパがどうしても欲しくなってしまいました。

ベスパというのは、ご存じの方も多いと思いますが、イタリアのピアジオが出しているスクーターで、イタリア語で、蜂の意味があります。女性でも乗りやすいということで発売され、ヨーロッパではどこに行ってもみかけます。限定解除の大型バイクに乗っていた私が、なぜこのGTVにロックオンしてしまったかというと、「ローマの休日」という映画です。

皆さんも観たことがあるクラシック映画なのですが、その映画の中でオードリーヘップバーンが乗っていたベスパを覚えていますか。マニアには良くわかることなのですが、現代のスクーターのヘッドライトの位置は、ほぼほぼハンドルの高さに設定されています。ベスパもほぼすべて、ヘッドライトがハンドルの位置というのがお決まりなのですが、このGTVだけは、前輪フェンダーの上にヘッドライトがつけられている、いわゆるレトロ復刻版なのです。オードリーの乗っているベスパも前輪の上にヘッドライトがあるのです。

見ればみるほど、このGTVがどうしても欲しくなった私は衝動買いをしました。オプションも付けられるだけつけて、意気揚々とサンフランシスコの街で乗っていました。なんといっても、シートが革でできているスクーターです。革の保護用のスプレーで磨いたり、街中に停めるときには、カバーをしたり、と哺乳類を飼っていると同等のケアをしていました。

ところが、「スーツを着ながらでも乗れるんだよ」と自慢げにしていた私も、1000マイルも乗らないうちに、徐々に乗らなくなってきて、結局車庫に眠るオブジェと化してしまいました。それから、数回は乗ったものの、やはり車の方がなにかと便利ということもあり、GTVはカバーをかぶったままになってしまいました。

ところが、人間というのは、浅ましいもので、2011年の「あのときの買ったときの気持ち」を大事にしていていたこと、仕事が忙しかったことなどから、手放すこともできず踏み切れない状態でズルズル今まで来てしまいました。ところどころ、金属パーツにサビは浮いてきているものの、新品同然の状態です。

2017年夏も終わるころ、車も買い換える時期になり、ようやく売る決心をした私は、地元の物品売買サイトを通して、「ベスパ、売ります」という広告を出しました。「あー、大事に乗ってくれる人が現れたらいいなぁ」などと思いを込めつつ、愛車の写真を掲載して、連絡を待つことにしました。価格設定は、ちょっと高めにしました。交渉はするつもりですが、やはり買った時の愛着があるからです。

インターネットに広告を掲載すると、一時間も経たないうちに、いくつも連絡が入ってくることに驚いていたのですが、実は、かなりの数の詐欺的手口をつかった連絡が入ってくることになります。

次回、どのような手口で私の愛車を持っていこうとしているのか、みていきましょう。

 

テキサスのハリケーンなど天候でアメリカも深刻な状況になっていますが、秋にかけて天気も不安定になってくることが予想されます。異常気象があるとしても、皆さんくれぐれも体調管理には気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。




 

子どもの監護と養育費[1]-1071

法律ノート 第1071回 弁護士 鈴木淳司
August 21, 2017




 

夏休みも佳境ですね。今年の夏は、カリフォルニア州でもかなり大規模な火事が相次ぎました。さらに異常な暑さも続きました。乾燥しているのは、まだ暑さ対策をし易いのですが、冬に大雨になった反動なのかカピカピに乾燥しきっています。日本でも、梅雨のような天気になったり異常な暑さになったりと、夏バテの方も多いと思います。気候が変だと思うのは私だけではないと思うのですが、政治家はそう考えない人もアメリカではいるようですね。
皆さんはこの夏をどのようにお過ごしでしたか。

 

子どもの監護と養育費[1]-1071

 

さて、今回から皆さんからいただいている質問に新たにお答えしていきたいと思います。今回いただいている質問をまとめると以下のようになります。

「日本在住のシングルマザーです。アメリカで結婚、出産しました。夫とアメリカで離婚し、子供を日本(関西圏)で育てています。夫はアメリカと日本を行き来し、夏休みの間は子供と時間を過ごすという取決めでしたが、夫の仕事の都合もあって、それもできずに、再度、子供の監護について揉めています。揉めている一つの理由として、今まで養育費を夫はまったく支払っていません。私は日本にいるのですが、このような場合に養育費の請求をまずできないものでしょうか。私は、私の父母に頼って肩身が狭い思いをしながら、子供を育てています。」という内容になります。

かなり具体的な質問でしたが、できれば離婚を認めた裁判所(アメリカですが)での対応を至急考えた方が良いと思います。

今回は養育費の取決め遵守について考えていきたいと思います。

 

シングルマザーの現実

まず、今回の事例のように離婚が成立し、子供も母親方に基本的には引き取られ、監護権は父母が行使をするというような場合、子供の面倒を見るための費用は稼いでいる方が支払うことになるのが一般的です。

今回質問されている方のようにシングルマザーになると、子供の世話もあり、かなり生活を維持することが難しくなるのが現実です。

今回質問されている方も、日本でパートを2つ掛け持ちで行いながら、親の手を借りて子供を育てている様子が伺われるのですが、自分も無理をしていらっしゃることは明らかですし、その歪が子供さんにも影響している様子がわかります。

自分が一度は好きになって子供まで産んだのですから、自分はがんばらなければならないという気持ちは良くわかるのですが、子供にしてみたら単なる迷惑かもしれません。やはり、子供ができるだけ良い環境で育ってもらうためには、親の問題は親の間だけにしておくべきかもしれませんね。

 

養育費ー子どもにとって最良の方法は何か

基本的に養育費というのは、カリフォルニア州では、両親の収入や財産を勘案して決められます
多く稼いで、多く財産を持っている方から支払われるべきであるということが基本で、ある程度「相場」というのは決まっています。

もちろん、両親にも、山もあり谷もあるわけですから、それに応じて支払いの変更も裁判所に申し立てることができますが、離婚の際に決まった養育費の支払いは、裁判所の変更が認められるまで続ける必要があります。

子供のことを考えたら、そうするのが子供の利益になるという法律の判断です。

 

カリフォルニア州の養育費ー泣き寝入りしない方法

そうすると、今回質問されている方のように、すでにカリフォルニア州の裁判所で養育費の取決めがなされているのに、養育費を受けられていない場合には、まず、今まで生じている養育費の支払いについて請求をしたいと思うのは当然です。

ところが、すでに今回の質問をされている方は日本にいます。そうすると、どのように養育費を請求すればよいのかわかりません。夫が自発的に養育費を支払わなければ、何らかの法的な請求をしなければならないことになります。

このような場合、日本に在住していると日本の弁護士に相談しなければならなくなりますが、日本の弁護士であれば、泣き寝入りするか、日本で裁判を提起して、判決を取って、その判決をなんとかアメリカで執行していかなければならない、といったアドバイスをすることになるかもしれません。

しかし、少なくともカリフォルニア州ですでに決まっている養育費の取決めにおいては、そのようなことをする必要はありません

ここから次回考えていきましょう。

 

アメリカの街では、もうハロウィンに向けて、仮装を売る店がオープンしています。夏が終わると、バタバタと年末に向けてイベントが目白押しですね。

一年経つのは早いですが、一日、一日大事にしながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[3]_1070

法律ノート 第1070回 弁護士 鈴木淳司
August 14, 2017




 

お盆休みを利用して日本からいらっしゃった御一行を観光にお連れしているのですが、サンフランシスコ市内の観光名所はどこにいっても、人が多くてびっくりしています。サンフランシスコは、最高気温が20度前後ですから、暑いところから来られている方たちには良い避暑地なのかもしれませんね。みなさんもたまには、サンフランシスコのクラムチャウダーはいかがでしょうか。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[3]_1070

 

さて、全二回考えてきた質問を続けて考えていきましょう。

「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」という質問です。

 

自主退職が受け入れられない場合

今回は、自主退職を促しても、従業員側が聞き入れない場合、どのように対応していく必要があるか考えましょう。

前回までは、法律や就業規則に触れる場合があるか慎重に検討する必要があるということを考えました。そこから今回考えます。

 

雇用契約の終了

まず、就業規則の他に、その従業員と会社の間で契約があるか確認する必要があります。契約が存在する場合には、期間が設定されていますので、たとえば、一年間の契約であれば、その一年間が終了するときには、理由なく契約を解除できます。その場合、非行があるかどうかにかかわらず、終了できますので、契約に従って通知をしたうえで、契約を一年間満了の時期に解除することは可能です。

このような解除であれば、理由がない契約解除なので、後に非行行為の有無に関して、法廷で争われることはありません。

 

即時解雇

次に、非行があったことを理由として即時解雇をする場合を考えます。

アメリカの企業では、内部で証拠を確認し、解雇の判断をすることが多くあります。外部の弁護士の意見を聞くことも多くあります。私もかなり多くの経験を積んでいるところではあります。

非行行為に対して、緩い対応をしていると、会社に在籍をしている人たちにも良い影響がありませんし、毅然とした態度を見せる必要もあります。そうすると、のちにいくらかの訴訟のリスクを考えても、即時解雇をすることも少なくありません。

もちろん、第一に雇用契約を確認し、契約に書かれた内容に沿って、解雇する必要があります。

 

即時解雇の注意点

即時解雇をする場合には、労働事件の訴訟の経験が豊富な法律の専門家に相談することがベストです。労働コンサルタント等では、最近の判例や訴訟の動向を押さえているか不安です。

解雇がなされた場合には、解雇された従業員も、色々な理由をつけて、不当解雇を訴えてくる可能性があります。場合によっては、訴訟を提起しないことを前提とする契約書を用意して、いくばくかお金を渡したうえで、訴訟を回避するためのアレンジメントをすることも可能な場合があります。

このような訴訟の可能性を緩和する契約書が締結できない場合には、専門家を含めて、訴訟のリスクを検討します。訴訟のリスクを考えるときに、具体的に、本論である、「使い込み」を証明できる程度の書類や証人の確保ができるかどうかは重要ですが、傍論で、ハラスメントや差別などの主張がなされる可能性があるか、考えた方が良いことになります。このように即時解雇の際にも、契約書を作成するなど、ある程度リスクの緩和をすることが可能かもしれません。

 

外部の意見を聞くことの重要性

しかし、無防備な状態で即時解雇をすることになると、職場の環境や、就労状況など、かなり多方面で準備をしなければなりませんので、専門家にしっかり相談されると良いと思います。ただ、今回のように、従業員に非行があったと思われ、かりに従業員がなんらかの理由で企業を訴えてきたとしても、企業側としても反訴を提起して、非行行為を公開の場で咎めることもできます。そうすると、企業側としても、堂々と対応する態度を持って対応しても良いと思いますが、とにかく、客観的に状況を専門家に判断してもらうことが良いと思います。

社内のみで話をしていると、場合によっては感情的なヒートアップもあるので、冷静な意見を具体的事例についてもらうことが大事だと思います。

 

 

また、次回新しくいただいている質問について考えていきたいと思います。夏休みも後半になってきましたが、仕事や勉強ばかりではなく悔いがないように夏を満喫されてくださいね。

また一週間暑さに負けずがんばっていきましょう。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[2]_1069

法律ノート 第1069回 弁護士 鈴木淳司
August 8. 2017




 

サンフランシスコ国際空港で、関西から来ている少年野球の御一行を見かけました。ベイエリアの姉妹都市交流の一つのようです。まだ、小学生のような感じでしたが、はじめてアメリカに来た子供達もいるでしょう。子供の頃から、このような国際交流をして、自国を離れスポーツで触れ合うというのは素晴らしいことですね。きっと一生の思い出になるのでしょう。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[2]

さて、前回から考えてきた「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」という質問を続けて考えていきたいと思います。

 

就業規則や法律違反がないか

前回をまとめると、まず事実関係を整理し、就業規則および法律に抵触する行為がないのかを確認するということが必要ということを考えました。

今回続けて、実際に質問されている具体的事例にどのように対応した方が良いのか、考えていきましょう。

 

具体的な対応_事情を聞き、記録を取る

まず、問題となっている本人からも事実の聴取をされているようですので、本人の言い分も必ず聞き、聞き取った内容は残しておくことが良いと思います。一刀両断に切り捨てるのは、よくありません。

本人が「使い込み」を否定しているのであれば、事実関係との齟齬についてちゃんと説明を受けるべきです。そのときに、聞き取りをするのは複数人いるほうが良いと思います。後日、聞き取り中に何か問題視される可能性がある場合、その主張を封じることができます。

このような社内での聞き取り段階で、従業員側が弁護士に相談し、弁護士をつけることもありえます。弁護士がついたということがわかった場合には、強引に聞き取りを続けるのではなく、会社側も速やかに弁護士に相談して、弁護士同士での話合いにする必要がでてきます。

 

具体的な対応_退職を促す

かりに、従業員が「使い込み」を否定していても、事実関係を精査して、使途不明金があるとすれば、実際に自己都合退職を促すこともできます。まずは、口頭で本人の意向を聞いてみることが良いかもしれません。

自己都合退職とするかわりに、法的責任は問わない、という交換条件も提示しても良いかもしれません。退職届(Resignation Letter)のみを受理して終わる場合もありますし、和解契約書的な書面を作成する場合もあります。

事例によって異なると思いますが、できればまず話合いを持つということが段取りとしては適切です。いきなり、解雇とすると、あとで訴訟になった場合、なぜ解雇をする前に、自己都合の退職を吟味しなかったのか問題にされる場合があります。会社側としても、具体的事例に即して吟味に吟味を重ねた、ということを明示できたほうが良いのです。

 

退社か解雇か

退職を促し、従業員本人も自分の意思で退職すると、会社側にとって訴訟のリスクを減らすことができます。すなわち、不当「解雇」ではなく、自己都合の退職なのですから、「解雇」にまつわる訴訟を回避することができるのです。もちろん、100%リスクを回避することは不可能かもしれません。たとえば、「無理やり退職に追い込まれた」などという主張は法律上可能だからです。

しかし、一般的に言って、自己都合で退職する場合には、「解雇」には該当しないので、訴訟リスクがグッと減るのです。

退職した場合に、会社側が気をつけなければならないのは、退職日までに未払賃金が残っている場合には、その賃金を退職日までに支払う義務など、残給与の精算です。これを怠ると、あとで課徴金を乗せられて請求される可能性はあります。

上記のように話合いが可能であれば、まず退職の可能性を探るのが両者によって良い選択肢であります。ただ、従業員側が頑なに、退職を固辞した場合には、会社としては解雇を考えなければなりません。

次回ここから考えていきたいと思います。

 

 

日本の政治もまた色々再編が進みそうな状況にあるようですが、周りの意見を聞くと、あまり期待は感じられませんでした。どの世界でも人材不足なのかもしれませんね。
まだまだ暑い夏ですが、体調管理に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。




 

会社で使い込みを発見。解雇するには?[1]_1068

法律ノート 第1068回 弁護士 鈴木淳司
August 3, 2017



 

 

北朝鮮がミサイルを発射していますが、今まで日本海側だけではなく太平洋側にも落ちていますね。そうすると、現状確実に日本のどこにでも撃ち込めるミサイルを持っていることになります。今は、一発だけ撃っているような状況ですが、たとえば10発を一斉発射した場合、本当にすべて防衛はできるのでしょうか。本当に心配になります。皆さんは夏をどのようにお過ごしになっていますか。

 

会社で使い込みを発見。解雇するには?

 

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめると「私が所属する日系の会社(未上場)で、会計監査が行われたのですが、従業員の一人が会社のお金を私用の目的で使い込んでいることが発覚しました。私は人事担当なので、何度か本人と話をしていますが、本人は否定しています。解雇を適法に行うにはどのようにしたらよいのでしょうか。」というものです。いただいている質問はかなり長かったのですが、一般的なお答えにするために内容をまとめました。

個別具体的な質問については、ちゃんと弁護士に相談されたほうが良いと思います。

 

事実の特定は慎重に、正確に

まず、事実はどのようなものかを把握することが必要です。

会計監査が行われたということですが、具体的にどのような資料がでてきたのか、専門家にも聞きながら整える必要があると思います。

できればクレジットカードの明細や、お金に関する資料の齟齬などは、書類で確認できるはずですので、事実関係の把握には必ず必要なものですので、用意しておきましょう。

それから事実関係で必要なものが、関係者の聞き取りです。対象となっている人だけではなく、その事実に関係している人たちから情報を聞き取っておくことが重要です。聴取されている人の了承を取ったうえで、ビデオや録音で内容を保存しておくことも良いと思います。

 

将来的な訴訟にそなえる

これらの事実の把握や情報の保管が重要なのは、将来的にかりに何らかの裁判になった場合、証拠になる可能性があるからです。また、調査の対象者などと、メールでやり取りをしている場合には、電子情報も必ず残しておく必要があります。

ただ、証拠とできる内容は法律で限られていますので、事実を把握する段階で、専門家に相談をすることは重要だと思います。

 

就業規則の内容を確認

次に重要なのは、会社の就業規則(Employee Manual)の内容をチェックすることです。

就業規則に書かれている手続に沿って処分を決めていかなければなりません。就業規則には通常、疑義ある行為の種類などが規定されています。

就業規則というのは、各会社のルールですから、法律と違った設定をしている場合もあります。また、就業規則は、就業開始時または規則導入時に各被用者に配布され、受領のサインをもらうという手続きを取るのが一般的です。ですので、内容は会社全体に周知されているということになっているのです。

 

今回、会社の調査の対象になっている人も、就業規則に関して受領のサインをしているのか、会社側で確認する必要があります。かりに、就業規則が整備されていない小規模の会社であれば、一般的に法律上犯罪行為を構成する内容かどうか、検討する必要があると思います。

 

就業規則違反と法律違反

就業規則に反する行為が、同時に法律に反する場合もあります。民事法に触れる場合もあれば、刑事法に触れる場合もあります。

民事法に触れる場合には、民事訴訟、たとえばお金を不正に使われているような場合には、不当利得返還請求訴訟を提起することができます。横領として刑事法に触れる場合には、警察に届けて刑事的な処罰を求めることも可能かもしれません。

ただ、現実的な問題として、民事訴訟をするには、弁護士や裁判の費用がかかりますし、使った費用を一個人から回復できるのか疑問の場合もあります。また、刑事的な届け出をしたからといって自動的に捜査をしてくれるかどうかわかりませんし、刑事事件沙汰にすることは躊躇する会社も多くあります。

実際に事実関係を考えたうえで判断していくしかなかろうと思います。

 

 

ここから次回考えていきたいと思います。私は体調がバテ気味なのですが、皆さんは気をつけてくださいね。充分に水分を補給しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[2]

法律ノート 第1067回 弁護士 鈴木淳司
July 24, 2017




 

友人や縁ある方から勧められた「決意なき開戦」(堀田江理著)、大沼保昭や和田春樹著の慰安婦問題に関する本を読み、国際社会における日本のこの80年間程度の歩みを学んでいます。こういった近代史を読み解いていくと、色々な想いが湧いてきます。日本という国は、多様な政治思想がぶつかりあい、普通の人々がそれに巻き込まれてきたという切なさを感じています。一方で、いつの時代でも慈愛の心を持ち平和を願うバランスのとれた優れた思想を持った日本人が存在していることに感心しています。本は頭の肥やしですね。

 

米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[2]

さて、前回から考えてきた「私(男性)は米国永住権を持っている日本人ですが、日本から留学してきている彼女ができました。そこで、結婚をすることによって、彼女にも永住権を取ってあげられたらよいな、と思っています。永住権の申請はどの程度時間がかかり、どのような手続きをすれば良いのか教えてください」という質問について、続けて考えたいと思います。

 

配偶者永住権と「待ち時間」

前回は、配偶者の永住権申請をする際に、待ち時間が現在数年発生しているというところまで考えました。この「待ち時間」について今回考えます。

配偶者が今回質問されている方のように、外国籍(日本国籍)を持ち、ビザでアメリカに入国している場合、基本的に婚姻をしたからといってすぐに合法的にアメリカに滞在できるわけではありません。

 

別に米国の滞在資格が必要

永住権の許可がおりるまで、何らかの合法的な滞在資格(一般的には非移民型のビザ)を維持する必要があります。もちろん、日本に一旦戻り、永住権の申請を待つことはできます。米国に滞在し、永住権の申請を待つ場合には、米国に滞在する合法的な資格が必要となるのです。

今回の事例ですと、この「待ち時間」の間に、これから永住権を申請する配偶者が学生ビザを継続して維持していれば問題がありません。他にも就労ビザなどの維持をしていれば問題がないことになります。

 

具体的な事例

ここで、最近目にした事例をご紹介しておきたいと思います。

Aさんは、配偶者である永住権保持者のBさんのスポンサーで永住権を申請することになりました。永住権申請書を無事に提出し、「待ち時間」となりました。Aさんは、この「待ち時間」の間に、米国内で就労し、金銭を得ていました。ほそぼそとした自営業者です。税務申告を近年までしていませんでしたが、永住権申請が近づいてきたこともあり、税務申告を遡って行いました。

ところが、永住権の申請が終わって、やっと面接にこぎつけたときに、面接官から、税務申告について指摘を受けました。すなわち、永住権の申請の審査に、移民局は税務申告についても調査をしていることになります。

申請は却下とはなりませんでしたが、許可を得るためには、遡って申告をしたことにより発生した過去の税金を支払わなければ、永住権は認められない、という条件を付けられました。もちろん一括で税金を払え、ということではなく、国税局と分割の合意ができているということでも構わないという話にはなっていました。

 

税務申告と移民法上の審査

家族ベースの永住権申請については、税金の支払いうんぬんを聞くことは、完全な裁量になっていましたが、この事例では税務申告を許可の条件にされてしまったということになります。近時、移民関係の審査が厳しくなってきたので、このような事例がでてきているのでしょうが、これから永住権の申請をされる外国人の方は気をつけなければならないポイントです。

永住権申請の「待ち時間」において、学生ビザを維持しているだけであれば、税務申告のうんぬん、という問題は発生しないと思われます。しかし、一方で、何らかの収入を米国内で得ている申請者は、税務申告をする場合、ちゃんと税金も納めていることが許可の前提になります。

 

データベースが関連付けは密に

かなり政府内のデータベースが連動している時代になっていますから、移民関係の申請について、移民関係の書類の整備だけではなく、税金など他の政府関係の申請者の義務についても、しっかり書類を整備することが求められているということに注意してください。

 

 

次回からまた新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。暑い日が続きますが、健康に留意して水分を多く取りながらまた一週間がんばっていきましょうね。