国際弁護士なブログ」カテゴリーアーカイブ

運営者で米国移民法のエキスパート鈴木淳司弁護士の書下ろしブログです。

トランプ政権とH-1Bビザ発給の動向

March 14, 2019 皆さんお元気でしょうか。ベイエリアは春らしくなってきましたが、皆さんのお 住まいの地域はいかがでしょうか。 さて、今回は、厳しい移民政策を続ける現政権下におけるH-1Bビザの発給につい て現状を少し考察しておきたいと思います。まずは、良いニュースからです。

Premium Processing の再開

しばらく、移民行政機関が停止していた、H-1Bビザ(以下、「Hビザ」ともいう。)の優先審査(Premium Processing)が3月12日から再開されることにな りました。

優先審査がやっと再開されるということで、移民局の申請受理から 15営業日以内に審理され、許可の可否が通知されることになりますが、通常の審査に比べて高額の審査費用が要求されるのは、今まで通りです。

これで、申請している外国人も、雇用を考えている米国企業も宙ぶらりんの期間がまた短くなるわけですから、良いニュースとしたいと思います。  

 

Hビザの実情

次に、関係ある方々は、現政権下におけるHビザへの風当たりについて、全体的によく理解した上で、注意をしていただきたいと思います。 移民局が公表しているデータをみると、前政権に比べ政策の変化がかなり如実にHビザの審査に表れています。

そもそも、現大統領は、選挙公約の一貫として、外国人ではなく、優先してアメリカ人を雇うべきであるということを強調していました。選挙中はある意味漠然とした主張が多かったのですが、大統領に就任すると、すぐにHビザに関しての審査の厳格化を指示しました。

そして、現大統領下の移民局の審査は実務に影響が出ていることはわかっていましたが、公表されている数字でもその方針が確認されました。  

 

不許可件数は前政権の倍

移民局の統計を見ると、2018年度(2017年10月〜2018年9月)、 申請の即不許可の数が6万件を超え、前政権下の倍以上になっています。申請件数にさほど違いはないので、受理されても、不許可とされる率がかなり上がってきていることがわかります。

そして、2019年度の最初の四半期で、即不許可となる申請が2万5千件ほどになっていますから、2019年度は、10万件に達する不許可が出てくると考えられます。

したがって、以前は問題なく受理されていたようなケースでも、現在では予断を許さない状況になっているのです。

移民局の言によると、「アメリカ人の雇用を守り、些末な申請を排除しする」改革を続けているということですので、もしかしたら、初動で要件を満たすかどうか怪しい申請も実際多いのかもしれませんね。

ただ、多くの案件では弁護士が申請を代行しているでしょうから、一年間で10万件不許可になるとすれば、要件充足云々の話だけではないかもしれません。  

 

Request for Evidenceー追加資料の要求

もう一つ、即不許可にならない場合、すぐに許可をしてくれるケースもありますが、多くのケースでは、追加資料要求(Request for Evidence、略してRFEと言 われます。)を移民局から受けます。

2017年度は、8万6千件に対してRFE が出されましたが、18年度は、なんと倍近い15万件に上っています。

この RFEですが、最近の例をみると、本当に内容が微に入り細に入り、でびっくりし てしまいます。 その資料を集めるのも大変ですし、実際本当に「このような情報が審査に必要なのかなぁ」と思うものもでてきます。

このRFEが来ると(多くの申請で来るのが当たり前になってきましたが)、そのやり取りで何十日も費消するので、許可が遅れますし、法律事務所や雇用者の負担もかなり増加しています。  

今後の対策

日本人は、Hビザの他に、EビザおよびLビザの許可を得て働くことはできますが、他の外国人は、Hビザに基づいてのみ就労が可能というシチュエーションも多いのです。

数年前とは、異質とも言える移民局の対応に関して、移民弁護士も、裁判にまで訴えるなどで争っていますが、大きな政策が現状で変化することはなさそうです。

これから、Hビザを考えられている企業側、学生側も、上記の状況を踏まえて覚悟しながら、対応してください。

また、申請途中になにがあるかわかりませんの で、かなり余裕を持って申請を始めるようにしてください。

また次回新しいトピックを考えていきたいと思います。  

 


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米移民法政策ー難民認定から見てみる

Jan 29, 2019

遅くなりましたが、MomsUSA/JINKEN.COMをご愛顧いただいている皆様あけましておめでとうございます。今年もサービスやじんけんニュースをよろしくお願いいたします。

移民に関してアメリカでは激動の一年になりそうです。保守的な考え方、多様性を尊重する考え方がぶつかりあい、政治全体に影響する年になりそうですね。国際弁護士ブログ(じんけんニュース)においても、逐一重要な話題は法曹の視点から解説していければよいな、と思っております。

 

移民と犯罪率?!トランプ政権の考え方

現在、メキシコと米国の国境に壁をつくる、つくらない、という議論が政府を揺るがしています。その建設根拠として現政権は、犯罪の増加を防ぐという理由付けを主なものにしています。

日本でも、外国人の犯罪について話題になることも増えてきましたが、移民を積極的に受け入れてきたアメリカでも、同様に移民の犯罪、という観点でニュースになることは珍しくありません。もともと、この数百年移民で成り立ってきたアメリカですが、今になって住んでいる移民の人たちが、新しい移民を規制することの可否が論じられています。

 

アメリカの難民申請数ー1年で33万人

このように移民政策にスポットライトがあたっている理由の一つには、2017年度の国連の統計にもあるように、33万人がアメリカに難民申請していて全世界でも、2位のドイツの二倍近くの申請数があるとされています。

この大量の難民を受け入れるという負担、受け入れ手続の対応等の観点に現政権は注目しています。国境の壁とは別の角度からの厳しい規制を検討していますが、今回難民申請の手続について大統領令をつかって変容させようとしています。

 

壁ではなく手続き面での厳しい規制

このところ、中米から難民としてアメリカを目指していた人たちが国境で足止めを食っているという話がありましたが、現政権はこの状況をある意味常態化しようとしています。今週にも大統領令が発令されるかもしれません。

まだ、大統領令の全容はわかっていませんが、難民申請を求める中米の人たちについてはメキシコに留め置き、申請から45日以内に最初の審理を行うようです。そして、審判はアメリカ国内で行うが、審判の結果がでるまではアメリカ国外に留め置くという考えのようです。

正規のルートでアメリカに入国できるまでは、アメリカへの入国を認めない、というスタンスを明確にするようです。
全容は、大統領令が出てから考えたいと思いますが、難民申請に対して過度な介入だとして、訴訟になることは明白です。大統領令は子供に対する例外や、メキシコからの申請に例外をつくる予定だそうですが、それでも、大部分の人たちは留め置かれるわけです。

政治的な部分を除いて、法律家の観点から、今回の大統領令を考えると、これら難民を助けるアメリカの資格を持った弁護士が接見や打ち合わせをすることがかなり難しくなります。

もちろん電話を使えばよい、というかもしれませんが、留め置きが国外となると、なかなか実際問題としてアクセスが難しくなることは明らかです。弁護士としても大変なことになろうかと思います。このような法的な権利をどのように処理するのかが未だまったく見えません。

また、国境に壁をつくる、ということを現政権は強く打ち出していますが、問題は、正面切って難民申請をすると、現政権が留め置きの処理をするということになれば、逆に申請をせずに、不法に入国しようとする人が増えるのではないかと思うのです。壁をつくっても、インフラの整備をしなければ意味がないというのが反対派の意見ですが、現状受け入れていた難民の手続きを急に変更すれば、なんらかの軋轢が生じるのではないかと危惧します。

すでに、アメリカで難民申請を目指す中南米の子供がアメリカに入れない宙ぶらりんの状態に置かれて死亡したという報道もありました。

もちろん、保守派にも保守派なりの理論はあるとは思うのですが、難民問題というのは国を超えて存在しています。人道的な見地からの対応にも配慮しなければならない立場にもあることは事実です。今後の政治に注目したいです。

また、新たなニュースを待ってこのトピックを取り上げていきたいと思います。

 


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H-1Bビザ申請手続の改正

H-1Bビザ申請手続の改正


Dec 17, 2018

 今年最後のじんけんニュースになりました。じんけんを通じて、抽選永住権に申請され、永住権を手にされた方々はおめでとうございます。人生には色々なストーリーがあり、色々なバックグラウンドを持った方々をサポートでき充実したと思います。来年もぜひ、抽選にチャレンジして、日本の文化などを含めたプレゼンスを高めるため、アメリカを基地にして世界に広めていただければと思います。
 驚くことではないですが、アメリカ議会は現在ねじれました。抽選永住権は法律に基づき制定されているので、大統領が何をいっても簡単には変更できないので、来年以降、継続はされることにはなるでしょう。

 

H-1Bビザ、改正のバックグラウンド


 さて、今年最後の話題は、H-1Bビザについてです。
 H-1Bビザとは、高度な知識や技術を大学卒業程度以上保持した外国人が、スキルに合致した専門職に就くときに発給されるビザです。原則として最長6年間発給され、その間に永住権申請に進むのが一般的なビザであります。

 トランプ大統領の米国保護政策で、優先的に議論されているトピックの一つです。要するに外国から、安く高度な専門性を持った人たちを入ってくると、アメリカ人の職を奪うということが憂慮され議論されているのです。

 また、場合によっては、技術系のバックグラウンドを持った外国人を雇用するように見せかけて、派遣をしている業者が横行して、オバマ政権のときから、摘発を受けていることも社会問題になっています。このような議論の中から、現行のH-1B制度を変えていこうという動きが今回の原動力です。


H-1Bビザの発給上限と抽選制度


 さて、H-1Bビザの発給は、もともと外国人が技術的な職をアメリカ人から奪うという懸念があることから、毎年どのビザの発給上限数が決められています。ここ5年ほどは、特に技術系の会社が外国人を多く雇用する傾向にあり、毎年度発給上限数を超えた応募があるため、抽選制度を導入して絞り込みを行っています。

 現在新規の発給上限数は、毎年度6万5千件プラス、米国の大学において修士以上の学位を持っている外国人用に、別枠の2万件が用意されています。H-1Bビザが新規発給され働けるようになるのは、毎年10月1日です。そして、遡って毎年4月に抽選が行われることになっています。ヨーイドンで4月に申請書を出して、抽選がなされ、当選したら申請書を出せるという仕組みなわけです。


今回の変更点ー電子申請化


 この現行の仕組みを現政権は変更するように移民局に指示しました。

 まず、新しい流れを説明すると、電子的に外国人をサポートする会社が申請書を4月1日から14営業日以内に移民局に電子送信します。そして、そのなかから、抽選で当選を決定し、通知し、60日程度を目処に実際の外国人の情報を含む申請書を提出し、合否を決めるということになりそうです。

 結局現行の制度をより電子化していこうという話なのです。
 またサポート企業の合法性についても、吟味しやすくするということです。

 この新規電子申請において、提出する情報としては、現状でわかっている範囲でいうと、企業名、税務識別番号、住所、代表者、連絡先、被用者の名前、生年月日、出生国、性別、パスポートナンバー、学位、などが含まれるということですから、今までよりも提出情報が多くなるということはないようです。

このような電子システムはオバマ政権時にも議論されましたが、濫用を防ぐには効果がない、とされて取り入れられませんでした。現政権はそのようには考えていないようです。方法論が変更されるというだけの話です。


変更点ー優先枠と抽選の順


 第二の変更点ですが、これは申請者に実質的に影響します。

 今までは、まず修士以上の学位を持ち、アメリカの大学を卒業している外国人を優先的に2万人埋めました。そして、そのあと優先枠から漏れた人たちを含め6万5千人選抜するという方法を使っていました。これをひっくり返そうというのです。

 すなわち、まず上述した修士以上の外国人も含め6万5千人を吟味する。そして、その後、漏れた修士を2万人拾うという方法論にしようとしているのです。

 このようにすると、今の推測では、修士以上で米国大学卒の外国人がHビザの発給される確率が15%以上あがるとされています。大学院もロビーイングしているのでしょうか。


ヒアリングを経て決定


 これら2点が大きな変更点ですが、来年1月2日まで、ヒアリングが行われています。その後、移民局が規則を制定するという形になります。
 あまりドラスティックな変更ではないので、通ることが確実視されていますが、実質的に4年制大学卒業の外国人には打撃になりそうです。

 この変更が問題なく発効して実際に実務に取り入れられるまで、時間がかかり、2019年度には間に合わないのではないか、と言われています。
 そうすると、はやくても2020年度の申請時に新たなシステムが導入されることになりそうです。

 また、実際に規則が制定されたら詳しくご紹介したいと思います。現政権は、移民に対してかなり強硬な対策を打ってきていますので、この傾向は来年も変わらないかもしれません。

皆さんが平穏な年末年始を送られることをじんけん弁護士スタッフ一同、心から願っております。また、来年じんけんをよろしくお願いいたします。


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ビザ取得の収入要件が厳しくなる?!公的扶助と米移民法

ビザ取得に収入要件が厳しくなる?!公的扶助と移民法

Oct 12, 2018

トランプ政権は、矢継ぎ早に対移民政策を打ち出していますが、2018年9月22日付けの公告をみると、また、移民を制限する行政規則を制定しようとしています。

今回考えるのは、公的扶助に関連する移民法の話題です。

まだ、規則として制定・公布されていませんが、案はすでに公になっています。かなり詳細な規定案を策定しているようなので、公告から60日間、パブリックヒアリングをしたらすぐにでも規則として移民局が執行する可能性が大きいです。

ちなみに「法律」というのは、議会(国会)の議決を経なければ制定したり、変更したりすることはできません。三権分立の基本です。
しかし、法律があっても、細部に関してはなかなかすべて法律そのもので決めることは難しかったり、機動性を欠いたりします。そこで、行政府が法律の執行のために「規則」を制定するのです。

移民の法律に関する運用を行政府がコントロールできる規則をもってできるだけ厳しくしようとしているのが、現政権のやり方なのです。

 

公的扶助を受けることになりそうな外国人とビザ発行拒否

さて、今回取り上げるのは、移民法212条(a)(4)項です。

この法律の条文には、「公的扶助を将来受けると思料される外国人に対しては面接官の裁量でビザの発給を許可しないことができる」という部分があります。
この外国人の公的扶助受給について厳しく制限していこうというのが、今回の規則案の趣旨です。

 

規則案をより具体的に

今回の規則案をまとめると、

(1)アメリカ国外において、ビザまたは永住権の申請をしている外国人、アメリカ国内において、永住権申請、またはビザの延長、ビザの種類変更をする外国人に適用される。

(2)(1)にいう申請時に公的扶助の受給を受けている場合、また受けると思料される場合には、申請を拒否できる。

(3)(2)にいう公的扶助の受給歴、受給の可能性は、金銭受給に限られず有形無形の公的扶助を含む(細かく規則案には箇条書きされている)。

(4)公的扶助の受給歴またはその可能性の判断は、様々な事実を総合考慮し、審査官の広い裁量とする、ということになります。もちろん、いくつかの例外はありますが、ごく限られた場合以外は、この新たな規則が適用されていくことになります。

 

「総合考慮」を掘り下げて考える

上記(4)にある総合考慮ですが、事実であれば、プラス、マイナス、どちらに働くものに関しても考慮されることになります。最低限、考慮の対象になるのは、年齢、健康状態、家族構成、財産、収入、教育レベル、習得技術です。
これに加え、米国に入国後、どのような生活、仕事を行うのか、家族からのサポートはあるのか、どの程度アメリカに滞在予定なのか、などのファクターが考慮対象になると考えられます。

ただ、家族が公的扶助を受けているかどうかは、申請者自身の考慮事情にはならないようです。
プラスのファクターとして考慮されるのは、現在収入があり、その収入レベルが連邦の発表する毎年の貧困ガイドラインを上回る生活最低額の少なくとも250%以上であることです。

2018年の4人家族で2万5千ドルが貧困ガイドラインを上回る生活最低額となっています。

同様に、ネガティブのファクターだと解釈される可能性が高いと思料される場合として、現在仕事がなく、将来にわたって仕事がのぞめないと思慮される場合(学生ビザを除く)、現在扶助を受け取っている場合、長期の既往歴がある場合、健康保険に不加入の場合、介護が必要な場合、などでしょう。

 

各方面からの指摘も

アメリカ移民法協会などでは、このような公的扶助の制限を厳しく外国人に対して行うと、いわゆるワーキング・クラスの外国人が減ってしまうという結果になるのではないかと予測しています。トランプ政権は自給自足をするのが、移民にとっては当たり前だ、と言っていますが、そう言いきれるのでしょうか。

今までのアメリカの歴史は移民で成り立ち、その人達は少なからず公的扶助を受けてきましたから国が成り立っているのですが。ただ、長年税金を払い続けている人たちから見ると、移民を受け入れたらいきなり公的な生活補助を受けだすことについて良くは思わない人たちも多くいると思います。日本でもヨーロッパ諸国でも議論されていることではあります。

みなさんはどのような意見をお持ちでしょうか。

どちらにしても、今回の規則案が執行されることになると、かなりまたビザ・永住権の申請に制限的な影響をもたらしそうです。

次回また新しい話題を考えていきたいと思います。


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トランプ政権下の外国人の入国・滞在-NTA-




トランプ政権下の外国人の入国・滞在-NTA(Notice to Appear)を中心に-

Sep 14, 2018

0 まえがき

オバマ前政権下では、アメリカへの移民が増え続けていましたが、現政権になってから、移民は減り続けています。移民局が発表しているデータがそれを表しています。今までアメリカにはない、移民政策が現状で展開されています。よく人から、「なぜ、入国管理などの記事を書いているのに、『じんけん』なのだ」と言われますが、おっしゃる通りで、もともとJinken.comは移民や入国管理のことだけではなく、広く人が関わる権利義務について取り扱っていきたいという意味があります。今回考えるトランプ政権の進める政策は、今まで「不法移民を許さない」と言っていたはずですが、「合法的に滞在している外国人」だけでなくアメリカに「永住する外国人」に対してまで、「外国人」というくくりで締め付けをはじめました。明らかにやりすぎです。

今回の記事を書く過程でかなりの文献に目を通しました。執筆者の意見から入って恐縮なのですが、現政権の移民に対する舵取りはあまりに「やりすぎ感」があります。
現在「景気が良い」ということを盛んに現政権はアピールしようとしていますが、まったく先を見ていないように思います。

考えてみてください。
優秀な移民がたくさんいることで成り立っている国が、移民を排除する動きを加速させれば、これからアメリカはさらに移民が減り、魅力がない国になっていくでしょう。

しかし、今移民政策を打ち出している連中も、もともと移民ですし、大統領の妻も、いわゆる「チェーンイミグレーション」で家族を連れてきている張本人ですし、現大統領の母親家族もチェーンイミグレーションの恩恵でアメリカにいるわけですね。

サンフランシスコの国際空港で働いている移民局の職員を見てください。英語もロクに話せないアジア人などたくさんいるわけです。自分たちのことは棚に置いて、今現在移民しようとしている外国人を締め付けるなどというのは、常識がないと思います。

10年後、いや数年後には、アメリカにとっては明らかにマイナスが発生する政策を推し進めています。実際に、今回考えるNTA政策ですが、トランプ大統領の妻の移民弁護士が反対を表明する始末です。「もう、こんな国やめた」という人が出てくるでしょうし、そこをチャンスとして、他の国が優秀な英語を話せる人を抱き込むということもありえるのでしょうか。

合法にアメリカに住み、働き、生活をしている外国人にも影響する状況になっています。Jinken.comの趣旨に合致する人権問題が十分に発生する下地が現状できていることを皆さんに理解していただきたいと思います。

 

今回、以下詳述するNTAの問題ですが、移民業務にもかなり影響を与えると思います。

ほとんどの「移民弁護士」というのは、宣伝はどこにでも載せて、記事なども色々書いているようですが、法廷などほぼ経験はゼロの人たちが大多数です。日本では行政書士という職業があって、行政に対する申請書などを主に手がける人たちがいますが、アメリカにいる(特に日本でアメリカ移民うんぬんとやっている人たち)移民「弁護士」はほぼ、行政書士業務をしているのが実態です。弁護士というのは、法廷に立ってなんぼの職業です。

なぜ、このような指摘をしているかというと、今回から移民法業務には密接にNTAが問題になりますが、これは移民裁判所、ひいては連邦裁判所で戦う必要がでてくる問題です。

ですので、大多数の移民法専門弁護士は太刀打ちできない問題となることは必須です。
本当に法廷業務の経験を踏まえて移民業務を扱っている法律事務所に頼まないと、外国人の申請者の不利益となります。今後の移民業務についてはくれぐれも事務所は選ばなければなりません。

1 NTAとはなにか

移民局が2018年7月5日に公表した、アップデートにある定義を要約すると「NTAすなわち、A Notice to Appearとは外国人に送達される書面であり、その書面には非通知外国人の移民裁判所への出頭場所および日時が記載されているもの」となっています 。本稿では、省略してNTAと呼ぶことにします(*1)。

このNTAに対応したことがない移民弁護士もたくさんいると思いますが、使われているフォームはI-862です (*2)ので、確認してみてください。このフォームはアメリカ政府が該当する外国人が強制送還の対象であるとみなした場合に利用されます。

I-862を受け取った外国人は、行政審判である移民裁判所での審判を受けなければなりません。このI-862を受け取った外国人の裁判所出頭は義務付けられていて、出頭を拒否したり、理由はともかく不出頭であったりすると、「不出頭」ということでそのことも移民法違反として捉えられます。したがって、I-862というのは、かなり強力に裁判所に外国人を出廷させるための政府側の手段といえます。

さてI-862というのは、多くの弁護士も対応したことがない場合が多いと思いますが、もともと難民申請のときに利用されてきました。

移民局のデータでも、最近まで十中八九、難民申請の際に利用されてきたことがわかります(*3) 。難民を認定しない日本に住む日本人にはピンとこないかもしれませんが、アメリカではかなりの数の外国人が難民認定を求めてやってきます。ただ、自分が難民です、というだけではなく、自国に戻ると政治的な迫害に遭うことを主張して認めてもらわなければなりません。

そして、この迫害を「信用性のある強迫された状況」であるとアメリカ政府に認めさせなくてはなりません。そして、現場の移民局の職員ではなんとも、判断ができない場合も多く、慎重に審理しなければならないというときに、難民申請者の利益を考えてI-862を渡してきたのです。

難民申請が妥当かどうか、現場ではなく、裁判所に慎重に吟味してもらったほうが良いであろうということなのですね。難民申請をしている人についても、その場で申請を拒否されるよりは、待って裁判所に判断してもらったほうが良いと思います。ですので、今まではI-862というのは、このような事実関係について慎重な吟味が必要な場合に使われてきました。I-862の趣旨をよく理解していない、またはまったくの趣旨違いことを念頭において、現政権は「移民狩り」に利用しようとしています。

2 NTAはなぜ法律上必要なのか

アメリカの憲法(修正第5条および修正第14条)においてデュープロセスという単語が使われています。日本でも馴染みがある言葉だと思いますし、アメリカ憲法にしたがった考え方が敷衍しています。

アメリカ憲法でデュープロセスというと、色々な切り分けができるのですが、大きく分けて、法律は万人にフェアな内容でなくてはならない、という実体的な考え方と、法律に基づく手続きは万人にフェアでなくてはならないという手続的な考え方があります。両方のコンセプトは、国家の中核になる考え方です。法律もフェアでなくてはならない、手続きもフェアでなくてはならないのです。上記1で考えた今までのI-862を難民認定に利用するというのも、デュープロセスを使って手続的にフェアでいたいという精神の現れなのですね。これが一つの切り分けの方法です。




もう一つの切り分け方法を読者の方に知っておいていただきたいのは、修正第5条のデュープロセスは主に連邦の法律に適用され、修正第14条は州のデュープロセスに適用される憲法の条項ということです。

移民法は、連邦政府の専権事項ですので、今回問題になるのは、修正第5条のほうだということになります。未だに数十年前に受験したときの司法試験でよく覚えているのは、この修正第5条の出だしです。「No person shall」と書き出されています。簡単に読んでしまうとその意味をよく捉えられないのですが、アメリカ国民であろうとなかろうと、ということが書いてあるわけです。そして、アメリカ憲法はアメリカの国土全体を統治する法ですから、アメリカ国内にいれば、国籍、性別、門地、など何ら関係なく、デュープロセスの対象になるわけです。この国内にいる人に平等にフェアな法律によって裁くというのが、アメリカの強さの根源であり、司法の魅力の根底にあるのです。

さて、移民法をデュープロセスの観点から少々確認してみましょう。

まず、アメリカ国外のアメリカ大使館・領事館でビザや永住権の発給を求める申請をすると、申請者本人の申請に関しては、本人が大使館・領事館に出頭してインタビューを受けることになります。かりに、この出頭した面接で、ビザ・永住権申請の拒否を食らってしまった場合、再度申請をする以外に救済策はほぼありません。

なぜなら、アメリカ「国外」での申請のため、アメリカ憲法で定められたデュープロセスが発動しないからです。一方で、アメリカ国内にいったん入ってしまっている外国人にはデュープロセスが適用されます。アメリカ国内でビザの種類の変更などをした場合には、拒否にあっても、再考を求めたり、行政審判を求めたり、最終的には、連邦裁判所に判断を求めることができます。私が具体的な相談において「できるならアメリカ国内での判断を受けることのほうが良い」という場合には、かならずこのデュープロセスに関する経験に基づいているのです。

このように、アメリカ国内にいる外国人に対しても、確実にデュープロセスがあるわけですので、移民局にしても、「はいさようなら」と言って簡単に外国人を強制送還処分にできるわけではありません。ちなみに、アメリカに入国を試みている外国人が入国を許されず強制送還処分になる場合がありますが、これは、まだアメリカ国内にいるわけではないので、デュープロセスが適用されないからなのです。一方で、いったん、何らかの形でアメリカ国内に入っていれば、外国人でも、移民に関する法律は移民裁判所による判断、連邦裁判所による判断を受けることができるのです。

上述した難民申請の事実認定で判断が難しい場合、本人が積極的に移民裁判所の判断を求めなくても、移民局側から、移民裁判所の審判を受けられるようにするツールがI-862ということになります。I-862を送達されれば、外国人は移民裁判所において、事実関係の判断を受け、その判断が不服であれば、司法の判断を求めるべく連邦裁判所に提訴できるシステムになっています。ある意味今までI-862は助け舟的な要素があったのです。

このように外国にいる外国人には、もともとデュープロセスが適用されないので、NTAは不要なのですが、アメリカ国内にいる外国人が最終的に司法判断を求めるためのデュープロセスの一環として、NTAは用意されていたのですね。

ところが現政権は、このNTAを違った趣旨で利用しはじめて、アメリカ国内にいる外国人の権利さえも脅かしはじめています。

3 現政権のNTAに関する今までの動き

2017年2月20日にジョン・ケリー国務長官が移民局関係者に対して「国益保護に資するための移民法の執行について」という通達を出しました(*4) 。要は、国土安全保障省に対して、1万人の増員をして、移民法違反について強制を強化するように指示したものです。犯罪歴のある外国人、不法滞在をしている外国人などについて、主に、強制送還手続を迅速に行うように指示したものでした。まあ、この指示は現政権が強く、不法移民、犯罪歴のある移民を排斥しようと声高に主張した産物といえるものでした。

2017年2月20日の通達によると以下のカテゴリーの外国人をNTAを送達する対象とするように積極的に行動することを国土安全保障省に命じました。主な法律に基づくカテゴリーは以下のとおりです。

1)  入国前に前科がある場合(移民法上の道徳違背の罪)、麻薬関連の前科がある場合、売春関連の前科がある場合、人身売買の前科がある場合、マネーロンダリングの前科がある場合など。(移民法第212条(a)(2)項)
2)  入国前にテロ行為など国家に対する行為が認められる、また思料される場合(移民法第212条(a)(3)項)
3)  米国入国後に有罪歴がある場合(入国後5年以内の道徳違背の罪)、禁錮一年以上の実刑に処された場合(移民法237条(a)(2)項)
4)  米国入国後にテロ行為などを行ったと思料された場合(移民法237条(a)(4)項)
5)  入国に際して虚偽の情報・書類を政府に提出した場合、いわゆる移民詐欺行為(移民法第212条(a)(6)(c)項)

私がある程度まとめましたが、以上のカテゴリーは、法律、すなわち議会が決めたもので、常識的な範囲内です。どこの国でも、犯罪者やテロ関連者には厳しく対応するのが普通ですし、弁護士であっても、「しょうがない」というレベルではあります。

しかし、ここからが現政権が突っ走っているところです。

このメモランダムが言うように、移民局は「I-862を外国人に対して送達する権利」が認められています(*5) 。しかし、行政の一団体である移民局がI-862を送達する根拠については、議会の制定する法律では明確にされていません。そこで、現政権は、メモランダムで以下のカテゴリーの外国人に対してもI-862を送達できるということを言い出しました。この時点で法律に逸脱した行政の越権行為とも考えられます。このメモランダムでは以下の場合にI-862を外国人送達できるとしています。

1) 刑事的に有罪とされている場合
2) 刑事的な起訴がされて、刑が確定していない場合
3) 刑事的に有罪となり得る罪に問われた場合
4) 詐害的、虚偽的な申し出を政府に対してした場合
5) 社会福祉制度を濫用した場合

などが列記されています。アメリカ国内にいて、無罪を本当に争っている外国人もいます。私もそのような経験はいくらでもあります。

しかし、刑事事件に少しでも関ってしまうと強制送還の対象となり、行政の管轄する移民裁判所においても、手続きが開始されるということになるわけです。このメモランダムを読む限り、かりに刑事手続で無罪になったとしても、I-862に基づく行政審判において強制送還相当とされてしまう危険が生じました。刑事事件を知り、さらに移民行政にも詳しい弁護士はかなり限られてしまいます。このような状況に陥った外国人を助ける方策はかなり実際に限られてしまいます。

もちろん、このメモランダムには、限定的な記述もありますが、基本的に有罪となっていない場合にも幅広く強制送還手続に乗せるという趣旨であります。1万歩引いて、ここまでは犯罪や、テロなど、たしかに国によっては深刻と捉えることも考えられ、ディズニーのプリンセスではありませんが、現政権ではアリエルことかもしれません。

しかし、この、主に一般的な行政内部通達の内容がエスカレートしはじめました。2018年6月28日にNTAの通達についての具体的なガイダンスが発表されました(*6) 。この6月28日のメモランダムは、さすがに私は違法性を帯びるだろうという感覚になりました。

4 2018年6月28日(同年7月5日最終改定)の規定について

現政権が行政権力を握ってから、2年弱になります。中間選挙を控え、できることはできる限りパフォーマンスとしてやっておきたいという気持ちはあるでしょう。そして、現政権が据えた移民局関係の役人たちも、できるだけ厳しく移民に対して接することを覚えてきているのだと思います。その権化が、2018年6月28日付けのメモランダムです(*7) 。このメモランダムでは、私が見るに大きく2つの驚く点が盛り込まれています。

ひとつは、USCISがI-862を外国人に対して送達する権限をほぼ無制限に拡大している点です。

ここで、私が「移民局」と言っている行政機関について、少し詳しく考える点があります。
同時多発テロ以降、アメリカは国土安全保障省(Department of Homeland Security,略してDHS)という機関をつくりました。移民や、テロなどに総合的に対応する省庁です。このなかにいくつもの「局」が統合されたり設置されたりしました。

その一つが、ICE(Immigration and Customs Enforcement)と呼ばれるところで、移民・関税執行局とでもいいましょうか。主に、国境において、取り締まりを行う局です。そして、もうひとつにUSCIS(United States Citizenship and Immigration Services)という主に、外国人のビザや永住権、市民権の取扱をする局があります。全部で30近くある局のなかに、この2つが存在します。

今までは、犯罪や強制送還手続きなどは、ICEの十八番でした。ほぼすべての強制送還事由については、ICEが対応してきたのです。私も、刑事事件で、移民絡みのことがあると、出てくるのは必ずICEでした。軍隊上がりの人も多い部署です。思い出話ですが、ある国際犯罪に関する事件を受任していたときに、女性のICE捜査官に私が尊敬を込めて「Officer」(上官)というと、「私はAgentだ」、失礼だと言われたことがあります。現場を担当しているのだから、捜査官なのだ、という気持ちが強いのでしょう。どちらでも良いだろ、と思いましたが、このように、地位にかなり敏感でプライドも高い現場担当者が集まっているのが、ICEです。一方で、USCISは書類をいじるのが主な職場です。

今回のメモランダムでは、ICEだけではなくUSCISに対しても、積極的にI-862を発行・送達せよ、と言っています。そして、以下述べますが、その数はかなりの数に及びます。合法的な移民関係の書類審査をしている人たちにも、強制送還をする手助けをしなければならない、と言っているのです。今後、強制送還の事例は限りなく増える可能性がありますし、職員の負担もかなり増加します。現状で、USCISの運営は申請料から主に成り立っていますが、今回の現政権の意向を忠実に実行すれば、ビザ、永住権等の申請料は格段に値上がりしていくと思われます。

もうひとつの今回出されたメモランダムに関して、信じられない点は、なんら、犯罪やテロに関係しない合法的な移民も強制送還の対象になってしまう可能性が出てきた点です。

今回のメモランダムによると、上記3で詳述した、犯罪者、テロ関係者に加えて、USCISは以下に該当する外国人に対してI-862を送達しなければならないと規定しています。

1) 深刻な虚偽に基づいて政府の福祉受益を受けていると疑われる場合、たとえNTAが福祉受益に関して以前問題にされなかったとしても、今回NTAの対象になる。
2) 以前、強制送還の対象になっていないNTAが以前送達されたとしても、移民裁判所で問題にされていない犯罪がある場合。
3) 市民権の申請において、道徳違背の罪があり、市民権申請が拒否されたことがある永住権者
4) 移民関連の申請が拒否され、その結果不法滞在者となった外国人

という4つのカテゴリーが記載されています。USCISはもともと議会で議論されていたときは、移民の申請等を処理する部門でした。ですので、ほとんどの「移民弁護士」と呼ばれる人たちはこの部署を相手に対応していればよかったのです。ところが、このメモランダムでUSCISは、強制もする部署になりました。ですので、USCISのぼんやりした申請案件で、いきなり移民裁判所が出てくる可能性がでてきました。

ですので、外国人は申請時から、移民裁判所を想定した申請をする必要が出てくるのです。なかなか、深刻さの感じがつかめないと思いますので、今回の現政権による移民締め付けに関して具体例を使って考えていきましょうか。

5 現時点での移民行政下で、想定される歪

(1) ケース①

永住権保持者のAさんは、オバマ政権下で、医療に関する受給を受けていた。子供は市民権を持っていて、同様に医療に関する受給を受けていた。そもそも永住権者が公的な給付を受けることはなんら問題なかった。現状の移民行政に不安を感じ、アメリカ市民権の申請をはじめた。しかし、公的な受給が問題になり、市民権申請をUSCISに行ったところ疑われ、NTAを送達され長年住んでいたアメリカから強制送還の手続きが開始され、移民裁判所への出頭を求められる。

(2) ケース②

日本からアメリカ子会社の設立およびビジネスの関係構築のために出張ベースのためにBビザを取得して渡米していたBさん。最初に与えられた期限は6ヶ月。しかし、会社事情のため6ヶ月を超えてアメリカに滞在する必要があるため、Bビザの延長をするも、却下。今までは、延長申請中は、合法的にアメリカに滞在できるとアドバイスを弁護士から受けて、アメリカに引き続き滞在。ところが、Bビザの却下とともにNTAがBさんに対して送達される。

(3) ケース③

Cさんは、アメリカ永住権の審査過程で以前、犯罪歴が問題になり移民裁判所で審判を受ける。Cさんにかんして、移民裁判所から無事永住権の許可の審判がおりる。現政権になる。家族も全員アメリカに住んでいることなどから、市民権の申請をしたところ、USCISからなんらかの虚偽の申告があったことから、NTAが出される。移民裁判所で過去問題にならなかった不正受給などの点を弁明しなければならなくなる。

(4) ケース④

Dさんは、シリコンバレーで働くエンジニア。Hビザで就職中。Hビザは一度延長が可能なので、延長申請をする。延長申請中は、合法的に滞在できると弁護士からアドバイスを受ける。Dさんは、継続して働いている。ところが、延長申請等(I-129申請)は近時10万件程度が拒否されている(2017年の移民局発表統計)が、Dさんも些細な理由で拒否される。Dさんは、他にビザもなく、アメリカ滞在する資格がないため、理論上不法滞在とされる。USCISは、NTAを送達する。まったく犯罪歴も不正受給歴もないDさんは、移民裁判所に出廷し、強制送還手続の対象になる。

上記のように、合法的になんら問題がなく、アメリカに滞在している外国人が、強制送還手続の対象に簡単になってしまう政策を現政権は取っているわけです。最初は「不法移民」に対して厳しく対応すると言っていましたが、現在は、不法移民をもはや作出するような政策になってきました。ここで、上記ケース④のDさんについて、もう少し深刻な状況を考えてみましょう。

Dさんは、H-1Bビザが特に理由もなく、厳しくなってきた審査が原因で延長拒否に遭ったとしましょう。さらに、追い打ちをかけるようにNTAが届きました。Dさんの雇用主も、ビザがない外国人を雇うことは危険を感じます。Dさんとしては、「こんな国にいてもしょうがないし、移民裁判所の出廷なんて時間の無駄だ」という本音を持っているとしましょう。

実際に、ビザの延長が拒否される可能性もかなり高くなってきていますので、有り得る事例です。さらにICEだけでなく、USCISがNTAを出せるとなると、移民裁判所は今でも混んでいるのに、さらに混むのは必須です。Dさんの出廷は2年先ということもありえます。2年間仕事もなく、アメリカ滞在なんてできない、となると自国に帰ってしまおう、と思うはずです。

ところが、NTAを無視すると、裁判所に来なかった、ということで、それが移民法上罪になります。弁護士は、「Dさん、裁判所に出廷しないと、裁判所は不出廷の罪を着せるので出廷しないと・・・」という話になってしまいます。Dさんは、不法滞在を継続しつつ、もともとのHビザの拒否に関して、不服を申し立てて争い、さらに行政審判でダメなら連邦裁判所で争わなくてはならなくなります。今回の現政権による行政通達により、Dさんは、もともとのビザ発給について争い、さらに不法滞在に関して移民裁判所とも争わなくてはいけません。仕事もなくなっているかもしれません。

このような状況を想定して、現政権が今回の通達をしているとは到底思えませんが、単純に今回の通達を突き詰めるとこのような結果になります。あまりにも浅はかな、行政政策に翻弄される、「移民大国」アメリカでがんばる外国人は絶句するしかありません。

ビザや永住権の拒否レートもあがっていくばかりですし、法律業務をしていても、現政権のやっていることが、何を目指しているのか、暗澹冥濛に感じるのは、第一線で実務を担っている私だけではないと思います。


*1 https://www.uscis.gov/news/news-releases/uscis-updates-notice-appear-policy- guidance-support-dhs-enforcement-priorities 参照
*2 サンプルはここを参照。https://www.justice.gov/eoir/dhs-notice-appear-form-i- 862

*3 https://www.uscis.gov/sites/default/files/USCIS/Outreach/Upcoming%20Nationa l%20Engagements/PED_CredibleFearandReasonableFearStatisticsandNationalityR eport.pdf 参照。

*4 https://www.dhs.gov/sites/default/files/publications/17_0220_S1_Enforcement- of-the-Immigration-Laws-to-Serve-the-National-Interest.pdf

*5 , INA §§ 103(a), 239; 8 CFR §§ 2.1, 239.1 など参照。

*6 https://www.uscis.gov/sites/default/files/USCIS/Laws/Memoranda/2018/2018- 06-28-PM-602-0050.1-Guidance-for-Referral-of-Cases-and-Issuance-of-NTA.pdf

*7 https://www.uscis.gov/news/news-releases/uscis-updates-notice-appear-policy- guidance-support-dhs-enforcement-priorities


 

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ビザスタンプ(査証)の有効期間




 

ビザスタンプ(査証)の有効期間
July 4, 2018

今回は、最近のビザ発給の傾向について考えてみたいと思います。

ビザの形状

興味深い変遷です。
まず、ビザというのは、在外アメリカ大使館・領事館を通して発給され、パスポートに貼られる顔写真入りのシール状のものです。紙幣のように偽造がされにくい形状をしています。

以前は、ビザというのはインクを使ったスタンプを押されていたので、今でも私はビザスタンプと呼んでしまいますが、今はかっこいい、シール状になっています。
パスポートに貼付されたものをビザと呼び、「ビザが取れるよ」という許可を得ただけではビザを取れるという許可証(I-797)を持っているだけであります。ビザは許可証とイコールということではありません(この許可証とビザの違いは別稿で取り上げてみたいと思います。)

 

ビザ取得には2つの流れ

さて、まずビザ発給の流れを大まかに2つのパターンがあるので考えてみましょう。

一つの例は、アメリカ国内の機関を通さず、在外大使館・領事館がそのままビザの許可をすることができ、ビザも発給できるパターンのものが考えられます。

たとえば、観光ビザのBビザ、条約締結国の国民に発給されるEビザなどが考えられます。
これらのビザはすべての申請用紙をたとえば、日本にある米国大使館・領事館に提出し、審査を経て、ビザを受けることができます。

もう一つのパターンとしてまずスポンサーとなる個人や企業が米国内でスポンサーとしての申請をして、その米国内の許可を待ってから、今度は対象となる外国人が自国にある米国大使館・領事館において、ビザを申請するという形のものもあります。

たとえば、Lビザとか、Hビザなどが考えられます。この米国内で受ける許可証をI-797と呼びます。
この2つ目のパターンである、米国内でスポンサーが申請をし、その後外国人がビザを申請する場合に、大使館の行動に少し以前とは違う点が見受けられます。ですので、ここで考えていければと思います。

 

Lビザの事例

ここでは最近私も体験したLビザの事例を使って説明します。
L-1Aビザというのは、会社内で外国からアメリカに転勤するビザであり、以前から、たとえば銀行、製造業および商社などでよく利用されてきました。

L-1Aビザというのは、ビザですから、日本人なら原則日本において発給され、最長で連続7年間(最初3年、以後2年づつ)発給されます。そして、L-1Aビザを日本において申請する前提としてのI-797は米国において新規の事業をはじめる場合には、最初は1年間発給されます。

以前から存在する米国内の事業の場合には、最初に3年間の許可を得ることができます。そして、I-797の期間にしたがって、通常はビザが発給されることになっていました。まあ、一見当たり前といえば当たり前です。I-797に1年と書かれていれば、ビザも1年、I-797に3年と書かれていれば、3年のビザが発給されていました。

 

I-797の許可期間よりも長いビザ

ところが、最近のL-1Aビザの事例では、I-797においては、許可は3年間と書かれているのに、ビザは5年間発給された例がでてきました。もしかしたら、大使館側のミスなのかもしれませんが、3年間を超えてビザが発給されている事実があります。
現在、移民法は外国人に対して締め付けを厳しくしている方向なのに、出血大サービスといったところでしょうか。

米国の在外大使館・領事館のビザ発給についてはいろいろな縛りがあるのですが、発給できるビザの最長期間について規定があります(9 FAM 403.9-4(B))。
この規定によると、大使館・領事館は、10年間のビザまでは発給することができるとされています。10年間以内であり、他の法律に抵触しなければ、裁量で発給することが可能なのです。

たとえば、Bビザのように観光ビザは、10年間でることも珍しくないですが、1年間とされてしまうこともあります。L-1Aビザは米国内での許可証(I-797)の期間に限りビザが発給されていたのですが、裁量で最大7年間までは理論的に発給できるわけです。

企業にとっても、ビザが長期で出されれば、安定して人を送れるので非常に好ましいことではあります。

このように、許可証(I-797)と、ビザの許可期間に齟齬が発生するケースが出てきましたが、申請する側にとっては利益にはなれ、不利益にはなりませんので、こういう場合は感謝しながら黙っておくのが得策ですね。

次回また新しい話題を考えていきましょう。


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学生ビザ、いつから不法滞在になるか




June 15, 2018

学生ビザ、いつから不法滞在になるか

 

今回は、あまり法律事務所では扱うところが少ない学生ビザについて考えてみたいと思います。

先月(2018年5月10日)、移民局内で内部通達という形ですが、学生ビザで入国している外国人が「いつ不法滞在とみなされるのか」という点について移民局内で統一的な扱いをするよう明確化がなされました。
もちろん、最近の動向をみていると、外国人に対しての締め付けを厳しくしようという方向です。以下、新たに明確化されたルールを考えてみたいと思います。

 

学生ビザの滞在期間

さて、学生ビザというのはF,J,Mという3つのカテゴリーが移民法上定められていますが、他のビザと違って、滞在期間が明確に決められていない場合も多く存在します。
すなわち、継続的に勉強をするわけですから、「学業が終わるまで」という滞在期間の定めかたがされます。

この学業成就まで、という期間の定め方をDuration of Statusといいます。移民法関連ではD/Sと呼ばれることが一般的です。

Duration of Statusー学業が終わるまで

このD/Sというのは、特定の期間が決まっているわけではないですから、なにか違法なこと(不法滞在と不法就労が主な移民法でいう「違法」です)が発生した場合、「いつから」不法滞在になるという問題がわかりにくいのです。

たとえば、就労ビザについては、いつからいつまで滞在できるということがはっきり決まっています。したがって、期限を超えてアメリカに滞在していれば、「不法滞在」ということになるのは明白なわけです。

Duration of Statusの統一解釈を明確化

D/Sに関しては、いろいろな不法滞在開始時の解釈も存在していましたが、今回移民局ははっきりと、「いつ」不法滞在になるのか、という解釈を統一し、明確化しました。
明確化したのは良いのですが、今までより学生にとってより厳しい解釈となりました。

不法滞在者を減らす目的

まず、今回の不法滞在に関する移民行政の明確化については不法滞在者の数を減らすという趣旨があります。
学生ビザ保持外国人の不法滞在の率はFビザで6%、Mビザでは11%強という統計があります。100人いると、6〜11人が不法滞在をしている計算になります。この数字を減らすことが一応の目的とされています。

 

具体的な運用は?

さて、今回の通達は2018年8月9日(以下「発効日」といいます。)に発効するということが決まりました。

まず、発効日において、学生ビザの資格を保持していないと、発効日から、「不法滞在」ということになります。
もちろん、すでに発効日前から不法滞在といなっている場合には、その不法滞在がはじまった日から起算されるのですが、グレーな場合でも、発効日に学生ビザの資格を保持していない場合には、発効日をもって不法滞在が起算されます。

発効日以降については、以下の基準を持って「不法滞在」が開始すると解釈されるようになります。箇条書きにしておきます。

1 学生ビザの資格に違反する行為があったとき(不法就労等でしょうか)。
2 学生ビザに明示されている就学が終了したとき(もちろん、プラクティカルトレーニング、猶予期間も就学中と判断されます)。
3 期間が定められた学生ビザの場合、その期間が終了したとき。
4 移民裁判所において、強制送還等の決定がされたとき。

この4つの基準で「不法滞在」かどうか判断されます。

以前のルールとの変更点ー移民局の判断に

以前からのルールとなにが違うかというと、上記の1です。
以前は、上記4のように移民裁判所で判断されるまでは、「不法滞在」になるかどうか曖昧な部分があったのですが、今回の行政通達ではっきりと、学生側の違反行為があったら、その時点から不法滞在とすることができることになりました。

つまり、裁判所のような公的機関での判断を待たず、移民局がなんからの捜査で、学生ビザに「違反している」行為があると判断すると、不法滞在という効果が発生することが明確になったのです。
ですので、結論的には移民局が外国人学生に対して「君は不法滞在です」と言える幅が増えたと考えてください。

まずはStudent Advisorに相談を

学生ビザは、I-20という書類を発行できる教育機関で、国土保安省の管轄下にある学校がスポンサーできます

各教育機関は外国人学生のアドバイザーを備えているはずのです。
できれば、今回の改正を受けて、学校のポリシーとして、在学中に何をして良いのか、何をしてはいけないのかなどの取り決めを、必ず学生の方は注意して確認してください。

次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。


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国土安全捜査局によるI-9立入検査対策




May 15, 2018

国土安全捜査局による立入検査対策

入国管理・税関局(U.S. Immigration and Customs Enforcement、略称ICE)の下部機関である、国土安全捜査局(Homeland Security Investigations 、略称HSI)による民間への立ち入り調査が激増しています。
2017年度(2016年10月から2017年9月まで)に比べ、今年度は、すでに2倍程度、3500件以上の立ち入り調査が行われています。

I-9登録が備えてあるか否か

立ち入り調査の理由は、就業場所におけるI-9登録が問題ないかの調査です。
I-9登録というのは、ICEが各就業場所において、外国人が就労する場合に、身分証明証を確認したうえで、就業場所に登録内容を備え置くことを言います。

 

I-9登録の意味合いと行政処分

このI-9登録というのは、両刃の剣であります。
一方では不法な就労を許している事業主に対して罰を課すことで不法就労を牽制する面があります。他方では、外国人が不当な賃金で雇われている場合など、外国人を保護する面があります。

I-9登録に反する雇用が行われている場合には、HSIは行政処分を行うことができます。
行政処分には、様々な種類があります。一つは、違法就労をしている者を拘束し、強制送還の手続に乗せることです。強制送還事例は近年激増傾向にあります。

もう一つ代表的な処分として、刑事・行政の罰金・課徴金の処分です。2017年度には、総額100ミリオンドル程度の処分が行われています。

HSI(Homeland Security Investigations)の調査の流れ

現状では、HSIの行う検査は一般的に以下のような流れで行われます。

書類審査

まず、I-9の検査を行う旨の通知が就業場所に対して送られます。就業場所にあるI-9に照らして、移民法に違反がないかを検査するという趣旨です。その通知には、3日以内に、I-9を提出するように指示が書かれています。HSIは提出書類をまず確認して問題がなければ、この段階で検査は終わります。

立ち入り調査

次の段階は、提出されたI-9書類群に不備がある場合、不提出の場合などには、立ち入り調査を行います。
立ち入り調査の結果においては、まず行政処分として課徴金を徴収します。不法滞在者がいる場合には、身柄の拘束等の処分も行います。

刑事手続と移民法の手続き

第三段階として、I-9違反について、雇用主が故意に違反をしている証拠があれば、刑事手続に乗せて罰金などの刑を科していくこととなります。刑事罰が科されるケースには、ビザに関する詐害行為がある場合など、移民法違反を知っているような事例が含まれます。
さらに、雇用主に対して教育プログラムに参加するように義務付ける場合もあります。

 

常時i-9を備えておくこと

以上のような検査が行われます。I-9の内容検査は、対応が3日間以内ということになっていますので、常時I-9が提出可能な状態にしなければなりません。

従業員の出入りが激しい就業場所は、従業員がすくなくとも、入ったときには、対応を注意して行わなければなりません。3日間以内に書類を整えるには、従業員の協力も必要になりますので、ある程度給与支払いと連動させて、書類を整えておかなければなりません。

 

立ち入り調査の対象は広がっている

以前は、宗教ビザ関連に検査が集中していました。イスラム関連施設が狙い撃ちされていた感はあります。
その後、宗教ビザ関連の検査は、様々な宗教に波及していき、現在では仏教関連の施設にも立ち入り検査が行われています。さらに、現在、中国人留学生などもかなり増加しているので、飲食店への立入検査も増加しています。

I-9の立入検査の端緒は様々ありますが、通報が端緒になることが多いようです。
足の引っ張り合いの場合もあるようですし、怨恨などの情から惹起する場合もあるようです。

検査が長引いて、ビジネスがトラブルに巻き込まれることを避けるためには、やはり事前にI-9書類の整備は常時確認しておくことが重要だと思います。
初動の検査ですんなり終われば、それで問題はないのですから、ビジネスが忙しくても、I-9対策は怠らないことが重要ですね。

また、次回新しいトピックを考えていきましょう。

 


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H-1Bビザ申請、今年も飽和


H-1Bビザ申請、今年も飽和
April 16, 2018

2019年度分(2018年10月から就労有効分)のH-1Bビザ新規申請枠(6万5千プラス院卒枠2万)に対する申込数が19万件ほどあり、2018年4月11日に抽選が行われ、そもそも申請を受理する件数が絞られました。

H-1Bビザというのは、大学または大学院で専門的な分野を学び、関連する就職先において、仕事をするためのビザです。

 

H-1Bビザの新規申請、どのような場合?

このH-1Bビザ新規申請分にカウントされないのは、

1) すでにH-1Bビザの許可を得ていて、その延長申請をする場合
2) 許可を受けているH-1Bビザの就労内容を変更する場合
3) 許可を受けているH-1Bビザの雇用主を変更する場合
4) 現在の就労先の他、さらに複数の就労先を加える場合

と規定されていますので、単純に、「新規申請枠」というのは、学生がこれから働く場合、海外の職場から転職する場合などが主な場合です。

したがって、煽りを受けるのは新規で採用しようとしている企業や、特にアメリカ国内の大学・院を卒業し、アメリカで仕事をしたいと思っている外国人学生たちだと思います。
とくに、アメリカ国内のドメスティック業務だけではなく海外とのコネクションが重要な企業に打撃を与えています。

このような実情を受けて、若い外国人留学生は自国に戻ったり、別の国での就職を考えたりする傾向があります。開国当時のアメリカは若い外国人を積極的に求めたときとは逆の現象が現在起きています。

 

H-1B以外の就労ビザは?

H-1Bビザ以外に就労するビザとしては、EビザおよびLビザが考えられます。
このEビザやLビザは、みたすべき要件が、申請者およびサポート企業に課されていますので、アメリカ資本の企業に外国人学生が就職するのは、H-1Bビザの抽選、審査に通って許可をもらう以外にはほぼ道はないということになります。

 

これからの移民政策の傾向

現在または近い将来、移民に関して厳しい政策が出続けることが予想され、クリントン政権のときに、一時的に拡張されたH-1Bビザ申請枠が現状より多くなることは考えにくいと思われます。

今、アメリカの失業率は過去17年間で最低となっています。
アメリカでは以前好景気のときには、進んで移民を受け入れてきましたが、今回、失業率が減り、名目上の景気がよくなっている状況なのに、逆に移民を受け入れていこうという政府の考えはなさそうです。

したがって、現状のH-1Bビザ飽和状態がこれからもしばらくは続くと考えて間違いなさそうです。

 

今年のH-1Bで注目すべき点

興味深いのは、今年度、申込数が昨年度より一万件弱減っているということです。
年々、H-1Bビザを求める外国人は増加傾向にありましたが、新しい政権に変わってから、そもそもビザを求める総数が減ってしまったということになります。

アメリカに滞在する日本人もアメリカ永住権を持つ人が年々増えていき、ビザで滞在する人が減っている傾向にあります。

これは、当たり前で、ビザが出にくくなっているので、新規でアメリカに渡ってくる日本人は減っている。一方で、ビザの更新をしなくても良い永住資格を取って生活を安定させる日本人が増えているということになります。

現行政権が、アメリカという国の長期のビジョンをもって、様々な政策を打ち出しているのかどうか、考えてしまいますが、来年もH-1Bビザの申請者数が減ってくるとなると、いよいよ教育を受けた大学・院の外国人学生のアメリカ離れがはっきりしてくると思います。

 

若い人がどんどん離れていくことは、国の将来にとっては、いかがなものなんでしょうか。

また次回新しいトピックを考えていきましょう。

 

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H-1Bビザ-移民局の監視強化


移民局によるH-1Bビザの潜脱防止施策
Mar 08, 2018

 

H-1Bビザというのは、原則大学卒業程度の専門職に就く前提の外国人に給付さるビザです。
このビザは最大発給数が決まっていて、近年毎年その上限を超える申請があるため、抽選が用いられています。

H-1Bビザを取得するにも超えるハードルがかなりあるのですが、一旦H-1Bビザが発給されても最近では、移民局は、適法にH-1Bビザが使われているのか継続的に監視しています。

今回は、この移民局による監視について考えてみたいと思います。

 

H-1Bビザ取得者の実際の雇用先は?

まず、H-1Bビザが発給されるにあたって、雇用主および雇用の内容について決められています。

ところが、現状では、雇用主ではなく第三者の会社で外国人の雇用をさせるケースが多くあります。ある意味、H-1Bビザの趣旨の潜脱ですが、外国人を安く雇用するとか、H-1Bビザの趣旨と反するような雇用が行われています。意図的なのですが、会社で雇ったとしても、他の下請けに出すということがかなり行われています。

やっている会社も問題があるのですが、特にIT系の人材が枯渇している現状で、H-1Bビザが濫用されている面があるのです。

 

「出向」かあるいはH-1Bビザの潜脱か

ここで、H-1Bビザを取得して、雇用主のところで働く外国人が、第三就労場所で働くことに関して、最近移民局から通達が出されました。
もちろん、「出向」という形は考えられるわけですので、どこまで正当な「出向」なのか、または下請け会社を利用する潜脱なのか、という点について移民局が切り分けています。

 

ビザの申請内容に合致しているか

まず、H-1Bビザで雇われている者が、ビザで許可された内容で働いているかどうか、がポイントとなります。

申請ではエンジニアとして許可を得ている場合、その他の業種では働けません。
しかし「専門職」として雇用されたはずが、違った一般的な作業をさせられるなどというケースも多くあります。

 

雇用主と外国人被用者の関係は継続的か

もう一つのポイントは、H-1B申請時の雇用主と外国人被用者の関係が継続しているということが必要です。特に、雇用主ではなく第三者の管轄する場所で働く場合には、この契約関係が本当に継続しているのかを移民局はかなり詳細に確認してきています。

特に「専門職」ではなく、単にアメリカ人ができるような業種であれば、トランプ政権のいう、「アメリカ・ファースト」でアメリカ人の利益を守るべきであり、外国人の「専門職」とみなすわけにはいかない、という考えが強くでてきています。

一方で、インターネットがつながっていれば、どこでも仕事ができる時代なので、H-1B申請の潜脱があるのではないか、という懸念もあるわけです。

 

より具体的な監視ポイント

本当に「専門職」であり、雇用主が変わっていないか、というポイントに関して、
(1)雇用の場所
(2)実際に被用者によってサービスが提供される場所
(3)提供される労務の詳細な内容、成果物
(4)雇用主以外のところで働く場合、その期間、雇用主と、労務提供場所との契約関係
(5)第三者のところで働く必要性
などを移民局は確認します。

したがって、H-1B申請に基づいて許可された内容から乖離する労務の提供が行われている場合、それを正当化する書類等は、専門家のアドバイスを受け、常備しておく必要があります。

 

移民局による監視を前提に

もちろん、今回のH-1Bビザに関する継続した監視は、被用者が申請内容と異なる場所で働いたり、異なる作業をしていたりすることに向けられているので、通常のH-1B申請全般に適用されるということはありません。
ただし、注意しなければならないのは、H-1Bビザで外国人を雇用する場合には、常に移民局の監査が行われる可能性があるということです。H-1B申請書類に従った雇用がなされていたとしても、監査はあり得るわけです。

H-1Bビザの濫用を疑われた場合の対応として、常時、雇用に関する書類等、上記(1)-(5)であてはまるような内容が記載されているものは提示できるように用意しておくべきだと思います。

ビザが一旦許可されたからといって気を抜かず、ちゃんと継続して書類を常備することは忘れないでください。

また次回新しいトピックを考えていきましょう。

 

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H-1B専門職ビザ申請、大統領令の影響




H-1B専門職ビザ申請、大統領令の影響
Nov 28, 2017

2017年4月18日発効の大統領令

2017年4月18日、トランプ大統領は大統領令に署名し発効しました。
Buy American and Hire American」と呼ばれる題目がついていますが、選挙中声高に連呼していた「America First」を実行したものであると位置づけられています。

このなかに、米国人の雇用を何よりも優先するように各行政機関に義務付けている一般的な項目もあるのですが、第5条に、米国市民の雇用を促進するために、移民のシステムを見直すと書かれています。
そのなかで、特にH-1Bビザについては明記されていて、H-1Bビザは、(英語の解釈が曖昧なのですが)最上級のスキルを持つか、一番高額な給与を受ける外国人に優先的に与えるように指示されています。そして、この優先目的を達するために、過去の行政規則等を変更するように指示しています。

 

H-1Bビザーアメリカでの就労のかなめ

この大統領令の影響がH-1Bビザ申請に出始めています。移民実務にかなり深刻な影響がでています。まず、この大統領令によって、どのような影響がでているのか、そのバックグラウンドを考えてみます。

H-1Bビザというのはいわゆる専門的な職種に与えられるビザであり、大学または大学院などで勉強した内容を踏まえる職種を念頭に置いています。
したがって、外国人留学生が卒業して、就職するというときに使われるパターンも多くあります。近時、ソフトウェアエンジニアの確保のため、外国人をH-1Bビザで呼び寄せるというパターンも多く、アメリカ国内の雇用に影響するとして、毎年発給数の制限がなされています。

上述した大統領令のなかに、「最上級のスキルまたは高額な給与」ということが書かれていますが、これは、ある程度簡単にスキルがつけられる分野であればアメリカ人を優先し、安い賃金で外国人を連れてくるならアメリカ人を優先しろ、という思いを裏から言ったものです。

 

労働局の許可と賃金レベル

たしかに、外国人を専門的な職につけることを広く許してしまうと、アメリカ人の雇用を奪う可能性はあります。

そこで、移民法はすでにH-1Bビザの申請をする前置として、一般のアメリカ人の平均給与以上がその外国人に支払われるという労働局からの許可を求めていたのです。不当に安い賃金で外国人を雇用しないことで、外国人の利益も守り、アメリカ人の平均賃金も守るという意味合いがあります。

ここでは詳しく述べませんが、この労働局の許可を得るために、申請者の賃金レベルというのが5段階に設定されています。
レベルは経験によって違いがあり、レベル1はエントリーレベル、でレベル5は熟練した経験を持つレベルなどに区分けされています。

 

Request For Evidence – RFE

今回、大統領令で煽りを受けたのが、この労働許可でレベル1の許可を受けた申請者の方たちです。
H-1Bビザは抽選にさらされていたのですが、今年度の申請分についてやっとH-1Bビザを申請できても、今度は移民局が、さらにビザ許可に適格かどうかの証拠提出要請(Request for Evidence、略称RFE)を出すようになりました。RFEというのは、申請書類ではわからない部分があるので、もっと証拠を出せ、という要請です。

この手続がやっかいで、時間も労力もかかります。
もちろん、正当な内容のRFEもあるのですが、この大統領令以来、今までになかったタイプのRFEが続出しています。そして、H-1Bビザにおけるレベル1の労働許可については、かなりの数のRFEが出されていると移民法協会も記事にしています。

移民法協会の統計(弁護士が協会と情報をシェアする範囲だと思われます)によると、(1)申請書に記載されているレベル1とされている職種はレベル1よりも高度なものであり、給与が低すぎる点、説明せよ、というものと、(2)申請書に記載されているレベル1の職種は専門職とはみなされず大学の学位が不要である点説明せよ、という2つの要請が多く出ているということです。

 

H-1Bにいう「専門職」にも変化の兆し

今まで、移民法業務では、ある程度「専門職」とはなにかを示す指針があったにもかかわらず、それらの指針とは乖離して、許可を渋る傾向にあります。

たとえば、2000年に出された指針では、IT関係は専門職とされていましたが、これも今年から崩れつつあります。

現在では、移民法協会も実務を行っている弁護士も対策を練っている段階ですし、固まった指針も示されていません。しかし、移民局は大統領令を受けて、今までなかった保護的な指針でビザ申請を審査していることは間違いありません。

 

移民で構成されてきたこのアメリカも、現在では移民の締め出しをする方向で移民法実務も動いているように感じます。今後さらに締め付けが厳しくなる分野であろうと思われます。




永住許可申請プロセスの面接義務化




Sep-16-2017

永住許可申請プロセスの面接義務化

 

もう夏も終わり、という割にはまだまだ暑い日もありますね。一方で、ベイエリアでは雨も降り少々不安定な日が出てきているので、もうすぐ季節替わりの時期なのかもしれません。みなさんは体調に気をつけて生活されていらっしゃるでしょうか。秋になると、1年経つのは早いなぁ、という気分になってきますね。

 

さて、今回はトランプ政権になってから、永住許可申請についても、変化がでてきましたので、取り上げてみたいと思います。

 

移民「法」と行政命令

まず、今回の移民法ブログ(じんけんニュース)を理解するために、少々一般論を考えたいと思います。

まず、移民「法」というのは、法律であり、議会が立法するものです。したがって、大統領が一人で命令を出したものがそのまま法律になるわけではありません。議会を経なければ「法律」とはいえないからです。これは、アメリカでも日本でも同様で、三権分立の中核的な要素でもあります。

一方で、行政規則などと日本では呼ばれますが、議会ではなく、機動性を重視して、行政府がルールをつくることが広汎に行われています。

 

大統領が発する行政命令-Executive Order

このような活発な行政による規則づくりは、日本もアメリカも同様に行われているのですが、アメリカでは、直接選挙で選ばれる大統領の署名一つで、行政命令を出すことが許容されています。

メディアなどでは大統領令などと呼ばれていますが、これはたぶん、行政の組織(たとえば移民局など)がつくる行政規則と区別する趣旨なのだと思いますが、基本的に行政命令であるという点では一緒です。アメリカではExecutive Orderと言います。

悪名高いExecutive Orderといえば、第2次世界大戦のときに、日本人や日系人を強制収容したものが挙げられますが、これも大統領のサイン一つで発効したのです。

オバマ政権下でもかなりのExecutive Orderが出されましたが、現在トランプ政権によって、次々に覆されています。最近話題になっている、不法移民の子供を保護する行政命令がその一例です。

このように行政命令は、時々の大統領の意向でかなり方向性が変わってきます。不法移民やテロに厳しく対応すると明言しているトランプ大統領によって、永住許可申請にも今回影響がある行政命令が出されました。

 

永住権申請と面接の義務

従来、永住権申請の際、直接移民局の面接が義務付けられている申請は、婚姻に基づく申請と、難民申請の一部に限られていました。たとえば、外国人がアメリカ人と婚姻して、永住権を申請しようとする場合、必ず面接が義務付けられているということです。主に偽装結婚ではないことを確認するという意味合いがあるのです。

 

Executive Order 13780

 

今回、Executive Order 13780というトランプ大統領が署名した行政命令にしたがって、この面接義務の範囲が拡大することになりました。この行政命令は、テロリストから国土を保護する施策に関する命令です。来月1日から試験的に導入されることになり、移民局から発表もありました。

永住権申請には、I-485申請という外国人本人が自己の移民法上のステータスを永住権に変更するための申請が必要なのですが、このI-485申請について、今まで婚姻ベースの申請のみに面接が課されてきましたが、2017年10月以降は、雇用ベースの申請にも面接を課すことになりました。他にも、難民申請においても、面接要件が拡大されることになります。

 

雇用ベースの永住権申請も適用範囲に

雇用ベースの永住権申請の際に面接が課されるということは、直接申請している外国人が移民局に出向いて面接を受けることになるので、移民局がより正確に申請内容を吟味していくという趣旨が含まれます。わざわざ移民局が税金を使って直接面接をするということは、単なる顔合わせや挨拶ではないことは明らかです。

何か問題がないか、怪しいところはないかを確認するためのプロセスですから、今後、雇用ベースの永住権申請についても、面接によって不許可となる事例が増えると想像できます。

 

まだ、移民局も試運転をはじめようとしている段階なので、詳しくどのような書類を持参するべきか、などの指針はつかめていませんが、今後の雇用ベース永住権申請にとって、また一つハードルが追加されたということになります。

このご時世ですので、淡々と対応するしかないでしょうが、今後もこの手の行政命令が増えていきそうです。

 

それでは、また次回新しいトピックを考えていきましょう。





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