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Moms(JINKEN.COM)の運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。

ビザ取得の収入要件が厳しくなる?!公的扶助と米移民法

ビザ取得に収入要件が厳しくなる?!公的扶助と移民法

Oct 12, 2018

トランプ政権は、矢継ぎ早に対移民政策を打ち出していますが、2018年9月22日付けの公告をみると、また、移民を制限する行政規則を制定しようとしています。

今回考えるのは、公的扶助に関連する移民法の話題です。

まだ、規則として制定・公布されていませんが、案はすでに公になっています。かなり詳細な規定案を策定しているようなので、公告から60日間、パブリックヒアリングをしたらすぐにでも規則として移民局が執行する可能性が大きいです。

ちなみに「法律」というのは、議会(国会)の議決を経なければ制定したり、変更したりすることはできません。三権分立の基本です。
しかし、法律があっても、細部に関してはなかなかすべて法律そのもので決めることは難しかったり、機動性を欠いたりします。そこで、行政府が法律の執行のために「規則」を制定するのです。

移民の法律に関する運用を行政府がコントロールできる規則をもってできるだけ厳しくしようとしているのが、現政権のやり方なのです。

 

さて、今回取り上げるのは、移民法212条(a)(4)項です。

この法律の条文には、「公的扶助を将来受けると思料される外国人に対しては面接官の裁量でビザの発給を許可しないことができる」という部分があります。
この外国人の公的扶助受給について厳しく制限していこうというのが、今回の規則案の趣旨です。

今回の規則案をまとめると、

(1)アメリカ国外において、ビザまたは永住権の申請をしている外国人、アメリカ国内において、永住権申請、またはビザの延長、ビザの種類変更をする外国人に適用される。

(2)(1)にいう申請時に公的扶助の受給を受けている場合、また受けると思料される場合には、申請を拒否できる。

(3)(2)にいう公的扶助の受給歴、受給の可能性は、金銭受給に限られず有形無形の公的扶助を含む(細かく規則案には箇条書きされている)。

(4)公的扶助の受給歴またはその可能性の判断は、様々な事実を総合考慮し、審査官の広い裁量とする、ということになります。もちろん、いくつかの例外はありますが、ごく限られた場合以外は、この新たな規則が適用されていくことになります。

上記(4)にある総合考慮ですが、事実であれば、プラス、マイナス、どちらに働くものに関しても考慮されることになります。最低限、考慮の対象になるのは、年齢、健康状態、家族構成、財産、収入、教育レベル、習得技術です。
これに加え、米国に入国後、どのような生活、仕事を行うのか、家族からのサポートはあるのか、どの程度アメリカに滞在予定なのか、などのファクターが考慮対象になると考えられます。

ただ、家族が公的扶助を受けているかどうかは、申請者自身の考慮事情にはならないようです。
プラスのファクターとして考慮されるのは、現在収入があり、その収入レベルが連邦の発表する毎年の貧困ガイドラインを上回る生活最低額の少なくとも250%以上であることです。

2018年の4人家族で2万5千ドルが貧困ガイドラインを上回る生活最低額となっています。

同様に、ネガティブのファクターだと解釈される可能性が高いと思料される場合として、現在仕事がなく、将来にわたって仕事がのぞめないと思慮される場合(学生ビザを除く)、現在扶助を受け取っている場合、長期の既往歴がある場合、健康保険に不加入の場合、介護が必要な場合、などでしょう。

 

アメリカ移民法協会などでは、このような公的扶助の制限を厳しく外国人に対して行うと、いわゆるワーキング・クラスの外国人が減ってしまうという結果になるのではないかと予測しています。トランプ政権は自給自足をするのが、移民にとっては当たり前だ、と言っていますが、そう言いきれるのでしょうか。

今までのアメリカの歴史は移民で成り立ち、その人達は少なからず公的扶助を受けてきましたから国が成り立っているのですが。ただ、長年税金を払い続けている人たちから見ると、移民を受け入れたらいきなり公的な生活補助を受けだすことについて良くは思わない人たちも多くいると思います。日本でもヨーロッパ諸国でも議論されていることではあります。

みなさんはどのような意見をお持ちでしょうか。

どちらにしても、今回の規則案が執行されることになると、かなりまたビザ・永住権の申請に制限的な影響をもたらしそうです。 次回また新しい話題を考えていきたいと思います。


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トランプ政権下の外国人の入国・滞在-NTA-




トランプ政権下の外国人の入国・滞在-NTA(Notice to Appear)を中心に-

Sep 14, 2018

0 まえがき

オバマ前政権下では、アメリカへの移民が増え続けていましたが、現政権になってから、移民は減り続けています。移民局が発表しているデータがそれを表しています。今までアメリカにはない、移民政策が現状で展開されています。よく人から、「なぜ、入国管理などの記事を書いているのに、『じんけん』なのだ」と言われますが、おっしゃる通りで、もともとJinken.comは移民や入国管理のことだけではなく、広く人が関わる権利義務について取り扱っていきたいという意味があります。今回考えるトランプ政権の進める政策は、今まで「不法移民を許さない」と言っていたはずですが、「合法的に滞在している外国人」だけでなくアメリカに「永住する外国人」に対してまで、「外国人」というくくりで締め付けをはじめました。明らかにやりすぎです。

今回の記事を書く過程でかなりの文献に目を通しました。執筆者の意見から入って恐縮なのですが、現政権の移民に対する舵取りはあまりに「やりすぎ感」があります。
現在「景気が良い」ということを盛んに現政権はアピールしようとしていますが、まったく先を見ていないように思います。

考えてみてください。
優秀な移民がたくさんいることで成り立っている国が、移民を排除する動きを加速させれば、これからアメリカはさらに移民が減り、魅力がない国になっていくでしょう。

しかし、今移民政策を打ち出している連中も、もともと移民ですし、大統領の妻も、いわゆる「チェーンイミグレーション」で家族を連れてきている張本人ですし、現大統領の母親家族もチェーンイミグレーションの恩恵でアメリカにいるわけですね。

サンフランシスコの国際空港で働いている移民局の職員を見てください。英語もロクに話せないアジア人などたくさんいるわけです。自分たちのことは棚に置いて、今現在移民しようとしている外国人を締め付けるなどというのは、常識がないと思います。

10年後、いや数年後には、アメリカにとっては明らかにマイナスが発生する政策を推し進めています。実際に、今回考えるNTA政策ですが、トランプ大統領の妻の移民弁護士が反対を表明する始末です。「もう、こんな国やめた」という人が出てくるでしょうし、そこをチャンスとして、他の国が優秀な英語を話せる人を抱き込むということもありえるのでしょうか。

合法にアメリカに住み、働き、生活をしている外国人にも影響する状況になっています。Jinken.comの趣旨に合致する人権問題が十分に発生する下地が現状できていることを皆さんに理解していただきたいと思います。

 

今回、以下詳述するNTAの問題ですが、移民業務にもかなり影響を与えると思います。

ほとんどの「移民弁護士」というのは、宣伝はどこにでも載せて、記事なども色々書いているようですが、法廷などほぼ経験はゼロの人たちが大多数です。日本では行政書士という職業があって、行政に対する申請書などを主に手がける人たちがいますが、アメリカにいる(特に日本でアメリカ移民うんぬんとやっている人たち)移民「弁護士」はほぼ、行政書士業務をしているのが実態です。弁護士というのは、法廷に立ってなんぼの職業です。

なぜ、このような指摘をしているかというと、今回から移民法業務には密接にNTAが問題になりますが、これは移民裁判所、ひいては連邦裁判所で戦う必要がでてくる問題です。

ですので、大多数の移民法専門弁護士は太刀打ちできない問題となることは必須です。
本当に法廷業務の経験を踏まえて移民業務を扱っている法律事務所に頼まないと、外国人の申請者の不利益となります。今後の移民業務についてはくれぐれも事務所は選ばなければなりません。

1 NTAとはなにか

移民局が2018年7月5日に公表した、アップデートにある定義を要約すると「NTAすなわち、A Notice to Appearとは外国人に送達される書面であり、その書面には非通知外国人の移民裁判所への出頭場所および日時が記載されているもの」となっています 。本稿では、省略してNTAと呼ぶことにします(*1)。

このNTAに対応したことがない移民弁護士もたくさんいると思いますが、使われているフォームはI-862です (*2)ので、確認してみてください。このフォームはアメリカ政府が該当する外国人が強制送還の対象であるとみなした場合に利用されます。

I-862を受け取った外国人は、行政審判である移民裁判所での審判を受けなければなりません。このI-862を受け取った外国人の裁判所出頭は義務付けられていて、出頭を拒否したり、理由はともかく不出頭であったりすると、「不出頭」ということでそのことも移民法違反として捉えられます。したがって、I-862というのは、かなり強力に裁判所に外国人を出廷させるための政府側の手段といえます。

さてI-862というのは、多くの弁護士も対応したことがない場合が多いと思いますが、もともと難民申請のときに利用されてきました。

移民局のデータでも、最近まで十中八九、難民申請の際に利用されてきたことがわかります(*3) 。難民を認定しない日本に住む日本人にはピンとこないかもしれませんが、アメリカではかなりの数の外国人が難民認定を求めてやってきます。ただ、自分が難民です、というだけではなく、自国に戻ると政治的な迫害に遭うことを主張して認めてもらわなければなりません。

そして、この迫害を「信用性のある強迫された状況」であるとアメリカ政府に認めさせなくてはなりません。そして、現場の移民局の職員ではなんとも、判断ができない場合も多く、慎重に審理しなければならないというときに、難民申請者の利益を考えてI-862を渡してきたのです。

難民申請が妥当かどうか、現場ではなく、裁判所に慎重に吟味してもらったほうが良いであろうということなのですね。難民申請をしている人についても、その場で申請を拒否されるよりは、待って裁判所に判断してもらったほうが良いと思います。ですので、今まではI-862というのは、このような事実関係について慎重な吟味が必要な場合に使われてきました。I-862の趣旨をよく理解していない、またはまったくの趣旨違いことを念頭において、現政権は「移民狩り」に利用しようとしています。

2 NTAはなぜ法律上必要なのか

アメリカの憲法(修正第5条および修正第14条)においてデュープロセスという単語が使われています。日本でも馴染みがある言葉だと思いますし、アメリカ憲法にしたがった考え方が敷衍しています。

アメリカ憲法でデュープロセスというと、色々な切り分けができるのですが、大きく分けて、法律は万人にフェアな内容でなくてはならない、という実体的な考え方と、法律に基づく手続きは万人にフェアでなくてはならないという手続的な考え方があります。両方のコンセプトは、国家の中核になる考え方です。法律もフェアでなくてはならない、手続きもフェアでなくてはならないのです。上記1で考えた今までのI-862を難民認定に利用するというのも、デュープロセスを使って手続的にフェアでいたいという精神の現れなのですね。これが一つの切り分けの方法です。




もう一つの切り分け方法を読者の方に知っておいていただきたいのは、修正第5条のデュープロセスは主に連邦の法律に適用され、修正第14条は州のデュープロセスに適用される憲法の条項ということです。

移民法は、連邦政府の専権事項ですので、今回問題になるのは、修正第5条のほうだということになります。未だに数十年前に受験したときの司法試験でよく覚えているのは、この修正第5条の出だしです。「No person shall」と書き出されています。簡単に読んでしまうとその意味をよく捉えられないのですが、アメリカ国民であろうとなかろうと、ということが書いてあるわけです。そして、アメリカ憲法はアメリカの国土全体を統治する法ですから、アメリカ国内にいれば、国籍、性別、門地、など何ら関係なく、デュープロセスの対象になるわけです。この国内にいる人に平等にフェアな法律によって裁くというのが、アメリカの強さの根源であり、司法の魅力の根底にあるのです。

さて、移民法をデュープロセスの観点から少々確認してみましょう。

まず、アメリカ国外のアメリカ大使館・領事館でビザや永住権の発給を求める申請をすると、申請者本人の申請に関しては、本人が大使館・領事館に出頭してインタビューを受けることになります。かりに、この出頭した面接で、ビザ・永住権申請の拒否を食らってしまった場合、再度申請をする以外に救済策はほぼありません。

なぜなら、アメリカ「国外」での申請のため、アメリカ憲法で定められたデュープロセスが発動しないからです。一方で、アメリカ国内にいったん入ってしまっている外国人にはデュープロセスが適用されます。アメリカ国内でビザの種類の変更などをした場合には、拒否にあっても、再考を求めたり、行政審判を求めたり、最終的には、連邦裁判所に判断を求めることができます。私が具体的な相談において「できるならアメリカ国内での判断を受けることのほうが良い」という場合には、かならずこのデュープロセスに関する経験に基づいているのです。

このように、アメリカ国内にいる外国人に対しても、確実にデュープロセスがあるわけですので、移民局にしても、「はいさようなら」と言って簡単に外国人を強制送還処分にできるわけではありません。ちなみに、アメリカに入国を試みている外国人が入国を許されず強制送還処分になる場合がありますが、これは、まだアメリカ国内にいるわけではないので、デュープロセスが適用されないからなのです。一方で、いったん、何らかの形でアメリカ国内に入っていれば、外国人でも、移民に関する法律は移民裁判所による判断、連邦裁判所による判断を受けることができるのです。

上述した難民申請の事実認定で判断が難しい場合、本人が積極的に移民裁判所の判断を求めなくても、移民局側から、移民裁判所の審判を受けられるようにするツールがI-862ということになります。I-862を送達されれば、外国人は移民裁判所において、事実関係の判断を受け、その判断が不服であれば、司法の判断を求めるべく連邦裁判所に提訴できるシステムになっています。ある意味今までI-862は助け舟的な要素があったのです。

このように外国にいる外国人には、もともとデュープロセスが適用されないので、NTAは不要なのですが、アメリカ国内にいる外国人が最終的に司法判断を求めるためのデュープロセスの一環として、NTAは用意されていたのですね。

ところが現政権は、このNTAを違った趣旨で利用しはじめて、アメリカ国内にいる外国人の権利さえも脅かしはじめています。

3 現政権のNTAに関する今までの動き

2017年2月20日にジョン・ケリー国務長官が移民局関係者に対して「国益保護に資するための移民法の執行について」という通達を出しました(*4) 。要は、国土安全保障省に対して、1万人の増員をして、移民法違反について強制を強化するように指示したものです。犯罪歴のある外国人、不法滞在をしている外国人などについて、主に、強制送還手続を迅速に行うように指示したものでした。まあ、この指示は現政権が強く、不法移民、犯罪歴のある移民を排斥しようと声高に主張した産物といえるものでした。

2017年2月20日の通達によると以下のカテゴリーの外国人をNTAを送達する対象とするように積極的に行動することを国土安全保障省に命じました。主な法律に基づくカテゴリーは以下のとおりです。

1)  入国前に前科がある場合(移民法上の道徳違背の罪)、麻薬関連の前科がある場合、売春関連の前科がある場合、人身売買の前科がある場合、マネーロンダリングの前科がある場合など。(移民法第212条(a)(2)項)
2)  入国前にテロ行為など国家に対する行為が認められる、また思料される場合(移民法第212条(a)(3)項)
3)  米国入国後に有罪歴がある場合(入国後5年以内の道徳違背の罪)、禁錮一年以上の実刑に処された場合(移民法237条(a)(2)項)
4)  米国入国後にテロ行為などを行ったと思料された場合(移民法237条(a)(4)項)
5)  入国に際して虚偽の情報・書類を政府に提出した場合、いわゆる移民詐欺行為(移民法第212条(a)(6)(c)項)

私がある程度まとめましたが、以上のカテゴリーは、法律、すなわち議会が決めたもので、常識的な範囲内です。どこの国でも、犯罪者やテロ関連者には厳しく対応するのが普通ですし、弁護士であっても、「しょうがない」というレベルではあります。

しかし、ここからが現政権が突っ走っているところです。

このメモランダムが言うように、移民局は「I-862を外国人に対して送達する権利」が認められています(*5) 。しかし、行政の一団体である移民局がI-862を送達する根拠については、議会の制定する法律では明確にされていません。そこで、現政権は、メモランダムで以下のカテゴリーの外国人に対してもI-862を送達できるということを言い出しました。この時点で法律に逸脱した行政の越権行為とも考えられます。このメモランダムでは以下の場合にI-862を外国人送達できるとしています。

1) 刑事的に有罪とされている場合
2) 刑事的な起訴がされて、刑が確定していない場合
3) 刑事的に有罪となり得る罪に問われた場合
4) 詐害的、虚偽的な申し出を政府に対してした場合
5) 社会福祉制度を濫用した場合

などが列記されています。アメリカ国内にいて、無罪を本当に争っている外国人もいます。私もそのような経験はいくらでもあります。

しかし、刑事事件に少しでも関ってしまうと強制送還の対象となり、行政の管轄する移民裁判所においても、手続きが開始されるということになるわけです。このメモランダムを読む限り、かりに刑事手続で無罪になったとしても、I-862に基づく行政審判において強制送還相当とされてしまう危険が生じました。刑事事件を知り、さらに移民行政にも詳しい弁護士はかなり限られてしまいます。このような状況に陥った外国人を助ける方策はかなり実際に限られてしまいます。

もちろん、このメモランダムには、限定的な記述もありますが、基本的に有罪となっていない場合にも幅広く強制送還手続に乗せるという趣旨であります。1万歩引いて、ここまでは犯罪や、テロなど、たしかに国によっては深刻と捉えることも考えられ、ディズニーのプリンセスではありませんが、現政権ではアリエルことかもしれません。

しかし、この、主に一般的な行政内部通達の内容がエスカレートしはじめました。2018年6月28日にNTAの通達についての具体的なガイダンスが発表されました(*6) 。この6月28日のメモランダムは、さすがに私は違法性を帯びるだろうという感覚になりました。

4 2018年6月28日(同年7月5日最終改定)の規定について

現政権が行政権力を握ってから、2年弱になります。中間選挙を控え、できることはできる限りパフォーマンスとしてやっておきたいという気持ちはあるでしょう。そして、現政権が据えた移民局関係の役人たちも、できるだけ厳しく移民に対して接することを覚えてきているのだと思います。その権化が、2018年6月28日付けのメモランダムです(*7) 。このメモランダムでは、私が見るに大きく2つの驚く点が盛り込まれています。

ひとつは、USCISがI-862を外国人に対して送達する権限をほぼ無制限に拡大している点です。

ここで、私が「移民局」と言っている行政機関について、少し詳しく考える点があります。
同時多発テロ以降、アメリカは国土安全保障省(Department of Homeland Security,略してDHS)という機関をつくりました。移民や、テロなどに総合的に対応する省庁です。このなかにいくつもの「局」が統合されたり設置されたりしました。

その一つが、ICE(Immigration and Customs Enforcement)と呼ばれるところで、移民・関税執行局とでもいいましょうか。主に、国境において、取り締まりを行う局です。そして、もうひとつにUSCIS(United States Citizenship and Immigration Services)という主に、外国人のビザや永住権、市民権の取扱をする局があります。全部で30近くある局のなかに、この2つが存在します。

今までは、犯罪や強制送還手続きなどは、ICEの十八番でした。ほぼすべての強制送還事由については、ICEが対応してきたのです。私も、刑事事件で、移民絡みのことがあると、出てくるのは必ずICEでした。軍隊上がりの人も多い部署です。思い出話ですが、ある国際犯罪に関する事件を受任していたときに、女性のICE捜査官に私が尊敬を込めて「Officer」(上官)というと、「私はAgentだ」、失礼だと言われたことがあります。現場を担当しているのだから、捜査官なのだ、という気持ちが強いのでしょう。どちらでも良いだろ、と思いましたが、このように、地位にかなり敏感でプライドも高い現場担当者が集まっているのが、ICEです。一方で、USCISは書類をいじるのが主な職場です。

今回のメモランダムでは、ICEだけではなくUSCISに対しても、積極的にI-862を発行・送達せよ、と言っています。そして、以下述べますが、その数はかなりの数に及びます。合法的な移民関係の書類審査をしている人たちにも、強制送還をする手助けをしなければならない、と言っているのです。今後、強制送還の事例は限りなく増える可能性がありますし、職員の負担もかなり増加します。現状で、USCISの運営は申請料から主に成り立っていますが、今回の現政権の意向を忠実に実行すれば、ビザ、永住権等の申請料は格段に値上がりしていくと思われます。

もうひとつの今回出されたメモランダムに関して、信じられない点は、なんら、犯罪やテロに関係しない合法的な移民も強制送還の対象になってしまう可能性が出てきた点です。

今回のメモランダムによると、上記3で詳述した、犯罪者、テロ関係者に加えて、USCISは以下に該当する外国人に対してI-862を送達しなければならないと規定しています。

1) 深刻な虚偽に基づいて政府の福祉受益を受けていると疑われる場合、たとえNTAが福祉受益に関して以前問題にされなかったとしても、今回NTAの対象になる。
2) 以前、強制送還の対象になっていないNTAが以前送達されたとしても、移民裁判所で問題にされていない犯罪がある場合。
3) 市民権の申請において、道徳違背の罪があり、市民権申請が拒否されたことがある永住権者
4) 移民関連の申請が拒否され、その結果不法滞在者となった外国人

という4つのカテゴリーが記載されています。USCISはもともと議会で議論されていたときは、移民の申請等を処理する部門でした。ですので、ほとんどの「移民弁護士」と呼ばれる人たちはこの部署を相手に対応していればよかったのです。ところが、このメモランダムでUSCISは、強制もする部署になりました。ですので、USCISのぼんやりした申請案件で、いきなり移民裁判所が出てくる可能性がでてきました。

ですので、外国人は申請時から、移民裁判所を想定した申請をする必要が出てくるのです。なかなか、深刻さの感じがつかめないと思いますので、今回の現政権による移民締め付けに関して具体例を使って考えていきましょうか。

5 現時点での移民行政下で、想定される歪

(1) ケース①

永住権保持者のAさんは、オバマ政権下で、医療に関する受給を受けていた。子供は市民権を持っていて、同様に医療に関する受給を受けていた。そもそも永住権者が公的な給付を受けることはなんら問題なかった。現状の移民行政に不安を感じ、アメリカ市民権の申請をはじめた。しかし、公的な受給が問題になり、市民権申請をUSCISに行ったところ疑われ、NTAを送達され長年住んでいたアメリカから強制送還の手続きが開始され、移民裁判所への出頭を求められる。

(2) ケース②

日本からアメリカ子会社の設立およびビジネスの関係構築のために出張ベースのためにBビザを取得して渡米していたBさん。最初に与えられた期限は6ヶ月。しかし、会社事情のため6ヶ月を超えてアメリカに滞在する必要があるため、Bビザの延長をするも、却下。今までは、延長申請中は、合法的にアメリカに滞在できるとアドバイスを弁護士から受けて、アメリカに引き続き滞在。ところが、Bビザの却下とともにNTAがBさんに対して送達される。

(3) ケース③

Cさんは、アメリカ永住権の審査過程で以前、犯罪歴が問題になり移民裁判所で審判を受ける。Cさんにかんして、移民裁判所から無事永住権の許可の審判がおりる。現政権になる。家族も全員アメリカに住んでいることなどから、市民権の申請をしたところ、USCISからなんらかの虚偽の申告があったことから、NTAが出される。移民裁判所で過去問題にならなかった不正受給などの点を弁明しなければならなくなる。

(4) ケース④

Dさんは、シリコンバレーで働くエンジニア。Hビザで就職中。Hビザは一度延長が可能なので、延長申請をする。延長申請中は、合法的に滞在できると弁護士からアドバイスを受ける。Dさんは、継続して働いている。ところが、延長申請等(I-129申請)は近時10万件程度が拒否されている(2017年の移民局発表統計)が、Dさんも些細な理由で拒否される。Dさんは、他にビザもなく、アメリカ滞在する資格がないため、理論上不法滞在とされる。USCISは、NTAを送達する。まったく犯罪歴も不正受給歴もないDさんは、移民裁判所に出廷し、強制送還手続の対象になる。

上記のように、合法的になんら問題がなく、アメリカに滞在している外国人が、強制送還手続の対象に簡単になってしまう政策を現政権は取っているわけです。最初は「不法移民」に対して厳しく対応すると言っていましたが、現在は、不法移民をもはや作出するような政策になってきました。ここで、上記ケース④のDさんについて、もう少し深刻な状況を考えてみましょう。

Dさんは、H-1Bビザが特に理由もなく、厳しくなってきた審査が原因で延長拒否に遭ったとしましょう。さらに、追い打ちをかけるようにNTAが届きました。Dさんの雇用主も、ビザがない外国人を雇うことは危険を感じます。Dさんとしては、「こんな国にいてもしょうがないし、移民裁判所の出廷なんて時間の無駄だ」という本音を持っているとしましょう。

実際に、ビザの延長が拒否される可能性もかなり高くなってきていますので、有り得る事例です。さらにICEだけでなく、USCISがNTAを出せるとなると、移民裁判所は今でも混んでいるのに、さらに混むのは必須です。Dさんの出廷は2年先ということもありえます。2年間仕事もなく、アメリカ滞在なんてできない、となると自国に帰ってしまおう、と思うはずです。

ところが、NTAを無視すると、裁判所に来なかった、ということで、それが移民法上罪になります。弁護士は、「Dさん、裁判所に出廷しないと、裁判所は不出廷の罪を着せるので出廷しないと・・・」という話になってしまいます。Dさんは、不法滞在を継続しつつ、もともとのHビザの拒否に関して、不服を申し立てて争い、さらに行政審判でダメなら連邦裁判所で争わなくてはならなくなります。今回の現政権による行政通達により、Dさんは、もともとのビザ発給について争い、さらに不法滞在に関して移民裁判所とも争わなくてはいけません。仕事もなくなっているかもしれません。

このような状況を想定して、現政権が今回の通達をしているとは到底思えませんが、単純に今回の通達を突き詰めるとこのような結果になります。あまりにも浅はかな、行政政策に翻弄される、「移民大国」アメリカでがんばる外国人は絶句するしかありません。

ビザや永住権の拒否レートもあがっていくばかりですし、法律業務をしていても、現政権のやっていることが、何を目指しているのか、暗澹冥濛に感じるのは、第一線で実務を担っている私だけではないと思います。


*1 https://www.uscis.gov/news/news-releases/uscis-updates-notice-appear-policy- guidance-support-dhs-enforcement-priorities 参照
*2 サンプルはここを参照。https://www.justice.gov/eoir/dhs-notice-appear-form-i- 862

*3 https://www.uscis.gov/sites/default/files/USCIS/Outreach/Upcoming%20Nationa l%20Engagements/PED_CredibleFearandReasonableFearStatisticsandNationalityR eport.pdf 参照。

*4 https://www.dhs.gov/sites/default/files/publications/17_0220_S1_Enforcement- of-the-Immigration-Laws-to-Serve-the-National-Interest.pdf

*5 , INA §§ 103(a), 239; 8 CFR §§ 2.1, 239.1 など参照。

*6 https://www.uscis.gov/sites/default/files/USCIS/Laws/Memoranda/2018/2018- 06-28-PM-602-0050.1-Guidance-for-Referral-of-Cases-and-Issuance-of-NTA.pdf

*7 https://www.uscis.gov/news/news-releases/uscis-updates-notice-appear-policy- guidance-support-dhs-enforcement-priorities


 

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▼強制送還にあってしまったという問い合わせが増えています

何度も渡米している方でも、例外ではありません。
ご準備は周到に!

まずは疑いを持たれないことが、とても大切です。





アメリカで経営が困難に、破産すべきか(2)_1124




法律ノート 第1124回 弁護士 鈴木淳司

アメリカで経営が困難に、破産すべきか(2)_1124
August 28, 2018

この数日、付近の火事は鎮火しつつあるはずですが、ベイエリアはかなり「煙たい」空気に包まれていました。橋も曇って見えます。また、近所で火事が発生しているのか、と思ってニュースを良く見ると、オレゴンやワシントン、その上のカナダでも大規模な火災が発生し、太平洋を経由して、ベイエリアに流入しているとか。以前は、カリフォルニアの夏といえば、カラッと乾いているけど、樹々は緑、青い空が映えるというのが定番でしたが、過去のことなのでしょうか。日本でも猛暑がひどいようですね。

 

さて、前回から考えてきた質問を続けて考えていきましょう。
「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問内容です。

前回、アメリカの破産法には、チャプター7と13と呼ばれる方法があることを考えました。これらは個人の破産についてです。一方で、法人の破産については、チャプター7に加え、チャプター11と呼ばれるものもあります。このチャプターというのは、アメリカ法典の「第7章」という番号から由来するもので、あまり意味はありません。

個人でも法人でも、チャプター7というのは、いわゆるすべての負債で担保がついていない債務に関しては「免責」されるタイプの破産です。
免責というのは、負債があっても、もう払わなくても良いことにするという意味です。

この免責の許可は、アメリカの連邦裁判所のみが与えられることになっています。
保証人などの人的担保、抵当権などの物的担保がついていない債務、たとえばクレジットカードの債務などは、裁判所から免責許可を得れば、払う必要がなくなるのです。

このチャプター7は、個人にしても法人にしても、支払能力がまったくないような状態、支払能力が著しく低い状態の場合に有効ということになります。ある程度収支が存在しているような場合には、チャプター7を使わず、チャプター11や13を考えることになります。

たとえば、今回の質問をされている方は、どうも、毎月の収支はそれなりにあって、お金が回っている状態のようです。
そうすると、チャプター7を利用して、負債等をゼロにして、再スタートするよりも、手持ちにある財産をできるだけ保持しつつ、再建したいと思うはずです。

たしかにチャプター7を利用すると、担保の負債がついていない債務については、「チャラ」になる、すなわち免責されますが、担保がついている債務、たとえば家、車、高価な電化製品、家具、機器など割賦払いで買っている場合には、債務はなくなりますが、原則として、物を返還しなければなりません。文字通り、すべての債権債務をゼロに巻き戻すという感覚でいなければなりません。
このように、チャプター7によって債権者は不測の不利益を被る可能性があります。

そこで、一般的に金融機関が融資をするときに担保を取る、大家さんが商業物件を貸すときに担保を取る、というのは、破産対策というわけです。クレジットカードの発行審査も結局「チャプター7」の可能性が低い人、ちゃんと支払いを継続できる人、という観点から行われるのは、チャプター7による免責があるからです。

ここで、注意しなければならないことは、今回質問されている方の会社は、ほぼ質問者御本人の個人保証がついている借り入れで成り立っていますので、たとえ、会社がチャプター7をしても、結局は保証人である質問者本人の財務的力量が問題になってくると思います。

会社だけ潰してしまえば良い、というものではなく、会社の債務を保証している場合には、その保証人にも同額責任が生じるのです。また、場合によっては家族や第三者が保証人になっている可能性もあります。このような場合には、会社がチャプター7で免責されたとしても、保証人にはかかってくる可能性があり、こういう場合には「迷惑をかける」と一般的に言われる場合になるのではないでしょうか。

会社が破産する場合には、まずはどのような保証がついているのか、すべての債務を検証して、その影響を考えるのが第一歩となります。

次回続けて考えていきたいと思います。

 

まだまだ暑い日が続きますが、体調管理を万全にしてまた1週間がんばっていきましょう。

 


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アメリカで経営が困難に、破産すべきか(1)_1123




法律ノート 第1123回 弁護士 鈴木淳司

アメリカで経営が困難に、破産すべきか(1)_1123
Augut 21, 2018

元巨人の桑田真澄投手が夏の高校野球の始球式で投げましたが、彼の紳士的な立ち振舞いは素敵でした。今でも野球を愛しているんだなぁ、という気持ちが伝わってきました。しかし、アメリカの始球式には、打者はいないですが、日本は打者がちゃんと立っていますね。当たったらどうするのだと思いますが、早稲田の安倍球場からの伝統なのですね。

 

さて、今回から新しく法律ノート宛にいただいている電子メールでの質問を考えていきたいと思います。あまり個人的には得意な分野の法律ではないので、かなり一般論的な内容になりますが、がんばって皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめると「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問です。

 

破産(Bankruptcy)というのは、アメリカではかなり特殊な分野で、弁護士でも、破産だけに特化して業務を行っている人が多いと思います。
破産に関しては、連邦裁判所の専属の法律分野であり、州の裁判所は関係しません。破産というのは、簡単に言うと、借金を背負っている人が、現在の資産や将来の収入を考えると、借りたお金を返しきれない場合など、裁判所に申立をして、借金を免除してもらうか、持っている財産の範囲で、借りたお金を公平に分配する法律上の制度です。
破産を申し立てて、裁判所から、「免責許可(Discharge)」という許可をもらうことで、破産手続は基本的に完了します。

破産をアメリカで申し立てると、たとえば債権回収の執拗な電話などを止めることができます。これを自動停止(Automatic Stay)の効力といいます。
ですので、借金の取り立てなどで悩まなくなるというメリットが発生します。また、貸主から債権回収の訴訟を提起された場合などは、その裁判手続きも同じように自動停止します。さらに裁判所から免責を許可されると、基本的に負債を払うことを免除されます。

しかし、免除されるといっても、すべての負債が免除されるわけではなく、以下詳しく考えますが、一定範囲の負債は免責されません。アメリカでは一般的に個人の破産については、チャプター7とチャプター13という2つの主な方法が定められています。
7の方は免責をゴールとする方法で、13というのは、財産や収入を勘案して、再建が可能な場合に使われる方法です。7の方はほぼ財産がない、という場合に有効な方法ということになります。今回質問されている方も、自分の財産がどの程度あるのか、会社の負債といっても個人保証をつけられているようなので、保証している負債はどの程度の額なのか、などをすべて表にして、どの方法を使うか考えていかなければならないわけです。

破産で免責を受けると、クレジットカードの負債など、担保がついていない負債の支払いは免責されます。
ただ、破産を申し立てた人については免責されるとしても、保証人となっている人は免責されません。

ですので、たとえば、家族が保証人になってお金を借りているような場合には、家族は免責されず、支払いの義務は残るということになってしまいます。
よく、破産をしても「家族に迷惑をかける」というシナリオはこのような場合を指すのですね。クレジットカードだけでなく、未払いの請求書などもほぼ免責されますので、アメリカでは高額の医療費を払えないので、破産をするというのもニュースになります。

ただし、支払いを免責されたとしても、何か物を買った代金を支払わなかったような場合には、その物は、売主に返還されます。車や家具などは、支払い免責を受けた場合、返還しなければならないのです。

ここから次回続けていきたいと思います。

まだまだ暑い夏が続きます。ベイエリアは涼しいのですが、暑いエリアの方々は体調管理にくれぐれも注意されてください。また1週間がんばっていきましょうね。

 


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ビザスタンプ(査証)の有効期間




 

ビザスタンプ(査証)の有効期間
July 4, 2018

今回は、最近のビザ発給の傾向について考えてみたいと思います。

ビザの形状

興味深い変遷です。
まず、ビザというのは、在外アメリカ大使館・領事館を通して発給され、パスポートに貼られる顔写真入りのシール状のものです。紙幣のように偽造がされにくい形状をしています。

以前は、ビザというのはインクを使ったスタンプを押されていたので、今でも私はビザスタンプと呼んでしまいますが、今はかっこいい、シール状になっています。
パスポートに貼付されたものをビザと呼び、「ビザが取れるよ」という許可を得ただけではビザを取れるという許可証(I-797)を持っているだけであります。ビザは許可証とイコールということではありません(この許可証とビザの違いは別稿で取り上げてみたいと思います。)

 

ビザ取得には2つの流れ

さて、まずビザ発給の流れを大まかに2つのパターンがあるので考えてみましょう。

一つの例は、アメリカ国内の機関を通さず、在外大使館・領事館がそのままビザの許可をすることができ、ビザも発給できるパターンのものが考えられます。

たとえば、観光ビザのBビザ、条約締結国の国民に発給されるEビザなどが考えられます。
これらのビザはすべての申請用紙をたとえば、日本にある米国大使館・領事館に提出し、審査を経て、ビザを受けることができます。

もう一つのパターンとしてまずスポンサーとなる個人や企業が米国内でスポンサーとしての申請をして、その米国内の許可を待ってから、今度は対象となる外国人が自国にある米国大使館・領事館において、ビザを申請するという形のものもあります。

たとえば、Lビザとか、Hビザなどが考えられます。この米国内で受ける許可証をI-797と呼びます。
この2つ目のパターンである、米国内でスポンサーが申請をし、その後外国人がビザを申請する場合に、大使館の行動に少し以前とは違う点が見受けられます。ですので、ここで考えていければと思います。

 

Lビザの事例

ここでは最近私も体験したLビザの事例を使って説明します。
L-1Aビザというのは、会社内で外国からアメリカに転勤するビザであり、以前から、たとえば銀行、製造業および商社などでよく利用されてきました。

L-1Aビザというのは、ビザですから、日本人なら原則日本において発給され、最長で連続7年間(最初3年、以後2年づつ)発給されます。そして、L-1Aビザを日本において申請する前提としてのI-797は米国において新規の事業をはじめる場合には、最初は1年間発給されます。

以前から存在する米国内の事業の場合には、最初に3年間の許可を得ることができます。そして、I-797の期間にしたがって、通常はビザが発給されることになっていました。まあ、一見当たり前といえば当たり前です。I-797に1年と書かれていれば、ビザも1年、I-797に3年と書かれていれば、3年のビザが発給されていました。

 

I-797の許可期間よりも長いビザ

ところが、最近のL-1Aビザの事例では、I-797においては、許可は3年間と書かれているのに、ビザは5年間発給された例がでてきました。もしかしたら、大使館側のミスなのかもしれませんが、3年間を超えてビザが発給されている事実があります。
現在、移民法は外国人に対して締め付けを厳しくしている方向なのに、出血大サービスといったところでしょうか。

米国の在外大使館・領事館のビザ発給についてはいろいろな縛りがあるのですが、発給できるビザの最長期間について規定があります(9 FAM 403.9-4(B))。
この規定によると、大使館・領事館は、10年間のビザまでは発給することができるとされています。10年間以内であり、他の法律に抵触しなければ、裁量で発給することが可能なのです。

たとえば、Bビザのように観光ビザは、10年間でることも珍しくないですが、1年間とされてしまうこともあります。L-1Aビザは米国内での許可証(I-797)の期間に限りビザが発給されていたのですが、裁量で最大7年間までは理論的に発給できるわけです。

企業にとっても、ビザが長期で出されれば、安定して人を送れるので非常に好ましいことではあります。

このように、許可証(I-797)と、ビザの許可期間に齟齬が発生するケースが出てきましたが、申請する側にとっては利益にはなれ、不利益にはなりませんので、こういう場合は感謝しながら黙っておくのが得策ですね。

次回また新しい話題を考えていきましょう。


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トランプ大統領の入国禁止政策(2)_1118




トランプ大統領の入国禁止政策(2)_1118
July 14, 2018

前回、2018年6月26日に、アメリカ連邦裁判所の入国禁止大統領令を支持する判決を考え始めました。今回続けていきましょう。前回、保守派の最高裁の多数派が書いたロジックを考え始めました。

大統領はつまるところ、外国人を自国に入れるかどうかの広汎な裁量を持っているということは考えました。これはアメリカに限らず、日本でも同様に外国人を入国させるかどうかの広汎な裁量を行使できるので、基本的に問題はないという考え方になることを前回で理解していただけたと思います。

 

今回の入国制限が適法か

次に、今回の制限はそもそも適法かどうか、という点が問題になります。
この点が、保守派とリベラルの少数意見で激しく割れた部分であります。こういう言い方だとかなり端折っている、と思われるかもしれませんが、保守派は形式的な法律論を前面に出し、少数派は実質的に今回の事件を解析する、という構図となりました。

 

最高裁判決、適法と主張した論理

保守派は、今回の大統領令に関して、大統領は移民政策において広汎な裁量を行使する権限があり、単にその権限を行使した。そして、イスラム迫害ということはなく、数あるうちの6つの国だけ原則入国禁止に指定した。イスラム教を迫害しているとは言えない。

そして、政府が移民政策をするうえでは、合理的な制限であれば問題なく、テロ対策をするうえで合理的な判断であった、と位置づけました。

 

最高裁判決、違法と主張した論理

少数派は噛みつきます。

トランプ大統領が選挙中および大統領就任後もイスラム教を排斥する考えを打ち出し、さらに今回の制限も主にイスラム教徒に向けられたものだ。まるで、日系人を強制収容したときのように、一括りにしているような政策だ、「合理的な制限」という程度の解釈では生ぬるく、もっと制限的な方法および目的も厳格に審査されるべきだ、と主張しました。かなり事実も抜き出して論じています。
また、この入国禁止指定された6カ国の親族がアメリカにいるとして、かなりの数の家族が引き離されてしまう、という言及もありました。

少数派の意見をよそに保守派の多数は、大統領令を支持することになったのです。かなり激論があったと思われますし、激論になる理由もよく理解できます。とにかく、トランプ大統領の6各国に対する原則入国禁止の大統領令は有効であるとされました。

 

入国禁止の例外的な措置

もちろん、この大統領令には、原則入国禁止だが、例外的に難民等は受け入れる、という下りがあります。ですので、まったくの禁止ではないということになります。

しかし、実質的にはそのように例外受け入れが本当になされるのかは、行政の手のひらのうえの話です。アメリカ国内にもすでに、今回指定された6カ国に関連する市民権者や永住権者がたくさんいるわけで、アメリカ国内の議論もかなり亀裂が入ってくることが予想されます。本当に今回の大統領令でテロがなくなるのであればよいのですが、テロを焚きつける可能性もかなりあります。

私の現政権の考え方に対しての理解が浅いのかもしれません。
しかし、イスラム教徒イコールテロリストということではないということは、当たり前です。もともとイスラム教も他の宗教と同じように穏健な考え方で、戒律を守る考え方が基礎にあります。テロリストがジハードという言葉を捻じ曲げて、あたかも第二次大戦を煽っていった軍が天皇の統帥権を履き違えた同じように、武力行為にでるというのは、特殊な例であり、イスラム教の人たち全員にはもちろん当てはまりません。もちろん、戦国時代の比叡山のように武力化するような僧侶もいれば、穏健な僧侶も仏教徒でもいるわけで、十把一括りにするやり方はアメリカらしくないなぁ、と感じています。

今回指定された、6カ国でも賢人はいくらでもいるはずで、力はなくても、独裁政治などを是正したいと思っている人は一人ではないはずです。
そうすると、国ごとに入国禁止としてしまうと、その国に対して批判したり、変えたいと思っても、いくら例外規定があるとはいっても、アメリカという言論が自由な国に助けが求められなくなってしまうかもしれません。前に来た移民があとから来た移民にレッテルを貼ってしまうことになっているのではないかと憂慮しています。

今回の判決を読んで、なんだか、アメリカの良さ、悪さもあるでしょうが、胸を張って世界に誇れる多様性の萎縮を生むのではと思っています。

次回からまた新しいトピックを考えていきましょう。

 

 


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トランプ大統領の入国禁止政策(1)_1117




トランプ大統領の入国禁止政策(1)_1117
July 9, 2018

2018年6月26日に、アメリカ連邦裁判所で判決があり、かなりニュースになっていたトランプ政権によるアメリカ入国禁止令が結論としては支持されました。
もともと構成員のほとんどが移民の国で大幅な入国禁止令が出されたということで、議論が沸騰して、未だとどまるところを知りません。判決を受けて各地でデモも起こっています。
判決の内容をご存知ない方も多いと思いますが、日本人、そして日系人の強制収容についても言及されている判例なので、一弁護士の一考として、皆さんからの質問にお答えするのを休ませていただき、考えてみたいと思いました。

 

大統領令-Executive Order 13780-とその後の経緯

さて、今回連邦最高裁判所まで上り詰めた問題について少しおさらいしておきましょう。
トランプ大統領は、一定の国からのアメリカ入国を厳しく制限する大統領令を二度出しました。もちろん二度とも、かなりの議論が沸騰しましたが、今回の大統領令は直近の二度目の大統領令(Executive Order 13780)についてです。

この二度目の大統領令では、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、およびイエメンからのアメリカ入国を原則禁止し、例外的に難民申請などは、数は半減するが、考慮する、という規定がなされました。

この入国禁止令に対し、多くのアメリカ国民が反発し、訴訟提起に至りました。
主な訴訟では、ハワイ州、メリーランド州の連邦地方裁判所の判断により、大統領令の執行停止となりました。政権側は不服として控訴、控訴審も地裁判決を支持し、最高裁判所の判断に委ねられました。

 

過去の入国禁止事例

歴史を遡ってみると、実は、特定の国に対して、原則入国禁止をする政権はアメリカにもありました。たとえば、キューバに対する制裁として、キューバ人の入国を制限した過去があります。

このような例にあるように、国は政治的に、特定の国からの入国を制限することは、アメリカだけでなく、各国でもなされているという事実はあるわけです。
ですので、安易に、「国を一括りにして制限をするのはよくない」という批判は妥当ではないわけです。

 

大統領令の政治的背景

しかし、今回このような論争になっているのは、トランプ大統領の大統領選挙中および、就任直後の発言に端緒を求められるのかもしれません。
すなわち、トランプ大統領は、「テロは許さない」というだけではなく、「イスラム信者をアメリカにいれるな」と言った発言を繰り返していて、政策の目玉の一つにしました。そして、今回の大統領令が出たわけです。

人の信じる宗教を軸にして打ち出したスローガンに沿った内容の大統領令が出た、ということで、宗教に基づく差別的な大統領であるのではないか、という議論が沸騰し、訴訟に至ったわけです。

 

連邦最高裁判所の議論

最高裁判所の議論も割れました。
保守派と呼ばれる4人対リベラルの4人、それにどっちにも転ぶ1人という構図で、結局5対4で大統領令の支持に至りました。この判決のあと、「どっちにも転ぶ1人」が退官を発表しました。

アメリカの憲法の仕組みとして、大統領が最高裁判官の指名権を持っていて、議会の承認が必要となりますが、トランプ大統領が代替えの保守派を据えるということは間違いありません。そうすると、今後は議論も割れずに5対4の構図が続くことになるのではないかということが、今論点になっています。

 

合憲とした判事の判断理由

さて、今回問題となった大統領令について、保守派の判事5名はどのような理由で「問題ない」としたのか、考えてみましょう。

まず、大統領が今回の大統領令のように、国を指定して入国を禁止できるのかを論じています。この点については、上記でも触れましたが、「問題はない」という結論になります。アメリカ憲法では、移民法については議会が法律を制定できるとして、現存する移民法には(8 U.S.C  Section 1182(f))、大統領が一定の範囲を定めた外国人がアメリカに入国することによって、危害が発生すると判断した場合には、入国を禁止できる、と規定されています。細かい議論も最高裁判所でなされていますが、基本的に、大統領は外国人の入国に関して広汎な裁量をもっている、ということになろうかと思います。日本でもマクリーン事件という判例がありますが、類似した解析方法です。

次に、今回の制限は適法かどうか、という点が問題になります。ここから次回続けていきたいと思います。

夏ですね。ベイエリアも暑いですが、他の地域もかなり暑いようです。夏バテしないように気をつけてまた一週間がんばっていきましょう。日本では大雨の災害もあり心配ですし、暑さも尋常じゃないようです。影響されている方々の無事を祈るばかりです。


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学生ビザ、いつから不法滞在になるか




June 15, 2018

学生ビザ、いつから不法滞在になるか

 

今回は、あまり法律事務所では扱うところが少ない学生ビザについて考えてみたいと思います。

先月(2018年5月10日)、移民局内で内部通達という形ですが、学生ビザで入国している外国人が「いつ不法滞在とみなされるのか」という点について移民局内で統一的な扱いをするよう明確化がなされました。
もちろん、最近の動向をみていると、外国人に対しての締め付けを厳しくしようという方向です。以下、新たに明確化されたルールを考えてみたいと思います。

 

学生ビザの滞在期間

さて、学生ビザというのはF,J,Mという3つのカテゴリーが移民法上定められていますが、他のビザと違って、滞在期間が明確に決められていない場合も多く存在します。
すなわち、継続的に勉強をするわけですから、「学業が終わるまで」という滞在期間の定めかたがされます。

この学業成就まで、という期間の定め方をDuration of Statusといいます。移民法関連ではD/Sと呼ばれることが一般的です。

Duration of Statusー学業が終わるまで

このD/Sというのは、特定の期間が決まっているわけではないですから、なにか違法なこと(不法滞在と不法就労が主な移民法でいう「違法」です)が発生した場合、「いつから」不法滞在になるという問題がわかりにくいのです。

たとえば、就労ビザについては、いつからいつまで滞在できるということがはっきり決まっています。したがって、期限を超えてアメリカに滞在していれば、「不法滞在」ということになるのは明白なわけです。

Duration of Statusの統一解釈を明確化

D/Sに関しては、いろいろな不法滞在開始時の解釈も存在していましたが、今回移民局ははっきりと、「いつ」不法滞在になるのか、という解釈を統一し、明確化しました。
明確化したのは良いのですが、今までより学生にとってより厳しい解釈となりました。

不法滞在者を減らす目的

まず、今回の不法滞在に関する移民行政の明確化については不法滞在者の数を減らすという趣旨があります。
学生ビザ保持外国人の不法滞在の率はFビザで6%、Mビザでは11%強という統計があります。100人いると、6〜11人が不法滞在をしている計算になります。この数字を減らすことが一応の目的とされています。

 

具体的な運用は?

さて、今回の通達は2018年8月9日(以下「発効日」といいます。)に発効するということが決まりました。

まず、発効日において、学生ビザの資格を保持していないと、発効日から、「不法滞在」ということになります。
もちろん、すでに発効日前から不法滞在といなっている場合には、その不法滞在がはじまった日から起算されるのですが、グレーな場合でも、発効日に学生ビザの資格を保持していない場合には、発効日をもって不法滞在が起算されます。

発効日以降については、以下の基準を持って「不法滞在」が開始すると解釈されるようになります。箇条書きにしておきます。

1 学生ビザの資格に違反する行為があったとき(不法就労等でしょうか)。
2 学生ビザに明示されている就学が終了したとき(もちろん、プラクティカルトレーニング、猶予期間も就学中と判断されます)。
3 期間が定められた学生ビザの場合、その期間が終了したとき。
4 移民裁判所において、強制送還等の決定がされたとき。

この4つの基準で「不法滞在」かどうか判断されます。

以前のルールとの変更点ー移民局の判断に

以前からのルールとなにが違うかというと、上記の1です。
以前は、上記4のように移民裁判所で判断されるまでは、「不法滞在」になるかどうか曖昧な部分があったのですが、今回の行政通達ではっきりと、学生側の違反行為があったら、その時点から不法滞在とすることができることになりました。

つまり、裁判所のような公的機関での判断を待たず、移民局がなんからの捜査で、学生ビザに「違反している」行為があると判断すると、不法滞在という効果が発生することが明確になったのです。
ですので、結論的には移民局が外国人学生に対して「君は不法滞在です」と言える幅が増えたと考えてください。

まずはStudent Advisorに相談を

学生ビザは、I-20という書類を発行できる教育機関で、国土保安省の管轄下にある学校がスポンサーできます

各教育機関は外国人学生のアドバイザーを備えているはずのです。
できれば、今回の改正を受けて、学校のポリシーとして、在学中に何をして良いのか、何をしてはいけないのかなどの取り決めを、必ず学生の方は注意して確認してください。

次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。


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国土安全捜査局によるI-9立入検査対策




May 15, 2018

国土安全捜査局による立入検査対策

入国管理・税関局(U.S. Immigration and Customs Enforcement、略称ICE)の下部機関である、国土安全捜査局(Homeland Security Investigations 、略称HSI)による民間への立ち入り調査が激増しています。
2017年度(2016年10月から2017年9月まで)に比べ、今年度は、すでに2倍程度、3500件以上の立ち入り調査が行われています。

I-9登録が備えてあるか否か

立ち入り調査の理由は、就業場所におけるI-9登録が問題ないかの調査です。
I-9登録というのは、ICEが各就業場所において、外国人が就労する場合に、身分証明証を確認したうえで、就業場所に登録内容を備え置くことを言います。

 

I-9登録の意味合いと行政処分

このI-9登録というのは、両刃の剣であります。
一方では不法な就労を許している事業主に対して罰を課すことで不法就労を牽制する面があります。他方では、外国人が不当な賃金で雇われている場合など、外国人を保護する面があります。

I-9登録に反する雇用が行われている場合には、HSIは行政処分を行うことができます。
行政処分には、様々な種類があります。一つは、違法就労をしている者を拘束し、強制送還の手続に乗せることです。強制送還事例は近年激増傾向にあります。

もう一つ代表的な処分として、刑事・行政の罰金・課徴金の処分です。2017年度には、総額100ミリオンドル程度の処分が行われています。

HSI(Homeland Security Investigations)の調査の流れ

現状では、HSIの行う検査は一般的に以下のような流れで行われます。

書類審査

まず、I-9の検査を行う旨の通知が就業場所に対して送られます。就業場所にあるI-9に照らして、移民法に違反がないかを検査するという趣旨です。その通知には、3日以内に、I-9を提出するように指示が書かれています。HSIは提出書類をまず確認して問題がなければ、この段階で検査は終わります。

立ち入り調査

次の段階は、提出されたI-9書類群に不備がある場合、不提出の場合などには、立ち入り調査を行います。
立ち入り調査の結果においては、まず行政処分として課徴金を徴収します。不法滞在者がいる場合には、身柄の拘束等の処分も行います。

刑事手続と移民法の手続き

第三段階として、I-9違反について、雇用主が故意に違反をしている証拠があれば、刑事手続に乗せて罰金などの刑を科していくこととなります。刑事罰が科されるケースには、ビザに関する詐害行為がある場合など、移民法違反を知っているような事例が含まれます。
さらに、雇用主に対して教育プログラムに参加するように義務付ける場合もあります。

 

常時i-9を備えておくこと

以上のような検査が行われます。I-9の内容検査は、対応が3日間以内ということになっていますので、常時I-9が提出可能な状態にしなければなりません。

従業員の出入りが激しい就業場所は、従業員がすくなくとも、入ったときには、対応を注意して行わなければなりません。3日間以内に書類を整えるには、従業員の協力も必要になりますので、ある程度給与支払いと連動させて、書類を整えておかなければなりません。

 

立ち入り調査の対象は広がっている

以前は、宗教ビザ関連に検査が集中していました。イスラム関連施設が狙い撃ちされていた感はあります。
その後、宗教ビザ関連の検査は、様々な宗教に波及していき、現在では仏教関連の施設にも立ち入り検査が行われています。さらに、現在、中国人留学生などもかなり増加しているので、飲食店への立入検査も増加しています。

I-9の立入検査の端緒は様々ありますが、通報が端緒になることが多いようです。
足の引っ張り合いの場合もあるようですし、怨恨などの情から惹起する場合もあるようです。

検査が長引いて、ビジネスがトラブルに巻き込まれることを避けるためには、やはり事前にI-9書類の整備は常時確認しておくことが重要だと思います。
初動の検査ですんなり終われば、それで問題はないのですから、ビジネスが忙しくても、I-9対策は怠らないことが重要ですね。

また、次回新しいトピックを考えていきましょう。

 


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アメリカで万引き、移民法上の影響は?[3]_1112





法律ノート 第1112回 弁護士 鈴木淳司
June 02, 2018

ラジオですでに今年最初の台風がアメリカ沿岸で発生したと報じていました。雨も少なくここ数年天候の異常による火事などの自然災害が続いていますが、今年はどうなることやら、です。
カリフォルニア州はかなり乾燥した夏になりそうで、もう少し雨が降ってくれると良いと思っているのですが。ベイエリアはプロバスケットボールの試合で盛り上がっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[3]_1112
さて、今回も前回に引き続き、次の質問を考えてみます。
「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」という質問です。

 

万引きを移民行政の視点で考える

前回までで、司法的な観点で考えましたが、今回は移民行政の観点から考えてみたいと思います。

まず、今回質問をされている方のように一時的にアメリカにお住まいの方は、ビザまたは永住権などをもってアメリカに滞在されていると思います。
すなわち、アメリカのパスポート(市民権)を持たない状況でアメリカに滞在されていることになります。
こういった方々はアメリカから見ると「外国籍」ということになり、市民権保持者とは別の移民法が適用されます。

 

市民権者か、ビザ・永住権滞在者か

米国籍の方であれば、前回まで考えた司法による判断を受ければその事件に関することは終了といっても良いのですが、外国籍の外国人であると、移民法の絡みも考えなくてはいけません

移民法はかなり入り組んだ規定がなされています。
毎年のように法律がかわり、基本的には移民行政を律する法律ですから、行政の通達や、大統領令によって運用が変わります。

 

移民法の運用は厳しさを増している

もちろんみなさんご存知でしょうが、現政権は移民行政に関し、今までにない厳しさで入国制限をしていますし、現に移民に関する大統領令もいくつか出されているので、移民法そのものが変わらなくても、移民行政の運用はかなりドラスティックに変わってきています。

 

強制送還事由に該当するか

外国籍の方々に移民法は適用されるのですが、その内容としてひとつ挙げられるのが強制送還事由に該当するかどうか、という論点です。

ここで注意が必要なのは、アメリカ国外にいる外国人にビザ・永住権が発給されるかどうかを判断する入国禁止(Inadmissibility)事由と、すでにアメリカ国内にいる外国人をアメリカから自国に強制送還(Deportation)する強制送還事由とは、2つ別のものであるということです。

今回は、すでにアメリカ国内にいる外国人が強制送還されるかどうか、という論点なので、強制送還事由に絞って考えたいと思います。また、皆さんから、移民法に関する質問を待って、入国禁止事由については考えたいと思います。

 

窃盗が原因で強制送還はあるのか

さて、今回のような窃盗事例、いわゆる万引き事例について強制送還があり得るのかどうか以下考えていきたいと思います。

まず、一般的に強制送還になりえる根拠はいくつかありますが、刑事事件で有罪になった場合に一定の要件を満たしてしまうと強制送還になることがあります。

はじめに、一般論を考えていきます。移民法上強制送還になる場合は主に以下の2つの場合があります(8 USC § 1227(a)(2)(A) 参照)。

まず、一つの罪で強制送還事由になる場合があります。

(1)有罪となり、
(2)道徳違背の罪に該当する場合、
(3)法定刑が1年以上の場合、
(4)アメリカ入国より5年以内に(1)となった場合
です。
この5つの要件を満たすと強制送還になる可能性があります。

もうひとつの場合は、
(1)2つ以上の有罪となることで、
(2)2つ以上の罪が包括的にひとつの行為ではなく、独立した2つの行為から有罪になっている、という場合に強制送還になる可能性があります。

この法律をみると、1つの罪で強制送還とするには、色々要件を揃えないといけないわけですから、逆の立場、すなわち弁護士から見ると色々防御をする方法も見えてきます。

次回、今回の事由を使って、この2つの罪の要件についてさらに考えていきましょう。

カリフォルニアは天気の良い週末になりそうです。太陽を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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アメリカで万引き、移民法上の影響は?[2]_1111




May 31, 2018

今週、アメリカの大ヒットドラマの主演女優が、ソーシャルメディアへの人種差別的な書き込みで大問題になっていますね。その女優は自己の行動を薬のせいにしていましたが、製薬会社も対抗して、「人種差別的な行動はその薬の副作用とするデータはない」と反論していて苦笑いしてしまいました。良い年をして、見苦しい言い訳をしたり、他人のせいにすることを平気だと思う人が理解できないのですが。口は災いの元といいますが、現代ではSNSは災の元でしょうか。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[2]_1111

さて、前回考え始めた質問です。
「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」という質問を続けて考えていきましょう。

実は今回の質問を見て、私の友人弁護士も現在同じような事件を扱っていると、教えてくれました。 このような冷静にみると他人に迷惑をかける窃盗事件ですが、周りが見えなくなってストレス発散のために万引きに走ってしまうような事例は実際多いのかもしれません。

 

法上の3類型ー重罪・軽罪・微罪ーカリフォルニア州の場合

さて、窃盗犯はアメリカの一般的な犯罪の分類に従って、重罪(Felony)、軽罪(Misdemeanor)、そして微罪(Infraction)と3つのカテゴリーにまたがって成立し得るというところまで前回考えました。

この分類についてカリフォルニア州の刑法を考えてみましょう。

まず、損害の総額が950ドル以上か以下かが分岐点になります。
950ドルを超えない窃盗は、軽微窃盗(Petty Theft)と呼ばれ、950ドルを超える窃盗は加重窃盗(Grand Theft)と呼ばれます。

軽微窃盗については、初犯であれば、微罪になる可能性はありますが、犯罪被害が少額な場合に限られます(カリフォルニア州刑法第491条参照)。軽微窃盗といっても、再犯(2度以上、窃盗で起訴されるようなケース)であったり、行為の重大さによっては、軽罪にもなり得ます(カリフォルニア州刑法第487,488条参照)。

犯罪被害額が950ドルを超えると加重窃盗という罪(同487条参照)で起訴される可能性があります。加重窃盗は、初犯の場合最高で3年の禁固刑となり、重罪または軽罪として処断されます。微罪はありません。

今回質問されているケースでは、たぶん軽微窃盗犯として処断され、再犯でなければ、罰金と場合によっては保護観察処分で終了するようにも思えます。
ただ、移民関係への影響は次回以降考えます。

 

微罪と軽罪の違い、そして移民法上の取り扱い

ここで、微罪と軽罪の違いを考えておきましょう。

微罪というのは、基本的に罰金のみで終了する罪をいいます。
保護観察処分が付される場合もありますが、罰金のみです。そして、決定的に軽罪や重罪と違うのは、微罪であれば犯罪記録として残らないということです。

ただ、気をつけておきたいのは、州の犯罪歴に残らないということと、移民法などの行政関係で報告義務があるかどうか、というのは別問題であって、この点は次回詳しく考えたいと思います。

どの罪で起訴するかは検察官の裁量

上記で、犯罪被害額によって起訴される罪が変わってくるということを考えましたが、どの罪で起訴をするかどうかを決める権限は、検察官が持っています。

したがって、事例によって加重窃盗に該当しても、検察官の裁量で軽微窃盗として起訴されたりもします。かなり軽微な事例や被害に関する対応によっては、起訴が猶予されることも考えられます。

ですので、逮捕されたときから、早めに行動のはやい弁護士に相談されたほうがベターかもしれませんね。

本ケースの場合

今回質問されている方(その奥様)は、たぶん微罪になるようなケースだと思います。
ですので、罰金だけ支払えば、州政府の記録として罪としては残りません。
ただ、再犯の場合には、「前科」として考慮されることになります。

司法上と行政法上の取り扱いの違いにも注意

それから、行政の観点から見ると、たとえ、司法において微罪とされても、影響がでる場合があります。

典型的な例がスピード違反でしょうか。悪質なスピード違反でなければ、通常は微罪として処断され、罰金のみで事件は終了します。

一方で、行政の観点からは違っています。違反行為は記録としてしばらく残り、点数が増えると免許停止処分などが行われるので、行政の記録は残るのです。

移民法に関しても独自の考え方がありますので、次回考えていきましょう。

陽気が良くなってきましたが、まだ朝晩は冷え込みます。風邪に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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アメリカで万引き、移民法上の影響は?[1]_1110




May 20, 2018

私も数ヶ月なぜだか咳が止まらない状況が続き、医師と相談しながらやっと回復しましたが、日本でもアメリカでも、なんだかわからないけど、「咳が止まらない」という話を良く聞きます。陽気がよくなってきましたが、まだ、身体の不調の話は色々聞きます。世の中に住んでいる菌やウイルスがどんどん強くなっているようにも思います。読者の皆さんも気をつけてくださいね。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[1]_1110

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいた質問をまとめると次のような内容になります。

「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」というものです。

 

アメリカで万引き、移民法の影響も考える必要

万引き、いわゆる窃盗については以前も法律ノートで考えました。1000回以上皆さんからいただいている質問について考えていれば、いわば身近な犯罪についてはかなり考えてきていると思います。
ただ、現在は、移民法の影響も考えなければいけない状況にありますので、今一度考えても良い質問だと思っています。

 

万引き〜薬物使用と並んで多い犯罪の一つ

最近では、物品購入に関しても、インターネットによって行われることが多くなってきましたが、まだまだ量販店でのショッピングは根強いですね。特に日々使う食料や高価な物については、手にとって見なくては人間の心理として不安なこともあると思います。この心理についても、これからどんどん変わっていくのでしょうが。

よく、薬物はかなり一般の人たちも手を出しやすい犯罪であると言われています。
たしかに、薬物使用は自己に損害を与えるだけ、といった考えがあり、手軽に手を出してしまう人も多いと考えられています。

しかし、今回質問があるような万引きもかなり多い犯罪類型であることは間違いありません。

 

移民法上も深刻な影響がありうる

どのような小さな物でも、窃盗することは可能ですし、子どもから老人まで犯罪加害者になり得ます。
かなり身近といえば身近な万引き事例ですが、以下考えるように、ちょっとした犯罪だと思われがちである割に、移民法上の影響も含めて、深刻な結果を惹起する可能性があります

 

万引きの刑事法上の位置付け

まず、万引きについて刑事的な観点から考えていきたいと思います。

万引きというのは、一般的な言い方であって、窃盗(Theft)というのが法律的な言い方であります。日本では窃盗というのは包括的に刑法235条で規定されています。懲役から罰金まで量刑は用意されています。幅があるのです。

アメリカでは、各州によって窃盗が定められています
色々な定められ方があるのですが、被害の額、行為の方法(住居侵入かどうかなど)、など色々な要素を元に類型化されています。
実は日本でも、古い刑法では色々な窃盗の類型はあったのですが、現在は包括的な規定になっています。

 

刑法の3類型ー重罪・軽罪・微罪

さて、アメリカで類型化されているといいますが、まず、アメリカの刑法の基本である、重罪(Felony)、軽罪(Misdemeanor)および微罪(Infraction)という3類型に窃盗も分類されます。

重罪というのは、一般的に1年以上の禁錮が量刑で用意されている罪をいいます。
軽罪は1年以下の禁錮または罰金、微罪は罰金刑のみが用意されている罪をいいます。

一般的には、人の身体生命に関わるような罪については、重罪とされています。皆さんの身近にある軽罪としては、飲酒運転や薬物使用などがあります。

微罪の典型例はスピード違反などが考えられるでしょうか。この3段階の罪の設定が窃盗罪にも当てはまります。

 

次回続けて考えていきたいと思います。
夏に向かってスポーツも本格的に盛り上がってきましたね。身体を動かしながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 


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