たらい回し-弁護士雑感-1095





 

法律ノート 第1095回 弁護士 鈴木淳司
Feb 02, 2018

たらい回し

最近航空会社がオーナーと一緒に飛行機に搭乗する動物を制限するトレンドになっているようです。先週は、エモーショナル・サポート(日本語では「心の支え」でしょうか)用のクジャクの搭乗をたとえ専用に一席用意したとしても、断ったというニュースがありました。もちろん医師の診断書や、検疫の書類など、必要であれば搭乗も許されてしかるべきですが、どの程度まで許すかの問題なのでしょうね。しかし、狭い席に座って横にクジャクが座っていたら、一時間くらいならカワイイで済むかもしれませんが、長いフライトだと落ち着けないでしょうね。

さて、今回は前回から考えてきた質問にお答えするのを一回お休みさせていただき、今週体験したあまりうれしくなかったことを考えていきたいと思いますので、おつきあいください。

私の所属する事務所が引っ越しをしたのですが、インターネットの引き入れ工事をする必要がありました。高額なのですが専用線を引き入れることになったのです。結局、どのプロバイダーのサービスが良いかよくわからなかったので、引越し先の人たちが善意で教えてくれた仲介業者に下駄を預けました。私はハイテク犯罪や、インターネット系の事件も多くやっていてそれなりに弁護士としては詳しい方なのですが、さすがにインフラになると、仲介業者の方が良く知っているだろうという判断で下駄を預けたのですが、これが間違いだったと気づいたときにはもう遅い、というやつでした。

今週一週間、インターネットのインフラの整備がスムーズに移行する予定でしたが、かなり前途多難な状況でした。サンフランシスコ市内のビルは、プロバイダーは、外部からビルまでしか入ることができず、ビル内部は、別の業者に頼まなければいけないというお約束があるそうです。そこで、依頼した業者から、さらに紹介されて、ビル内部の配線を担う業者、事務所内で配線を行う業者と、少なくとも3業者が入るという状況になりました。まあ、ここまでは良いでしょう。費用が嵩みますが世界一家賃の高いサンフランシスコです。しょうがないと割り切りました。

さて、実際に施工となったのですが、もともと依頼していた仲介業者が何もしないのです。全然、配線がうまくいきません。結局、事務所で一番ITに詳しい私が、この仲介業者と話をすることになりました。私が話をしているとその仲介業者いわく「うちは、プロバイダーと話をして、外部から内部まで回線を引いたし、それが契約内容なので、あとは他の業者と話してくれ」と言うのです。そして、その仲介業者から紹介された施工業者と話をすると、「俺は仲介業者から言われた施工をしただけで、知らない。仲介業者と話をしてくれ」となります。いわゆるたらい回しというやつです。手足でたらいを回す曲芸は面白いかもしれませんが、こちらは業務に影響がでていて、目が三角になってしまいます。3,4日すったもんだがあって、終局的には無事に解決しましたが、業者をまとめる交渉で、かなり大変でした。しかし、日本でもアメリカでも同じなのかもしれませんが、この仲介業者のように、金を取っても責任を取らないという人がいるものです。

今回、このように自分の専門外のことで嫌な目に遭ったのですが、ふと考えると、私も今まで、自分自身、弁護士の過度の専門性を前面に押すことがあまり好きではありませんでした。「自分の専門外だ」というセリフを免罪符のように使って、クライアントをたらい回す弁護士もいるのは事実です。もちろん、一定分野の訴訟など得意分野はありますが、「私は○○の専門で他の分野はよく知らない」ということに違和感があったのです。過度の専門性のアピールは、なんとなくその分野の仕事が増えて良いようにも見えますが、場合によっては、今回私が経験した、たらい回し状態になるのではと危惧します。

私はたくさんのクライアントに恵まれ20年もつきあいがある場合も少なくありません。どのような分野の話であろうと、大事な方々の話であれば、それを真摯に聞いて、私があまり知らない分野のことは、事務所内の別の弁護士や外部の人達に積極的に聞いたりします。そのことで、自分の知識のプラスにもなりますし、新しい人間関係も構築できることも多くあります。どうしても、わからなければ「わからない」と言えば良いですが、他の弁護士との連携は私が責任を持ちます。基本的には、自分の専門分野で切り分けるのではなく、やはりクライアントのために積極的に自分ができることはなんでもしたい、というスタンスを持っていたいと思っています。

実は、専門分野と言いますが、本当に特殊な事件を除けば、弁護士というのはそもそも日本で言えば六法と言って様々な社会に関係する法律を学ぶわけです。どのような事件においても、少なくともトレンドはつかめますし、ある程度の予測はできます。困った方々が、わざわざ鈴木に相談に来られているのです。少なくとも私は、そのクライアントに対して責任回避をせずに、ベストを尽くすという姿勢は弁護士を続けている以上持っていたいと思います。法律ノートも幅広く法律のことを取り上げていますが、それは私の弁護士としての姿勢でもあります。皆さんが、クジャクと一緒に飛行機に乗ろうとしたら断られたと相談されたのであれば、一応の解決策は提示できるのではないかと思っています。クジャクは今まで扱ったことはないですけどね。

次回、前回から考えている質問を続けていきたいと思います。今年のインフルエンザはかなり深刻なようです。くれぐれも気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

カテゴリー: アメリカ法律ノート | 投稿日: | 投稿者:

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