アメリカのビザは取りにくくなっている?最近の米移民行政の傾向_1085





 

法律ノート 第1085回 弁護士 鈴木淳司
Nov 27, 2017

 

アメリカのビザは取りにくくなっている?最近の米移民行政の傾向

 

サンクスギビングが終わりましたね。皆さんはどのように過ごされたのでしょうか。私は長年の友人宅に招かれてターキーをいただきました。一昔前はサンクスギビング(木曜日)の翌日は、ブラック・フライデーと呼ばれて、各小売店では1年で一番安売りをするということが定番で、開店前から人だかりとなるなど、騒ぎになっていたものです。ところが、私も何か安くなっていないかと先週の金曜日にある小売店舗に行ってみたのですが、閑散として客もおらず、店員さんも暇そうでした。何が安くなっているの?と聞くと、全店15パーセントオフだよ、という返答でしたので、よく値段をみると、インターネット小売にはかなわない値段でした。そうです、ホリデーショッピングもほぼインターネット小売に移行してしまったのですね。モールにもなかなか客が集まらないようで、ホリデーシーズンに人が賑わう場所もどんどんなくなってきている現実に少々寂しい思いがしました。

 

移民局の審査は厳格化傾向に

さて、今回は一般的な内容になってしまいますが、現在のアメリカの移民行政の現実について考えたいと思います。最近、特に外国人のビザ申請について、移民局の審査が厳格化してきているように思います。

以前は問題なく通った申請内容でも、今年に入ってから、通らなくなる例が多くなりました。移民法協会などでも、活発に不可解な拒否事例が紹介されています。最近ではニューヨークで車を暴走させる事件があり、その犯人が永住権抽選制度を使って入ってきたため、トランプ大統領は、永住権の抽選を廃止せよ、と議会に迫っています。

 

確かに広汎な政府裁量が働く分野だけれども

移民やビザの申請を許可するかどうかは、米国政府の広汎な裁量に任されています。

これは、どの国でも似たようなもので、日本も外国人の日本入国、滞在を裁量で決めることができます。判例でも日本の政府は「広汎な裁量」を持っている、と明示されています。

ですので、入国の可否はかなり幅が広く、時代によっても傾向が変わってきます。オバマ政権のときと、現在のトランプ政権では移民局の上層部もかなり入れ替わり、保護主義的な色彩およびテロ対策の色彩がかなり濃くなってきています。

 

具体的なビザ申請の拒否事例

最近のビザ申請の拒否の傾向を、ここでまとめたいと思います。今まで申請が問題なく許されていたケースが拒否される事例を見ていると一定の傾向が考えられます。

 

アメリカの雇用創出に寄与するかどうか

一つ目ですが、たとえば外国企業がアメリカに進出してくる場合、かなり移民局が重視しているのは、アメリカ市民、永住権保持者を雇用しているかどうかです。

すなわち、多くのアメリカ人の雇用を創出していれば、それだけ企業が派遣する外国人のビザも取りやすい傾向が顕著になってきました。これは、トランプ政権が打ち出しているアメリカ・ファースト政策がかなり反映されているポイントです。

平たく言うと、外国人ばかりがアメリカに入ってきて商活動をするのはアメリカ人にとって不利益なので、アメリカ人の雇用を増やす外国企業をより優先するということです。

外国企業がアメリカに進出してきて、すぐにアメリカ人を雇用できるか、といえばそうではないかもしれませんが、現状では、とにかくアメリカ人の雇用を増やすことに貢献すればするほど、ビザの許可がおりやすくなるという傾向が鮮明になってきました。以前は将来、この程度アメリカ人を雇用する準備があるというビジネスプランを出せば外国企業の申請は許可されていましたが、現状、ケースによっては、実際にアメリカ人を雇用して、その給与明細を提出するように指示される例もあります。

 

投資額、そして投資形態が重視

2つ目ですが、外国企業がアメリカに進出する場合、たとえば、Eビザ(投資ビザ)では、どの程度の投資ができるのかが、許可の目安となっていました。この投資についても、額が大きければ大きいほど、許可されやすいという傾向が今までもありました。

最近では、この外国企業による投資についても、アメリカ人またはアメリカ企業がどの程度利益を得られるのかが重視されるようになってきました。
すなわち、投資金を銀行口座に貯めておくだけでは足りず、実際に投資を使った内容を移民局は注目しています。たとえば、不動産も持っているだけではビザ申請用の「投資」とはあまり考えられず、一方で、建築するのに投資を使うなど、実際にアメリカの会社や人にお金が落ちることが移民法上の「投資」として重視されるようになってきました。アメリカ国内にお金をたくさん落としてくれれば、ビザが出る、といったところでしょうか。

このように、トランプ政権下の移民行政は、前政権下と比べるとドラスティックな変化があり、外国の企業も多額の投資ができない場合にはかなり苦戦している現状があります。

 

 

今回は、ここまでとしたいですが、また実際に変化がある場合には、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

これからクリスマスのイルミネーションが綺麗になる時期ですね。夜の輝きを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。