中古車の契約解除。売買代金を返してくれない。訴訟は?[1]





 

法律ノート 第1004回 弁護士 鈴木淳司
April 25, 2016

 

日本においてハンセン病患者にかかわる訴訟について最高裁判所が謝罪をしたようですね。特別法廷という司法制度がそもそも憲法上許されるのか、というかなり司法の根幹に関する問題です。謝罪はしたものの、特別法廷は違憲としませんでした。最高裁判所は調査書を公表するようですので、その内容をぜひ拝見したいと思います。
どのような人でも実質的に平等な形で司法制度を利用できなければ、判断をする機関の公平性も疑われますね。人権という法治国家の根本と司法制度について深く考えさせられました。

みなさんは春を楽しんでいらっしゃいますか。

 

サルベージ車両を購入した大学生の事例[1]

 

さて今回から新しくいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

「日本からアメリカの大学に留学している学生です。ある人から中古車を買いました。

事故車ではないということで買ったのですが、あとでサルベージされた車であることがわかり、車を売主に戻し、売買代金4500ドルを返してもらえることになりました。

車はすでに戻したのですが、売買代金は一向に返してもらえません。

そこで、小額裁判制度(Small Claims)を利用したいと思っています。訴えるときに必要な書類などはどのように整えてどのように相手方に渡せばよいのでしょうか」というものです。

 

中古車購入時には権利証確認が必須

中古車を買うときはかなり気をつけなければいけません。特に複数のオーナーが存在している中古車は、事故や故障というのがあってもよくわからないものです。
購入する前に、購入者の実費で独立した検査をしてもらうことも考えられますが、それを拒否されることもしばしばありますし、検査でわからないこともあるものです。

法律的なアドバイスではありませんが、中古車を購入するときは、できるだけマイルが少ないものを選ぶのは鉄則ですが、できれば前オーナーが1人であり、その人から購入することも重要です。

さらに、今回質問されている方が「サルベージ」ということを気づかれたのは権利証(ピンクスリップと一般的に呼ばれています。これは、以前はピンク色をしていたことからつけられたニックネームです。グリーンカードというニックネームと似ていますね。)に「Salvaged」と書かれていたからですが、権利証の文面も気をつけてみることも忘れないでください

ちなみにサルベージ車両というのは、事故車や、場合によっては見つかった盗難車などを業者から買って、プラモデルのようにくっつけて動くようにしたものをいいます。ですので、かなり信頼性は低い場合があります。かなり注意したい点です。

 

お金と現物は同時に交換する

今回質問されている方のラッキーだった部分は、売主が売買契約の解除に応じてくれるということです。もし、事故車でないということを信じて買っていたのであれば、場合に寄っては詐欺になるかもしれませんが、このような交渉の場で詐欺を証明するのは実際にはかなり大変なことです。

一方で、アンラッキーだったのは、自動車を返還するときに、お金をなんらかの理由でもらわなかったことです。

通常、このようなケースの場合、法律用語では「同時履行」という言い方をしますが、実際に同時にお金と自動車を交換するのがお約束です。たぶん、あとからチェックを送るとか、現金がないので、後日振り込む、といった会話があったのかもしれません。

もちろんその場に私が居たわけではありませんのでなんともいえませんが、せっかく自動車の返還に合意してもらった状況なので、はやく車を戻してしまいたかったといった事情があったのかもしれませんね。

 

返金を求める訴訟に向けて

何度か、電子メールでやり取りをしていたようですが、途中から返事が来なくなったそうです。このような状況では訴訟をするというオプションしかない、という結論になったようです。

今回の質問をされている読者の方は、日本から来ている留学生というステータスで、訴訟が起こせるのか、ということをまず心配されていましたが、これはまったく問題ありません。

お金を返してくださいと求める訴訟は民事訴訟といって、基本的に誰でも訴えを提起できます。移民法上のステータスは関係ありません。ですので、ここで不安に思われることはないと思います。

訴訟を提起しようと決めたとしても、どうやって訴訟を提起するのか、経験がなければとっつきにくいところですね。次回ここから考えていきましょう。

 

日本はゴールデンウィークが近いので、お仕事が忙しい方もいらっしゃるでしょうが、体調に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。