仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[2]





 

法律ノート 第1002回 弁護士 鈴木淳司
April 11, 2016

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[2]

 

飛行機の機内で芸能人の方に出くわすことも今まで結構あったのですが、今週遭遇した芸能人の方はかなり気さくな方で私も含め周りの人と握手をしたり、会話をしたり、ずいぶん交流されていました。少しでもその人を知ることができると、悪い気は起きません。人柄なのでしょうね。弁護士でも偉そうな人が少なくありませんが、究極的には人柄が大事なのだな、とよく思わされました。

 

仲介契約があるのに進まない事業。何か手は?[2]

さて、前回から、次のような質問を考えてきました。

「昨年からある商材を日本で売るために、米国の製造ベンチャー企業との間に仲介契約を締結しました。

 簡単にこの契約の内容を言うと、当社が仲介業者的な役割を果たして、アメリカのある商材を日本の企業に売るという内容です。そして、成約した場合には、成功報酬をパーセンテージで受け取るということになっていました。 

 その米国ベンチャーの社長と懇意にしていたため、メモ書き程度の契約しか締結していません。 

 当社は日本において、いくつも納入先となりうる企業を見つけてきているのですが、この米国企業は協力的ではなく、質問にもなかなか答えないですし、テスト結果などもおくってきません。

 契約は毎年更新となっていますが、更新についても揉めそうな状況です。このように非協力的な企業に対して法的に何か言うことはできないでしょうか」という質問を考え始めました。

 

成功報酬型でも進まない事業

まず、今回の契約は成功報酬型の契約ですから、本来であれば両当事者に目的達成のインセンティブはあるはずです。

しかし、一方の当事者はやる気があるのに、もう一方の当事者はなんでもやることが遅く商売がなかなか進まないという今回のような状況も生じることがありますし、実際の実務でも何度も目にしています。

 

大切なのは契約書の中身ー期限と条件の明示

重要な問題は契約書にどのような記載があるかということです。

たとえば契約書に詳細な連絡の方法などが記載されている場合があります。

一方のリクエストに対しては、他方当事者は、5営業日以内に返答する、とか、情報の提供については、何日以内に電子形式で提供するとか、いった内容を契約で明示しているものも少なくありません。

このように期限を区切って両当事者に義務を課しておけば、その義務に反した場合には契約上「債務不履行」ということが明確になります

相手と契約をするのがはじめてである場合、今回のように相手方の対応に疑問がある場合には、このようにお互い契約上やらなければならないことに「期限」や「条件」をつけておくのが良いということになります。

このような期限が契約書にない場合には、たとえば何かを契約書の当事者の一方が他方にリクエストして、その反応が翌日でも、2ヶ月後でもどちらが「はやい」とか「遅い」といったことはなかなか言えないことになります。
もちろん、今まで長い間契約関係にあり、たとえば、通常であれば3営業日以内に返信や回答があったのに、あるときから、回答が一ヶ月以上遅滞するような場合には、「遅い」といえるかもしれません。

このように、契約書に明示されていない「度合い」の問題を法律的に違法かどうかと論じることは難しいということになります。

したがって、今回質問の対象になっている事例でも、すぐに法律的に論じることができる違法性が見つかるか、というとそうはなかなか言えないということになろうかと思います。

 

債務不履行の追及は難しい

今回質問されている方の会社は、すでに何社に興味を持ってもらって、契約に向けて努力をしているということです。

もしかりに連絡のやりとりについて、わざと相手方がなんらかの理由で妨害しているような証拠があれば、債務不履行責任や、場合によっては不法行為責任を問えるかもしれません。

しかし、証拠というのは、遅滞していたということだけではなく、「わざと遅らせる」という内容が明確にわかるメールを入手したとか、第三者に「わざと遅らせている」といった内容のことを言い、その第三者が証人になってくれる、というお膳立てが必要になると思います。簡単ではありませんね。

 

仲介契約を無視した契約もあり得る

ただ、場合によっては、本件のような仲介契約がある場合、今回質問されている方を中抜きして、契約の相手方である製造ベンチャーと日本企業が直接に契約を締結してしまうようなケースもあります。

この場合には、仲介料を求めて、製造ベンチャー企業に対して責任を問える場合もありますし、悪質な場合には、日本企業も訴訟の対象にできるかもしれません。

 

以上のように、契約書でかなり縛りがないと、当事者間のやりとりが遅い、といってもすぐに法律的な債務不履行を追及することは難しいということです。
次回、もう一点質問にある更新について考えていきたいと思います。

 

天気が安定しなかった一週間ですが、春の花を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

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