エステートプランニング導入のメリットは?[2]_1014


法律ノート 第1014回 弁護士 鈴木淳司
July 06, 2016




 

東京の元知事はかなり批判に晒されましたが、最近、米国メイン州の知事のこともニュースになっていました。メイン州の知事報酬は、米国のなかで最低なのだそうです。知事報酬を見直す法案も否決されたとか。その知事の奥さんがトヨタ車を買う資金を貯金するため、夏の間ウェイトレスのバイトをしていることがニュースになっていました。レストランに行って知事の奥さんがオーダーを取っていたらびっくりしますよね。でも、アメリカらしいニュースで、微笑ましい限りです。独立記念日の3連休、みなさんはどう過ごされましたか。

 

エステートプランニング導入のメリットは?[2]_1014

 

さて、前回からいただいている質問を今回も続けて考えていきたいと思います。

いただいている質問は、次のようなものです。

「エステートプランニングの作成をした方がいいという記事をよくみかけます。数十ドル程度でできるのであれば気楽に考えるのですが、数千ドル、しかも不動産などを買い替えた際などに情報のアップデートが都度必要となるとなかなか専門家に頼んでというところまでにたどり着きません。我が家には子供が一人いるだけです。夫婦は共に日本人で永住権を持っています。特に複雑な血縁関係があるわけでも、財産があるわけでもなく、不動産と保険と現金が多少あるのみ(1ミリオンもないです)なので、夫婦共に亡くなったとしても、時間がかかるというだけで最終的に相続するものが全て子供のみにいくのであれば、エステートプランニングをする意味が乏しいのではないでしょうか。それでもエステートプランニングがないとデメリットとなるのは何でしょうか?銀行や保険などには全て受取人を指定してあります。エステートプランニングをするメリットは理解しています。正直なところ、専門家にこの質問を投げれば「持ったほうがいい」との答えがかえってくるのが当然かと思うので、この質問をすること自体に矛盾があるのかもしれませんが、お答え頂けると助かります。」

 

エステートプランニングのデメリットは?

 

前回、エステートプランニングをすることによるメリットをいくつか例示しておきました。今回質問されている方はそのメリットはある程度理解されていると思います。

ではデメリットは、どのようなものでしょうか。
トラストを作成する根本的なポイントである、「裁判所を通す相続手続きが避けられる」というメリットを利用できないということになります。

裁判所を通す、「相続手続 (Probate)」というのは、時間がかかります。

今回質問されている方によれば、時間はかかっても良い、ということなので問題はなさそうです。まあ、今回質問されている方は「別に時間がかかっても良い」と思っていらっしゃるかもしれませんが、残された人達にとっては迷惑という場合もあります。

 

相続回避の手続き

今回質問されている方は、かなり勉強されていて、裁判所を通す相続手続を避けるように工夫をされています。

銀行口座は、死亡を契機にして受益者名義になるPay-on-Deathアカウントを利用されているようです。また、保険金についても、被保険者の死後に受取資格が発生するので、一般的に相続手続外ということになります。

このように、財産の受け継ぎについて、ある程度用意をしておけば、相続手続をある程度回避できそうではあります。

 

不動産を所有する場合

問題は不動産を持っている場合だと思います。

今回質問されている方も不動産をお持ちです。
相続財産に不動産が出てくると、トラスト名義に入っていない限り、ほぼ100%相続手続の対象になります。夫婦の合有名義にできるので、夫婦がご存命の間であれば相続手続は非常に簡単ですが、子に引き継ぐときに、相続手続の対象となります。

相続手続の対象になるということは、担当する弁護士がでてきて、その弁護士の費用は法律で決められているのですが、不動産や他の財産の価格の数%となっています。たぶん、不動産をお持ちの方であれば、トラストを作っておいたほうが長い目で見るとコストセーブとなりそうです。将来、相続手続きで数万ドルを払うよりも、今数千ドル払ってエステートプランニングの一環であるトラストを整備しておいたほうが安上がりかもしれませんね。

他にも、エステートプランニングをやっておくと、相続手続を通らないので、プライバシーがある程度守られること、相続で発生しやすい家族、親族とのトラブルも避けられるといったメリットも考えられます。

 

相続のトラブル回避と手続きの簡便化

このように、エステートプランニングをすることにより、ある程度将来的に自分の持っている財産に関して、家族間でトラブルを避けることもできますし、移行もスムーズになることがあるのです。

今回質問されている方に関しては、不動産をどのように受け継いでいくのか、という点は気になりますが、それ以外については、別段どのように財産が配偶者や子に移行していくのかを理解されていればそれで十分足りると思います。

 

エステートプランニングの見直しは大きな財産だけ

今回の質問で気になるのは、エステートプランニングをすると、毎年見直して、お金を払う必要がある、といったことをいう弁護士や業者がいるようです。これについては、基本的に不要と考えてください。不要なお金を払う必要はありません。

エステートプランニングを見直すのに必要なのは、大きな財産、たとえば不動産や銀行口座に変化がある場合に、少々見直しが必要になりますが、それほど深刻な話ではありません。また、エステートプランニングを放置していても、無効になることはありません。単にトラストに加わっていなかった財産が、裁判所の相続手続の対象になるというだけです。

 

少々長くなってしまいましたが、今回はここまでにしておきましょう。他にも、エステートプランニングに関しては、かなり興味がある方も多いですから、法律ノート宛にいつでも質問していただければと思います。

 

休み明けですが、気を引き締めてまた一週間がんばっていきましょうね。