車載レコーダーの動画と対立する主張[2]


法律ノート 第1018回 弁護士 鈴木淳司
August 2, 2016



 
 

ファインディング・ニモの続編で、ファインディング・ドリーが劇場公開されています。冷静に新編をみると、ドリーが親を探すという構成なので、タイトルがおかしいのですが、人間はパターンにハマるとどうでもよいのでしょうね。

次は、ファインディング・ハンクになるのではないでしょうか。リアルなアニメーションは描写が事細かく素晴らしいのですが、一昔前のアニメとは違った楽しみなように思えます。矢吹丈の髪型が左分けなのか右分けなのか、といった問題は現代アニメでは起こりえないのでしょうか。

 

車載レコーダーの動画と対立する主張[2]

さて、前回から考えてきた質問を続けて考えていきましょう。

「半年ほど前、自宅近くの交差点で車同士の衝突事故に巻き込まれました。幸い、事故によって大きな怪我はなく、救急車を呼ぶには至りませんでした。事故のあと、保険会社とやり取りを続けているのですが、相手方は、私に過失があったと主張しています。私は反論を続けていますが、相手方の車には、車載レコーダーがついていて、その動画があるということで、反論しても争うのが難しいと言われています。私の車には家族が乗っていたので、事実をありのままに言って争っているのですが、車載レコーダーで記録された動画は実際に争うことが難しいのでしょうか。また、そのような車載レコーダーで撮影することはプライバシーの侵害になるのではないでしょうか」というものです。

 

車載レコーダーとの動画と証拠能力

前回、法律用語ですが、「証拠能力」が裁判で認められれば、録画された内容は事実を判断する際に使えるということを考えました。「証拠能力」というのは、裁判というバトルにおいて、主張をサポートする証拠として使えるかどうか、という問題です。

ちゃんと撮影された経緯が説明されているのか、裁判を歪める偏見がないのか、などの観点から判断されて、「証拠能力」があるのかどうかが決定されます。近時では、録画や録音は、それを撮った人達が撮影や録音過程について疑いを差し挟まない程度に法廷で証言すれば、証拠能力があるとされることが一般的になってきています。ここまで、前回考えました。

 

「証拠力」とは

今回は「証拠能力」ではなく、もう一つ「証拠力」という法律用語を考えていきます。

「証拠能力」というのは、証拠として使えるかどうかを判断することを言います。言ってしまえば、録画や録音が使えるか使えないか、白黒を判断するレベルを言います。

証拠として使えるとなると、次は「証拠力」が問題になります。この過程は日本でもアメリカでも同じです。

証拠力というのは、証拠としてどのくらい魅力があるのか、というコンテストを裁判において競うことを言います。民事事件では、日本では、基本的に裁判所が、アメリカでは陪審員が、対立する証拠の証拠力を吟味して、どの証拠が信用できるのかを判断します。この「証拠力」、つまり証拠として信用できるかどうかの魅力というのは、法律的な判断というよりも、常識や事実に基づく判断なのです。

ですので、法律を勉強していない人でも、どの証拠がより信用できるのかということを、実際に判断すれば良いということになります。裁判というのは、法律に基づき行われますが、とどのつまり事実があったかなかったかを判断するのは、一般常識なのです。

 

証拠として魅力的なものは何か

今回質問されている方は、録画されている事故の瞬間を映した録画映像と、事故に遭ったご家族の証言を対比されています。どちらが証拠として魅力的でしょうか。

もちろん事件によって違いはあるのかもしれませんが、主観を挟まない映像の方が、一般的には信用できると思われるのではないでしょうか。

そうすると、今回質問されている方のように、相手方のレコーダーに映像がくっきり映っているとすれば、かなり争うのが難しいということになろうかと思います。こちらのレコーダーを搭載しておいて、争えればそれはそれで、証拠力の闘いになるのかもしれませんが。

私も長い間弁護士をして、証人尋問を何度も、何度もしていますが、人の記憶など、かなり曖昧なものです。一昨日の朝飯について、何時にどこで、何を食べたか、なんてよくわからないこともかなりあるわけです。

ですので、近時、録画というのが逆に客観的な証拠として尊重されているという現状があります。

 

 

これで、今回の質問にお答えしたと思います。また、次回新しい質問を考えていきましょう。
まだ夏真っ盛りですが、暑さを楽しんでまた一週間がんばっていきましょう。