車載レコーダーの動画と対立する主張[1]





法律ノート 第1017回 弁護士 鈴木淳司
July 28, 2016

 

私の誕生日が週末に重なったのですが、1日タダ飯タダ酒をいただける幸運に恵まれました。朝から、コーヒーショップに行き、「これから誕生日のゴルフなんだよ」と言ったら、おねだりしたわけではありませんが、コーヒーをタダにしてもらえて、一日のスタートが良かったのでしょうか。昼ご飯も晩御飯もご馳走になってしまい、たらふく食べてたらふく飲みました。年に一度の一日中ハッピーアワーということでしょうか。良い気分転換になりましたが、皆さんはお元気ですか。

 

車載レコーダーの動画と対立する主張[1]

さて今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

質問の内容をまとめると「半年ほど前、自宅近くの交差点で車同士の衝突事故に巻き込まれました。幸い、事故によって大きな怪我はなく、救急車を呼ぶには至りませんでした。事故のあと、保険会社とやり取りを続けているのですが、相手方は、私に過失があったと主張しています。私は反論を続けていますが、相手方の車には、車載レコーダーがついていて、その動画があるということで、反論しても争うのが難しいと言われています。私の車には家族が乗っていたので、事実をありのままに言って争っているのですが、車載レコーダーで記録された動画は実際に争うことが難しいのでしょうか。また、そのような車載レコーダーで撮影することはプライバシーの侵害になるのではないでしょうか」という質問です。

 

一般化する車載レコーダーとプライバシー

最近ではかなりコンパクトな車載レコーダーが発売されていて、商用の例えばタクシーなどでなくても、かなりの車が搭載するようになっています。タクシーは、知らない人が乗り込んでくるので、事故対策だけではなく、車内の様子も撮影しているということになります。

車内については、運転手の安全と乗客のプライバシーという守るべき利益が対立しますが、一般的に、車内を撮影していることをステッカーなどで告知していれば、プライバシーの侵害とは言えないとされています。

 

一方で、車外を撮影している場合も、たとえば人の家の中を覗見するようなものではなく、あくまでも公の道路上を撮影しているのであれば、プライバシーの問題はありません。

今回質問されている方も、プライバシーの侵害だ、ということをおっしゃっていましたが、盗撮しているわけでもありませんし、公の場所を撮影しているだけだと考えられますので、プライバシー侵害を主張するのは難しいと思われます。

 

公の場とプライバシー侵害

ちなみに、ニューヨーク州では最近いわゆる、夏に女性が薄着であることを利用して、女性の下着を撮影する行為について、公の場所で行われていれば、犯罪にはならない、という裁判例が出されました。日本では、たとえば「条例」などによって規制されていますが、アメリカでは日本よりも、公の場(Public Forum)で行われた行為については、プライバシーが認められにくいという法律解釈の現状があります。

したがって、今回のように、交通事故や盗難を想定して設置されたレコーダーで撮影されたものがプライバシーの侵害に該当するとは言い難いです。

 

記録されたデータと証拠能力

さて、次に車載レコーダーで録画された動画や画像が、交通事故の責任問題を決するうえで、証拠となり得るかについて考えていきたいと思います。結論からいうと、証拠となり得るということになりますが、以下考えていきましょう。

録画や録音というのは、もともと証拠として使えるかという議論がなされてきました。証拠として使えるかどうか、ということを法律用語的に言うと「証拠能力があるか」と言います。

法律的に言うと、かなり難しいプロセスを通って証拠となりますが、現代では録画や録音を実際にした人が、どのように録画や録音をしたのかを証言し、その装置が信頼できるものであることを裁判所で認められれば、基本的に証拠能力はあるということになります。

もちろん、録画であれば、不自然なものであれば、偏見があるということで証拠能力を争うということも弁護士はよくやります。しかし、一般的に現在の録画はかなり信頼されているという傾向はあります。

したがって、今回質問されている方の事故においても、紛争が法廷に持ち込まれた場合には、証拠として採用される確率が高いということになります。

 

証言とデータの食い違いー評価はいかに?

では、質問されている方およびご家族が同乗されていた場合、これらの人の証言と、車載レコーダーの録画と相対するとき、どのように評価されていくのでしょうか。ここから次回考えていきましょう。

 

天気が良い日が続きます。暑くても外での時間を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。



 

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