過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[2]





法律ノート 第1061回 弁護士 鈴木淳司
June 14, 2017

週末に、ルイジアナ州に収監されている受刑者に面会するために、その方の家族と一緒に飛びました。道中、乗換え便が数時間遅滞して、結局目的地である、かなり田舎の空港に着いたのは夜中でした。レンタカー会社も閉まっているし、携帯電話も入らない。そして人もいない空港で途方にくれました。かなり大変な思いをしましたが、皆さんは平穏な週末を過ごされましたか。

 

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?[2]

 

さて前回から考えてきた「以前(10年ほど前)、学生のとき、飲酒運転で有罪の判決をカリフォルニア州で受けました。当時、罰金を支払い、指定された講習などすべて裁判所から言い渡されたことは終了しました。その後、警察にかかわるような問題はまったくありません。現在、トランプ政権になって移民に厳しくなってきたということを聞いています。私は現在就労ビザでアメリカに滞在しているのですが、以前、飲酒運転があったということで、強制送還などになるのではないかと不安になっています。色々検索すると、犯罪歴を抹消する手続きがあるということがみつかりました。この抹消手続きというものはどのようなものなのか、やはり私はやっておくべきなのか、教えていただけないでしょうか」という質問を考えていきましょう。

 

前科抹消手続きーエクスパンジメント

 

前回、前科抹消手続き(エクスパンジメント)を考え始めました。
エクスパンジメントの手続きは、州ごとにかなり実務が違いますので、今回はできるだけ一般的にあてはまる内容を考えていきたいと思います。

 

抹消内容には制限ありー開示すべき場合

 

まず、エクスパンジメントの手続きですが、刑事事件の前科を抹消するとしても、抹消される内容の限度があります。このことをよく理解しておいていただきたいと思います。

要するに、前科の抹消が裁判所に認められたとしても、一定の場合には、前科を申告しなければなりません。

この一定の場合というのは、対行政関係です。
たとえば、米国の入国管理関係や、米国の行政関係の申請などを行う場合を指します。ですので、前科がエクスパンジメントによって抹消されたとしても、ビザ、永住権、および市民権の申請時には、前科を開示しなければなりません。

もちろん申請書のなかで許されていれば、前科が抹消されたという事実は言及しておくべきだとは思います。

 

私人関係における「前科はありますか?」

 

一般的な生活を送っていると、今までに前科はありますか?ということが聞かれる場面があります。たとえば、就職活動をしている場合や、家を借りようとする場合などが考えられるでしょうか。

このような私人関係の場合には、抹消手続きが裁判所に認められれば「前科はない」と申告して問題なくなります。

 

州ごとの違いには細心の注意を

 

注意したいのは、政府関係の仕事に就業したい場合には、前科について申告しなければならない可能性が高いです。基本的に連邦政府に関しては、前科は申告しなければなりません。州政府に関しては各州の法律に規定されています。

エクスパンジメントというのは基本的に州法にもとづいて決められているで、前科となったもともとの罪が審理された裁判所の管轄となります。

そうすると、アラバマ州で言い渡された刑については、そのアラバマ州の裁判所に適用される法律を考えなければなりませんし、カリフォルニア州で言い渡された刑については、カリフォルニア州の法律によることになります。

 

エクスパンジメントに関わる法律は各州で異なりますが、どのような罪が抹消の対象になるかも違いがあります。たとえば、今回質問されている飲酒運転の罪のような場合、ほとんどの州で軽罪(Misdemeanor、最高刑が禁錮1年以下の罪)に関しては抹消の対象となります。
一方で重罪(Felony、最高刑が禁錮1年以上の罪)だと抹消を許さない州もあります。

ですので、現在どこに住んでいるか、などにかかわらず、刑を言い渡した裁判所に適用される抹消手続きの法律を解析する必要があります。

 

今回質問されている方は、カリフォルニア州の州地方裁判所で飲酒運転(軽罪)の罪で有罪となっているようです。そうするとカリフォルニア州法では飲酒運転の罪は、抹消手続きの対象になりますので、抹消の申請は可能となります。

ただし、抹消の申請をするには、言渡しを受けた刑に付された条件を全てクリアーすることが前提となります。

ここから次回考えていきたいと思います。

 

 

私はまだ、疲れが完全に回復していないですが、良い天気を楽しみながら、また一週間がんばっていきましょうね。