米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺[1]






法律ノート 第1029回 弁護士 鈴木淳司
October 17, 2016

週末は金曜日から続く久しぶりの雨でした。ベイエリアにとっては恵みの雨でしたが、飛行機を使ってわざわざ私に会いに来てくださる予定だった方は、ベイエリアの濃霧が発生し、かなり大変だったようです。日本も随分涼しくなったようで、知り合いの弁護士は最高のゴルフ日和で忙しいと時機に後れたメールが届いていました。皆さんは秋を楽しまれていますか。

「米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺」[1]

さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると、「北カリフォルニアに10年以上住む、永住権をもった家族です。
先日、IRS(いわゆる米国国税法)から電話が入り、妻が税務申告について質問をされました。かなり相手方も情報を持っていることなどから、再度自宅に電話があったときに私(夫)が電話に出て、ソーシャルセキュリティーや、勤務先の情報を確認しました。そのときに、お金が還付されるということを言われたのですが、一向に還付されません。このようなケースは、詐欺のようなものなのでしょうか。それであれば、自己の情報に関して保護の心配があるのですが、大丈夫でしょうか。」というものです。

「政府機関からの要請」、心理状態は?

日本人にかぎらず多くの人は政府=お上、という考えがある程度あって、政府からの要請には応えてしまう、という傾向にあると思います。
私でも、もちろん政府から何か言われたら身構えてしまうかもしれませんが、一般的に生活をしている皆さんにとってみたら、連邦政府から連絡あったら、かなり不安になるでしょうし、対応しなければならないという義務感にも駆られてしまうかもしれません。

連邦政府が電話をかけてくるかどうか

まず、今回のような電話は、連邦政府から行われるということはありません。
連邦政府でも各省庁で電話による個人情報のやりとりは通達などで制限されているのが一般的ですし、基本的に書面主義を採っていますので、何か連絡や要請があれば、書面で行うということになります。

よく考えてみてください。
電話でのやり取りがたとえ録音されていたとしても、数年経ってから、どのようなやり取りがなされたのか、担当者が変わってしまってはなかなか正確に把握できませんね。電話でやり取りをしても、その内容をそもそも正確に残すということは難しいということもあると思います。やはり、書面でやり取りをすることで、後日内容に齟齬がないようにするというのが、基本です。弁護士も同様です。やはり、行政機関、司法とのやり取りについては、書類で残すというのが基本です。このことは、かなり重要なので、頭に入れておいてください。

代理書面は文書で提示

たとえば、私が弁護士として、会社や個人を代理するわけですが、司法関係や行政関係の団体に対して電話をかけて、「私は◯◯さん、◯◯株式会社を代理する弁護士です。」と言っても、ほぼ100%取り合ってもらえません。必ずといってよいほど、「あなたが、◯◯さん、◯◯株式会社を代理しているのかどうかを確認するために、代理書面を見せてください。」と言われます。それは、そうでしょうね。本当に弁護士だとしても、代理をしている事実があるのかどうかがわからないわけですから。

同じように、国税などの行政機関にしても、いきなり、電話をしてきて、「私が担当です、情報を共有してください。」と言ってきても、
(1)本当に国税なのか、そして国税だとしても
(2)本当に権限に基いて連絡してきているのか、
わからないわけです。

まず確認すべきこと

そうすると、皆さんが、いきなり行政機関から電話で情報をよこせ、と言われた場合には、必ず(1)本当に国税なのか、そして国税だとしても(2)本当に権限に基いて連絡してきているのか、を確認したうえでないと、情報は共有できないという態度をはっきりさせなければなりません。そのためには、やはり書類で、通知をもらってから応えます、という形にする必要がありますし、その通知を受け取って内容を確認しなければならないと思います。

 

次回、詳細に考えますが、アメリカ連邦政府が、細かい個人情報を電話で求めるということは、まずありません。今回質問されている方の例を挙げても、ほぼ間違いなく、質問者の個人情報を不法に取得しようとしていると思われます。日本でも、振り込め詐欺といった犯罪が横行していますが、類似している犯罪だと思います。

秋の雨で、ベイエリアも季節が変わっていくようです。皆さんのお住いの地域
はいかがでしょうか。夜お腹を出して寝ていると風邪をひく季節になりました。
服装にも注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。