一時渡航(非移民)ビザの取消事由- 飲酒運転


Nov-07-2016



昨年から、私の所属する事務所で、かなりの件数にのぼる相談を受けていた問題があります。
最近になって国務省から明確な答えが公にされましたので、弁護士ブログでみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

飲酒運転(DUI)とビザ取消

事の発端は、昨年から私の所属する事務所で受任している飲酒運転(Driving Under Influenceまたは略してDUI)にまつわる刑事事件に関してです。
米国に一時渡航ビザで入国している日本人は、日本に所在するアメリカ大使館・領事館から、ビザ(査証)の発給を受けているわけですが、DUIで逮捕されると、すぐに在日本の米国大使館から、「ビザの取消」通知が届くようになりました。

他の犯罪では、このような「ビザの取消」通知はあまりないのですが、飲酒運転、または類似の犯罪については、かなり確実にビザの取消通知が送られてきます。

ビザというのは、アメリカ入国の際の「通行手形」だという表現を私は何度も使ってきました。
これには意味があって、いったん「通行」をしてしまってアメリカ国内に入ると、ビザの期限は関係なくなり、いわゆるI-94という、米国内のステータスに関する書類で米国滞在がコントロールされることになります。
I-94というのは、数年前に紙で記入することが廃止されましたが、現在電子的に管理されているものです。ビザは通行手形の役割を負っているので、アメリカに入国するまでに非常に大事になってくる書類なわけです。

ところが、アメリカに入国したあとは、国務省の管轄する移民局が本来滞在に関するステータスを管理するところですが、昨年から、アメリカ大使館がわざわざアメリカに滞在しているビザをもった外国人に対して、「ビザの取消」通知をするようになったのです。

 

DUIに対する国務省通達

最近になって、この通達の詳細が発表されました。
2015年11月5日付で国務省が各大使館・領事館に対して通達しました。一般には最近になって内容が開示されたという経緯があります。

この通達によると、通達の日から遡って5年以内にDUIでの逮捕歴、有罪歴がある場合には、入国禁止などの判断をせずに自動的にビザを取消処分にするように命じています(国務省通達9 FAM 403.11-3(A)参照)。

すなわち、裁判で有罪とならずとも逮捕のみであったとしても、一時渡航ビザを取消されることになります。

 

ビザが取り消されない例外

ここで注意が必要なのは、過去5年に遡ってビザが取り消されるということですが、すでに飲酒運転で逮捕または有罪となって、そのことを申告したうえで、一時渡航ビザの発給を受けている場合には、今回の通達は適用されません。あくまでも、まずビザの申請時にDUIの前科前歴がなく、アメリカ入国後にDUIで逮捕または有罪となった場合に適用されます。

 

ビザ取消の意味するところ

要するに、いったんアメリカにおいてDUIで逮捕された場合には、もう一度日本に戻ったときには、ビザを申請し直して、問題があるかどうかを確認せよ、という国務省の意向が具体化したわけです。
移民法の212上(a)(1)(A)(iii)項に、身体・精神に問題があり、なんらかの危害が発生する可能性がある場合のビザ発給拒否という条項があるのですが、これに基づいて、アルコール中毒などの問題 がないか、大使館でもう一回精査するように命じているわけです。

この通達に基づいて、米国大使館が米国に滞在している日本人で、DUIの容疑で逮捕された場合には、すぐに「ビザの取消」を行うようになったのです。

 

強制送還になるか?

ただ、今までの法律上、米国大使館がビザの発給を取り消したとしても、すでに一時渡航ビザを使って(通行手形として)、米国に滞在している場合には、「日本に戻ってこい」ということは命令できません。
強制送還にするためには、国務省・移民局が強制送還の手続きをとるわけであり、大使館は関係ありません。

したがって、今回の通達があっても、すでにアメリカに滞在している場合、すぐに日本に戻ってビザの再申請をする必要はありません。滞在を許されている範囲でアメリカに滞在し続けることはできます。

しかし、いったんアメリカを離れることになると、再度アメリカに入国するためには、「通行手形」が必要になります。
この通行手形がすでに、取り消しされているので、再度米国の大使館・領事館で、ビザの申請をする必要が出てくるということになるのです。
とにかく、この通知を受けたからといってすぐにアメリカを離れる必要があるか、というとこれはありません。

 

RevocationとNullification

ちなみに、取消というのは、Revocationといって、一旦有効に存在しているビザを、DUIの逮捕時点から、効力がないものとする、という効果があります。したがって、将来に向かってビザの効力がなくなります。

このRevocationとはちがって、遡及的に効力がなくなるという場合もあります。Nullification、日本語でいうと無効という法律用語になりますが、この無効というのは最初から効力がないということになります。
この法律用語の違いはかなり大事で、今回ご紹介したDUIに関しては、Revocationすなわち将来に向かってビザの効力がなくなるというだけなので、米国を離れるまでは、合法的にアメリカに滞在できるということになるのです。

次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。

また、次回まで皆さんお元気にお過ごしください。

カテゴリー: 国際弁護士なブログ | 投稿日: | 投稿者:

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