移民法と刑事事件の接点と呼べる判例






 

今年の夏は皆さんはどのように過ごされる予定ですか。仕事をずっとされる方もいらっしゃるのでしょうか。
学生さんは夏休みですね。旅行をされたり、ゆっくりされたり、バイトをするなどという選択肢もあるのではないでしょうか。
私は、働くことももちろんしますが、息抜きの旅行や勉強もして、気分転換を図っていきたいと思っています。とは言っても社会人になるとなかなか自分の時間を見つけるのが難しいですけどね。

今回は、またまた刑事事件に絡んでしまいますが、移民法と刑事事件の接点と呼べる判例がつくられましたので、皆さんと一緒に考えていきましょう。今回題材にする判例は United States v. Corona-Sanchez, 291 F.3d 1201 (9th Circuit, June 6, 2002)という連邦控訴審での判例です。

判例の基礎となる事実関係をまずみていきましょう。
過去に窃盗の罪で逮捕され、有罪とされた外国人の被告人がいました。窃盗といっても、一般的にアメリカでは高額窃盗(Grand Theft)と少額窃盗(Petty Theft)にわかれ、高額窃盗については、通常重罪(Felony:法定刑が一年以上)とされていて、少額窃盗は通常軽罪(Misdemeanor:法定刑が一年以下)とされています。

この判例の基礎となる事件で、この外国人の被告人はまたまた少額窃盗の罪で起訴されて、有罪となりました。ただ、過去にも同じ窃盗の罪で有罪となっていたことから、今回の有罪は、罪が重くなり、2年の禁固刑を言い渡されました。

2年の禁固刑というのは、立派な重罪に当てはまるとして、移民局は移民法で定められている、2罪以上の罪を犯して重罪となった場合は外国人は強制送還されるという法律(8U.S.C. Section 1101 (a)(43)(G))に基づき、この被告人を強制送還としようとしてこの裁判となりました。
つまり、過去に犯した罪を元に、再度少額窃盗で有罪となり、刑が加重されて重罪となった場合には、強制送還できるのかどうかということが論点になったのです。

ちょっと難しいですが、第9巡回区高等裁判所は、移民局が上記法律に基づいて強制送還することは妥当でないと判示しました。すなわち、今回捕まったのは、区切って考えれば少額窃盗であり、法定刑の上限も6ヶ月にすぎないわけです。ところが、過去の罪と合わせると、津波のように刑が膨れあがり、結果、今回の事件では懲役2年となってしまったのです。

この点、高等裁判所は、過去の刑を「足して」今回の罪を考えることは妥当でないという考え方を示しました。
つまり、同時に何罪も犯している場合は、同時に重罪になる場合があり、その場合は強制送還も仕方がないであろうが、過去に罪を犯したことと、現在裁判の対象となっている犯罪が同時に起きていない限り、まとめて考えるのは妥当ではないということになったのです。

もちろん法理論的にはもっと奥深い論点がありますが、皆さんに知っておいていただきたいのは、過去に罪を犯したからといって、また似たような刑で捕まっても、移民局は過去の犯罪を引っ張り出してきて、現在の罪に加重することにより外国人を強制送還させることが難しくなった訳です。

 もちろん、罪を犯すことは良くないことかもしれませんが、弁護士をしていると、いろいろな事情で罪を認めたりしなくてはならない場面にも良く出会いますし、また、過失によりなんらかの刑事事件に巻き込まれるということも少なくありません。
ですから、一旦ミスを犯し、その事を念頭に置いて静かに暮らしていても、またなんらかの形で犯罪に巻き込まれることもあるかもしれません。
そういう意味では、過去の罪を遡って強制送還の理由に使われることが少なくなったので、アメリカに住む外国人にとっては朗報なのではないでしょうか。

ちょっと、判例を解説するという難しい作業をやってみましたが、つまらなかったですかね。でも、日常生活と非常に密接に関わる内容なので、皆さんにも知っておいていただきたいと思って書きました。

それではまた次号まで、皆さんお元気で!


 
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