一時滞在ビザ申請の不許可率


May 02, 2012

 私の事務所にも移民チームがあり、忙しく申請書類をつくっていますが、最近はボツボツ、申請書が不許可になるという事例が増えています。恐ろしいことに、以前には問題なく許可がおりていたのに、同内容で更新しようとすると不許可になるというような事態も出てきて、実に不安定な状況になっています。

政府の裁量に左右される移民法

これまで何度も、じんけんニュース*で書きましたが、移民法というのは「法」とは言っていますが、政策的な要素が強く実際のところ政府の「裁量」によって、いくらでも許可・不許可に違いが出てきてしまいます。
したがって、ビザの申請などは、過去に許可事例があっても、司法におけるいわゆる先例拘束性のような効力がないため、安定感がありません。
今回は、最近の移民法において、条文はまったく改正されていないのに、不許可が多くなってきている現状をご紹介して、注意を喚起したいと思います。
なお、本文の統計は、National Foundation for American Policyという米国における政策のシンクタンクが公表しているものを基礎にしています。

L-1Bビザの不許可数増加

まず、一番顕著にビザの不許可が発生しているのが、L-1Bというカテゴリーです。
これは、社内で特別な知識を有する職に就く者というカテゴリーです。以前は、なんら問題なく社内で、たとえばコンピュータやセールスの知識があれば発給されているビザですが、2007年を境にして、ずいぶん様相が変わりました。

不許可の理由としては、「社内で特別な知識を有するだけではなく、一般的に見て特別な知識がなくてはいけない」というもので、法律の改正が必要なほど判断基準が変わってきました。
以前であれば、社内で特殊なシステムを組んでいて、そのプログラムを扱う経験があれば、そのまま許可されました。これはL-1Bの定義条項とも合致した解釈でした。
ところが、その解釈に加えて今度は、社内での特殊なシステム管理が、一般的にみて(社内で見ただけではなく)特殊技術であり、特別な知識が必要であるということを示さなくてはいけなくなったのです。このように、移民局の判断基準がなんらの前置もなく変遷しました。訴訟にしても良い部分だと思います。
そして、2007年度には、不許可率が7%であったのに、2008年から2011年をみると、それぞれ、22%、26%、22%、そして27%と高い不許可率で推移しています。ここで、L-1Bの制限は特にインド人に対して多いことから、外国人のコンピュータ関係やセールス関係の業種への就業を妨げる結果となっています。これは明らかに政策的な意図があるといえます。

H-1B、L-1Aビザの不許可

L-1Bと同様に、専門的な知識を持った外国人のためにH-1Bビザというカテゴリーが用意されています。これは、基本的には4年制大学を卒業し、その専攻分野で働くという内容のビザです。
これも、2007年には、11%の不許可率だったのですが、2008年から2011年を見ると、16%、29%、21%、17%と高い不許可率で推移しています。このカテゴリーでもインド人の不許可率が高かった事実があります。これも、外国人がコンピュータその他の専門的な分野に入ってくることを制限している実質的な効果があります。H-1Bビザは特に外国人が米国内の大学を卒業して、はじめて得る就業ビザという位置づけに実際のところなっていますので、このような高い不許可率は外国人留学生に負の影響を与えていると言えます。

上記2つのビザほどではないですが、L-1Aカテゴリー、すなわち国際企業の経営者がアメリカで就労するときのビザですが、不許可率が高くなっています。2007年度には9%であったのに、2011年度は14%に上昇しています。

上記をみると、明らかに政策として、外国人による就労を制限する方向で移民局は裁量を行使していることが見えます。不許可になった場合には、再度申請をし直すこともできますが、場合によっては別のカテゴリーに鞍替えして申請する必要もでてきます。

追加書類の提出~Request of Evidence

不許可に加えて、Request of Evidenceという申請を遅滞させる手続きが移民法で規定されています。もちろん、わざと遅滞させるのではなく、追加書類を求めるという手続きです。これについても、この数年で顕著に多くなっている傾向にあります。このRequest for Evidence(以下「ROE」と略します。)がくると、少なくとも数ヶ月はビザ発給が遅滞します。

まず、特に顕著なのは、L-1Bビザです。2007年にROEの率は申請全体の17%でした。
ところが、2008年度から2011年度を見ると、49%、35%、44%そして63%と、信じられないくらいの高確率でROEが出されています。
H-1Bビザについても、2007年度は18%でしたが、2011年度には26%に上昇しています。
L-1Aビザについても、2007年は24%でしたが、2011年は倍増の51%に達しました。
不許可率に加えて、ROEの率は、ただ単に外国人の就労人口を少なくするための裁量ではないと考えます。すなわち、ROEは、不許可にはただちにしないが、さらに、たとえば特別な知識を持っているのかを示したり、雇用側の雇用能力を確認したりするものです。ということは、申請において、移民局が裁量を行使する際に、厳格に申請内容をチェックしているということになります。一般的にいえば、「怪しい」そして「要件を満たさない」申請をはじくためのプロセスをより一層厳しくしているということになると言えます。
したがって、申請書類の準備段階においては、できるだけ多くのサポートとなりえる証拠を事前に添付していくことは重要になると思われます。

厳格化する移民法、対策は入念に

上記は、最近の移民申請のトレンドについて、客観的なデータを解説したものです。これらを見る限り、やはり一般的に移民申請は「厳しくなっている」といえることは間違いありません。
ですので、雇用主においては、被用者の選択やバックアッププランを念入りに考えることが必要ですし、外国人労働者の立場から言えば、自己のバックグラウンドにちゃんとあったビザの選択、そして、自己のアピールができる書類、たとえば、学校で何を学んだか示す書類や、前に働いたことのある場合にはその推薦状などをちゃんと揃えることが重要となりそうです。

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